巡礼者達の日常 【連載版】   作:無名のカヤ推し

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作者、6月頭からちょっと光の戦士としてCV千葉さんな道化を倒しに行くため更新頻度が落ちます。


巡礼者達の日常⑮ 『ぽこ あ アビドス ②』

『逃がすなああああああ!!!!!』

 

『探せ!!!今までの作物達の無念と恨みを晴らすんだ!!!』

 

『手塩にかけたトマトの嘆き……思い知らせてやる!』

 

 

 アビドス自治区。その砂漠地帯に存在する、最近できたばかりの施設。水源の発見により水が戻り、更には水路が引かれてそこから取った水で様々な作物を栽培したりしている大型の施設。その敷地内には畑やハウスなどがあり専用の区画となっている。

 

 そこに身を潜めて冷や汗をかく集団があった。ゲヘナの問題児たち、美食研究会である。

 

 一刻も早くこの施設から脱出しなければならない。だが、見つかってはならない。見つかったら最後、どうなるかなど予想がつかない。

 

 こっそりと建物の影から美食研の部長。ハルナが外を伺えば、そこには目をギラつかせ、平鍬や備中鍬、ツルハシやカマ。更にはネイルガンや電動チェーンソーや草刈り機を手にしている集団が見え、よく見れば明らかに改造されている散水機と本当に水なのか怪しい液体が詰まったタンクを背負っている者も居て、中には無線で連絡を取り合っている者も居る。

 

 更には、筋肉ムキムキマッチョマンと言って差し支えのない、ガタイのいいオートマタが頭には麦わら帽子をかぶり、そのモノアイで周囲を捜索していたり。一度逃げようとして出口ゲートの前には巨大な機械蛇が蜷局を巻いており、警戒していたり。

 

「してやられましたわ……相手は此方を狩りにきましたわね」

 

「ど、どうしよう!相手の装備やあの目つき明らかにヤバいよ!?」

 

 ジュンコができるだけ声を抑えてそんなことを言うが、それはまさに今この場にいる他の美食研究会のメンバー。アカリやイズミの気持ちも代弁していた。確かに、この施設にいる生徒の多くは銃を持ち歩いていない。そのかわりに、農機具や機械、工具などを装備しており何より目つきが尋常ではなくキマっているのだ。

 

 相手は間違いなく、自分達が美食。しかも至高の作物とも言えるものが栽培されるこの施設に美食を求めて襲撃することを読んでいたのだ。……といっても、やっていることは野生動物の畑荒らしなどと変わりがないのだが。それを考えると、この施設関係者の生徒達が本気で怒っているのも当然である。

 

 

『こちら(チャーリー)、駆除対象を発見できず。引き続き警戒にあたる』

 

『HQ了解、出口は守護神様が封鎖しているとはいえ気を抜くな。――待て。ふふ……遂に来たか。本国よりハウンドオートマタが到着した、全域に展開するぞ』

 

『リーダーの姉妹君が作られたというあれか!?心強い、絶対に逃さんぞ美食研め』

 

 

 何やら不味いような言葉が聞こえてくるのを聞いて、全員が嫌な汗を流した瞬間。

 

「ひっ……な、なにあれ……」

 

 今度はジュンコが顔を真っ青にして指を指していた。その先を見れば、守護神。ビナーの呼び出すオートマトン型ビナーが封鎖している出口の一つの脇のゲートが開かれ、ギラついた目でドリルや剪定バサミを持った生徒達と共に入ってきたのは、漆黒の。尻尾だけがやたら長く、それでいて鋭利な刃物のような先端をした、真紅の双眸を持つ大型犬サイズの機械の犬だ。それが数にして10以上、恐らくは他のゲートからも侵入していることを考えるとかんなりの数になるだろう。

 

 

 

 

 

『――美食研究会に告げる!』

 

 

 

 

 突然響き渡るのは、完全にブチギレているビナーの声である。左手にはメガホン、灰色の髪はまとめており、頭には『安全第一』というメットを被っている。そうして右手には、彼女の愛武器である野球バットが握られていた。

 

 

 

「こ、今度は何!?」

 

「んー……これは不味いですね☆」

 

「とっても嫌な予感がするー!」

 

 それぞれ今の気持ちを告げるような言葉をぼやくが、ハルナだけは頭を高速で回転させて今の状況をなんとか出来ないか考える。しかし、現実とは無情である。いくら考えても、どの方法でもこの場から逃げおおせるビジョンが見えない。

 

 最初から詰んでいたのだ。何故なら、ビナー達は美食研究会を捕獲するためだけに罠を張り、そこにまんまと美食研究会は引っかかった。その時点で逃げ場などないのだ。散々畑や作物を荒らされたこでビナーや、彼女の雇っているヘルメット団や不良達はもう完全に怒り狂っていた。汗水垂らして丹精込めて、努力の結晶とも言えるものを荒らされて奪われたのだ。許すことなど出来るはずもない。

 

 

 

『降伏して無事に事を収めることは許さない!我々はお前達の荒らした作物や施設の恨みを晴らすまで、絶対に許さない!繰り返す!降伏も交渉も認めない! ――一方的に狩られた作物達、破壊された施設の恨みをその身に刻め!』

 

 

 無慈悲なビナーからの死刑宣告が施設内に設置されたアナウンス装置より響き渡る。同時、施設の各地からは雄叫びのような声が。まるで狩りの始まりだとばかり言わんばかりに聞こえてきており、それが美食研究会の恐怖を煽り立てる。

 

 ハッキリ言って、今回のこれはゲヘナ風紀委員以上の恐ろしさである。ヒナ達の場合、『面倒になると嫌だから』という理由もあってある程度お仕置きして牢屋に叩き込むというのが流れだったが、今回ばかりは全く相手が手加減する様子もなければ捕まったら最後、どうなるかもわからない。

 

 更に言えば、ハルナ達は知らないが施設の周囲にはビナーの従業員の中でも武闘派の精鋭で編成された完全武装の部隊をラブが率いており、『おはなし(脅し)』により強制的に、カイザーの新装備試験運用という名目で連れてこられたジェネラル率いるこちらも最新鋭の装備フル武装のカイザーPMCとSOFが展開している。ここまでやるのは単純で、ビナーが完全にブチギレたためである。

 

 

「……ん?あれ、なんでしょうか?」

 

 異変に気がついたのは、アカリだった。全員が指さす方向を見れば、隆起した地面が動いており、それがこちらへと向かっている。

 

 嫌な予感がする、そう思った瞬間には遅かった。

 

 

 

 

『ビナァァァアアア!!!!』

 

 

 

 

 それが鳴き声なのか、という突っ込みをする暇もなく。とにかく美食研究会は逃げた。地面から顔を出したのは、正面ゲートを守っている大きな機械の蛇と同じ見た目のね別個体の蛇だ。どうやら敷地内を巡回していたようで、狭い所にも地面へと潜ることで索敵していたところに捕まったのだ。

 

 その鳴き声と同時、周囲から特別な感覚がなくとも否応に向けられる殺気が感じられる。そして次に感じるのは、近づいてくる多数の足音と怨嗟に満ち溢れた生徒達の叫び声だ。駆動している工具や農耕機械の音もしており、それが尚更に恐怖を増長させる。

 

 

「ひっ……こ、こないで……!」

 

 

 それは誰の声だったのだろうか。だが、間違いなく美食研究会全員の思いを代弁していた。状況は、まさにゾンビ映画でゾンビに群がられる登場人物たちだ。付け加えるとしたら、助かる方法はない。

 

 手に農機具を、工具を、挙句の果てにはよだれを垂らしながら野菜を両手に構えている生徒まで居る。更には巨大な蛇型ロボットが三体に、麦わら帽子をかぶった筋肉ムキムキの巨大オートマトン。外には大部隊を率いているラブに、遠い目をしてどうしてここに居るのかと考えながら部隊を率いているカイザージェネラル。何やら彼の部下も『野菜の恨みだ』『逃がすな、捕まえて特製野菜ジュースの拷問にかけろ』『ちょっと労働して汗をかいて気持ちよくなれば素直になれる』などと言っている。

 

 元々ただのヘルメット団や不良だった生徒達は、それはもう途方もなく強かった。全力の抵抗だと言わんばかりに美食研究会はあらゆる手で抵抗し、生徒達をなぎ倒した。だが、何度倒しても目をギラつかせ、銃ではない武器。農機具や工具、野菜や改造された耕作機械を手に起き上がってくるのだ。

 

 結局追い詰められた美食研究会は、抵抗も虚しく四方八方を恐ろしい生徒達に明らかにヤバイ機械の蛇とムキムキのロボットに包囲され拘束。そうして、施設の中心に存在するある場所に連れて行かれて世にも恐ろしいお仕置きをされることとなった。

 

 

 

 後日。ゲヘナの風紀委員会からは、アビドスの話をしたら何かフラッシュバックしたのか突然発狂しだしたがどういうことなんだと問い合わせがあったとか、なかったとか。

 

 

 

 

 

 

    ◆     ◆     ◆

 

 

 

 

「ホシノ先輩、まだ休んじゃ駄目ですよ。むしろ休んでいる暇なんてありませんよ。はいこれ今月の収穫報告書と生産計画表と工程表、それから外部企業や自治区からきてる話をまとめて資料です、それからこれも――」

 

「う、うへぇー……おじさんもうくたくただよぉー……。ア、アヤネちゃん助けて……」

 

 ドンッ、という音と共にアビドス高校の部室。ホシノの前の机上に置かれるのは大量の書類の山だ。『先生』が見たならば、『ははは、これくらいいつものことだよ』と慣れた。だがハイライトのない目で書類の山を見そうなものである。

 

 助けを乞うようにしてアヤネへと言葉を向けるホシノだが、現実とは無情である。この書類の山は全てが委員長決裁案件なのでアヤネでは対応できない。付け加えるなら、アヤネも別案件でかなり対応に追われているため余裕がない。シロコとセリカは書類仕事があまり得意ではなく対応不可、ノノミは家が家なのでこういったことは学んできているが、彼女もまた別案件にとある自治区、ハイランダーとのやり取りで最近は忙しくしている。

 

「おじさん最後に家に帰ったのいつだったかなぁ……。最近はずっと学校で暮らしてる気がするよー……」

 

「そんなこといいつつ生徒会室を完全に私室みたいにレイアウトしてるじゃないですか。なんですかあの部屋、デスク周りだけは普通ですけどお気に入りのハンモックにベッド、パソコンにテレビをはじめとして家電製品諸々に空調まで付けて完全に引き篭もる用の部屋ですよあれ」

 

「いやあ生徒会室から部室までほぼ隣でしょ……?それだとすぐ休めるし逆にすぐ仕事もできるから便利でねぇ……。今のアビドス高校、お風呂もシャワーもあるしさぁ……温泉開発部のみんなが作ってくれた銭湯もすぐそこでしょ?おじさん、もうアビドス高校に引っ越しちゃおうかなあ」

 

「卒業後はどうするんですか、OBが学校に住んでるなんて珍しいどころの騒ぎじゃないですよ」

 

「じゃあビナーちゃんがおじさんを雇ってアビドス自治区の警備員にしてよ~」

 

「いやそれはアリかもしれませんね。警備部門のトップとして採用すれば諸々の問題が解決するし……ふむ、なるほどなるほど。とても前向きに検討します。あ、言質取ったので」

 

「あれこれもしかしておじさん墓穴掘った?将来的に社畜にならないこれ?」

 

 現在のアビドスは慌ただしい。突如としてアビドスにやってきたビナーによって借金問題が解決し、現在は復興事業に真っ最中である。ビナーがミレニアムのトップであるリオに掛け合い、リオから連邦生徒会に『ミレニアムが色々関わることになる中でアビドスの自治権と発言権がないのは問題なるので復活させて』と連絡が行き、更には先生からも嘆願書とともに直接頼まれた連邦生徒会はこれを受諾。それにより書類の山や様々な案件に対する対応に追われることになっているのだが、特に大きいのがビナーがアビドスでやっている事業でのいろいろな意味でのやらかしである。

 

 復興はとてつもない速度で進んでいる、砂塵災害への対策もミレニアムの最新技術のテスト運用という名目で様々なことが行われ、現在では人が住む住宅地への被害は皆無となってきている。加えて、アビドスの気候を活かした事業展開も現在注目を集めており、ビナーは一躍時の人ならぬ時の生徒となっている。

 

 中でも最も大きいのが、ゲヘナの温泉開発部と共に温泉の泉源を掘っている時に、アビドスのオアシスの生きている水源を発見したことだ。当然、温泉開発部は温泉だけではなく工事関係のプロである。ビナーの指示のもとミレニアムから運ばれてくる最新鋭の工事機械や道具、それに目を輝かせながら『遠慮なく全力でやってもいい』という雇い主、ビナーからの言葉を受けて発狂したように寝る間も惜しんで工事に取り掛かる温泉開発部、事態の展開と現場の状況についていけない安全第一と書かれた黄色いヘルメットをかぶりながら呆然とするアビドス高校の面々、どこからともなく現れた、でかシロコと名乗るシロコのそっくりさんの現場への参戦、アビドスのオアシスが復活すると聞いて現場に差し入れをしてくれる柴関の大将。

 

 その他諸々と、とにかく色々なことが起こりすぎてアビドス高校。特にホシノとしては頭がパンクしそうな勢いであった。

 

 ただ。あれやこれやと今の現状について現場作業を見ながら騒がしくしているシロコ達の後ろで、ホシノは口元に笑みを。そしてその表情には懐かしさと、感慨深いものを浮かべた彼女は誰にも聞こえないように、呟いていた。

 

 

 

 ――『ユメ先輩。破茶滅茶な日々が続いてますけど、今は楽しくて、そしてアビドスの未来が見えています』

 

 ――『何処かで見てますか? ……ちゃんと奇跡はありましたし、起きましたよ』

 

 

 

 その声は、何処か少し震えていて。青い空へと、穏やかな風に乗って消えていった。

 

 




・美食研究会
 NOUMINの恐ろしさを味わった。なお、ビナーに雇われている元不良やヘルメット団はいつの間にか全員『NOUMIN』になっている。

・ホシノ
 社畜の未道を約束されている。既にアビドス高校で暮らしているので社畜である。最近、忙しい時の先生の気持ちが理解できるようになってきた。将来的に『アビドスPMC』の一番偉い人になる。

・最新章の2Pカラーの連邦生徒会長
 多分この世界線に出てくるととてもひどい目にあう。先生と対峙するともれなくどこからともなく現れる長姉が参戦し、更に何処からともなく次女も参戦してくる。『まだだ』搭載してるネルも出てくる。

 色々話進んで落ち着いてきたらネタにする。
 大丈夫、怖くないよ。みんなで仲良くしようね。
 お前も生徒にしてやる。
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