Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
「で? なんでアコは委員会のメンバーを連れてアビドスにいるの?」
『そ、それは......素行の悪い生徒達を捕まえようと......』
「便利屋68のこと? 今はシャーレとアビドスと対峙してるように見えるけど」
『え、便利屋ならそこに......』
「ええ、いるけどそれが?」
『へっ?』
「どういうこと......?」
アコが素っ頓狂な声を上げる中、便利屋も困惑の色を示していた。
『説明します......』
「いや、必要ない。大体把握してるから。要するにゲヘナの不安要素の確認及び排除、そういう政治的な活動の一環ってとこかしら」
『はい......』
「アコ、私達は風紀委員会であって、生徒会ではない。貴女が喧嘩を売ったのはシャーレ。これがどういう意味か理解してる?」
『それは......』
ヒナはアタシ達を一瞥し、また前へ向き直る。
その目の下にファンデーションで隠してるつもりの隈が浮かんでいた。
「シャーレだけでなくアビドスにも喧嘩売って、挙げ句の果てには先生に怪我を負わせる。この件に関して処罰を与えるから覚悟しておいて。通信を切って謹慎していなさい」
『はい......』
ヒナの剣幕に、しなしなになったアコはそのまま通信を切る。
因果応報とはこのことだろう。
「こちらはアビドスの対策委員会です。ゲヘナの風紀委員長ですね。初めまして。この状況について理解されてますでしょうか」
アヤネの問いに、先程とは打って変わって静かに端的に答えるヒナ。
「事前通達無しでの他校自治区における無断兵力運用、及び他校生徒との衝突。......そして先生の負傷」
アタシの目を、包帯が巻かれている額を見てヒナの表情が歪む。
「本当にごめんなさ......」
「いやぁ撃ち合いにならなくてホント良かったよ〜。生徒同士で撃ち合うなんて見たくないからね」
「え?」
まさか謝罪を遮られるとは思わなかったのであろうヒナは目を丸くした。こんなにコロコロ表情が変わると、来た時の目の鋭さが嘘のように愛らしい。
「......どうしてそんなに平然としていられるの? 先生は怪我したのに......」
「色々言いたいことはあるけど、君はアコに処罰を与えると言ってた。組織の長が言うんだから、これ以上は野暮でしょ。それに」
「な、なに?」
ヒナの前でしゃがみ、ヒナの目の下を擦ると案の定隈が姿を表した。
「君、寝てないでしょ。委員長だから仕事だったり、責任を負わなきゃいけない立場なんだろうけど寝なきゃダメだよ。折角の可愛い顔が勿体無い」
「か、かわいい......?」
全くどうしてこの世界の大人は、子供に責任を押し付けてばかりなんだ。
この歳なら友達と買い物に行ったり美味しいご飯を食べて過ごすのが普通だろうに、この子は寝る間も惜しんで組織に尽くしてる。
しかも責任を負うために、部下を引かせる自然さ。この歳で長として出来すぎている。
大人が役に立たないとは全く不甲斐ない話だ。
「うへ、こいつはまた何があったんだか。すごいことになってるじゃーん」
そこに聞き慣れたのんびりとした声が空気を震わす。
「遅すぎるよ! ホシノ先輩!! 連絡つかなくて心配だったんだから!!!」
「ごめんごめん、ちょっと昼寝しててね〜、少し遅れちゃった。あれ、便利屋の皆もいるんだね〜」
「ええ、少しね......」
「うん? どうしたの......」
「連絡は着いたみたいだね、ホシノ」
立ち上がりホシノへ振り返ると、額の包帯と隣にいるワカモを見て、ホシノの表情はみるみる変化し困惑の色になった。ショットガンを握るその手は力が籠りすぎて、寧ろ少し震えていた。
「先生......その怪我......それに厄災の狐......」
「大した怪我じゃないし血も止まった。それにワカモは敵じゃないから安心して」
「なら誰が......っ風紀委員長......? なんでここに?」
立ったことによりアタシの陰にいることになったヒナがホシノによって見つかる。
「小鳥遊ホシノ......それに対策委員会、便利屋68、狐坂ワカモ。先生の怪我は風紀委員のせい。......ごめんなさい。今回発生した損害については風紀委員会が全て負担する。先生の怪我も含めて。こんなんで済むような問題じゃないのは分かってる。けど謝らせてほしい。本当にごめんなさい」
非難を文句を言ってやろうと考えていたのだろうが、深々と最上位の謝罪の姿勢を取られたせいか、ホシノは言葉に詰まる。
「......っ」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。怪我も幸いなことに深くはないし......」
「「「先生は黙ってて」」」
「えぇ......」
「先生、今のはタイミングが悪すぎ......」
ヒナとホシノに言われるならまだしも、あろうことかワカモにまで言われる始末。先生として大人として立つ瀬が無くなってしまった。
「............はぁ、もういいや。怪我はしてるけど、先生もなんだかんだ無事だし。でも覚えといて。
次はない」
「ええ、次は私が殺しに行きますので」
二人の研ぎ澄まされた殺気は、戦場で散々味わったはずなのに鳥肌が少し立った。
「......そうならないよう躾けておく。全員、撤収準備」
「ひとまず相互納得ということで良いかな? それじゃあ解散ということで......」
「先生、ちょっと待って」
号令を元に風紀委員会は撤収していく中、ヒナは袖を引っ張りアタシを呼び止める。
「正式な情報じゃないんだけど風紀委員会の調査で気になる動きがあって、先生には伝えておこうと思って」
「──もしやアビドスに関係すること?」
「ええ、アビドスの砂漠にカイザーが潜んでる。なにを企んでるか分からないから慎重に......ッ」
後にヒナが教えてくれたのだが、この時のアタシはまさに
「情報ありがとう。ヒナも帰って休みな。寝る時間をちゃんと作るんだよ? 仕事ならアタシも手伝うからさ」
「え、ええ、そうするわ。先生も怪我してしまったのだから安静にして」
「努力する」
そう言いヒナは帰っていった。
どんちゃん騒ぎがあったが、こちらも本来の用事を済ませなければ。
「さて、便利屋の引っ越しも兼ねてシャーレに帰ろうか」
「いやいや! 怪我の治療が先でしょ!?」
「血は止まったよ?」
「そういう問題じゃないってば......」
「なら治療も含めてシャーレに帰ろう。それなら良いでしょ?」
妥協案を出したら全員から大きなため息を吐かれた。解せん......