Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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細かく書いてますが、間違ってたら教えてください。


作戦準備

「......ここがカヨコの勧めるガンショップ?」

 

「うん。店の見た目はこんなんだけど、品揃えとカスタムの腕は安心していいよ。私の愛銃(デモンズ・ロア)はここで買ってカスタムしたものだから」

 

 パンクな雰囲気を出したガンショップらしからぬ店構えに少したじろいでしまったが、カヨコの言う通り入ってみるとよく分かる。

 店の入り口付近に念入りにカスタムされた銃が何挺も壁に飾ってあった。

 

「こりゃあ凄いな......グリップの角度や細さがそれぞれ違う。体格に合わせたものだろうな......

 それにマガジンリリースボタンが延長かつアンビになってる......利き手を選ばないようカスタムしてある......それだけじゃない。ほぼ全てのパーツが入念に吟味されカスタム化されてる」

 

「へぇ? アンタ分かるのかい?」

 

 店の奥から右側頭部を刈り、肩や腕などに刺青をいれた女性が出てくる。

 

【挿絵表示】

 

「あなたは?」

 

「先生、この人がこの店の店長だよ」

 

「あたしは貞乃宮ナナイってんだ。よろしく......っとこっちの方がいいか」

 

「ありがとうございます。アタシは風見透子。」

 

 ナナイはアタシの右腕を確認し出した右手を引っ込め、左手を代わりに出したため握手を交わす。

 手を離すとナナイがアタシの目を覗き込む

 

「なぁ、アンタ。さっきの口振りから察するに、ただの一般人ってわけじゃないだろう? ヘイローが無いのに手に銃を握るやつ特有の硬さがあった。

 

 アンタ......何者だい?」

 

 カヨコの頭に手を置き、ナナイの目を真っ直ぐ見て言い放つ。

 

「──アタシはこの子達の先生だ。それ以上でも以下でもない」

 

 十数秒の沈黙ののち、ナナイは探るのをやめたか、事実だと取ったかは分からないが肩をすくめて謝った。

 

「気分を害して悪かった。今まで会った人の中でアンタがあまりにも──()()()に思えてさ」

 

「いえ、気にしないでください。キヴォトス(こっち)ではアタシは異端に近いでしょうから」

 

「敬語はよしてくれ。使ってもらえるような人じゃないからね。それで? 求めてるのは?」

 

 大袈裟に身振り手振りをするナナイは単刀直入に聞いてきた。

 

「火力が要る。それも静音性ありきで。かつ生き残るための正確性も要る。そういうのはある?」

 

 信用していないわけではないが、無関係のナナイを巻き込むのは気が引けるため、任務のことは話さないことにした。

 ナナイは数秒悩んでついてくるよう手招きする。

 ガンラックから一挺のAR(アサルトライフル)を取り、渡してくる。

 

「こいつはハニーバジャー。モデルによって使う弾薬が変わるんだが、こいつの場合は亜音速の.300Blackout弾を使う。アンタの言う火力、静音性、正確性はあるが......どうだ?」

 

 銃を構える。この系統の銃は過去に使用したことがあるため、操作自体は問題無いため悪くはないのだが、銃身が短いのが気になった。

 室内戦闘であれば問題ないが、今回の偵察任務は野外戦闘がメインになるはず。

 そうなると銃身が短いのは致命的になり得る。

 

「アンタ右腕怪我してるけど大丈夫か?」

 

「射撃するくらいなら大丈夫」

 

「ふぅん......ならいいけど」

 

 義手であることを悟らせないために誤魔化しつつ、ナナイに銃を返しフィードバックする。

 

「CQBなら決まりだが、今回は野外戦をメインに考えてる。先手を取るにはコイツの射程じゃ心許無い」

 

「ふむ......野外で長射程、かつ正確性と静音性、そして火力......」

 

 銃をガンラックに戻し、悩みながら移動していくナナイ。

 その後ろをついていく途中、カヨコが口を開く。

 

「先生、今ワクワクしてる?」

 

「どう、なんだろ......ワクワクしてるのかな......」

 

 銃は銃。あくまで自分の身を守るための道具だ。

 それを選ぶという行為に期待と興奮をしているかと問われると、正直言って分からない。

 分からないが、第三者目線でワクワクしてると見えるのであればそうなのだろう。

 

「不謹慎かな?」

 

「いいんじゃない? 私は先生のそういう顔が見れて良かったよ?」

 

 よくそんな言葉を恥ずかしげもなく言えるもんだと感嘆する。

 

「私見て回ってるから、終わったら声かけて」

 

 そういってカヨコは棚の裏に姿を消した。

 

「こいつはどうだ?」

 

 ナナイが先の銃よりも銃身の長いものを渡してくる。

 

「そいつはHK416。性能に関しちゃ折り紙付きだ。使用弾薬も5.56mmNATO弾だから手に入りやすいし、サプレッサーも付けられる」

 

 持ってみると先の銃(ハニーバジャー)より重量はあるが、長銃身でサプレッサーをつけられる。操作も容易。弾薬も普及したもののため問題は無い。

 

 銃を構えチャンバー内を確認しフォアードアシストを押す。セレクターの動きを指で確認しサイトを覗き込む。

 一連の動作を体が勝手に行っていた。

 

 これなら戦える、というのが触ってみて率直な感想だった。

 

「......それ無意識だったりするのか?」

 

「なんのこと?」

 

「アンタ、銃を握るたびにチャンバーチェックして、フォワードアシストを軽く叩いて確実にボルトを閉じてる。その動きをするのは戦場で何度も生き残ってきたヤツだが......どうやらそうらしいな」

 

「────」

 

 ──生き残ってきた。

 否、皆がアタシを生かしてくれた。

 確かに生きるために技術を、知識を身に付けてきたが、生き残れたのは皆のおかげだった。

 銃に視線を落とし、そう思う。

 

「......仲間が優秀だっただけだよ」

 

 独白のように零し、銃をナナイに渡す。

 

「メインはこれにする」

 

「あいよ。サプレッサー以外のアタッチメントは決まってるのか?」

 

「マウント付きホロサイトにマグニファイア。マグニファイアは横じゃなく下に倒すタイプにしてほしい。他はバーティカルグリップのショートタイプ、フラッシュライト付きのレーザーモジュールを付けてほしい」

 

「......なるほど、分かった。サブはどうする? 決まってるか?」

 

「サプレッサー対応の45口径の銃がいい」

 

 メインを案内するときと同じように悩みながら手招くナナイに着いていくと、ハンドガンがメインに飾られたガンラックが目の前に広がる。

 

「おすすめはGlock21、FNX-45、HK45タクティカル、サプ対応型M1911A1、M45A1の五挺だな。どれも.45 ACP弾を使うタイプだ」

 

 ナナイは指で示していく。

 

 最初に名前を挙げたGlock21を手に取り、構える。

 まず軽い。装弾数も13発と多い。

 ピカティニーレールがついていてアクセサリーも対応している。

 

 次はFNX-45。フルサイズなため重量があり、装弾数は先の銃Glock21より多く、15発。

 アイアンサイトが3ドットタイプで見やすく、アンビタイプで利き手を選ばない。

 これもレールがついているためライトやレーザーモジュールを付けられる。

 

 HK45タクティカル。装弾数は10発と先の二挺よりは少ない。

 これもアンビタイプでレールがある。

 メインウェポンのHK416と同会社なため操作性の感覚が近いのはとても大きい。

 

 M1911A1は言わずと知れたオートマチック拳銃だ。

 操作性や信頼性もあり堅牢な造りだが、装弾数が7発と先の三挺よりかなり少ない。

 カスタムすればレールも付けられるし、拡張マガジンに変更すれば装弾数の問題は解決できる。

 

 最後はM45A1。M1911A1の後継モデルの一つ。

 装弾数の問題は変わらないが、最初からレールがついている。

 そしてM1911A1の課題点であるアイアンサイトの視認性も上がり、サムセーフティのアンビ化もされた。

 

 どれも操作性や信頼性はあるし魅力もある。

 だが今回の任務に適しているのはFNX-45だろう。

 アタシ一人の任務であれば、名銃と言われるM1911A1や、その後継のM45A1を選ぶ。

 だが今回はチームでの行動になる。

 アタシの好みだけでメンバーの命を危険にさらす可能性を持ち込むわけにはいかない。

 

「決まったみたいだな」

 

「ああ、こいつにする」

 

 ナナイにFNX-45を渡す。

 

「あたしの勝手なイメージだけど、アンタは懐古趣味だと思ってた」

 

「今回は一人じゃないから」

 

「そっか」

 

 それからプレートキャリアや各アタッチメントなど装備一式を選んでいった。

 

 カウンターに戻り光学機器の選定をしていった。

 

「このサイトはどうだ?」

 

「悪くはないけど、マグニファイアの方が見づらい」

 

「これは?」

 

「視野が広がったけどサイトと合わない」

 

 というやりとりを三〜四回ほど行った末にようやく満足のいくものになった。

 大人のカードで会計を終えた頃にはカヨコは既に隣にいた。

 

「決まったみたいだね」

 

「うん、皆の足を引っ張らないような装備にしたから安心して」

 

「だから、そこは気にしてないんだってば......この後はどうするの?」

 

「一先ずシャーレに戻ろうか。装備のチェックとかしておきたいから」

 

「分かった。重いでしょ? 荷物半分持つよ」

 

「ありがとう」

 

 カヨコがカウンターから荷物を半分取り、入口に歩いていく。

 

「透子先生」

 

 残った荷物を取ると、ナナイはカウンターに身を預けたまま呼び止める。

 

「銃のことでも関係なくても困ったらあたしの店に来なよ。アンタなら大歓迎だ」

 

「うん。装備、ありがとう」

 

「気をつけて行ってきな」

 

 頷き出口に向かう。

 

 ──────

 

 シャーレに着いた頃には空はもう青紫がかっていた。

 買った荷物を休憩室の机の上に置くと、カヨコが肩を回す。

 

「流石に重かった......よく平然としてられるね」

 

「カヨコが半分持ってくれたからね。このくらいの重さなら余裕だよ」

 

 カヨコを労うためココアを淹れたマグカップを渡す。

 

「気を使わなくていいのに......でも、ありがと」

 

「なに、気にしなくていいよ」

 

 カヨコのついでに淹れたココアを飲む。

 甘い。脳味噌は糖分を必要としていたのか、ココアの甘みが染み渡る。

 ピッという音が鳴り休憩室のドアが開くとワカモが荷物を持って入ってくる。

 

「......あら? あなた様にカヨコさんも......戻っていらしたのですね」

 

「うん、今さっきね」

「う、うん」

 

 ワカモが涼しい顔で入ってきたのが意外だったのか、辿々しい反応のカヨコ。

 

「......ねぇ先生。なんでワカモが普通にいるの?」

 

「カヨコさん、なにか不満でも?」

 

「そういうわけじゃないけど......だってここ先生の部屋でしょ?」

 

「あれ、言ってなかったっけ? ワカモはアタシのバディだよ」

 

「答えになってないし......はぁ......まぁいいか」

 

 思考を放棄したのか、カヨコはソファに凭れ掛かりながらココアを飲んだ。

 

 それなりに休憩できたため購入した装備を袋や箱から取り出していく。

 今回の任務の場所は砂漠であるためデザート迷彩を基調にした装備にしてある。そして全てフィッテング済みな上にポーチ類は店で取り付けてあるため、後は着るだけにしておいた。

 肝心なのは銃火器。弾はシャーレにあるためそこはいいのだが、アタッチメントの配置や調整をしなくてはならない。

 その準備を見ていたカヨコが姿勢を戻し口を開く。

 

「先生って右腕怪我してるんだよね?」

 

「まぁ、そうだね」

 

「お店で銃構えてたけど......もしかして怪我じゃない?」

 

 カヨコの核心を突いた言葉にワカモが反応を示し視線を送ってくる。

 その視線に応えるように目を閉じる。

 

「......半分正解で半分外れ、かな」

 

 自然と左手は服越しに右腕の付け根に触れていた。

 

「半分って......どういうこと?」

 

 アームホルダーを取りスーツのジャケットを脱ぐ。

 シャツの袖口のボタンを外し、カシュっという音と共に義手のロックを解除する。

 

 右の袖がだらりと力なく垂れる。

 

「............」

 

「これが半分って言った理由」

 

 義手を机の上に置くと、カヨコの視線は右の袖から机に向く。

 

「............どうして、隠してたの?」

 

 少しの静寂の後、聞こえたカヨコの声は震えていた。

 そしてワカモは目を伏せる。

 

「────これは代償なんだ」

 

 最初に見抜いたワカモにすら言わなかった理由の一つを開示する。

 

「代償......」

「代、償......?」

 

「そう。アタシが生き残った代償」

 

「なにを、言って......」

 

 

 

 生き残った? 

 

 

 

 そんな優しいものじゃないだろう? 

 

 

 

「違うな。これは──

 

 アタシが大事な人を殺した代償だ」

 

 

 

 

 

 

 

 銃声

 

 引き千切れる音

 

 床には血溜まり

 

 ──アタシが殿をやる──

 

 ──私がやります──

 

 ──足手纏いはもう嫌なんです!! ──

 

 ──安達香奈、お前に──

 

 ──先輩、後は任せました──

 

 

 

 

 

 

 

「......こんなものを見せたくなかったんだ」

 

 右の袖を掴む。

 

「先生なんて呼ばれちゃいるけど本来のアタシは......君達の前に立つ資格すら無いんだ。

 

 ......アタシは、君達が思ってるほど綺麗じゃない」

 

 ワカモは目を逸らしギュッと震えた手で裾を掴み、カヨコは両手で持ったマグカップが震えていた。

 

「抱えすぎだよ......」

 

 眉間に皺を寄せ振り絞ったであろうカヨコの声は震え、掠れていた。

 

 その表情をしてほしくなかった。

 心配なんかしてほしくない。

 同情も要らない。

 

 この怪我は名誉なんて立派なものではないのだから。

 

 机から義手を取り、接続する。

 

「このことは誰にも言わないでほしい」

 

「どうして......?」

 

 反射的にカヨコが顔を上げる。

 

「これはアタシが背負わなきゃいけないんだ」

 

 痛覚が無いはずの右腕がジクジク痛む。

 ふと窓に目をやると水滴がついていた。

 

 確かあの日も雨が降っていた。

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