Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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先生という役割

「ーーい」

 

「ーーんせい」

 

「先生、起きてください」

 

「透子先生!」

 

耳元で声をかけられハッと目を覚ます。

見上げるとそこには、頭上に変な紋様が浮かんでて、綺麗な黒髪ロングにメガネをかけ尖った耳の女性が立っていた。

不満そうな表情で。

 

「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。

なかなか起きないほどに熟睡されるとは」

 

幸い寝起きは良い方、というより一発で目が覚めるよう“訓練”されていたため、すぐ周囲の状況を確認する。

初めて見る建物だ。ただ白い。

白いだけで特に危険なものは見当たらない。

 

ただ一つを除いて。

 

(銃を携帯してる...)

 

女性の腰には銃が差してあった。

 

「先生?どうかしたんですか?」

 

「...先生って、アタシのこと...だよね?」

 

「貴女以外にいません」

 

「そうだよね。ごめんごめん。

まだ寝ぼけてるみたいだ」

 

適当に誤魔化しながら立ち上がる。

ソファで寝るなんて随分久しぶりのことで、腰が痛んだ。

 

「随分と落ち着いていますね。

呼び出されて間もないというのに」

 

(呼び出された?呼び出される前の記憶がないけど...)

 

伸びをしつつ応える。

 

「まぁ、慣れてるから」

 

「そうですか」

 

ソファから動いても銃を抜かないあたり警戒はされていないようだが...

ふと思う。

この黒髪ロングの女性の名前を知らない。

だが警戒されていないとはいえ、素直に教えてくれるだろうか。

それでも聞かないよりはマシか。

 

「アタシは風見透子

名前を伺っても?」

 

「申し遅れました。私は七神リンです。

学園都市-キヴォトス-の連邦生徒会所属の幹部です。先生のことは存じております。

諸々の説明は移動しながらにしましょう」

 

こちらへ、と行き先を示し歩き説明を始める。

話によるとどうやらここは、さまざまな学園が集まってできた“学生が”治める巨大都市らしい。

その中でも行政を担う組織が七神リンという女性が所属する連邦生徒会だと。

相槌を打ちながら考える。

 

(学生が都市を...

待てよ?何故学生が銃を所持している?)

 

子供に銃を握らせるなど言語道断だと、憤りを感じていると

 

「そして透子先生には、キヴォトスで先生として働いてもらうことになります」

 

「アタシが先生、か...」

 

俯き小声でこぼす。

 

「?

なにかありましたか?」

 

リンは怪訝そうに顔を覗き込んできた。

 

「いや、似たようなことをしたなぁと思い出してさ」

 

「そうだったんですね。

先生のことは知っていても、

先生の過去や経緯は知らないんです。

すべて連邦生徒会長がお決めになったので...」

 

そう言いエレベーターに乗り込む。

下に着く頃には、説明がひと通り終わっていた。

 

「ねぇ、その連邦生徒会長って今どこn「いた‼︎見つけたわよ‼︎代行!生徒会長はどこ⁉︎

呼んできて‼︎」「お待ちしていました。主席行政官」「連邦生徒会長に会いにきました。

風紀委員長が今の状況について、納得のいく説明を。」

 

ドアが開くと同時に学生服を着た3人の少女が一気に詰めてきた。

 

「はぁ...」

 

リンがうんざりさを隠す気もなく大きく溜息をつく。

 

「...ねぇ、隣の腕が骨折した女性は誰?」

 

そういえば右腕が義手であることを隠すために骨折を装ってたのを忘れていた。

名乗ろうととした、しかし、言葉は喉から出ない。

否、出せなかった。

 

MPX

 

M1917エンフィールド

 

モーゼルM712

 

少女たちの手に握られている。

一人ひとりが銃火器を持ち合わせてる。

 

どうしてさも当然のように“人を簡単に殺せるモノ”を持っているんだ。

それも年端のいかぬ少女たちが。

 

義手に力がこもる。

 

「え、なんで私たち睨まれてるの...?」

 

MPXを持った青髪ツインテールの少女が困惑する。

 

「生徒会長はいません。

正確に言うと行方不明になりました。」

 

全員驚愕の表情をし、場が凍りつく。

 

「...それ本当?」

 

「本当です。

結論から言うと、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状況です。

認証を迂回する手段がありませんでした。

先程までは。」

 

「先程まで、ということは今はあるんですね?」

 

モーゼルM712を持ったメガネの少女が聞く。

先程、キヴォトスに来たタイミングと重なるということは。

 

「はい。

この怪我した方が、先生がフィクサーになってくれるはずです。」

 

「...そうなんだ」

 

リンとの説明とこの三人との会話を聞いて推測していたが、読みが当たるとは。

 

「そうなんだって他人事すぎるでしょ...

というか、この先生は一体どなた?

どうしてここにいるの?」

 

「キヴォトスではないところから来た方のようでしたが、先生だったのですね...」

 

「はい。

こちらの透子先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会が特別に指名した方です。」

 

三人の視線が集まる。

 

「行方不明になった生徒会長が指名...?

どういうことなの...」

 

それぞれが困惑した表情を浮かべ思案しているところを見ると、

先生という立場が責任重大だということは分かった。

さっき名乗れなかったのを思い出し、皆のほうを向く。

 

「風見透子です。

生徒会長直々の指名を受けて

先生として赴任しました。

よろしくね」

 

名乗り左手を差し出す。

 

「よろしくお願いします...って、挨拶なんかどうでもよくて!」

 

「挨拶は大事だよ?」

 

ちょびっとだけ圧をかけて握手を求める。

 

「うぅぅ...!わ、私はミレニアムサイエンススクールの早瀬ユウカです!」

 

「申し遅れました。

トリニティ総合学園の羽川ハスミです」

 

「ゲヘナ学園の火宮チナツです。

よろしくお願いします。先生」

 

「みんな、これからよろしくね」

 

三人全員に握手をする。

銃を握り慣れている手とは思えないほど柔らかい。

こほん、とリンが咳払いをし話の腰を戻す。

 

「先生はもともと生徒会長が立ち上げた、

ある部活の担当顧問をする予定でこちらに来ることになりました」

そう言うとリンは-S.C.H.A.L.E-という文字と、その部活がある場所を指し示す地図が映ったタブレットを見せる。

 

「...シャーレ」

 

「はい。

連邦捜査部-シャーレ-はただの部活ではなく、一種の超法規的機関。

連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させることが可能です。

そして各学園の自治区で制約なしに“戦闘活動”を行うことも可能です」

 

 

「は?」

 

 

「...先生?」

 

(戦闘活動が可能?

つまりこの少女たちを兵士として戦わせるということ?)

 

冗談じゃない。

大人が銃を持ち戦いに行くのは構わない。

子供たちによりよい世界で過ごすもらうためだから。

命がどれほど重いかを知っているから。

 

でも子供は違う。

命の重さも、世界の裏事情の汚さもまだ知らない。

なんなら一生知らなくていいことだ。

おかしいと声を上げる大人はいなかったのか。

握り込む手から血が垂れる。

痛みよりも悔しさやもどかしさが勝る。

 

「先生!血が...!」

 

ユウカの声で我に返り、ハンカチを取り出し拭く。

落ち着け、子供達の前だ。焦りを見せてはいけない。

 

「大丈夫、へっちゃらだよ。

話の腰を折ってごめんね、七神さん」

 

「リンで問題ありません」

 

「じゃあリン、話続けて」

 

「分かりました。

シャーレの権力についてですが、なぜ生徒会長が作ったのかは分かりませんが...

シャーレの部室はここから30km離れた外郭地区にあります。

今はほとんど何もない建物ですが、生徒会長の命令で、地下に“とある物”を持ち込んでいます。」

 

「あの、シャーレの部室ですが...

今不良たちが大騒ぎしているようです。

巡航戦車も持ち出されています」

 

「...はい?」

 

ハスミの言葉に理解できないという顔をするリン。

銃だけならまだしも、戦車まで。しかも巡航戦車とは。

この世界の治安は最低最悪なのかもしれない。

 

「...あ」

 

リンがなにかを思いついたらしい。

 

「な、なんで私たちを見つめているの...?」

 

「ちょうどここに各学園を代表する方々がいるので頼りましょう」

 

「えっ」

 

「キヴォトス正常化のためです。

行きましょう」

 

カツカツと颯爽と歩いて行くリンと、困惑したまま追いかける四人。

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