Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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お待たせしました


死の匂い

「寒すぎ......」

 

 朝の砂漠は冷え込む。

 アルは体の震えを抑えながら恨み言のように零す。

 

「コート着たらいいじゃん......」

 

 隣で運転しているカヨコが正論を言う。

 

「ダメよ......このコートは羽織ってこそ意味があるんだから......」

 

「じゃあ我慢して」

 

「うっ......」

 

 ぐうの音も出ない。

 そこへ、にんまりと笑ってムツキが二人の座席の間に顔を挟む。

 

「じゃあ何か燃やす?」

 

「ダメに決まってるでしょ......」

 

 寒さに震えるアルと、それを後ろから心配そうに見つめるハルカ。

 それを見たワカモはおもむろに背嚢から断熱シートを取り出し、ハルカに渡す。

 

「これをアルさんに」

 

「えっ、あ、ああ、ありがとうございますっ」

 

 ムツキと入れ替わりで、ハルカは座席の間からアルにシートを渡す。

 

「アル様っ、これを使ってください!」

 

「あら......ありがとう、ハルカ。助かるわ」

 

「ふ、ふへへ......」

 

 そのやりとりを見たワカモは小さく息を吐く。

 ハルカは嬉しそうな顔のまま、ワカモに振り向く。

 

「あ、あの、ありがとうございますっ」

 

「いえ、お気になさらず」

 

「ワカモちゃんって、意外と世話焼きだったりする?」

 

「......ちゃん?」

 

 ムツキにちゃん付けで呼ばれて拍子抜けした。

 

「......まぁ、身近に風見透子(危なっかしい人)がいますので」

 

 咳払いをして誤魔化す。

 すると無線機からアヤネの声が入る。

 

『ブラボーチームの皆さん、一つ目の目標地点付近ですので準備をお願いします』

 

「了解。車止めるよ」

 

 カヨコがハンヴィーを緩やかに停車させる。

 全員が降りると、ハンヴィーの天板に繋いでいたアヤネのドローンも離陸する。

 アルは周囲を見渡し、表情を引き締める

 

「──さて、任務開始(ミッションスタート)よ」

 

 ──────

 

「ここには無さそうですねぇ〜」

 

 ノノミが少し残念そうに呟く。

 

「外れたかぁ。二箇所目行って無かったら、ブラボーチームの方だね」

 

 建物自体を覆うほどの光学迷彩でも張ってあるかと思いサーモで見てみる。

 しかし眼前に広がるのは黄金の砂だけ。

 それらしいものは見当たらない。

 アヤネのドローンで高高度からも見てもらったが、やはり無かった。

 ブラボーチームに無線を繋ぎ現状を伝える。

 

「ブラボーチーム、こちらアルファチームの透子だ。一つ目の地点には見当たらなかった。次の地点に向かう。オーバー」

 

 応答したのはカヨコだった。

 

『こちらブラボーチームのカヨコ。了解。こっちも無かったから移動するね』

 

「分かった。もし見つけたらすぐ知らせて。オーバー」

 

 無線を切る。

 

「よし、移動しよう。乗って」

 

「ん、分かった」

「「はーい」♪」

「......うん」

 

 ぞろぞろとハンヴィーに乗り込んでいく対策委員会。

 

 出来る事なら二箇所目にあると助かるのだが。そんなことを願いながら再びハンヴィーを走らせる。

 

 二つ目の調査ポイントに向かうなか、バックミラーでホシノを見る。

 心ここにあらずとまではいかない。だが、何かを考え込むかのように俯いている。

 明らかに集中できていない。

 

 ──まずいな。

 

 いくら戦闘を避けるよう注意しても、一人があの状態では壊滅する可能性が高くなる。

 かと言ってシロコが一人でアタシに相談してきた以上、今ここで声をかけるわけにもいかない。

 

『先生、目標地点付近です』

 

 アヤネから通信が入る。

 考えを巡らせている間に二箇所目の付近に来てしまった。

 

「......分かった」

 

 ハンヴィーを停車させ、銃を取って降りる。

 

「全員、周囲の警戒を」

 

 ホシノの問題は解消できていない。だが、そっちに思考を割けば作戦の失敗する確率は格段に跳ね上がる。アタシ一人ならまだいい。

 だけどアタシのせいで失敗するのは認められない。

 ──認めたくない。

 

 ハンヴィーから少し歩き、双眼鏡で奴らの基地があると思わしき場所を捜索する。

 すると、アヤネから通信入る。

 

『先生! 先生から見て二時方向に建物を確認しました!』

 

 素早く双眼鏡を向け倍率を上げていくと、そこには確かに黒い建物があった。

 が、奴らの基地かどうかは判別できそうにない。

 

「もう少し近くに寄ってみよう」

 

 少しだけ距離を縮め双眼鏡を覗く。

 アタシの周りに対策委員会が集まる。

 

 その建物の黒い外壁には白のタコマーク。その隣には〈KAISER〉

 

 ビンゴ。

 

 位置は特定した。次は侵入経路と兵士の巡回ルートだ。

 巡回ルートには空白のタイミングがあるはず。そこを見つけさえすれば侵入の糸口が掴める。

 しかし今回は団体行動だ。子供達を無事に侵入させたいがおそらく難しいだろう。

 

 どうする。

 

 思案している時だった。

 

 ふと、違和感を覚える。

 巡回兵の人数が少ない。

 基本はツーマンセルで動くはずなのに一人だけで動いている。

 巡回だけではない。

 警備にあたっている兵も一人のみ。

 

 

 

 ぞわり

 

 

 

 全身の筋肉が少し強張る。

 この感覚。

 前にも味わったことがある。

 

 ──死だ。

 

 アタシ達は今、蟻地獄の中にいる。

 

「......全員、戦闘体制」

 

「ッ、了解!」

 

 銃を握りなおす。

 

『先生ッ! 周囲50mに敵兵を確認しました! 囲まれてます!!』

 

 アヤネの声からは焦りと恐怖が聞き取れた。

 敵は無闇に突っ込んで来ず、ジリジリと詰めてきている。

 

 まるで追い込み漁だな。

 

「一点突破で行く。全員ハンヴィーまで戻るぞ」

 

 息を長く吐き、そして吸う。

 

「Move!!」

 

 全員走り出す。

 複数の敵の姿を視認。

 前線はホシノが盾を構えてくれているため、他はホシノのカバー。

 アタシは銃を構えたまま走る。

 動きながら撃つ。

 頭部に一発。

 敵兵は崩れ落ちる。

 

 数回繰り返すと空間が生まれた。

 

 走り抜けようとした。

 視界の端でキラリと何かが光る。

 戦場、それも砂漠で光を反射するものは限られる。

 ──スコープ。

 

「ホシノッ」

 

 撃つ時間無い。

 そう判断し、右腕でホシノを突き飛ばす。

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