Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
今朝、間借りしている教室から部室に向かう途中でアヤネからメッセージが届き、中身を読むと
『言うのが遅れてすみません!
今日は委員会は休みの日なんです。
なので先生もゆっくり休んでください』
「あれま......」
とのことで、急遽暇になってしまった。
折角ならワカモを連れて一度シャーレにでも戻ろうかと考え端末にもう一度視線を落とした瞬間、新たにメッセージが届いた。
『先生、今日時間空いてる?』
宛先はカヨコからだった。
委員会も休みで特段やる事がないため二つ返事で返信した。
──────
お昼には至らない時間。
柴関の暖簾をくぐり待ち合わせの席に向かう。
「ごめん、待たせたね」
「ううん、大丈夫。むしろ早い方」
席には便利屋が既に座っており、カヨコに手招きで座るように促される。
「忙しいのに呼んでごめん。」
「大丈夫だよ。それでアタシに用って?」
「前に先生がシャーレに事務所構えていいって言ったじゃない? こっちは準備が出来たからその報告をしようと思って呼んだの」
「こっちから連絡するはずだったのに手を煩わせちゃったね」
「先生が忙しいのは全員周知の上だったから大丈夫よ」
アルがそう言うと三人とも頷いた。
気も使わせてしまった。
「準備出来たってことは、引っ越しの手配とか日にちを決めなきゃね」
「手配とかは必要無いわ。
そもそも荷物自体は少ないから、先生のタイミング次第ね」
「荷物少ないって......あの事務所それなりに家具とかあったよね? 持ってかなくていいの?」
確か
「ああ......アレ全部レンタル品......」
「と、とりあえず! 引っ越しの準備は万全で、先生さえ良ければ今日のうちでも引っ越せるわ!」
暗い空気を晴らすように元気に振る舞うアル。
今日一日用は無かったし、しかも一度帰ろうとしていたためこちらとしてもありがたい。
「アタシも用事はないし今日中に済ましちゃおうか」
「ホント!? 良かったぁ! 実はもう引き払っちゃって、どうしようかと思ってたの!」
なんとも計画性の無い話だと思いカヨコを見ると、だいぶげんなりした様子だった。
対策委員会ではアヤネが、便利屋ではカヨコが常識人で苦労人のようだ。
「まぁ何はともあれ、ひとまず食事にしようか」
「「「「賛成!」」」」
各々の注文を終えた直後、カヨコが少し重たげに口を開く。
「先生を呼んで報告したのは、引っ越しのことだけじゃないんだ。私達の雇い主のこと。元雇い主か」
「元ってのに引っかかるけど、そもそも話して大丈夫? 契約で言っちゃダメなんじゃなかった?」
問いに対しカヨコは人差し指を薄い唇にそっと当てたため、アタシは静かに頷いた。
「簡潔に言うわ。依頼主はカイザーよ」
その回答に身の毛が立つのを覚えた。
「......依頼内容は?」
「対策委員会を潰し、学校を占拠すること」
「......学校を占拠して何をするつもりだった?」
アルとカヨコは首を横に振ったのを見て椅子に背を凭れ、ようやく自分が前のめりになっていたのを自覚する。
「へいお待ち......ってなんか暗い顔してんな......ちょっと待ってな」
大将が注文していたラーメンを持ってきたと思いきや、全員の雰囲気を察したのかすぐ厨房に戻っていく。
すると数十秒経ったあたりでなにかを持って帰ってきた。
「ほい、サービスの餃子! これ食って元気になってくれよ!」
「大将......ありがとう」
「気にすんな。ウチにいる時くらい明るくなってもらわなきゃな」
そう言ってサムズアップして厨房に去っていく。
大将の懐の深さと人情の厚さに感謝してもしきれない。
「「「「「いただきます」」」」」
同時に手を合わせ食べ始める。
一口運んだ瞬間、さっきまでの全員の暗い顔は夏空のような晴れになった。
ラーメンを口一杯に頬張り、はふはふと冷ましながら笑顔で食べている便利屋。
それを眺めていられるこの空間がなにより愛おしい。
「な、なに?」
「ううん、なんでもない」
「先生、食べないと麺伸びるよ」
「そうだね。食べないとね」
ただただこれが続いてほしいと願う。
だがその願いは、風切り音により無惨に消されることになる。