Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
目を開けたらリンが目の前にいた。
「...はい。分かりました。
サンクトゥムタワーの制御権の確保を確認しました」
どうやらちゃんと権限の移行ができたらしい。
今度アロナに会うときに何か持って行ってあげよう。
「これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理が進められますね」
ようやくリンが安心した表情をしていた。
「本当にお疲れさまでした。先生。
キヴォトスの混乱を防いでくれたこと、深く感謝します」
「や、先生として出来ることをしたまでだよ。
だから頭を上げて、リン」
深々と頭を下げるリンに対し、焦りながら答えた。
「それよりもシャーレ付近で暴れてた不良たちはどうするの?
放置ってわけにもいかないだろうし」
「ああ、それに関しては問題ありません。
こちらで追跡して討伐いたしますので、ご心配なく」
討伐て...モンスターじゃないんだから...
退学、停学中の生徒が暴れていたから、まぁ...ある意味モンスターか?
とはいえ、あの子たちがこのままだと同じことを繰り返すことになる。
行く場所もない。金さえ払えば仕事をする。
そういった子たちを何度も見てきた。
そしてその末路は......
(......じゃあシャーレに配属すればいいのでは?)
「ん~...問題ないんだったら、その子たちをシャーレに配属させたいんだけど」
「......先生、正気ですか?
彼女らは自ら問題を起こし、反省もせず、同じことを繰り返す輩ですよ?」
きっとそれは教えてくれる人が、正してくれる人がいなかったからだ。
ならそれをすればいい。
幸いなことに、アタシは"先生"なのだから。
リンは眉間の皺を揉み、うーんと唸ったかと思いきや
「はぁ...分かりました。
先生は言っても聞かないのは、戦闘時に分かりましたから。
では、その手続きをするためにもシャーレを案内しますね」
問題は無いようだ。
すごい不服そうにしながら。
「ここがメインロビーです。
今まで空っぽでしたが、ようやく主人を迎え入れることができました」
"空室、近日始業予定"と書かれた紙を取り外し、中に入る。
「ここが部室になります。
ここでお仕事を始めるといいでしょう」
「仕事って結局はなにをすればいいの?」
シャーレの権限は教えてもらったが、肝心の仕事内容は不明のままだ。
「シャーレは、権限はあるものの、目標がない組織なんです。
これといって特になにかしなきゃいけない、ということもありません」
(それは...大丈夫なのだろうか?)
「キヴォトスのどんな学園の自治国も出入り自由、
所属関係なしに先生の希望する生徒たちを部員として加入させることも可能...。
面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、
その部分に関しては生徒会長も特に触れていませんでした」
「じゃあ基本的にやることは自分で見つけるってことね」
「はい。
先生がやりたいことをやってください。
本人に聞いてみたくても、行方不明ですし。
私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、
キヴォトスのあちこちで起こる問題に対応できるほどの余力はありません」
「どこにいっちゃったんだろうね...」
「まったくです。
今も生徒会に寄せられる苦情の数々。
支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど...」
あげればきりがない。
まったく子供が過労なんて笑えないぞ。
「もしかしたら時間が有り余ってるシャーレであれば、
この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね」
それから関連書類をたくさん渡され、読むも読まないも全ては先生の自由ですので。
といってリンは立ち去った。
今はまだやることがないので、余った時間を山のように積み上げられた書類を読むのに使うことにした。
「これは...骨が折れそうだな...」
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ホッチキス止めになった書類を何冊か読んでいると、
カラカラとドアを開け部室にユウカ、ハスミ、チナツが入ってくる。
「あれ?帰ってなかったの?」
「あのまま帰れるわけないじゃないですか!
感謝の言葉も伝えていませんし!」
うんうん、とハスミとチナツが頷く。
なんて律儀な子達だ。
こちらはやれることをしただけなのに。
「別に気にしなくていいよ。
先生としてやっただけだし、なんなら、
感謝するのはこちらだよ。
本当にありがとう。助かった」
状況を把握するためにわざわざ連邦生徒会まで足を運んだのに、
リンに言いくるめられ見ず知らずの大人を護衛する羽目になった。
どう考えてもこちらが感謝する立場である。
「そうですか...?
まぁ私としても?先生と一緒に戦えたことは...
い、いえ!それよりも、お疲れ様でした。
先生!
この一件で先生の活躍はキヴォトス全域に広がることでしょう」
「では先生、いずれトリニティにお越しください。」
「ゲヘナにもよろしくお願いしますね」
「ミレニアムにもですよ!先生!」
「うん、必ず行くから」
そう言ってシャーレの入り口まで彼女たちを見送った。
長く忙しい一日を終え、もう一つの人生が始まりを迎えた。
「......先生、か」
時計の音だけが部屋に響く。
今頃後輩がいたら、腹抱えて大笑いしてるだろうな。
『先輩が?先生?アッハハハハ!
絶ッ対似合わない!
......でも向いてるかもね』