勇者一行の『村娘』   作:テイラノ

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『ロア村』

 

 王都から延びる街道を歩いていく。

 

 今、私の手にはある魔道具がある。一定量の魔力を籠めると色が変わる魔道具で、訓練用としてセージさんが用意したものだ。セージさんが調整したようで、籠めなければならない魔力量や流れが一定時間で変わるようになっている。

 適切に色を表示すると魔力が循環するが、魔力量や流し方を間違えると魔力が放出されて無くなってしまう仕組みになっている。

 つまり、正しい色にしていないと魔力が枯渇していってしまうのだ。

 セージさん曰く、呼吸をするように魔力操作をできるようになってほしい、とのことだ。確かに、歩き続けながらこの操作をするのはそれなりに難しい。

 

 次の目的地は王都近郊にある幾つかの村の一つだが、それなりに距離はある。

 疲れるだろうな。

 

 

 ちなみに、出発した私たちが最初に向かうのは魔王領…ではなく、人類領の村々だ。

 

 現在の人類領は大半がこの数百年で『魔族』から取り返した土地であり、にもかかわらず各地に伝説や神話、風習などが残っている。

 恐らく、私の村もそんな風習が残る村の一つだったのだろう。

 つまり、人類領には封印された『魔族』やその影響が残っているのだ。

 私たち『勇者一行』の任務は『魔王』討伐だけではなく、それらの不穏分子を管理、駆逐していくことでもある。

 

『不穏分子とは酷い言い様ね。でも、無事に復活していたとしたらそこら辺で暴れていたかもしれないということも事実。だから、否定はできないわ』

 

 『魔女』の声が聞こえてくる。

 魂は隔離したのに何故だ?

 

『魔力を媒介すれば簡単よ。壁があっても、大きな音は聞こえるでしょう?』

 

 …なるほど、そういうものか。

 ということは、究極的に言うと、魂が隔離された今の状態でも貴女(『魔女』)は私の魂をいじり回せるのだろうか。

 もしそうだとしたら、私が自分の魂をいじった意味が無いのだが。

 

『何のことかしら。よく分からないわ~』

 

 茶目っ気のある声(腹立たしい雑音)が聞こえてきた。

 王城の中で無駄な時間を過ごしていたのかと思うと溜め息が出そうになる。

 人に時間を浪費させるなんて、やはり『魔女』は『魔女』だな。

 

 

 それはそうとして、昼なのに少し寒くなってきた。

 王都を出発したときは晴れだったのに、何時の間にか雲も出てきている。

 

「…小屋が見えてきたな。少し疲れてきたし、休もうか」

 

 疲れたという理由で休憩することになった。

 道の脇にあった小屋に入って椅子に座る。

 妙に椅子の座り心地がいい。

 王都が近いから、こんな小屋の椅子まで質がいいのだろう。

 

 一段落ついた頃、セレナさんが口を開いた。

 

 

「勇者さま、『魔女』の居場所について話していただけませんか」

 

 王都を出る前に話していたことだろう。

 セージさんも予想できていたようで、真面目な表情になって質問に答えた。

 

「ああ、『魔女』についてなんだが…」

 

 セージさんがこちらをチラチラ見てくる。恐らく話していいのか迷っているのだろう。

 いや、そこまでいったらさっさと話せよ。

 私が『ご自由にお願いします』と身振りで伝えると、セージさんは改めて話し始めた。

 

「…実は、『魔女』は、ヘレナの中に居るんだ」

「はい?何を言っているんですか?セージさん」

 

 セレナさんは『勇者さま』と呼ぶことも忘れて狼狽えている。

 まあ、無理もないだろう。

 実際、『魔女』の胸先三寸で私は爆ぜるかもしれないのだ。

 その点で言えば私も少し驚くところがある。

 

「驚かないってことは、ヘレナは気付いていたんだな」

「うん。『魔女』は私に最低限の干渉しかしなかったし、下手なことを言って殺されたくも無かったから。今まで言えなくてごめんなさい」

「えっと…ヘレナさんは『魔女』を抱え込んでて、セージさんはそれを知ってて…ってことは知らないのは私だけじゃないですか!」

「あ、ごめん」

「まあ、そうなるよね」

 

 実質、セレナさんが確認作業をするためだけの時間とも言える。

 

 小屋の外で大雨が降る音を聞きながら、私が感じた『魔女』の情報とセージさんが感じた『魔女』の情報をすり合わせていく。

 

 ていうか、今更ながらに思ったのだが、人の魂を覗いてるとかとんだ変態だな。

 

『そういう見方もできるわね。考えてたら怖くなってきたわ…』

 

 『魔女』と意見が合ってしまった。でも、似たようなことを考えていたのは意外だ。

 『魔女』も怖いものは怖いんだな。

 セージさんにちゃんと伝えなければ。

 

「今も少し『魔女』と話してたんですけど、『セージは変態で怖い人』ということで意見が一致しました」

「え、何話してんの」

「…まさか、ヘレナさんに変なことを要求していませんよね」

「ナイナイ無いって!本当に、無いから!」

 

 私の言葉に反応したセレナさんがセージさんに詰め寄っている。

 どうやら変な誤解をさせてしまったようだ。

 

 …フッフッフ、もう少しセージさんをいじめてやろう。

 

「結構個人的に大事な場所も見られちゃってるみたいだしな~、ちゃんと考えると恥ずかしいな~」

「な、ななな…!」

「誤解を生むような言い方は止めてくれ。あと、そこまで想像しながら見てないから安心してくれ、頼むから」

 

 その言い方だと、想像さえ出来ればかなり際どいものを見られていることになるのだが……はっきり言われてしまうと、本当に恥ずかしいな。

 

「…セージさん、故郷も家族も失ってしまった子どもに何してるんですか!勇者失格ですよ!破門されても文句は言えませんよ!」

「命を救うために必要な措置だったんだよ。それに、本当に大まかなものしか見てないから、その顔を上げてくれよ、な?」

 

 …あ、私が俯いていたからまた話が拗れているのか。

 でも、今は顔が赤くなっているので、直接二人に見せてしまうとさらに話が拗れそうだ。

 

「嫌だ、顔は見せたくない」

「セージさん!」

 

 セレナさんが声を張り上げている。

 やっぱり、セレナさんは一人で突っ走っていくような、危なっかしい所がある気がする。

 私のために怒ってくれるのは嬉しいが。

 

「セージは何もしてないから、大丈夫です。それに、見られても多分大丈夫。私は、特に何も思わないから」

 

 まあ、今更な話ではあるのだ。

 セージさんはセレナさんを口説くこともできない腰抜けだが、それ故に私に手を出してくることは無いだろう。それに、例えそうだとしても、私はそれ以上のものを返せないし、酷いことはしないはずだと信じているのだ。

 故に、何も問題は無い。

 

 …何も思わないというのは嘘になるが。

 

「でも…我慢してないですか?本当に、セージさんに酷いことはされてませんか?」

「全然問題無いです。そもそも、そんなことをされてたら私は此処に居ません。

それに、セージと二人でいた時間はこの数日間でもごく少ない時間しかないです。

つまり、私はセージに変なことをされる余裕は無かったと言えます」

「じゃ、じゃあ、大事なところを見られたっていうのは…」

 

 ふむ、もう少し詳しく答えるとしよう。

 

「…実は、『魔女』は私の魂の中にいます。

そして、『魔女』を魔力で監視しているということは、私の最も繊細で私的な空間をジロジロと見られながら弄られていることと同義になります。

つまり、大事なところを見られただけじゃなくてしっかり確認されたことに…あれ?」

 

 不味い。

 セージさんを庇うつもりだったが、表現の仕方が悪かった。

 修正しなければ。

 

「とにかく、私は特に困ってないので大丈夫です!」

「そ、そうですか。困ってないならいい、のかな?」

「そうそう。ですよね、セージさん」

「あ、ああ…ごめん」

 

 なんとかセレナさんを丸め込むことに成功した。

 何故か、セージさんは顔を顰めているが気にしない。

 

 取り敢えず話が終わると、改めて、旅程や資金の確認作業に移ることにした。

 

「まず、今回向かう村についてだ。この村までは半日かかるので、村で一晩過ごしてから『魔族』への対処を行うことにする。また、村の住民や旅人など、駐屯している騎士団すら俺たちが来る理由を知らない。だから、最初は周りの人と極力関わらないようにして村長の家に向かう。宿を取るのはその後にしよう」

「分かりました」「了解」

 

 一先ず理解した。しかし、私の村の時もそうだが、『勇者一行』は秘密主義なのだろうか。

 実は、この旅で「私たちが『勇者一行』であること」を示すことは禁止されている。王令すら出ておらず、私たちの噂を広める役割は村人たちや商人等の伝聞に任せるらしい。なんでも、魔族たちに『勇者一行』の正確な情報を与えたくないのだそうだ。

 人々を安心させたいのか、それとも『魔王』を討伐したいのか。

 高貴な人の考えることは分かりづらいな。

 

「食料などの物資も2、3か月分程あるが、これから向かうすべての村で調達などは行っていくつもりだ。費用は王から村長に配られているので気にしなくてもいい。ただし、私用で欲しいものを買う場合は財布と相談する必要があるから言ってくれ。無理のない範囲で許可できると思う」

 

 ふむ、無理のない範囲とはどの程度だろうか。

 

「今はどれくらいの金額が財布の中に入ってるの?」

「今入っている金額は、大体金貨5枚と銀貨30枚ってところだな」

「なるほど。了解」

 

 ちょっとした貴族並みの資産だ。

 しばらくの路銀には困らないだろう。

 

 そこから多少、人類領での予定を話し合った。

 話し合いが終わる頃、ふと意識を耳に傾けると、屋根を打つ雨音は消えていた。

 

「そろそろ出発しようか。日が暮れるまでには、次の村に着きたい」

 

 

 セージさんは外の様子を確認すると、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 夕方、最初の目的地である『ロア村』が見えてきた。

 この村は王都近郊で最も貧しいことから、王都の貧民街に次ぐ第二の貧民街として知られている村である、らしい。

 

 村に入ると、見慣れない空間が広がっていた。

 表通りの市場にいる商人や旅人、住民なども小汚い格好をしており、裕福な人間が多い王都近郊にしては珍しい雰囲気を纏っている。

 淡い夕日が裏路地から覗いている子どもを暗く照らし、不気味さを際立たせている。カラスの鳴き声がやけに耳に残る。

 

 というわけで、これ以上は村の様子を見ないようにして進んでいく。

 村の入り口から延びる大通りを真っ直ぐ歩いていき、開かれている巨大な門の前で立ち止まった。

 少し待っててくれ、と言うと、セージさんは門の裏にいる人たちに話しかけに行った。

 

「王都から派遣されて来た者だ。王様からの書状が届いている筈なので、確認をしてほしい」

「うぃ~っす。分かりましたっと」

 

 伝えられた人間が門の奥に見える屋敷へ入って行った。かなり俗な門番だった。顔や腕は傷だらけに見えるし、傭兵の出身かもしれない。

 

 しかし、門の中には、貧しい村であるはずだがそれなりに立派な屋敷が見えた。周りの家と比べると、大きさも複雑さも一線を画していて、異質さが際立っている。それなのに、粗野な門番を置いておく理由は何なのだろうか。派手に見せたいのであれば相応の教育などは必要だと思うのだが。

 

 少し考えていると、屋敷へ入っていった門番が慌てた様子で戻ってきた。

 

「お、お待ちしておりました、『勇者一行』様。ごあんない、いたします」

 

 こういったことに慣れていないのか、門番は妙に不自然な様子で私たちを迎え入れた。屋敷の中に入ると、目に見えて豪華であったりキラキラ光っていたりする物が多く感じた。村長の趣味だろうか。

 

 しばらく歩くと、一層豪華な扉の前で門番の足が止まり、緊張した様子でその扉を開けた。

 

「お、オクルス様!『勇者一行』様がご到着なさりました!」

「ご苦労さん。元の仕事に戻っていいぞ」

「は、はい!」

 

 門番はそのまま、逃げるように仕事へ戻っていった。

 セージさんは失礼しますと言いながら部屋に入り、セレナさんと私はそれに従った。

 

「お初にお目にかかります。今代の『勇者』を任されました、『セージ・マキハラ』と申します」

「…堅苦しいのは苦手なんだ。もっと楽に接してくれ。それと、私はこの村の長をやっている『オクルス・フェルナンディ』だ。よろしく」

「………よろしく」

 

 セージさんは居心地の悪そうな顔をしてオクルスと握手をした。

 

「どうぞ、座って」

「ありがとう」

 

 セージさんに続いて私たちも長椅子に座る。

 椅子が深すぎて、布に包み込まれているようだった。

 

「『勇者一行』のご活躍は王都でも有名だったろう?何せ、こんな柄の悪い村でも噂話で持ちきりだからね」

 

 早速といった様子でオクルスは二人を褒め始めた。

 

「ハハハ、そうですね。そこまでいい活躍はできなかった筈なんですがね…」

「いやいや、古文書の記録を見る限りでも『魔女』の能力は凄まじいものだった。それを退けるなんて、騎士か、男爵か、それ以上の()()に叙位されてもおかしくない程の偉業だよ!しかも、損害は村一つが滅亡しただけだ。幾つもの国々を焦土に変え、山を均し、湖を干し、地脈を操り、砂漠で洪水を起こした数々の記録と比較しても、ここまで被害を抑えられたことは奇跡に等しい。つまり、それほどまでに君たちは凄いことをしたと言えるだろう!!」

「…ソウデスネ」

 

 その『魔女』は私の中に居ますよ。

 今は私の記憶から恥ずかしいものを厳選しています。

 いや、何してんだよ、ふざけんな。

 

『全部事実だからつまらないのよ。貴方の自作詩集を見ている方がましよ』

 

 軽い共感覚が働いているらしく、私が詩を作るために四苦八苦している映像やその時の感情が強制的に想起される。

 やめてください死んでしまいます。

 

『貴方こそ、話を聞いていないと置いていかれるわよ』

 

 その元凶が何を言うのだ。

 今も別の考えが脳裏にちらついて集中できない。

 しかし、言っていることも事実なので諦めよう。

 

「…さて、あなた方が来た本題について話しましょうか」

 

 突然、オクルスは真面目な表情になった。

 笑顔が消えて目も細められ、その視線は私たちを射貫いて内に入り込んでくるようだった。

 

「例えば『魔女』が良い例ですが、国や地域を問わず様々な村や場所で有力な魔族が封印されています。

そして、王都からほど近いこの場所も例外ではありませんでした。『ロア』と呼ばれるこの地域にはある魔族の封印があると言われており、実際にそれらしい封印の施された森と、その仔細が『魔女』の封印と同時期の文献から確認できます。文献が正しいとするならば、初代勇者及び初代聖女によって『五段階霊層結界』と『魔力を生命力に変換する魔法』がかけられており、数百年経った今でも機能しているということになりますね。現地に赴き確認したところ、実際に生命力が溢れる森で現在もその植生を広げているようです。…ここまでは王都でも説明を受けていると思いますが、大丈夫ですか?」

「はい」

「私も大丈夫です」

「…あー、うん。大丈夫です」

 

 うん、何言ってんの?

 ていうか、そんな説明は無かった気がするんですけど、いつされたんですかね?

 

「ヘレナ…渡した本を読んでおけって、言ったよね?」

「それってどの……あ、」

 

 完全に忘れていた。

 そもそも、そんな本を貰った記憶すら忘却の彼方にあるほどに曖昧な返事しか返していない。

 

「命にも関わるから、早く読んでおきなさい」

「…はい」

 

 ちくしょう、こんな恥をさらすとは…!

 悔しがっていると、オクルスがまた話し始めた。

 

「まあ、とにかく、簡単な情報は今話したとおりです。

その上で、『勇者一行』の皆様にお願いしたいことがあります」

 

 オクルスが更に畏まった雰囲気を漂わせる。

 

 

 

「想像に難くなく、既に理解されていることであることはこちらとしても重々承知しておりますが、この地に縛られた魔族を討伐していただきたいのです。

そして、これはロア村の長としてではなく『オクルス・デューク・フェルナンディ』として、人類領に安定と平穏をもたらすために、この先も各地に封じられた魔族を討伐していただきたい。

どうか、最後まで、心を強く保って、魔族の討滅を成し遂げてほしい。それを、心から願っています」

 

「…承りました。ご安心ください。俺たち…いえ、私たちが必ず、この世界を平和に導きます」

 

 セージさんがそう返すと、オクルスは安心したような表情を浮かべた。

 

 最後は、明日の朝にオクルスが馬を用意し、私たちとともに魔族が封印された森に向かうことを約束して、私たちは屋敷を出た。

 

 

 

 

 

 …それにしても、私たちが背負うものをまざまざと見せつけられたような気分だ。

 一方的で独善的だが誰しもが心の隅に持つような、仄暗くて輝かしい希望。

 オクルスのような人間ですら乞い願う、平和と自由への渇望。

 

 

 

 

 私たちも、僅かでもそれを望めば、自身の願望を無に帰してでもそれを手に入れるために生きなければならないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 『ロア村』とは治安の悪い場所である。故に、普段から関わりが無かったり初めて来たりした場合は、関わる店の全てを確認する必要がある。

 

 結果として、私たちは、日が暮れて尚も今夜の宿屋を見つけることができていなかった。

 

「ごめん、どうしても気になっちゃって…」

「いえ、疑わしい場合は立ち止まって考えるべきです。

ですから、そんなに落ち込まないでください」

 

 セージさんがセレナさんに慰められている。

 何が起きたかと言えば、ただ、セージさんが見つけた宿屋の怪しいところを全て見抜いてしまったのだ。

 単純に値段が法外であったり、すすめられた部屋に隠し部屋があったり、宿泊客と宿屋が結託して私たちを襲おうとしていたり………

 

「どうしよう」

「う~ん」

「…」

『オクルスって奴に頼めばいいじゃない』

 

 お、『魔女』が不思議なことを言っている。

 彼にこれ以上の貸しは作れないのだが、それは考えているのだろうか。

 

『そんなことを考えても意味がないわ。貴女たちがこの村で頼れる人間は、さっきのオクルスって奴しかいないのよ。それなら、頼るしかないと思わないのかしら?』

 

 小馬鹿にしたような言い方が癪だが、言っていることは正しい。

 提案してみよう。

 

「オクルスに頼んでみるのはどう?」

「確かに、顔を知ってるのはオクルスさんしかいないんだよな…よし、戻るか」

 

 セージさんはそう言うと、オクルスの屋敷に足を向けた。

 

 屋敷に着くと、やはり開きっぱなしの門と門の裏に座り込む門番がいた。

 

「え、あの、どうかしましたか?」

 

 さっき私たちを案内した門番が狼狽えながら聞いてくる。

 

「すまない、オクルスさんにいい宿がないかを聞き忘れてしまったんだ」

「あ、なるほど……だったら、俺の家なんてどうですか?」

 

 なんと、門番が家に泊めると言い出した。

 

 …しかし、その提案は怪しい。

 疑心暗鬼に陥っているだけかもしれないが、この門番の行動からして、『勇者一行』を一晩泊めるという提案が思考の流れから浮かぶはずがない。

 何か裏があるはずだ。

 

「御一行様に失礼なことしちゃいましたからね。借りを返させてください」

「えっと、『借り』とかそういうことは考えてないんだけど…」

「いえいえ、これは俺の問題っすから。それに、御一行様も困ってるんでしょ?丁度いいじゃないですか!オクルス様も、今は明日の準備を整えてるから出てこられないだろうし。ね?」

 

 ………うん。あまり考えずに言っているのかもしれない。

 『魔女』ですら、私の中で腹を抱えて笑っている。

 

 

『ひー、お腹が痛いったらありゃしないわ。この村でよく生き残れたわね。騙されて殺されててもおかしくないでしょうに……プフッ』

 

 『魔女』には似合わないようなはしゃぎっぷりで大笑いし続けている。

 というか、いい加減にうるさいので、『魔女』の声が聞こえる音量を小さくする。

 

 そんな感じで話している内に、門番の家に着いた。

 村の外れにあり、小さいながらもしっかりとした造りになっている。門番は交代する時間であったらしく、丁度いいと思ったらしい。食べ物だけは私たちも持っているので、晩飯を4人で食べることにした。

 

「このパン美味いっすね!ここ(ロア)じゃあ食べられない味っす」

「ああ、王都で買ったパンだからな」

「スープの具も豪華で…本当に、ありがとうございます!」

「いやいや、こちらこそ『ありがとう』だよ。一晩屋根を貸してくれるなんてね」

 

 セージさんと門番の方は思ったよりも気が合うらしい。互いに言葉が弾んでいるように見える。

 飯を食べ終わり寝る時間になると、門番の方は寝床も用意してくれた。

 

「俺は床で寝るんで、御一行様はそこのベッドを使ってください」

「俺も床で寝るから、セレナとヘレナはベッドで寝てくれ」

「ありがとうございます」

 

 という訳で私はベッドに寝転がり、次の瞬間には眠ってしまった。

 

 




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