Mission : Protect Their Youth.   作:晴沙萪

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責任

窓口の生徒にIDカードを見せる。

「失礼、アタシはシャーレの風見透子なんだけど...」

 

「ああ、貴女がシャーレの透子先生ですね。

話は伺ってますので、通って大丈夫ですよ。

付き添いの方も大丈夫ですよ」

 

「どうもありがとう」

 

会釈をし中に入る。

局の中は思ったよりも静かで清潔感が強く、 二人の足音がよく響く。

まるでそれ以外の音が禁止されているかのように感じる。

それに、どこからか監視されているような感覚もある。

当然といえば当然か。キヴォトスに来たばかりの大人が不良たちに会いに来ているのだから、

不審がられてもおかしくはない。

 

「先生、お待ちしておりました。

こちらです」

 

看守がドアの前で待っていてくれた。

案内され扉の前に立ち深呼吸をしていると、隣にいるユウカも緊張しているようでアタシと同じように深呼吸していた。

ユウカを安心させるため頭を撫で、部屋に入る。

部屋にはカタカタヘルメット団(名前は戦闘時は知らなかったが、後にリンが教えてくれた)の面々がパイプ椅子に座り、全員品定めをするように見てくる。

不意に真ん中に座るおそらくリーダーであろう子が口を開く。

 

「アンタがウチらを引き取るって言ってたシャーレの先生?」

 

「ああ。

アタシが一人残らず引き取る、連邦捜査部シャーレの風見透子だ」

 

「どんな奴がくると思ったら...アンタ、バカだろ?

ウチらみたいなの引き取って何がしたいの?

金さえ払えば依頼をこなすしか能のない社会不適合者だぞ?そんなウチらに何をさせようっての?」

 

「ちょっとアンタ達ねぇ...」

 

「ユウカ、いい。大丈夫」

 

「っ...分かりました」

 

笑いが起こるなかユウカが怒りグループのリーダーらしき子に食ってかかろうとしたが、手で制す。

 

「君達がアタシをなんと罵ろうが構わない。

君達からしたら、頭お花畑で、バカで現実を見ない夢見女だろうから」

 

いや、そこまで言っちゃいねぇよ...とリーダーがボソッと言う。

 

「君達が自分自身をそういう目線で見てしまうのは分かる。

分かった上で一つ言いたい。

君達は能無しでも社会不適合者でもなんでもない」

 

アタシの否定の言葉に怒りや不満の声を上げるヘルメット団。

 

「じゃあなんだよ?ウチらがしてきたことはなんだって言うんだよ?」

 

「君達はただ間違い続けているだけだ」

 

ヘルメット団の全員の顔を、目を見る。

 

「教えてくれる、正してくれる大人に出会えなかったから、この道を進んできてしまった。

だからアタシが君達を、教え、正し、導く」

 

“間違いが間違いである”ことを教え、

“その間違い”を正し、

“正しい道に戻れる”ように導く。

それが大人であり、先生の責務と責任である。

 

彼女達の心に響くかは分からない。

だからと言って、誠意を欠いていいわけがない。

 

「何がしたい、か...。

きっと言葉だけじゃ理解できないと思う。

アタシだって君たちの立場だったらそう思う。」

 

「だったら...」

 

「一度でいい!

たった一度だけ!

アタシに、君達を“教え正し導く責任”を背負わせてくれないだろうか‼︎

ダメだと思ったら見限って構わない!

だから...!」

 

「先生...」

 

誠心誠意頭を下げる。

ユウカだけでなく、ヘルメット団全員に呆れられているだろう。

こんな者たちに頭を下げるなんて、と。

でも、そうでもしなきゃ彼女達の信用を得ることはできない。

そもそもこの程度で得られるとは思っちゃいない。

 

 

 

長い長い沈黙が流れる。

ヒソヒソ話す声。

 

 

 

もうダメかと思ったとき。

 

「.........わかった」

 

リーダーが口を開いた。

 

「‼︎」

 

「ウチらの負けだ。

...正直驚いたよ。

今までの大人は自分の責任を取るために頭を下げてきた。

でも先生、アンタは違った。

ウチらの責任を取るために頭を下げた。

メリットも何もないのに、どうしてそこまでする?」

 

姿勢を正し、目を見る。

これは建前じゃなく、本音。

 

「アタシは、これ以上子供が道を踏み外すのを黙って見たくない。

踏み外したのは本人だろうが、その責任を大人が放置していいはずがない。

子供が責任を取る世界は間違ってる。

 

 

 

...あとメリットならあるぜ」

 

少しニヤッとして

 

「アタシの自己満だ」

 

ヘルメット団のみんなも、各々が納得した様子だった。

 

「ハハハッ!

アンタが底抜けにお人好しって分かったよ。

いいぜ、ウチらはシャーレについて行く。

 

 

...これからよろしくお願いします。

シャーレの透子先生」

 

ヘルメット団のみんなが頭を下げてくれた。

 

「...っ!」

 

「...ありがとう。

これからよろしく」

 

リーダーと強く堅い握手をする。

 

「改めて。

アタシは連邦捜査部シャーレの先生、

風見透子だ。

君らのことは責任を持って、教え正し導くことを約束する」

 

「ウチはカタカタヘルメット団のリーダー、

白峰スミです。

これから、よろしくお願いします」

 

 

<ユウカの思考>

 

正直、何考えてるか分からない先生だと思った。

右腕骨折してるし、かと思ったら指揮はすごいわ、戦闘できるわで、もう訳が分からない。

でも一番分からないのは、私たち生徒を見るときの目。特に私たちが銃を持つとき。なんであんなに憂いを帯びているのか。

少しだけど、おそらく過去を思い出しているとき先生は悔しそうな顔をする。

この人は過去、どんな景色を見てきたの?

どんな経験をしてきたの?

教えてほしいのに、話してほしいのに先生は何かを言いかけて私を拒絶した。

自分のことは何も開示しないけど生徒想いの良い先生。

 

今回だって訳が分からなかった。

ただの不良なのに、シャーレで引き取るなんて。

何も学ばない彼女たちを引き取ってシャーレにとって、先生にとってなんのメリットがあるのか分からなかった。

話によるとシャーレは何をするにも自由だから生徒会の手伝いもするって。そんなタイパの悪いことまでするなんて。

すると、先生は自己満だと言った。

嘘。自己満だけであんな顔にはならない。あんな辛そうな顔には。

でもリーダーの笑い声で先生の顔が晴れた瞬間、私は息を呑んでしまった。

嬉しそうな表情、いや嬉しいだけでは済まないくらいの表情。

ああ、本当にこの人は生徒第一に動く先生なんだと認めざるを得なかった。

 

...でも、だからこそ恐ろしい。

生徒になにかあったら、守れなかったらこの人は壊れてしまうんじゃないかって。




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