ラブゼロワン!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会   作:アークゼロ

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第3話 Cutest♡ガール

 

世界で一番のワンダーランド!

 

そんな場所に行けると……思ってたのに……

 

  

 

 

 

せつ菜「かすみさん!!もっと振りを大きく!!熱量が感じられません!!」

 

かすみ「はぁっ、はぁっ、はあっ……!」

 

息切れが激しく、過労が一気に押し寄せてくる。

 

エマ「せつ菜ちゃん、少しは休憩しよう。」

 

彼方「詰め込み過ぎは良くないよ〜。」

 

そんなかすみんを心配してか、エマ先輩と彼方先輩がせつ菜先輩を諌めるも彼女は折れない。

 

せつ菜「そんな時間はありません!!スクールアイドルが大好きなんでしょう?やりたいんでしょう!?」

 

熱く語る先輩の姿。いつもなら同じスクールアイドルが好きな者として同調するところだが、今は只々鬱陶しい。酷くムカムカする……。

 

せつ菜「こんなパフォーマンスでは、ファンのみんなに、大好きな気持ちは届きませんよ!!」

 

おそらくこの時かすみんは気付いちゃったんです。この先輩とは目指す方向性がまるで違うということを。それは他の3人とも……

 

それ故か、かすみんはとうとう我慢の限界を迎え、今まで抑え込んでいた鬱憤や不満を吐き出してしまった。

 

かすみ「でも!!こんなの全然可愛くないですぅぅ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹ヶ咲学園生徒会室にて。

 

生徒会室では二人の生徒が対面していた。一人は生徒会長の中川菜々、もう一人は生徒会室に入ってきた朝香果林。菜々は無機質な表情を向けて、これまた無機質なトーンで果林に訪ねる。

 

菜々「何の御用ですか?ライフデザイン学科3年の、朝香果林さん。」

 

果林「ウッフフ♪生徒全員の名前を覚えてるって本当なのね。」

 

予め知っていたのか、特に驚く様子を見せない果林は菜々に近づくと、「じゃあ」と前置きをしてある事を切り出す。

 

果林「優木せつ菜さんの事は知ってる?」

 

菜々「……ええ。」

 

一瞬の沈黙の後、菜々は答えた。

 

果林は菜々の正面に立つと、横の書類棚を見ながら話す。

 

果林「スクールアイドルに興味があって……でも、誰に聞いても、学科もクラスも分からないのよねぇ。」

 

菜々「同好会は、優木さんとの話し合いの結果、廃部となりました。スクールアイドルの話なら、彼女はもう会わないと思いますよ?」

 

果林「…………そう♪」

 

再び書類棚の方をチラッと見ながら、言葉とは裏腹にどこか楽しげに含みのある笑顔で果林が言ったその時。

 

菜々「ご用件はそれで「キャー猫よー!」……?」

 

果林「?」

 

生徒会室の外から棒読みの悲鳴が聞こえてきた。二人は同時に生徒会室の入口を見て、菜々が目をぱちくりさせる。

 

菜々「……猫?」

 

そして慌てて扉を開けた瞬間、

 

菜々「うわっ!?」

 

何かが顔に当たって怯んだ菜々はそのまま尻もちをついて倒れた。飛んできたのは、白い猫だった。

猫は菜々の頭の上で足掻き、菜々にぐくもった声を出させながらも飛び退いて、何処かへ走り去る。呼吸を妨げる存在が離れた事で大きく息を吐いた菜々、

 

菜々「あっ、待ちなさい!」

 

直ぐ様猫を追って生徒会室を飛び出した。後にただ一人残される果林。だがしばらくして彼女も生徒会室を出て行く。

 

その時、果林と入れ替わるように一人の少女がこっそりと生徒会室に忍び込んだ。赤緑サングラスとマスクで顔を隠した中須かすみである。

かすみは生徒会室に誰もいない事を確認すると、生徒会長の机の引き出しを片っ端から漁り始めた。そしてある物を発見し、歓声の声を上げたもの束の間、

 

菜々「何をしているのですか?」

 

かすみ「……ワッ!?」

 

かすみのすぐ後ろから冷たい声がした。菜々が思ったよりも早く戻って来た。

 

しばらくの沈黙。眼鏡越しにかすみに冷たい視線を送る菜々。サングラスとマスクの下で冷や汗が止まらないかすみ。

 

かすみ「きゃあぁぁぁぁ!!もう戻ってきたんですか!?」

 

慌てふためきながら机を挟んで菜々と距離をとるかすみ。

 

かすみ「しかし!目的は果たしました!さらば!」

 

菜々「あっ……お待ちなさい!」

 

菜々の制止に聞く耳持たず、かすみはダッシュで生徒会室を飛び出して行った。

 

菜々「……まったく……」

 

 

 

 

かすみ「はぁっ、はあっ……」

 

虹ヶ咲学園の中庭まで逃げてきたかすみは、スカートのポケットから札のような物を取り出す。それは「スクールアイドル同好会」と書かれたプレートだった。

かすみはこれを取り返すために生徒会室を襲撃した。

 

かすみ「にっひっひ♪大正解です♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクールアイドル同好会部室前にて。

 

スクールアイドル同好会があった部室に向かったかすみだったが、彼女を待ち受けていたのは残酷な現実だった。

 

かすみ「わ……私達の部室が……」

 

そこは既に『ワンダーフォーゲル部』という全く別の部室になっていた。 

今のかすみはスクールアイドルがしちゃいけないような、絶望の2文字で表せる程の暗い表情を浮かべ、消えそうな程の声で掠れ声でそう呟いた。

 

カランと、ネームプレートを落とし、膝から崩れ落ちるかすみ。

 

かすみ「あぁ……あっ……あうううっ……」

 

そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、靴底を強く叩く音が響く。

 

かすみ「ひっ……!?」  

 

肩をビクリと震わせ、顔を青ざめさせるかすみの背後から、怒りと呆れを含んだ無機質な声が降ってくる。

 

菜々「普通科一年、中須かすみさん?何を言いたいかは、分かっていますよね?」

 

眼鏡をキュピンと光らせ、無表情でかすみを見下ろすのは、ネームプレートを持って生徒会室から出たかすみを不審に思って追跡していた中川菜々だった。

 

かすみ「あわわわわわわわわわわ……っ!?」

 

ギギギッと首を動かして背後を振り返ったかすみに、絶対零度の視線が刺さる。

しかし菜々は特にかすみを咎めることはせず、彼女に背を向けて無言でその場を去っていく。   

 

かすみ「……ガクッ!!」

 

かすみはあまりのショックに手をついて四つん這いで項垂れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂のカフェテリアでは、かすみは女子がしちゃけいないような顔で手作りコッペパンをやけ食いしながら、隣に座っている桜坂しずくに愚痴をこぼしていた。

 

かすみ「あの意地悪生徒会長〜!」

 

しずく「怖かったね……でも、生徒会室に忍び込んだりするからだよ。」

 

かすみの頭を撫でながら慰めつつも、正論を言うしずく。

そしてそこから寂しげな表情を浮かべて、ティーカップの紅茶を見つめながら呟いた。

 

しずく「部室……失くなったんだ……」

 

するとかすみは挑戦的な態度で強気な発言をする。

 

かすみ「こうなったら徹底抗戦だよ!しず子!」

 

しずく「ふぇ……?」

 

 

かすみの脳内イメージ

 

青い文字で『徹底』と書かれたプレートを持つエマ、ピンクの文字で『抗戦』と書かれたプレートを持つしずく、『部室をかえせー!!』と書かれた看板を持つかすみ、そして端で体育座りで眠っている彼方。

 

かすみ「会長の応募を許すなー!!」

 

しずく、エマ、彼方「「「おおー!!」」」

 

 

 

 

しずく「あっはは……気持ちは分かるよ……」

 

かすみ「でっしょー!」

 

しずくは苦笑いしながらもかすみに同情した後、訪ねる。

 

しずく「せつ菜さんには相談した?」

 

かすみ「ぁ………するわけないじゃん!そもそも部活以外で会った事ないし!ヒューマギアの先生にも聞いても分からないって言うし!」

 

しずく「そうだね……」

 

かすみの言う通り、せつ菜は放課後の部活動の時間帯にしか姿を現さない、本当に謎の存在だ。その時間帯にしか姿を現さないのだからヒューマギアも分からないのは当然だ。

学年はおろか学科も一切分からないので、彼女と話がしたくても、自分たちからコンタクトをとることは出来ないのだ。

そんな時、

 

演劇部部長「しずく、行こ?」

 

演劇部の部長がしずくに声をかけた。

 

しずく「あ、はい。」

 

彼女はかすみに笑顔を浮かべて軽く会釈し、かすみは緊張してぎこちない笑顔で返す。

しずくは鞄を肩に掛けながら立ち上がると、申し訳なさそうにかすみに退場の旨を伝える。

 

しずく「ごめんなさい。演劇部の稽古に行かなくちゃ。」

 

かすみ「ふえっ?」

 

しずく「後で連絡するね?」

 

かすみ「ああっ、ちょっとぉぉ!?」

 

かすみの静止も空しく、しずくは演劇部の部長に付いていき、離れて行く。

 

かすみ「ぬっぐぅぅううううう〜!!」

 

 

 

 

 

 

駅前のベンチにて。

 

そこでかすみはまたコッペパンをやけ食いしていた。

 

かすみ「しず子の薄情者ぉ!エマ先輩も彼方先輩も連絡取れないしぃ……!」

 

そして何からしらの決意を口にするかすみ。

 

かすみ「こうなったら、かすみんが部長になって、同好会を継続させるしか!可愛い溢れる、かすみんワンダーランドを作っちゃいますよー!!」

 

その時だった。

 

侑「でも、スクールアイドルって、どうやってやるんだろう?」

 

かすみ「ええっ!?」

 

かすみにとって聞き逃せない、まさに天啓とも言える一言が背後から聞こえた。

俊敏な動きで背後を振り向いたかすみの目に映ったのは、2人の少女と1人の少年。

 

高咲侑と上原歩夢と飛電或人だ。

歩夢が腕を組んで考え込む侑に言う。

 

歩夢「スクールって言うくらいだから、部に入らないとダメなんだろうけど。」

 

歩夢の次に或人が口にする。

 

或人「でも、同好会はもうないし……。どうすれば……」

 

侑「う〜ん。」

 

そんな侑と或人の肩に、背後から忍び寄ったかすみは手を置いて話しかけた。

 

かすみ「せ〜んぱぁい♪」

 

侑、歩夢、或人「「「わっ!?」」」

 

いきなり背後から現れたかすみに侑と歩夢と或人は驚くも、それに構わずかすみは見事な営業スマイルで勧誘を込めた問いを仕掛ける。

 

かすみ「スクールアイドルにご興味あるんですかぁ?」

 

侑、歩夢、或人「「「……ん?」」」

 

するとかすみは或人を見て驚きの反応を見せる。

 

かすみ「……ん?……えっ……こ、校長先生?」 

 

或人「あははは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず落ち着いて話し合おう、と言うことでかすみは侑と歩夢と或人を近くのベンチに座らせて、クルリと回りながら自己紹介をした。

 

かすみ「スクールアイドル同好会、二代目部長のかすみんこと、中須かすみでーーすっ♪」

 

ぶりっ子仕草のオマケ付きで。

最初に食いついたのは侑だった。

 

侑「スクールアイドル同好会!?私、高咲侑です!」

 

或人「改めて飛電或人です。後、気軽に或人で良いよ。」

 

歩夢「上原歩夢です………でも、同好会って廃部になったんじゃ?」

 

歩夢はかすみに名乗りつつ、訪ねる。

 

かすみ「諦めなければ同好会は永遠に続くのです!」

 

かすみはそう力説すると、自分の鞄をゴソゴソ探り、輪切りレモンを始めとした具材を挟んだコッペパンを三つ取り出して、侑と歩夢と或人に渡す。

 

かすみ「お近づきの印に、どうぞ♪」

 

或人「いいの?」

 

かすみ「はいっ♪」

 

侑「いただきまーす!」

 

三人は包袋紙を破り、同じタイミングでコッペパンを口にする。

口をモゴモゴ動かして咀嚼、その味を堪能すると、三人は飛び上がる程に目を見開き、声を揃えて言った。

 

侑、歩夢、或人「「「んっ!?美味しい!!」」」

 

侑「これって、あそこのお店の?」

 

侑が訪ねると、かすみは人差し指を振りながら答える。

 

かすみ「チッ、チッ、チッ。そのパンはかすみんの手作りですよぉ?」

 

或人と侑は心底感動したのか、キラキラとした笑顔をかすみに向けて言う。

 

或人「スゴイな!!流石スクールアイドル!こんなに可愛くて料理まで出来るんだ!」  

 

侑「だよねだよね!!可愛くて料理まで出来るなんて本当スゴイよ!」

 

ナチュラルに褒めちぎる侑と或人に、かすみは目をぱちくりさせて反芻する。

 

かすみ「へぇぇっ?可愛い?」

 

そして言葉の意味を呑み込み、理解すると、次の瞬間には両手を頬に当ててモジモジし始めた。

 

かすみ「そんなぁ〜〜!!そりゃあ確かにかすみんは可愛いに決まってますけど〜♪侑せんぱ〜いに或人せんぱ〜い、見る目ありますね〜!」

 

歩夢「へっ?」

 

侑「そうかな?」

 

歩夢「ふぅんっ!?」

 

或人「誰が見たって可愛いじゃんか!」

 

歩夢「ええっ!?」

 

かすみ「ホントですかぁ〜?」

 

体をくねらせて舞い上がるかすみに、笑顔で褒めちぎる侑と或人、そして間でちょくちょく過剰に反応する歩夢。

するとかすみはズズイッと侑と或人に真正面から近づいて、上機嫌に言った。

 

かすみ「じゃあ先輩方ぁ♪そんな可愛いかすみんと、スクールアイドル活動始めませんかぁ?」

 

侑、或人「「へっ?」」

 

二人がキョトンとすると、歩夢が二人に視線を向けながら心配そうに訪ねる。

 

歩夢「大丈夫かなぁ?」

 

考え込む二人。

 

かすみ「大丈夫です!信じてください!かすみん、最強に可愛いスクールアイドル同好会にしてみせますから!」

 

歩夢「っ!!……可愛い……」

 

その言葉が琴線に触れたのか、歩夢は呟くように反芻すると、或人の顔を伺い、次に侑に視線を向けた。

 

もっと可愛くなれば、或人は自分の事を意識してくれるだろうか。もっと可愛くなれば、侑は喜んでくれるだろうか。

そんな考えが歩夢の脳を埋め尽くしていく。

やがて……。

 

歩夢「だったら……やろうかな?」

 

歩夢は入部の意思を表明した。かすみは歩夢の手を取って喜ぶ。

 

かすみ「入部決定ですね!」

 

ここで侑が釘を刺すように挙手して告げた。

 

侑「あ、因みに私はアイドル志望って訳じゃないんだ。或人と同じで、歩夢を応援したくて♪」

 

かすみ「それって、専属マネージャーって事ですか?」

 

或人「そうなるのかな?」

 

かすみ「ズルいですぅ!それならかすみんのサポートもしてください!」

 

歩夢「えっ!?」

 

かすみ「スクールアイドルとしては、かすみんは先輩ですからねぇ。部長にはぁ、絶対服従ですよ♪」

 

てへぺろするかすみに、侑と或人は純粋な笑顔で答える。

 

侑「分かったよ、中須さん。」

 

或人「了解、中須さん。」

 

かすみ「もっと気軽に呼んでくださいよぉ。」

 

歩夢「だったら、かすかすだね!」

 

かすみ「わぁっ!?かすかすじゃなくてかすみんですぅ!!」

 

歩夢「中須かすみだからかすかすかなぁって……」

 

かすみ「もぉぉう!!2度と言わないでください!かすみんって散々アピールしてるんだからそれでお願いしますよぉ!」

 

腕を組んで不満そうに頬を膨らますかすみ。アピール方法が少し独特だった為、2人が「アピールだったんだ」と呟く。

そう思ったのは歩夢も同じだろう。

かすみは鞄を持ってこう言った。

 

かすみ「早速これから同好会を始めますよぉ!ついて来てくださぁぁい!」

   

 

 

 

 

 

 

 

それから、侑と歩夢と或人はかすみに連れられて場所を探しをしていたが、近くの公園でご年配の方達とゲートボール、ドリルの音が煩い工事現場の側、たくさんの子供達が戯れる公園など、まともな場所がなかった。

と言うか、全て校外の場所である。

 

或人「だんだん学校から遠ざかってない?」

 

侑「何でわざわざ学園の外に?」

 

肩車をしている女の子に頬を引っ張られながら、かすみはフニャフニャした感じの声で答える。

 

かすみ「かすみんは生徒会に睨まれてますから……校内での活動は厳しいのです……」

 

或人「一体何したんだよ……?」

 

或人が問い質すような目を向ける中、ふと侑が閃いた。

 

侑「ん〜……あ!彼処なら!」

 

 

 

 

 

 

臨海公園にて。

 

侑の提案の元、4人がやって来たのは東京湾近くの臨海公園だった。

周囲は木に囲まれ、人通りもあまりない。暑い時の日除けもあり、場所も広い。スクールアイドルの練習場所としては最適だった。

 

かすみ「おぉ〜!!広いですぅぅ!!」

 

感激するかすみに侑は訪ねる。

 

侑「ここなら、迷惑にならないでしょ?どうかな?」

 

かすみ「バッチリです!!ここにしましょう!!」

 

かすみはピースサインを立てて返答した瞬間、飛鳥とイズが現れた。

 

飛鳥「あれ?三人とも。」

 

或人「兄さん、イズ。」

 

侑、「飛鳥さん、イズちゃん。」

 

歩夢「こんにちは。」

 

或人「今日はどうしたの?」

 

イズ「今日はここら辺で働いている清掃ヒューマギア、『クリーン』の視察です。」

 

飛鳥の変わりにイズが答えた。すると飛鳥はかすみが目に入る。

 

飛鳥「あ、知ってると思うけど、飛電飛鳥です。」

 

かすみ「は、はいっ!かすみんは中須かすみです!」

 

飛鳥「かすみちゃんって言うんだ。あっ、何かする所だったよね?邪魔しちゃ悪いから俺達はもう行くよ。」

 

そう言って飛鳥は手を振りイズはお辞儀をして去って行った。

 

侑「あれ?かすみちゃん?」

 

かすみ「はっ!気を取り直して行きましょう!」

 

気を取り直してたかすみはスクールバックからネームプレートを出し、目の前にある石造りのサークルペンチにバックを置き、その上にネームプレートを立てる。

 

かすみ「じゃーーん!」  

 

ネームプレートには、『かすみんのスクールアイドル同好会』と書かれていた。

 

明らかに何か書き足されたそれを見て或人はある疑問を浮かばせた。

 

或人「そのネームプレート……」

 

かすみ「かすみんが生徒会室から取り返してきました!」

 

かすみは胸を張って答えるが、続けて「……無断で」とポツリと言った。

 

侑「……えっ?」

 

歩夢「だから睨まれてるんだ……」

 

かすみ「何はともあれ、しばらくはここが虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部室ですよぉぉ!!ダンスや歌の練習は追々始めるとして、まずは部員ゲットです!」

 

かすみは話題をすり替えるように言う。自業自得なだけに、あまり触れられたくないのだろう。

しかし部員募集からというのはどういう事なのか、そこに疑問が抱いた侑が訪ねる。

 

侑「何で部員募集からなの?」

 

かすみ「人がいっぱい居た方が、可愛いかすみんが引き立つからです!」

 

どう聞いても私利私欲な返答に苦笑いする歩夢と或人。

かすみはそれに構わず、ライズフォンを取り出しながら言った。

 

かすみ「ともかく、手っ取り早く部員を集めるならこれでしょう!」

 

侑、歩夢、或人「「「……ん?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして始まったのは、自己紹介の動画撮影。

まず一人目は手本として、かすみが名乗り出た。侑がかすみのライズフォンのカメラモードを回す中、かすみは自分なりのアピールを開始した。

 

かすみ「ヤッホー!皆のアイドル、かすみんだよ〜!かすみんー、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長になったんだけどぉ……そんな代役が務まるか、とっても不安〜!でもぉ、応援してくれる皆の為に〜日本一可愛いスクールアイドル目指して頑張るよっ♡」  

 

そして撮影は終了。

しばらくの気まずい静寂で空気が満たされる中、最初に放たれなのは歩夢の間抜け声だった。

 

歩夢「は?」

 

その一方で、侑と或人はしばらく呆然としていたが、やがてじわじわと感動の波が押し寄せてきたのか、飛び上がる程の喜びを見せた。

 

侑「ふわぁぁぁ〜!?スクールアイドルの自己紹介初めて生で見たー!!ときめいたよ!かすみちゃん!」

 

或人「だよな!はっきりと個性が表れてて、すごくいいね!かすみん!」

 

その際侑がかすみのライズフォンを思わず投げ飛ばしてしまい、歩夢がなんとかキャッチする。

歩夢は2人の反応に「へっ!?」と驚愕気味の引きつった表情を浮かべていた。

 

一方でかすみは照れ笑いしていた。

 

かすみ「えへへ〜♪侑先輩〜、或人先輩〜、流石ぁ、分かってますね〜。これを動画サイトに投稿して、部員募集をします!次は歩夢先輩ですよ。今みたいな感じでお願いしますね。」

 

歩夢「えっ?えええぇっ!?無理無理無理だよ!恥ずかしいよ!!」

 

顔を真っ赤にして首を激しく左右に振る歩夢だが、かすみは折れない。

 

かすみ「何が恥ずかしいんですか!?自己紹介はスクールアイドルの第一歩ですよ!」

 

歩夢「目が怖いよかすみちゃん……」

 

かすみ「大丈夫です!かすみん程じゃないですけど、歩夢先輩も十分可愛いですから。張り切って行きましょー!」

 

結局、流されるままに歩夢も自己紹介の動画撮影に駆り出された。

今度は或人が回すライズフォンのカメラモードを前に、歩夢は差恥と緊張が混ざった表情を浮かべ、モジモジした動きを挟みながら話し出す。

 

歩夢「……あ!えっと……虹ヶ咲学園普通科2年の上原歩夢ですぅ……あ!あの私……ス、スク……」

 

かすみ「声が小さいですよ。」

 

かすみのダメ出しが入りカットになってしまう。

 

歩夢「ご、ごめん……私!!スクールアイドルやりたくて!!」

 

かすみ「大き過ぎです。ちゃんとファンの皆を思い浮かべて。」

 

歩夢「ファン……?」

 

と言われてもピンと来ないのか、歩夢は疲れたような溜め息を吐いた。

 

歩夢「はぁ……」

 

かすみ「不合格ですね。」

 

その様子にかすみは容赦なく低評価を下し、侑と或人は「あっちゃ〜••••••」と苦笑いした。

 

歩夢「い、いきなりは難しいよぉ!」

 

未だ差恥が残っている歩夢は、真っ赤な顔でかすみに抗議する。

それに思う所があるのか、かすみが歩夢にある提案をする。

 

かすみ「仕方ありませんねぇ。それでは両手を頭の上に。」

 

歩夢「?………こう?」

 

かすみの動きを真似する歩夢。かすみは続けて指示を出し、

 

かすみ「語尾にピョンを付けてみましょう。」

 

歩夢「ピョン!?」

 

かすみ「ピョン!」

 

侑、或人「「うさピョン!」」

 

2人がそう言った瞬間、歩夢はこれ以上ない程に耳まで真っ赤に染め上げ、引きつった表情を浮かべて動揺した。恥ずかしすぎてもう逃げたい。

そんな気持ちが歩夢の心に沸き上がってくるも、かすみはそれに構わず催促する。

 

かすみ「さぁ!」

 

歩夢「っ〜〜〜!?」

 

かすみ「さぁぁぁっ!!」

 

歩夢「っ……!!」

 

開いた口が塞がらず、嫌な汗がダバダバと歩夢の顔を流れていく。

歩夢は助けを求めるように2人の方を見るも、2人も期待の眼差しでこっちを見てるので、助け船を出してもられないのは明白。

歩夢は体をプルプル震わせながら、やがてかなりの小声で紡いだ。

 

歩夢「あ……歩夢だピョン……」

 

かすみ「声が小さい!もう1回!」

 

歩夢「歩夢だピョン!!」

 

かすみ「もっとうさピョンになりきって!!」

 

歩夢「うさピョンだピョン!!」

 

かすみ「ピョンに気持ちがこもってない!!」

 

歩夢「ピョーーーーーーーン!!」

 

歩夢の自棄になった叫び声が臨海公園中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽は沈み夕方。

 

『JOYPOLIS』という大型ビル前にある木製ベンチに4人は移動して、それぞれ座っていた。

あれからも何度か取り直したが、歩夢自身がかすみの様な自己紹介を恥ずかしがった結果、進捗は停滞。今日中に撮り終えることは出来なかった。かすみが暗い様子で呟く隣の歩夢に言う。

 

かすみ「週末には動画をアップするので、ちゃんと自主連しておいて下さいね?」

 

歩夢「可愛い怖い可愛い怖い可愛い怖い……」

 

歩夢は『可愛さ』の概念に恐怖を覚え、軽いトラウマになっていた。

ブツブツと呪詛の如く『可愛い』と『怖い』の単語を連呼する様に、かすみは若手引いていた。

 

或人「歩夢大丈夫じゃ……なさそうだね……」

 

由香「お取り込み中失礼する。」

 

或人が歩夢の心配をしていると、由香がやってきた。

 

侑「由香さん。」

 

かすみ「誰ですか?」

 

侑「エイムズの技術顧問の刃由香さん。」

 

かすみ「エイムズ……」

 

かすみが誰かと聞くと、侑がそう説明する。

 

由香「刃由香だ。」

 

かすみ「中須かすみです。」

 

二人は自己紹介をし、或人の方を見て言う。

 

由香「さっき君のお兄さんとも話したのだが、今やテクノロジーと共に生きるのが新時代の生き方だ。ヒューマギアとどう向き合うかは、要は人間次第。」

 

或人「そうそう。理解があって嬉しいなあ。」

 

或人が由香の様に理解が必要と頷く。

 

由香「それでは私はまだ仕事があるからここで失礼する。」

 

そう言って由香は去って行った。

 

由香が去った後、足を組んで座る侑が、かすみと話す。

 

侑「可愛いって大変なんだね。」

 

かすみ「アイドルの基本ですから。」

 

侑「でも、せつ菜ちゃんは可愛いって言うより、格好良いって感じだったよ。」

 

かすみ「っ?せつ菜先輩を知ってるんですか?」

 

侑「うん。一度遠くで見ただけなんだけどね。」

 

そう言ってから、今度は或人が頭の片隅にずっと引っ掛かっていた事を訪ねる。

 

或人「気になってたんだけど、同好会って何で廃部になったの?」

 

侑「あ、私も気になってた。」

 

二人の問いにかすみは、言いにくそうに俯いてから、やがて不満を思い出したような顔で答える。

 

かすみ「元はと言えば、せつ菜先輩がいけないんです。」

 

侑、或人「「?」」

 

かすみ「グループを結成した時は、結構良い感じだったのに……お披露目ライブに目標を決めた辺りから、何かピリピリして来て……『こんなパフォーマンスでは、ファンの皆に大好きは届きませんよーー!!』って!だから、かすみんもムッキーってなっちゃって!そのまま……活動、休止に……」

 

不満たらたらで言ったと思えば、声音を変えてせつ菜の真似で言ったり、でも最後は尻すぼみになって説明を終えるかすみ。

 

おそらく最初は、皆が同じ目標に向かって頑張っていたのだろう。しかし途中で個人のやりたい事、なりたいイメージ像が浮き彫りになり始め、意見が食い違い、歯車が合わなくなったのだ。

 

侑は考え込む様に夕空を見上げ、

 

侑「ん〜……かすみちゃんもせつ菜ちゃんも、ファンに届けたいものがあるんだよね?」

 

かすみ「当たり前ですよ!スクールアイドルにとって、応援してくれる皆は一番大切なんですから!より一層可愛い「くっ……!?」アイドルである為にぃ「うううぅ……!!」……う?」

 

隣から再び呻く声が聞こえたかすみは、そちらに振り向く。

見れば歩夢が頭を抱えて再び『可愛さ』の概念に怯えていた。

 

歩夢「可愛いって何……?可愛いって難しい……可愛いって……」

 

そんな歩夢に三人のまたかと言わんばかりの視線が突き刺さる。

そしてかすみが言う。

 

かすみ「そんなんじゃ、ファンの皆に、可愛いは届きませんよ〜。……あっ!」

 

そこでふと、彼女は思い出す。思い出してしまった。

あの時のせつ菜の行動、それに不満が募る自分、理想を押し付けた事で歯車が狂い出したあの日の事を。

 

かすみ「………」

 

俯いて無言になってしまったかすみに、二人が呼び掛ける。

 

或人「かすみん?」

 

侑「かすみちゃん?どうかした?」

 

かすみ「もしかして……かすみん、同じ事してる……?」

 

彼女から帰って来たのは、己の行動に対する疑問だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

かすみの部屋にて。

 

 

 

 

かすみ『こんなの全然可愛くないですぅぅ!!熱いとかじゃなくて、かすみんは可愛い感じでやりたいんですぅ!!』

 

せつ菜『……っ!!』

 

 

 

 

 

かすみは自室のベッドで横になり、枕の顔を埋めながら過去の自分を思い返し、後悔で唸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の放課後。

 

ニジガクの中庭の、大きな日陰がある場所に宮下愛と天王寺璃奈は居た。

二人はそこであるモノを眺めていた。

 

愛「フフフっ♪美味しいかい?」

 

愛は座り込んで、ライズフォンで写真を取りながら目の前にいる存在に話しかけていた。

その存在とは、一匹の白猫。この猫は野良の迷い猫で、今は愛から与えられた餌を夢中で貪り食っている。

すると隣に座り込んでいた璃奈が愛に訪ねる。

 

璃奈「運動部の助っ人はいいの?」

 

愛「この後行くよ?」

 

璃奈「お家の人、どうだった?」

 

愛「やっぱダメだった〜飲食店だしねぇ。」

 

璃奈「うちのマンションもペット禁止。」

 

二人が話し合っているのは、なんとかこの白猫の面倒を見られないか、についてだった。

いつまでもここに放置しておく訳にもいかないし、早い所ちゃんとした家で飼う方がこの白猫にとっても良い事なのだが、先程2人が言った様に、お互いの家庭の事情でそれは叶わない。

愛と璃奈は揃って「はぁ〜……」と溜め息を吐いた。

 

すると璃奈が何かに気付き、「ぁ……」と呟いて横を見る。

愛もそれにつられてそちらを見ると、石段ベンチに座る小柄な少女を視界に入れた。

 

璃奈「昨日、はんぺん連れてった人だ。」

 

なんとこの白猫、既に名前が付けられていた。

 

 

 

 

 

かすみ(いつでも皆が戻って来れるように頑張ってたのに••••••)

 

かすみは「はぁぁぁぁぁ……!」と盛大に溜め息を吐いて、自分の頭をポカポカ叩きながら嘆く。

 

かすみ「どうしたら良いんですか〜!!かすみん困っちゃいますぅぅぅううぅぅぅ!!」

 

最後には両手で頭を抱え込み、左右に振り始めた。

すると突然、声が聞こえた。

 

侑「困ってるの?」

 

かすみの隣。そこにはいつの間にか侑が座っていた。

侑は両手を頭に当てて思考停止しているかすみを見ると、

 

侑「へへぇっ♪」

 

何事もなかったかの様にはにかんだ。

それでようやく思考の時間が再開したのか、かすみは両手をワタワタ降って驚いた。

 

かすみ「うわあぁぁぁぁああっ!?いつの間にぃぃぃぃいいっ!?」

 

侑「何か様子おかしかったから。」

 

かすみは動きを止めて訪ねる。

 

かすみ「歩夢先輩は……?」

 

侑「もう少し練習してから、公園行くって。」

 

それを聞いたかすみは段々涙を滲ませ、

 

かすみ「……うぅぅ……うわあああああん!!!」

 

突然泣いて侑に抱きついた。侑はバランスを崩して後ろに倒れた。

 

侑「うわあああああっ!?」

 

かすみ「侑先ぱぁぁぁ〜〜!!」

 

或人「お待たせ……ってどういう状況?」

 

今の状況に或人はついていけていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃歩夢は学園内の誰も居ない場所で自己紹介の練習を始めようとしていた。

周りをしきりに確認し、深呼吸して練習開始。両手をウサギ耳に見立てて、あざと可愛くやり始めた。

 

歩夢「新人スクールアイドルの、歩夢だピョン!臆病だから、寂しいと泣いちゃう〜!ピョーン!暖か……」

 

果林「………」

 

しかし、不意に横から視線を感じて中断した。顔中を嫌な汗が流れて覆う。

ただの勘違いであってほしい。悪い夢なら覚めてほしい。

そう思いたかった歩夢だが、現実は非情だった。

 

果林「フフッ♪」

 

歩夢「あわわわわわっ!!?」

 

歩夢は両腕をワタワタ振った後、心臓を掴まれたかの様に硬直した。

真っ赤になった顔をそちらに向ければ、そこにいたのは朝香果林だった。

 

歩夢「こ、これはぁ、その……練習をしてて……ス、スス……」

 

穴があったら入りたい。

そんな差恥に悶ながらも、必死に黒歴史を塗り替えんと弁解する歩夢だが、混乱で呂律が回らない。

そんな歩夢に果林は嘲笑するでもなく助け船を出した。

 

果林「スクールアイドル?」

 

顔を赤くしたまま首を激しく何度も縦に振って肯定する歩夢。

果林は再びクスリと笑い、

 

果林「フフッ。そう言う事?ごめんなさいね?とっておきの可愛い所見ちゃって。でも、それはあなたの言葉?」

 

歩夢「え………?」

 

果林「もっと伝える相手の事を意識した方が良いわよ?」

 

歩夢「……頭では分かってるんですけど、今の私にファンなんて居ませんし……あ!」

 

そこまで言いかけて、歩夢は思い出す。

ファンという漠然とした者より、もっと明確に頭の中に思い浮かべられる存在を。

自分がスクールアイドルをする原動力である、夢を見守ってくれる少年と少女を。

 

歩夢「応援してくれる人なら……居ます!」 

 

果林「ウフフッ♪お節介終わり。頑張ってね。」

 

歩夢の中で何かが決まった。

それが分かった果林はクールに去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、お台場の美容院で働いている美容師型ヒューマギア、『ジザーメンズ』がお客さんを送っていた。

 

ジザーメンズ「ありがとうございました。」

 

お辞儀をしてお店に戻ろうとすると振り返ると、後ろに迅がいた。

 

迅「み〜つけた!君は僕の友達だ。」

 

そう言った迅はジザーメンズの腰にゼツメライザーを無理矢理装着する。

 

ジザーメンズ「がぁ……ぁぁぁ!」

 

迅「人を殺して。」

 

ジザーメンズ「滅亡迅雷netに……接続。」

 

迅「はい。」

 

ジザーメンズはハッキングされてしまい、迅からネオヒゼツメライズキーを渡された。

 

『ネオヒ!』

 

『ゼツメライズ!』

 

ネオヒゼツメライズキーをゼツメライザーに装填するとネオヒマギアに変貌した。

 

ネオヒマギア「人間は殺す。」

 

迅「さあ、友達を増やそう。」

 

ネオヒマギアは指先から複数の白色のコードを伸ばしてお台場にいるヒューマギアを何体かハッキングしてトリロバイトマギアに変貌させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨海公園に行く途中の道で侑のライズフォンが鳴り響いた。

 

侑「或人、ヒューマギアが暴走した!」

 

或人「えっ!?」

 

かすみ「先輩方ぁ!あれ!」

 

かすみが指を指した方に視線を向けると、一体のヒューマギアがハッキングされトリロバイトマギアに変貌していた。

 

或人「ヒューマギアが……どうすれば……」

 

侑、かすみ「「或人(先輩)!」」

 

トリロバイトマギアが或人に襲いかかって来るが、一発の銃弾がトリロバイトマギアに命中した。

 

由香「飛電或人。」

 

そこに現れたのはショットライザーを持っている由香だった。

 

或人「刃さん……」

 

由香「迷ってるなら一つ教えといてやる。バックアップさえあればいつでも復元出来る。それが人工知能。それがヒューマギアだ!例え壊しても作り直せば済む話だ。」

 

由香がそう言うが、或人は納得出来てなかった。

 

或人「そう、簡単に割り切れるかよ……!ヒューマギアは人間と心を通わすパートナーだ。道具じゃない!」

 

或人はヒューマギアは道具じゃないと叫ぶ。しかし。

 

由香「ただの道具だ。」

 

『ショットライザー!』

 

由香の考えは変わる気はなかった。由香はショットライザーを腰に巻いてあるバックルに装着する。

 

右手でラッシングチータープログライズキーをクルクル回しながら顔の左横に持ち薬指でボタンを押す。

 

『ダッシュ!』

 

プログライズキーを起動し、バックルにセットされているショットライザーへプログライズキーを装填。

 

『オーソライズ!』

 

『Kamen Rider……Kamen Rider……』

 

由香「変身!」

 

『ショットライズ!』

 

そのままトリガーを引くと走り放たれた弾丸からアーマーが展開する。

 

『ラッシングチーター!"Try to outrun this demon to get left in the dust." 』

 

トリロバイトマギアをキックしアーマーが由香の体を包みこむ。

右半身にオレンジのアーマーが装着され、由香は仮面ライダーバルキリーラッシングチーターに変身した。

 

バルキリー「人工知能特別法違反を確認。対象を破壊する。」

 

するとトリロバイトマギアが大量にバルキリーに襲いかかってきた。

 

バルキリー「はっ!はっ!」

 

バルキリーはジャンプしキックでトリロバイトマギアを攻撃していく。

 

侑「由香さんも変身した……!」

 

かすみ「仮面ライダー……あっ!或人先輩!」

 

或人「かすみん……?」

 

いきなり名前を呼ばれた為、或人は振り向いた。

 

かすみ「昨日、由香さん言ってましたよね?ヒューマギアとどう向き合うかは人間次第だって!」

 

或人「人間……次第……?」

 

侑「かすみちゃん……!」

 

或人「……これ以上、ヒューマギアを悪い事には使わせない!」

 

或人はそう言って、ゼロワンドライバーを装着する。

 

『ゼロワンドライバー!』

 

『JUMP!』

 

認識待機状態に移行したプログライズキーをベルトの『オーソライザー』にかざす。

 

『Authorize!』

 

ライダモデル『バッタ』がエネルギー体として転送され、或人の周囲を飛び跳ね続け或人の後ろへと移動し、叫んだ。

 

或人「変身!」

 

プログライズキーをベルトに差し込む。

 

『プログライズ!』

 

『ライズアーキテクター』に包まれ、或人の体を守る為に出現した装甲が分解•構築され、纏わると変身を完了した。

 

『飛び上がライズ!ライジングホッパー!"A jump to the sky turns to a rider kick"』

 

或人は仮面ライダーゼロワンに変身した。

 

変身を完了すると、ネオヒマギアがやってきて襲ってきた。

 

ネオヒマギア「ふっ!」

 

ゼロワン「はっ!」

 

ゼロワンとネオヒマギアキックやパンチを繰り出す。

 

かすみ「或人先輩も仮面ライダー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニの外では、勇がコンビニでおにぎりとお茶とバナナを買ってコンビニから出ると、トリロバイトマギアの姿が目に入った。

 

勇「またヒューマギアの暴走か!ぶっ潰す!」

 

『バレット!』

 

プログライズキーを起動すると、こじ開けようとしていた。

 

勇「ぬおぉぉぉぉぉおー!!」

 

雄叫びと共に勇はプログライズキーをこじ開けて、ショットライザーへと装填する。

 

『オーソライズ!』

 

プログライズキーを装填すると、銃口を向ける。

 

『Kamen Rider……Kamen Rider……』

 

勇「変身!」

 

『ショットライズ!』

 

引き金を放つと弾丸が現れて勇の右手がそれを殴ると砕け、アーマーになっていき体に纏わる。

 

『シューティングウルフ!"The elevation increases as the bullet is fired."』

 

勇は仮面ライダーバルカンに変身した。

 

バルカン「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルキリー「たっ!はっ!」

 

バルキリーは荷物の後ろに隠れながら、荷物を押して次々とトリロバイトマギアに銃撃していく。

 

 

 

 

同じ頃、ゼロワンはネオヒマギアに苦戦していた。

 

ゼロワン「ゲソが取れない〜!」

 

触手がゼロワンに巻き付いていて中々取れないでいた。

 

その時、

 

イズ「或人さん!こちらをお使いください!」

 

イズが現れプログライズキーを投げ渡す。

 

イズ「新型のプログライズキーです。」

 

ゼロワン「ありがとう!」

 

ゼロワンはバイティングシャークプログライズキーを起動する。

 

『ファング!』

 

プログライズキーをゼロワンドライバーの『オーソライザー』にかざす。

 

『Authorize!』

 

ゼロワン「行くぜ!」

 

『プログライズ!』

 

プログライズキーをベルトに差し込む。

 

『キリキリバイ!キリキリバイ!バイティングシャーク!Fangs that can chomp through concrete.』

 

ライジングホッパーのアーマーが変形•移動し、マスクは左右に分裂して上下逆に即頭部に、胸部アーマーは腕に移動し鮫の鰭のような形状『アンリミテッドチョッパー』になる。

仮面ライダーゼロワンバイティングシャークにフォームチェンジする。

 

ゼロワン「お前を止められるのはただ一人!俺だ!」

 

ゼロワンは新しく装備された腕にある背鰭で攻撃しながら、ネオヒマギアを追い詰めていく。

 

ゼロワン「はっ!」

 

ネオヒマギア「ぐわぁ!」

 

ゼロワンはプログライズキーを押し込み必殺技を発動する。

 

『バイティングインパクト!』

 

ネオヒマギアの触手を蹴りで塞ぎながら近付き上空へ蹴り上げた。

 

ゼロワン「はぁぁぁぁあ!!」

 

さらにゼロワンは前腕からエネルギー体の刃を発生させ、両側から鞭を切断する。

 

 

 

 

 

 

グインパクト

 

 

 

 

 

ネオヒマギア「ぐわぁーー!?」

 

最後にゼロワンはチョッパーで噛み砕く様に挟み込みネオヒマギアは海に落ち爆発した。ネオヒマギアを撃破する。

 

 

 

 

 

 

『ダッシュ!』

 

バルキリーが必殺技を放とうとしていると、バルカンがトリロバイトマギアと戦いながらバルキリーの所まで来た。

 

『ダッシュラッシングブラスト!』

 

トリロバイトマギアの周囲を急加速で旋回しながら、ショットライザーで一点にエネルギー弾を連射。

 

 

 

 

 

ラッシングブラスト

 

 

 

 

 

 

バルキリー「はっ!」

 

高速移動で走りながらバルキリーの攻撃によりトリロバイトマギアを全て撃破した。

 

バルキリーはバルカンの前で変身を解除する。

 

由香「これが戦い方の手本だ。」

 

そう言い由香は去っていく。

 

勇「おい!こいつが2つあるなら初めから言え!」

 

 

 

 

迅は浜辺に流れ着いたゼツメライズキーを回収していた。

 

 

 

 

 

 

或人「ふぅ〜……」

 

或人は変身を解除して侑とかすみの所へ戻っていく。それを木の陰から写真を撮っていた者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方。

 

レインボーブリッジが傍目に見える場所に、かすみと侑と或人はいた。海水と淡水が混ざる水面を見つめながら、かすみは己の苦悩を独白する。

 

かすみ「かすみんには、一番大切にしたいものがあって……だから、スクールアイドルがやりたくて……それはきっと、みんなもそうなんですけど……やりたい事はやりたいんです。けど、人に押し付けるのは嫌なんですよぉ。なのに、かすみん、歩夢先輩にそれをしちゃって……」

 

それを聞いた侑と或人はそれぞれ感じた事を素直にかすみに言った。

 

或人「確かにそう言うのはダメだよね。私利私欲の為に押し付けるのは迷惑だし。」

 

侑「ん〜……つまり、それぞれやりたい事が違ってたって事でしょ?それで喧嘩しちゃうのは仕方無いと思うけどなぁ〜。」

 

かすみ「仕方ないじゃ困るんです!!このままじゃ、また同好会が上手く行かなくなっちゃいます!!」

 

本気で焦り、頭を抱えるかすみ。そんなかすみを見て二人は、

 

侑「えへっ♪悩んでるかすみんも可愛いよ?」

 

或人「確かに!悩んでる姿も良いよね。」

 

かすみは両手を頬に押し付け目をパチクリさせていたが、

 

かすみ「えっ?むぅーっ!!」

 

からかわれたと感じてムキーッと唸り、二人をポカポカ叩きながら言う。

 

かすみ「先輩方!こんな時にからかわないでくださいよぉ!!」

 

侑「からかってないよ〜。」

 

或人「正直な気持ちを言っただけなんだけどな〜。」

 

そこに歩夢が走って合流してきた。

 

歩夢「遅れてごめんなさーい!」

 

侑、或人「「歩夢!」」

 

走った息を整えた歩夢はかすみに言う。

 

歩夢「あの、自己紹介なんだけど!」

 

かすみ「あ……」

 

さっきの独白で自分の過ちに気づいたかすみは歩夢にもういいと言おうとしたが、その前に歩夢が晴れやかな笑顔で言った。

 

歩夢「今、撮って貰って良い?」

 

かすみ「え……?」

 

呆然としたかすみは思わず二人に助けを求めようと視線を向けるが、それに二人は「フフッ」と笑う。

 

かすみ「あ、はい!」

 

かすみはライズフォンを取り出し、動画撮影の為に構えたと同時に歩夢は深呼吸1つしてから切り出す。

 

歩夢「じゃあ行くね!」

 

かすみ「……どうぞ……」

 

一体どういう心境の変化なのだろう。

そうかすみが疑問に思う中、歩夢の自己紹介を始まった。

 

歩夢「虹ヶ咲学園普通科二年、上原歩夢です!自分の好きな事、やりたい事を表現してくて、スクールアイドル同好会に入りました。」

 

かすみ「ぁ……」

 

自然とかすみの口から声が漏れた。

 

歩夢「まだまだ出来ない事はあるけど、一歩一歩、頑張る私を見守ってくれたら嬉しいです!宜しくね!えへっ♪」

 

最後に『あゆピョン』を取り入れて終了した撮影。

それはかすみらしい表現とはかけ離れたもの。

それでも、確かにかすみは歩夢の表現に惹かれるものを感じていた。

 

かすみ「わぁ……」

 

その証拠に惚けた呟きが出ている。

歩夢はそれに気づかず、やりきった様に両膝に両手を乗せ、不安そうな表情で訪ねた。

 

歩夢「どうかな?」

 

それに最初に反応したのは二人で、侑は歩夢に勢い良く飛び付いて、嬉しそうに告げて、或人は歩夢の肩に手を置いて嬉しそうに言う。

 

侑「わぁ〜!すっごく可愛い!ときめいちゃった!あっははっ♪」

 

或人「歩夢らしくて可愛いよ!」

 

そこにかすみが空気を変える為のあからさまな咳払いを「コホンッ!」と一つして、三人の注意を向けさせる。

 

侑、歩夢、或人「「「ん?」」」

 

かすみ「かすみんの考えてたのとはちょっと違いますけどぉ、可愛いから合格です!」

 

歩夢「本気!?うっふふふ♪良かった〜。」

 

かすみ「うあっ!?うぅ……」

 

歩夢の笑顔にかすみはバツが悪そうに背を向けるが、そんな彼女の肩に或人と侑は手を乗せて言う。

 

かすみ「ぁ……」

 

或人「多分、やりたい事が違っても大丈夫だよ。」

 

かすみ「え?」

 

侑「上手く言えないけどさ、自分なりの一番をそれぞれ叶えるやり方って、きっとあると思うんだよ。」

 

かすみ「……そうでしょうか?」

 

或人「なりたいものは違うけど、目指すものは同じかも……ってね。だからさ、探してみようよ!」

 

かすみ「??」

 

侑「それに、その方が楽しくない?」

 

二人の言葉に、かすみは数秒思考する。一度は噛み合わず、外れてしまった歯車。

またやって、失敗したらどうしようという不安な気持ちはある。

でもそれは、ちゃんと互いが目指す方向を言わずに、押し付けあったから。

 

今なら大丈夫なんじゃないだろうか?

未だ悩むかすみに、歩夢が背中を押す様にクスリと笑いかけると、彼女もようやく覚悟を決められた。

 

かすみ「楽しいし、可愛いと思います!」

 

侑「にひっ♪でしょ?」

 

かすみ「あっははははっ♪先輩方!見ててください!」

 

迷いが晴れたかすみは何を思ったのか、背後の煉瓦造りのオブジェに走っていき、それに足をかけると塀の上によじ登る。

そして立ち上がると、祈る様に手を組み。

 

かすみ(色んな可愛いも格好良いも••••••一緒に居られる。そんな場所が本当に作れるなら••••••)

 

次の瞬間にはビシッ!と歩夢に人差し指を突きつけた。

 

かすみ「でも!歩夢先輩!どんなに素敵な同好会でも、世界で一番可愛いのは………かすみんですからね!」

 

宣戦布告をした彼女は、いつだって頂点を目指すように、頂点に立つべく、人差し指を天に向けた。

 

 

 

 

(♪:Poppin' Up!)

 

 

 

彼女が構築し、彼女が目指す世界。

そこには一体、何が待っているのだろう。

 

かすみ(色んな可愛いも格好良いも、一緒に居られる。そんな場所が本当に作れるなら……そこは絶対、世界で一番のワンダーランドです!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、虹ヶ咲学園の生徒会室では、果林がしずく、エマ、彼方の三人を伴って生徒会室を訪れ、菜々と対面していた。

 

果林「返すわ。生徒名簿。勝手に借りちゃってごめんなさいね。優木せつ菜と言う生徒の名前は、何処にも見つからなかったわ。」

 

他のメンバーが気まずそうに見守る中、果林は生徒名簿を菜々に返しながら言う。

かすみが生徒会室を襲撃したあの時、果林はその混乱に乗じて生徒名簿を密かに持ち出していたのだ。

 

『優木せつ菜』が何者なのかを探るために。

 

果林は犯人を追い詰める探偵のように、淡々と菜々に訪ねる。

 

果林「居ない筈のせつ菜と、どうやって廃部のやり取りが出来たのかしらね?」

 

笑顔なのに全く笑っていない目、探るような言葉尻が、無表情の菜々の心に刺さっていく。

そんな菜々に追い打ちをかけるように、果林の口から確信に満ちた言葉が飛び出した。

 

果林「教えてくれる?優木せつ菜さん?」

 

 

 

 

 

 

一方何処かの建物では、由香が上司らしき男に報告をしていた。

 

由香「飛電インテリジェンスの企業秘密を入手しました。デイブレイクによって消滅したと思われたプログライズキーのデータが飛電にある事を突き止めました。」

 

男の腕のブレスレットに写っているのは或人が変身解除した瞬間でバイティングシャークプログライズキーが大きく写っていいた。

 

?「つまり、あのお方、方舟は蘇る。その鍵となるのは飛電の切り札……ゼロワン。」

 

 





次回はせつ菜回です!





第4話 大好きを叫ぶ
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