Mission : Protect Their Youth. 作:晴沙萪
「ここがみんなの居住スペース。
アタシは二階の部室と予備の部屋だけで事足りるし、
まったく使わないからあげる。
これから好きなように改造してって。
あ!だからって壁ぶち抜くとかやめてよ!?
一応シャーレは火気厳禁だから!」
ユウカとヘルメット団を連れて帰宅して早々、
シャーレの一階の階段から半分を丸々みんなに明け渡す。
部室は2階にあるし、使ってもせいぜい部室込みで二部屋くらい。
どうせ使わないなら、みんなに使ってもらったほうが部屋も嬉しいだろう。
丸々一階を渡してもいいけど、渡したらユウカやリンから怒られそうだからやめた。
...だってどうせ使わないんだもん。
これで住の問題は解決したと思っていると、ヘルメット団のリーダー、スミが困惑した声で言う。
「なぁ、先生。
確かにアンタは責任を取るって言った。
けど衣食住まで責任取る必要は無ぇ。
ここまでされても、アンタに返せるものが...」
「そうです!
いくらシャーレが広いからって、
一階の半分渡すなんて何考えてるんですか!」
「返さなくていいし、借りを作ったなんて考えなくてもいい。
言ったでしょ、ただの自己満だって。
むしろ使ってくれないと有り余ってしょうがないんだから」
「そうはいかないんだが.........
ハァ、分かったよ。
でもな、これは流石に...広すぎやしねぇか?
いくらウチらが二十人弱いるとはいえ、この広さは持て余すぞ」
そんなこと言われても。
大は小を兼ねるって言うし、きっと足りなくなる...はず。
「え、ほんと?
若い子達は広い部屋の方が嬉しいと思ったんだけどなぁ」
「若い子達って...。
...なぁ先生、アンタ幾つだよ?」
「20代とだけ言っておこう」
「ウチらと大差ねぇじゃん...」
「変わらないですね...」
「まぁまぁ。アタシだって使わないし。
君らの好きなようにしてくれた方が部屋もアタシも喜ぶ。
返品は受け付けませ〜ん」
分かったよ...となんだか呆れられたように返される。ユウカにすら苦笑いされる始末。
いいんだ、使えるものはガンガン使ってもらおう。
残りは衣と食。
食については作ってあげたいけど、仕事で作れなかったりすると思うから絶対という約束はできない。
というか簡単なものしか作れないし。
衣は、みんなの格好を見るに、それなりにお金はかけているようだ。
やはり不良だなんだと言っているが、そこんとこはちゃんとしている。
待て、そもそものお金はどうする?
衣食住を得たとしても生きていく上でお金は必要になる。
「ねぇみんな、お金って持ってる...?」
部屋カスタム作業の手を止め、怪訝な顔をする。
しまった。聞き方を間違えた。
「あッ違うよ!巻き上げるとかじゃなくて!!
純粋にお金持ってるかなぁって!?
生きてく上で必要じゃん!?ね!?」
ちょっと安心したのかみんな顔を合わせ財布を確認する。
「まぁ、ある程度は」
全員同じくという意味で頷いている。
だけどこのままという訳にもいかない。
PMCまがいのことをしてほしくないからシャーレに入れたのだから。
であれば、シャーレの仕事を手伝ってもらう代わりに給与を支払うのはどうだろう。
これからの給与や予算に関してはリンに言えばどうにかできる...はず。
そうすれば社会復帰もしやすく、勉学にも時間を割ける。
復帰できるレベルになったらどこの学校でも入れる権限を持ってるシャーレが手助けすればいい。
「うーん、そうだなぁ......
...これからみんなにはシャーレの仕事を手伝ってもらおうと考えてる。
書類仕事だったり、連絡補助とか、見回りとかを段階的にね。
少しずつみんなに任せていきたい。
もちろん対価として給与を払う。
どう?」
「どうって、そりゃ願ったり叶ったりではあるけどさ。
そんな簡単に決めていいのかよ?
自分で言うのもなんけど、不良だぞ。
シャーレって結構重要な立ち位置なんじゃないのか?」
「そうですよ、先生。
確かに生きていく上でお金は必要ですが、シャーレには重要な情報や権限があるんです。
彼女らが漏洩するとは思えませんが、かといって手伝わせるのはどうかと思います」
気にするのはごもっともだ。
仕事に関して、重要な仕事は振り分けされている。それ以外の仕事を任せればいい。
「確かにシャーレはそれなりの権限がある。
そりゃ情報漏洩に関してはキツく捉えるけど、
かといって全部自分でできるほどの余裕もないから正直手伝ってほしい。
勉学の合間に、社会勉強の名目としてね。
それとね」
「言ったでしょ。
みんなを教え、正し、導くって」
それに重要な仕事はアタシに直に来るようになってるから、と付け加える。
そういう仕組み関係はアロナに一任している。
アロナ様様である。
「先生がそこまで言うなら...
それでも心配なので、私も時間がある時は手伝いますね!」
「ありがとうユウカ」
「いえ!それくらいは当然!
まぁ手伝いに行けば先生の手料理も食べられますし?」
「へぇ、料理するんだ...
待て先生、アンタ片腕で料理してんのか?
危なくないか?」
「料理っていっても簡単なものしか作れないけどね。
まぁ慣れれば余裕だよ。
本当はみんなの分も用意したいんだけど、仕事でできなかったりするからねぇ...
余裕があったら作るよ」
「ウチらの食事は別にどうでもいいんだけどな...
今度から料理するときはウチらの誰でもいいから呼べよ。
慣れてるとはいえ、怪我して両腕使えないなんて洒落にならねぇからな」
リーダーなだけあってスミは面倒見が良いようだ。
他のみんなもスミに同意している。
おそらく礼を兼ねて手伝うと言っているんだろうけど、その考えが良い子である証拠だ。
「暇そうだったら呼ぶことにするよ」
暇そうじゃなくても呼べよ...と不満げに呟くスミ。
「なぁアンタ...早瀬、だっけ。
あの先生、もしかして全部自分でやろうとするタイプか?」
「ええ、早瀬ユウカよ。
おそらくそのタイプね」
「ったく、見張っとかないと危ねぇな」
「貴女たちを完全に信じたわけじゃ無いけど、
お願い。
先生のこと気にかけておいて」
「そう簡単に信じてもらえるとは思っちゃいねぇけど、あの人のことは任せてくれ」
なんか二人でひっそりと会話してるけど、仲良くなれたのかな?
比較的人当たりの良いユウカを連れてきて正解だった。
「アタシはまだ仕事があるから、みんなは後は自由にしてね。
ユウカ、今日はありがとう。お疲れ様」
「はい!お疲れ様でした!」
「先生!」
伝えたいことは全部伝え、部室に向かおうとしてスミに呼び止められる。
振り向けば、スミだけでなくヘルメット団のみんなが集まっていた。
「アンタは一度だけでいいから信じてくれって言ったけど、
ここまでされて一度じゃ足りるわけがねぇ。
だからといて全てを信じれるわけでもねぇ。
だからウチらは透子という人間を信じることにした。
だから...その...なんだ...」
「ウチらを信じてくれてありがとうございます」
全員が頭を下げた。
こんなに感謝されると少しくすぐったい。
まったく、キヴォトスの子供達は真面目すぎる。
もっと軽く捉えていいのに。
でもそこが彼女らの良さなのだろう。
「こちらこそ、ありがとう」
そう言い部室に向かった。