Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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家を

「全員で来なくても良かったんじゃない? いてて......」

 

「先生、動かないでください」

 

「ハイ、すみません」

 

 あの後、ワカモと便利屋を連れてシャーレに戻ろうとしたが、対策委員会の全員がついて行くと雰囲気を出していたため連れてきた。

 そして今は部室で救護騎士団の鷲見セリナに治療してもらっている。

 ......そういえば誰がセリナを呼んだんだ? 

 

「こんな傷で、しかも自分で傷口を開かせるなんてなにを考えてるのですか! 菌が入っていたらどうなっていたことか......」

 

 後ろで皆が大きく頷いている。

 

「必要なことだったので......」

 

「まったく......本来なら病院での治療を受けてもらうべきなのですが......」

 

「ぇ......」

 

 病院という単語がセリナの口から出てきた瞬間、トラウマがフラッシュバックする。

 デカくて太い注射針をニコニコされながら腕にブッ刺されるという......

 恐らく今のアタシの表情は血の気が引いていることだろう。怪我関係なく。

 

「......どうやら予定がありそうですので、今日は一先ず良しとしましょう」

 

 そんな表情を見てかは不明だが、セリナは小さなため息を吐く。

 今度は何故か後ろから残念そうな雰囲気を感じる。

 

「ですが経過観察のために何日か来ますので。ではお大事に」

 

「どうもありがとう」

 

 小さく会釈をしてセリナは部室を立ち去った。

 治療も終わって残念そうな雰囲気の方へ振り向くと、スミが混ざっていた。

 

「ああ、スミ、急に大所帯でごめんね。これからウチに事務所を........」

 

「無茶したのか?」

 

「無茶なんか......」

 

「アンタは人間でヘイローが無い。その事を理解してるのか?」

 

 スミからは静かな怒りを感じた。

 だが心配している声色も感じ取れた。

 

「頼むから怪我して帰ってくるなよ。アンタの場合は洒落にならねぇから」

 

「......うん、気を付ける」

 

 及第点と言わんばかりのスミの反応。

 そして話の腰を戻す。

 

「ふん......で、この大人数はなんなんだ?」

 

 うーん、と唸る。一言では言えないことなため、ダイジェスト方式をとった。

 

「店にいたら吹き飛ばされて」

 

「......うん?」

 

「居合わせたのが便利屋で」

 

「うん」

 

「吹き飛ばしたのがゲヘナの風紀委員会で」

 

「............は? ちょっと待て」

 

「便利屋とアビドス連れて事情を聞きにいった」

 

「アンタ......はぁ......まぁいいや......」

 

 呆れられた。

 

「......便利屋に使わせる部屋は決めてんのか?」

 

「うん、この部屋の右隣の部屋をあげようかなって」

 

 左の部屋はアタシの休憩室にしているし、一階はスミ達の部屋。

 まぁ休憩室には何故かワカモが居座っているが......

 それなら仕事の階層として2階を分けた方が良いだろうと考えたのだ。

 

「良いんじゃね。そんで、メンバーの部屋は?」

 

「右隣が......」

 

「それは事務所だろ? 住処だよ、住処。」

 

「............」

 

 忘れていた。というより除外していた。

 借金で苦しむアビドスでも家があったため、便利屋もてっきりそうだと考えていたためである。

 チラリと便利屋を見る。

 アルはキョトンとして、カヨコは話を聞いていたのか小さくため息を吐き、残りの二人は......部屋のあちこちを物色していた。

 

「確かにうちらは家が無いけど、事務所で生活できるから心配しないで」

 

 カヨコがこちらに寄り、想像通りの回答をくれた。

 

「先生......アンタの考えてることが読めたぞ。ここ(シャーレ)に住まわせようとしてるな?」

 

「おっ、よく分かったね? だって思春期真っ只中だよ? そんな若い子がプライベートゾーン共有はまずいでしょ」

 

 大人なら一つの部屋で雑魚寝くらいはまだ良いが、子供にはその環境はよろしくない。

 それに人生一度きりの青春なのだ。存分に謳歌してもらおうじゃないか。

 

「......そんな目で見ないでよ。考えはあるんだから」

 

 二人の刺すような目にたじろぐ。

 きっと便利屋もスミ達と同じように、借りができてしまうと言うだろう。それなら仕事を分ければ、こちらとしても楽ができるし便利屋はお金が手に入る。まさにWinWinの関係というやつだ。

 

「シャーレからも依頼を出して、こなしてもらったら給料を払う。こっちの依頼はお使い程度だから本依頼には迷惑がかからないようにする」

 

「分かった。じゃあこっちで勝手に部屋決めるからな。委員会のメンバーもこっちでなんとかするからアンタはもう休んどけ、怪我人なんだがら」

 

「この程度大したこと......」

 

「「いいから休んで」」

 

「ハイ、ソウシマス......」

 

 大人しく休憩室に戻った。

 

 ──────

 

 休憩室へ向かうと、後ろから足音が一つ、ついてくる。足を止めると音も止まる。

 そんなに長い廊下ではないが、繰り返したことで教室二個分の長さに感じられた。

 

「......ワカモ、アタシは大丈夫だよ?」

 

 振り返り、足音の主に言う。

 

「怪我人を放っておけるほど、私は薄情ではないです」

 

 頑なである。小さくため息をつき二人で休憩室に入る。薄情であったとしても、ワカモもこの部屋に住んでいるのだから一緒になるのも仕方ない。

 

「なにか飲む?」

 

「あなた様は休んでください。今すぐ」

 

 肩を竦めて応じつつ工具箱を取り、ソファに座りアームカバーを外し銃を取り出す。

 

「あなた様......」

 

 呆れたような怒ったような声色のワカモを宥める。

 

「ごめんごめん、整備だけさせて」

 

 ワカモは小さく鼻を鳴らし、対面に座った。

 迫撃砲で吹き飛ばされ怪我を負ったが、骨は折れてもヒビも入っていないようだった。

 しかし腕と銃はそうはいかないだろう。

 どこかの部品が歪んでいるかもしれない。

 ヒビが入ったかもしれない。

 確かに現地で簡単なチェックはしたが、本格的なメンテナンスは必要だろう。

 特に銃は。

 

 スイングアウトし装填していた.357マグナム弾を抜き、樹脂製のグリップを留めていたネジを取り、右側面にあるネジを外し、シリンダーを本体接続部品ごと外す。シリンダーの留め具を外して、一先ずは発射機構にヒビも歪みも無いことが確認できた。

 これ以上の整備は明日にしよう。

 

 全てを元に戻し、今度は義手のメンテを始める。メンテといっても義手工学の知識は門外漢なため、可動部の違和感が無いかを確認する程度だ。

 五指の関節一つひとつをゆっくり折り曲げたり素早く折り曲げる。問題は無い。

 次は手首の可動を確かめる。曲げたり回転させるが違和感は無い。

 最後は肘の可動だが、動きが微々たるものだが鈍い。油を差して動きを確かめる。......問題は無いだろう。

 

 工具を戻しベッドに向かい、腰掛けると睡魔という沼へ誘われる。気丈に振る舞っていたが頭部からの出血が応えたのだろうか。

 

「......あなた様?」

 

 なけなしの力を振り絞り義手をパージして、そのまま呼び掛けに答えられずベッドへ倒れ意識を手放した。




 目の前で死ぬように意識を手放した先生を、ちゃんとベッドに寝かすため小声で囁く。

「あなた様、失礼しますね......」

 返答は、許諾は返ってこないが、起こさぬよう静かに優しく、だが長身の大人を運ぶために力を込める。
 正しくベッドに寝かせ掛け布団をかける。

「あなた様、ゆっくりお休みになってくださいな......」

 今までの見てきたどんな寝顔よりも穏やかなものであった。
 そして愛する先生を眺めるワカモの表情もまた、子供を見守る母のような穏やかさだった。
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