勇者一行の『村娘』   作:テイラノ

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初の評価に小躍りしそうです。
評価していただき、ありがとうございます。


『ロア村の記録』

──side『 』

 

 

『カロムの月、半月から三日月の日の出来事を記す。

 ロア村より南西に約“30km”程の距離を馬で走り、我々と勇者一行は『ヴィータ』と呼ばれている森林に到着した。

 馬を降り、各々が準備を終えると勇者一行は森の中へと入っていき、我々は野営の準備を始めた。我々の任務は勇者一行の送迎であるため、人を入れ替わらせながら野営を続けた。

 三日月となる日の夕方に勇者一行は森林から戻り、我々と共に村へ戻った』

 

 

 …古文書の中でも客観的で正確性に優れたものを読みたいとは言ったが、これほど単調な文章だと読む気が失せるな。

 

 もはや数百年も昔の話となり、人々の記憶から忘れ去られた記録ではある。しかし、事実を単純に書き連ねられただけの文章では、次の創作物に繋げることは難しい。

 次はもう少し()()なものを寄越して貰おうかな。

 そう思いながら記録を机の上に置き、しばらく書斎を離れた。

 

 夕方、書斎に戻ったところ、記録から紙の端切れがはみ出していることに気付いた。

 開いてみると、先ほど読んだ『勇者一行』に関する「記録」が書いてあった。

 

「あれ?こんな紙…この記録に挟まってたか?」

 

 訝りながらも、紙に書いてある文字を読む。

 

 読み進める内に、この紙に書かれていることの異常性に気付いた。なんと、森林に入った後の『勇者一行』の行動が記されていたのだ。

 しかし、筆跡が違うため、記録を書いた人間とは別の人間が書いたのだろう。

 

「ほうほう……すごいな」

 

 当初、『勇者一行』は三人で旅をしていたとされている。

 そして、この文章ではその三人の行動が一部を除いて書かれている。補足から、除かれた部分も推測することが出来る。

 少し、いや、かなり興味深い。

 

 新たな小説を書くための作業であることも忘れて、私は記録を読むことに没頭した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──side『ヘレナ・ブラウン』

 

 

 

 

 鬱蒼とした森は、魔境だった。

 

 道はある。獣道だが、明確な線が見える。暗澹とした森の奥に延びているのが見て取れる。

 問題は、左右から迫る夥しい数の魔物である。薄暗い森の中で、ほぼ常に、数体程の魔物が徒党をなして襲いかかってきたのだ。

 

「数が多いな……『(サンダー)』」

 

 セージさんも警戒は怠っておらず、常に魔法陣を空中に浮かせていた。今も、魔法陣から放たれた雷が群れの先頭を焼き尽くす。

 怯む魔物たちの中で一匹だけ、冷静に此方を見ながら鳴き声をあげる魔物がいる。恐らく、魔物たちの長だろう。しかし、次の雷がその魔物を貫くと、群れは瓦解してセージさんに倒し尽くされてしまった。

 

「ジャングル…ではないよな。でも、この木々の入り組み方と日照状況は異常に見える。……っていうか、どんな植生してんだ?滅茶苦茶じゃねーか、これ」

 

 ぶつぶつと呟き続けながら、セージさんが先頭を歩く。顔に数多の枝や蔓がかかってくる。とはいえ、ある程度はセージさんが聖剣で切り、切断面を火で焦がしながら進んでいるようだ。

 セレナさんと私はその後ろをついて行くが、セレナさんは一拍遅れて行動している。

 何かあったのだろうか。

 

「セレナさん、大丈夫?何か気になるの?」

「…ぁ、いえ、少し驚いてしまって」

 

 セレナさんはそわそわしながら、そんな風に答えた。見ると、周りをキョロキョロと見ながら歩いている。

 警戒しながら歩くということは、この森に違和感があるのだろう。つまり、驚くような何かがこの森にあるらしい。

 オクルスは『魔力を生命力に変換する魔法』と『五段階霊層結界』が森に掛かっていると言っていたが、それが関係しているのだろうか。

 

「森の『魔法』とか『結界』のこと?」

「…!はい、そうなんですよ!こんなにすごい結界を内側から見れるなんてそうそう無いんです!実はこの森の結界は大陸でも唯一無二と呼ばれるほどの素晴らしさで有名で、何故かと言うと、古来より数多の“天才”と称された聖職者や『聖女』ですらこの森の結界は再現出来なかったと云われていて、現在も解析と再現が試みられているのですが、最外層である『第一段階結界』しか研究が進んでいないんですよ。私も一度は見てみたいと思っていたんですが、なかなか時間が無くて……でも、実際に見てみると、魔力を丁寧に編み込んでいる中に条件を含ませる余裕を持たせて強固にしているようで、構造がとても綺麗に重なっていて感服してしまいました!」

 

 頬を赤らめながらセレナさんは力説した。

 よくわからないが、要するに、セレナさんはこの結界を直接見たがっていて、一目見た瞬間にある程度理解してしまったらしい。

 数多の天才が結界の表層までしか解析できていないのに、一瞬で考察をまとめたセレナさんは一体何なのだろうか…

 それはいいとして、セレナさんは結界の凄さに驚いていたようだ。どおりで、挙動不審になっていると思った。

 セレナさんの『聖霊魔法』は、その技量からして凡そ世間一般の聖職者が扱う魔法とは一線を画しているだろう。そんなセレナさんが惚れ惚れするほどの結界がこの森には張られている。

 

 

 …一体、私たちは何を相手にするのだろうか。

 

 

「大丈夫か?あと少ししたら一回休憩するから、あと少し頑張ってくれ」

 

 先頭を歩くセージさんから声が聞こえてきた。

 進む先を見ると、少し先に開けた草地があるのが見える。そこで休憩するのだろう。

 だが怪しい。この森はかなりの密度で木々が生えたり草が茂ったりしている。その中で、開けた場所が維持されているとは考えづらい。

 セージさんも怪しく感じたようで、多少進みが遅くなる。

 

「俺は怪しいと思うが、二人はどう思う?」

「私も怪しいと思う。入らない方がいい気がする」

「…同感です。明らかに誘い込まれています」

 

 三人とも同じ意見になった。しかし、依然として道幅は狭く、その左右は人間が通れるとは思えないほど密な森となっている。

 草地に入るほかに選択肢は無い。

 

「…少し止まってくれ」

 

 セージさんの言葉で私たちは歩みを止めた。石を草地に投げ込んだり魔法を打ち込んだりして異常を確認する。

 特に何も起こらないことを確認して、セージさんが先ず草地に入る。セージさん自身の身体に何も起きていないことを確認すると、私たちも草地に足を踏み入れた。

 

「二人とも、体調に異変は無いか?場合によっては、ここで少し留まるけど…」

 

 水を飲んだり軽食をとったりしつつ、心配そうな顔でセージさんが聞いてきた。私たちが雑談も出来るぐらいに大丈夫なのは分かっていると思うので、確認の作業だろう。

 

「大丈夫だよ。それに、前に進んだ方がいいと思う」

「はい。森の内部構造が未だに分からない以上、一刻も早く『魔族』に辿り着くのが最善だと思います」

 

 やはり、セレナさんも同じことを考えていた。

 この場所が怪しいのもあるが、森を出るのは早ければ早いほどいい。寧ろ、十日間の期限を過ぎれば、村まで歩いて帰らなければならない。そんな面倒は避けたい。

 

「…分かった。先に進もう」

 

 セージさんが、再び先に進む道に向かって歩き出す。

 私は手元が暇だったので、馬車の中でのように魔道具で特訓しながらついて行こうとした。

 

 

 

 

 

 魔道具に魔力を流し込んだ瞬間に、私の視界は白く瞬いた。

 

 

 

 

 

 

 

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