Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
AM6:15
作戦決行日。
ほんの少し肌寒いなか、二台のハンヴィーは校門前に並ぶ。
その内の一台の荷台に置いていた自分の銃のチェックをする。
現役の頃から体に染みついた動き。
マガジンポーチを、視覚と触覚で確認する。
メイン、サブ共にプレートキャリアに三つ、腰に二つ、装填に一つ。全てにほぼ同じ重さを感じる。
次に
チャージングハンドルを完全に引き初弾を送り込んだ後に、数ミリだけ引き
ハンドルを戻しフォアードアシストを押して確実に閉じ、ダストカバーを閉じる。
親指でセレクターに触れ、safeになっていることを認める。
マガジン、薬室チェック、セーフティ。
ナイフ、止血帯、IFAK、どれもすぐ取れる場所にある。
無線機はオンになっていることを確認し耳元で指を鳴らす。ノイズは無い。
装備は全て問題無し。
荷台には燃料、タイヤのスペア、工具箱、水と食料、弾薬箱を音が鳴らないようにラッシングしてある。
「......準備はできた」
あとは無事に帰ってくるだけだ。
AM6:25
皆がぞろぞろと校門に集まってくる。
肩にはライフルを引っさげ腰や脚にハンドガン。だがそれとは釣り合わない幼い顔立ち。
──ああ、アタシはこの子達を戦場に連れていくのか。
あれだけ戦わせることを拒んでいたのに、気付けば先頭に立ち彼女たちを連れて戦場へ行こうとしている自分に
「最低だな......」
吐き捨てるように呟いた。
そんなアタシの気持ちなど露知らず、皆の目には覚悟が現れていた。
「便利屋68、全員揃ってるわ」
普段と変わらないようでいて、普段より圧がある便利屋。
「対策委員会、こちらも全員揃ってます!」
相変わらずホシノとシロコの間にはまだ蟠りが残ったままだが、装備はしっかりとしていた。
「あなた様、こちらは準備出来ております」
ワカモが静かに隣に立つ。
作戦に支障をきたすことのないよう覚悟を固めるため長く息を吐く。
ここから先、私情を挟めば誰かを死なすことになる。
「よし。全員、最終装備確認」
銃の確認音が、早朝の校門前に響く。
マガジンの底を叩く音。
ボルトを引く時の金属音。
セーフティ切り替えの音。
AM6:30
ヘルメットをかぶる。
「全員、行くぞ」
──────
朝日を浴びながらハンヴィーをしばらく走らせていると、車内や無線機からは和気藹々とした会話が広がっていた。
そんな中、セリカが後部座席から少し身を乗り出し聞いてくる。
「そういえば先生、怪我治ったの?」
「うん。傷は塞がったよ」
ヘルメットを上へずらし前髪を払って見せると、セリカは小さくため息を吐く。
「おでこの傷じゃなくて。腕だよ」
「そっちか」
思わず苦笑しながらヘルメットを戻す。
そう。今回の任務はアームホルダーを外している。
その理由は二つ。
一つ目、ライフルをまともに使えなくなるから。
二つ目、相手の実力が分からない以上、片腕を封じたままでこの子達を守れる保証が無いから。
「大丈夫だよ。ほら、この通り」
セリカに、手を握ったり開いたりして見せる。
グローブを着けているから分かりづらいとは思うが、それでもセリカは少し表情を緩めた。
「これで先生も万全な状態ってわけだね」
「まぁね」
『ならこの作戦、成功したも同然ね!』
「そうかなぁ」
アルの信頼が感じ取れる声音に苦笑しつつ、エンジンや走行中の音にかき消してもらえるよう小声で零す。
「......成功させなきゃな」
『なにか言った?』
「ううん、なんでも。さぁ皆、ポイントガンマまでもう少しだ」
『分かったわ』
「了解!」
少しして車内や無線機から声が途切れていく。それぞれの気持ちを抱えたまま、それでも今向けるべき場所に意識を向け始めたのだろう。
エンジンの心地良い音と、タイヤが砂漠を踏み締めていく音だけが残る。
『先生、ポイントガンマに到着です!』
しばらく走るとアロナが教えてくれたため、アロナに感謝を伝える。
ハンヴィーを一時停止させると、左隣に便利屋とワカモが乗るハンヴィーが止まる。
「ポイントガンマ到着。ここからは二手に分かれる。ブラボーチーム、そっちは任せたよ」
ブラボーチーム、もとい便利屋68とワカモに目を向ける。ハンドルを握ったまま頷くカヨコ、その隣に座り自信満々な表情のアル。
後ろにはいつもより緊張したハルカ、逆にいつも通りのムツキ、静かにアタシと目を合わせるワカモ。
「ええ、任せておきなさい。だから先生......怪我するんじゃないわよ?」
「そっちもね」
アル達は頷き目標地点へと走り去るのを見送る。
「アタシ達も行こう」