Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
ガシャンッ
肘関節を撃ち抜かれ、義手の前腕が吹っ飛び転がっていく。
「ッ......」
崩れかけた姿勢をなんとか立て直し、左腕と体全体を使って銃を構え直す。
そして狙撃手のいるであろう場所へ弾を撃ち込む。
「っ、せんせ.......」
「動けッ! 止まるなッ! 全員下がるぞッ!」
互いにカバーしながら走り抜け、砂漠の自然にできた凹凸を使い身を隠す。
ホシノは放心に近い状態で擦り寄る。
「せ、せんせい......うでが......」
撃ち抜かれた肘からは血液ではなく、バチッバチッと小さな火花が散っていた。
「先生......どういうこと......怪我じゃなかったの......?」
セリカの震える声が耳朶を打つ。
他の皆も困惑を顔に出している。
「......話は
このままではこの子達を守れない。
無線機を繋ぐ。
「ブラボーチーム、こちらアルファチームの透子だ。
作戦は失敗。繰り返す、作戦は失敗。今すぐ撤退しろ。オーバー」
すぐにアルの困惑の声が聞こえてくる。
後ろからは銃弾の嵐。
『ちょっ、どういうこと!? 作戦失敗って何!? そっちで何があったのよ!!』
「帰ってから話す。とりあえず撤退するんだ」
『でもっ......』
「アル」
『ッ、了解......』
無線が切れる。
──────
ブラボーチーム視点
エンジンの駆動音がよく聞こえる。
「......社長」
「っ......」
アルはハンヴィーのダッシュボードに凭れる。
後ろからワカモの怒気と焦燥を孕んだ声が飛ぶ。
「なにしてるんですか。早く車を先生のところへ走らせてください」
「でも撤退しろって......」
ムツキを睨む
「命より大事な命令があると言いたいんですか」
アルはハッと目を見開き、体を起こす。
「カヨコ、出して。アヤネさん、ナビと状況の説明お願い」
「......分かった」
「はいっ」
ハンヴィーが走り出す。
「あの人には聞きたいことが沢山あるんだから」
──────
「全員聞いてたな。撤退するぞ。」
左腕で弾倉を抜き、ダンプポーチにぶち込む。
代わりに新しい弾倉を差し込み、底を叩く。
運良く近くに転がっていた撃ち抜かれた右腕を拾う。
──どこかで必要になる。
ダンプポーチに入れる。
右腕が使えない以上、肩付けでの射撃は難しい。
レーザーモジュールを常時オンにして、ストックを腕と脇腹で固定して腰撃ちの姿勢で動く。
どうにかこの子達だけでも無事に帰さなければ。
「アヤネ、ハンヴィーまでの距離は?」
『え、えっと......直線距離で約600mです!』
「よし、アタシが殿を務める。全員、合図を出したら全力で走れ」
──先輩はまたそうやって自分を犠牲にするんだ。変わらないね。
香奈の呆れた声が聞こえた気がした時、セリカに袖を強く掴まれる。
「バカ言わないでよ! そんな状態で戦えるわけ無いじゃん!!」
「戦える戦えないの話じゃない。誰かがやらなきゃいけないんだ」
アタシの冷静を通り越し冷徹さを感じる言葉に、戦々恐々とした表情でセリカは続ける。
「先生は一発でも食らったら死んじゃうんだよ!?」
「それがなんだ?」
「っ......先生......なにを言って......」
「アタシがいた世界では当然のことだ」
またあの記憶が蘇る。
雨
赤に染まる水溜り
消えない炎
──あのこたちを
──まもって
「ダメ」
「シロコ先輩......?」
否定されたその言葉に苛立ちを覚える。
「シロコ、感情だけでどうにかできる状況じゃ......」
それでもシロコは淡々と。
「先生は全員で帰るって言った」
言った。
確かに言った。
「嘘だったの?」
「......嘘じゃ、ない......っ」
「なら皆で助け合えばいい」
その時、無線からシロコを褒める場違いな声が響く。
『よく言ったわ! 砂狼シロコ!! 今そっちに向かってるから待ってなさい!』
「アル、なにしてるんだ! 撤退しろと言ったはずだぞ!」
『うるっさいわね! 私との約束も守れないくせに、私に指図するんじゃないわよ!!』
背後から近付いてきた敵兵が胴体を撃ち抜かれ転がっていく。
『カバーしてあげるからさっさと撤退しなさい。説教でもなんでも後で聞いてあげるから』
アルの声からは先ほどの怒気は消え、冷静な声に変わる。
息を吐く。
「......皆、カバーをお願いしてもいい?」
顔を見合わせてすぐ頷いてくれた。
「......ありがとう」
ポーチからフラッシュバンを取り出す。
「カウントダウン後にフラッシュバンを投げ込む。その間に急いで行こう」
皆が銃を握りなおす。それに釣られるようにフラッシュバンを握りなおす。