Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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地獄へ

シャーレに向かい途中、幾度となく嗅いだ匂いが漂ってきた。

 

硝煙と火薬の匂い。

 

シャーレ付近に着いた時、眉を顰めた。

あの景色から抜けてきたのに、また見ることになるとは。

 

「なによこれ⁉︎」

 

眼前に広がるのは“戦場”だった。

銃声。

爆発音。

これのどこが不良の大騒ぎなんだ?

 

「...全員、撤退するよ」

 

流れで一緒に来てしまったが、こんなところに軍人でもない子供を

連れてきてはいけなかった。

いくら銃を持っているからと言って、装備が装備だ。

銃弾が飛び交う戦場で学生服なんて殺してくれと言っているようなものだ。

 

「え、ここまできたのに...」

 

「流れ弾が飛んでくるかもしれない」

 

「もしかして先生、知らないんですか?

私たちは撃たr」

 

少し自慢げに話すユウカに一発の流れ弾が胸に当たり、吹っ飛ぶ。

 

「ッ‼︎ユウカッ‼︎」

 

気づいた時には体が動いていた。

ユウカに駆け寄り、銃弾が飛んでこない場所まで引きずり揺さぶる。

 

「痛ッッッいわね!もう‼︎」

 

 

「.........え?」

 

 

リンがものすごく気まずそうに話す。

 

「あー...先生。

言い忘れていましたが...」

 

 

 

「私たちはこれくらいじゃ死なないわよ?」

 

 

 

子供が撃たれたことに焦りすぎて気づかなかったが、確かによく見ると血は出ていない。

 

「私たちの頭上にある“ヘイロー”のおかげで銃弾はおろか、

戦車の砲弾なんか大したことはないです。

気絶はするかも(・・)しれませんが」

 

砲弾で気絶するかしないかだと?

もう理解の範疇を越えすぎて、こっちが気絶しそうだ。

しかも慣れてる様子なのが一番理解できない。

 

「我々と違い、一発の銃弾が命取りになる先生には、

戦闘指揮をおこなってもらいます」

 

待ちなさい...

君たちに前線を任せて指揮しろ?

冗談じゃない!いくら撃たれても死なないからって子供に

戦争なんかさせるわけにはいかない‼︎ 」

 

「戦争って...」

 

「先生!ですが...!」

 

我慢の限界だ。

義手の関節がカチリと鳴り、大きく息を吐く。

 

「アタシも前に出る」

 

「なに言ってるんですか!ダメです先生!」

 

一発も喰らわず(・・・・・・・)に一緒に前線で戦って指揮する。

それでいいでしょ」

 

「戦うって...

銃もないのに...」

 

()があれば、一緒に戦ってもいいんだね?」

 

腰に手をやり、引退してもなお片時も離れることがなかった

相棒(リボルバー)を抜く。

コルトパイソン5インチバレル。

そして左手で扱うためにスイングアウトは右側。

完全特注のリボルバー。

 

「先生が銃を...⁉︎」

 

全員信じられないという顔。

 

「そのセリフ、そっくりそのまま返すよ。

これでも渋々なんだ。

子供に戦わせるなんて、ましてや銃を握らせるのなんかさせたくないんだから」

 

人だけならまだしも、リボルバー一丁で銃弾も少ない状態で

戦車相手に一人は無謀すぎる。

──まさかまた銃を握ることになるなんて。

 

「先生...?」

 

「はぁ...先生が言っても聞かないタイプというのは分かりました。

なのでみなさん、全力で先生を守ってください」

 

「守るのはアタシの役割なんだけど...」

 

「い い か ら!いきますよ!」

 

なんだかなぁという気持ちを切り替え気合を入れる。

生徒たちを絶対無傷で終わらせるために。

 

 

 

「...戦闘、終了」

 

そこらじゅうに破片やら不良たちが転がってはいるが、

結果的に敵味方誰も怪我をしなかった。

否、させなかった。(・・・・・・)

三人の視界外からの攻撃を全て初手で無効化。

三人のリロードタイミングを計算し、弾幕が切れぬよう対処。

かつ不良たちの銃を特定、リロードタイミングを計算し

三人が移動しやすいタイミングも計算。

ユウカがタンク役なのでなるべく動きやすくなるよう援護。

ハスミは常に位置を変え続け、ユウカのサポート。

チナツは緊急時に備えユウカの近くでサポート。

不良たちには大変申し訳ないことをしたが。

 

「すごい戦いやすかった...」

 

「指揮がはいるとこんなにも違うんですね」

 

「誰も怪我をしない戦闘があるなんて.」

 

「お見事です、先生。

まさかこんなにもあっさりと余裕で勝ててしまうとは思いませんでした」

 

各々が感嘆の声を上げる。

複雑な気持ちを押し込めながら答える。

 

「伊達に先生やってないよ。

先生は今日からだけど」

 

「先生が戦えるのは分かりましたけど、どこでそんな技術を?

明らかにおかしいです!」

 

「ええ、私と違ってライフル弾でもないのに一人一発で沈めるなんて」

 

「いくらスピードローダーを使ってるとはいえ、リロードの速さも凄かったですし」

 

「...君たちが知らなくていい世界だよ」

 

あの世界(・・・・)は知らなくていい、知らないほうがいい。後悔するだけだから。

この質問から切り抜けるために、戦闘中にリンから教えてもらった情報の詳細を聞く。

 

「それで?

今回の騒動の犯人は誰なの?」

 

「今回の犯人の名前は狐坂ワカモ。

以前、百鬼夜行連合学院で停学になった後、

矯正局を脱走した生徒で、七囚人の一人です」

 

「狐坂ワカモ...」

 

名前を反復する。

七囚人というくらいだ。それなりのカリスマ性と戦闘能力があるに違いない。

でなければ、こんな人数を率いて騒動なんて起こらないはずだ。

 

「戦闘終盤には既にいなくなっていたと思われます」

 

「あきらかに弱体化したからね」

 

でも終わりじゃない。そんな気がする。

 

「よし、シャーレも奪還できたし、三人ともお疲れ様。

アタシとリンはこれから地下に行くからここでお別れだね」

 

「先生、私は上の階でやるべきことがあるので先に向かってていただけますか?」

 

「ん、了解」

 

「ですが先生、ホントに大丈夫でしょうか?

ワカモがただ襲撃してきただけとは思えません.」

 

「私も同感です!」

 

「もしかして地下にある“とある物”が狙い...?」

 

考えていたことが三人と同じだったことに驚きを隠せない。

この子達は賢い。

だからこそ銃なんて握ってほしくないのだが。

 

「まぁなんとかなるよ。

ほら安全なうちに、帰った帰った」

 

渋々従い帰る三人を横目に地下へと向かう。

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