Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
「対策委員会の皆、相談......というか
自分の椅子を対策委員会が集まる机まで持って行きながら話す。
腹が満たされ、いい感じに眠気が襲ってくる午後だが、作戦という単語が聞こえた瞬間に部室全体の空気が張り詰める。
「......作戦。カイザーのことですね?」
隣にいるワカモの言葉に首を縦に振る。
「そろそろ攻勢に転じようと思う」
まさか攻めに行こうとは誰も思ってなかったのか、部室にいる全員が少なからず目を丸くする。
「今までカイザーがアビドスに対してなにをしてきたかの調査は終わった。今度は奴らの根城を叩くための調査をする」
今まで防衛や情報収集のために行動してきたが、このまま続けても埒が開かない。
幸いなことにヒナから提供された情報のおかげで、砂漠のどこかにいるというのは分かっているが、奴らがどこにいるかの調査をしなければ動きようがない。
立ち上がり、地図をホワイトボードに投影し調査すべき範囲に赤丸を書き込んでいく。
赤丸をつけた四箇所。
基地として十分な立地と規模があり、部隊を存分に配置でき、なおかつ攻めにくい箇所。
そして自分が敵の目線ならここに拠点を置くと考えた場所。
「今回の作戦はあくまで調査。奴らの拠点を暴き、規模を調べ、こちらが有利に動けるように準備するためのね」
赤ペンのフタをカチッと音を立てて閉める。
「交戦は避ける。もしするのであれば最小限に、かつ静かに。これから行うのはアタシ達が確実に勝つための情報を持ち帰ることが、この作戦の最重要目標だ」
これから起こるのは戦争の一歩手前。
そのことに皆は黙る。
だが皆の目には静かに、しかし闘志が燻り始めたなか、ただ一人だけ静かに視線を落とした者がいた。
誰も、その小さな変化には気付かなかった。
「......ん、反撃の始まりだね」
シロコが力強く言う。
「その作戦、便利屋68も乗っていいわよね?」
「もちろん。これがシャーレから便利屋68への初の依頼になる」
地図上の四箇所に丸をつけたが、実際はその一つ一つの距離が遠い。
これを全て回るには時間と人数が足りないため、便利屋に依頼をしようとしていたが先に言われてしまった。
「なぁ先生、ウチらはどうすればいい?」
昼食後も居続けてくれたスミに対して。
「スミ達はシャーレの防衛をお願いしたい。偵察が失敗、もしくはそれすら関係無しに進軍された場合、一番狙われる可能性があるのはシャーレだ。スミ達にはアタシ達の帰る場所を守ってほしい」
「あいよ! ここはウチらが全力で守ってやるよ!」
「頼もしいよ」
スミが胸を張る。
流石は元ヘルメット団で現シャーレ防衛隊のリーダーだ。言葉の重みが違う。
「あなた様、私はどうすれば?」
ワカモの質問にすぐ答えられず少し考える。
正直、どうするか迷っているのだ。
ワカモの力量であればシャーレの防衛でも良いだろうし、単独で動いてもらっても良い。
だが今回は──
「......ワカモは便利屋と共に動いてほしい。人数の偏りが起きないために。お願いできる?」
「あなた様のお願いでしたら聞き入れましょう」
少しだけ建前である。本音は同じ建物内で過ごす仲間と、これを機に親睦を深めてもらいたい。
それを知ってか知らずかあっさりと受け入れるワカモ。
「偵察任務、すなわちステルスで行うためには
作戦準備における条件を聞いてカヨコは手を挙げる。
「先生、私ハンドガンしか持ってないんだけど」
「カヨコは確か......消音器を常時付けてたね。ならアシストをメインに立ち回って。メインウェポンを持つならそれでも良いけど、予備弾倉を多めに持つか別のハンドガンを持つかだね。そこはお好みで」
「分かった」
カヨコの問題を解決し、もう一つ条件を付け加える。
「それと近接格闘になった際の武器、つまりナイフ等の刃物も用意しておくこと。これからなにが起こるか分からない。準備はしすぎて困るものじゃないから徹底すること」
生きて帰るための準備を惜しむ理由はない。
「よし。皆なんとなく分かってるだろうけどチーム編成を伝える。
アタシと対策委員会でアルファチーム。
便利屋68とワカモでブラボーチーム。
スミ達シャーレ防衛隊はチャーリーチーム。
アヤネ、今までの経験をもとにドローンでアルファ、ブラボーの索敵兼連絡役をお願い」
皆が頷いた。
この子達のことだけでなくアタシも準備しなければ。
流石に
「アタシも装備見直すから、誰かおすすめのガンショップとか知らない?」
ならば聞けばいいのだ。ここには私よりも土地勘があり、なおかつ銃を握っている子達がいるのだから。いまだに銃を握らせるのは躊躇いがあるが......
嬉々として教えてくれると思っていたのだが、皆の反応を見るにそうではないらしい。
セリカが声を上げる。
「......ん? 待って? また先生も前線に行くの!?」
「今更!?」
散々一緒に戦ったうえに、チーム分けしたのにこれである。
「ちゃんとプレートキャリアつけるから。大丈夫、皆の足手纏いにはならないよ」
「そこは気にしてない」
「ソウデスカ......」
皆に返されシュンとなってしまった。
「はぁ......おすすめの店、後で教えるから」
「ありがとう、カヨコ」
そんなやりとりをしているとアルがまた険しい顔になる。
「......先生」
「なに?」
「絶対無茶しないで」
即答はできなかった。
ただ小さく頷いて
「......努力する」
そう言うしかなかった。
少し重い空気を誤魔化すようにまとめる。
「作戦決行は今日から二日後の朝6:30。集合地点はアビドス高等学校正門前。準備期間が短くて申し訳ないけど、それまで各自装備を整えておくこと。情報更新があればすぐ連絡する。質問は?」
全員首を横に振る。
「会議終了。各自自由にして」
一拍おいて椅子を引く音が鳴り、緊張感のあった部室がいつもの空気感に戻る。