主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
「誠に申し訳ございません…。現在、空いてるお部屋は後お一つしかございません。」
「「はあ?」」
からくり工房から帰ってきた俺達が最初に耳にした言葉はそれだった。
ゲーテホテルの受付で俺となのかの部屋の鍵を貰いに行くと、受付の人が申し訳なさそうに、部屋が一つしか空いていないと言ってきたのだ。
「それはどういう事だ?カカリアが俺達の部屋を手配したよな?何か手違いがあったとか?」
「いえ、大守護者様より、お客様の部屋を3つ用意するようにと仰せつかっております。」
「なら、何で一つしか無いんだ?」
可笑しいよな?
カカリアから3つ部屋を用意するように言われているのであれば、今頃丹恒が寝ている部屋を除いて後2つ残っている筈だ。
なのに何故か、部屋は残り一つしか残っていない。
「先程、お連れ様が『部屋を一つチェックアウトしてくれ』と申されたので…。」
丹恒の仕業か…。
あいつ、一人だけ一つの部屋を占領して俺となのかを同じ部屋に寝かせるつもりか!
良かれと思ってやっているのか?
仲直りイベントを作ってるつもりなのかな?
だとしたら余計なお世話なんだよ!
「穹、どうしよう…。」
「安心しろなのか、俺に考えがある。」
そう言って俺は受付から鍵を受け取り、なのかに渡す。
「お前が部屋を使え。」
「え?でも、そしたら穹は…。」
「大丈夫だ。俺は丹恒と一緒に寝る。」
そうだ、こうなったのは全て丹恒のせいなのだ。
なら、それ相応の報いを受けさせなければな。
俺は迷いの無い足取りで丹恒が寝ている部屋に向かい、何処からともなくマスターキーを取り出して部屋に入り込む。
更に俺は服を脱いで、パンイチの状態でベッドに潜り込み、丹恒の隣で添い寝を始めた。
「ふっふっふ…丹恒め、俺を甘く見たな。このまま朝まで添い寝を続けて、奴が起きた瞬間に『昨日は熱い夜だったな』って言ってやる。」
俺はそう小さく独り言を囁いて、眠りに付くのだった。
____________________________________________________
丹恒side
…俺は今絶句している。
きっとどんなに肝が据わっている猛者でも、こんな状況に遭遇したら、俺と同じ反応を示すだろう。
俺の目の前には俺と同じ部屋で同じベッドで、しかも裸で俺の隣に寝ている穹の姿があった。
「これは…一体…。」
もしや、知らぬ内に間違いを犯したと言うのか…。
俺は穹を好ましく思っている。
それは親友としても、仲間としても。
だが、まさか自分が彼に劣情を抱いていたなんて…。
自分の事なのに…俺は自分の気持ちに気付いていなかった。
「そんな…俺は穹を…。」
今後、どんなに顔をして姫子さんや三月と会えば良いんだ…。
今更だが、姫子さんと三月そして、宇宙ステーションのアスターとヘルタも穹に淡い恋心を抱いている。
その態度はかなり露骨で端から見れば一目瞭然である。
逆に何故穹本人は気付かないのかと疑問に思う程に分かりやすい。
そんな彼女達の気持ちを俺は尊重して、影ながら応援すると決めていたのに…。
このような失態を犯してしまうとは…。
「んっん~!」
そこで、今現在俺の事を悩ませている原因が目を覚ました。
「…おはよう、丹恒。昨夜は熱かったね…。」
「っ!?」
これは確定なのか?
やはり、俺は穹に手を出してしまったのか?
「きっ穹、昨日俺は一体…お前に何をした?全く覚えていないんだが?俺の記憶が正しければ…俺はずっと一人で寝ていたよな?」
俺は震える声で穹に質問する。
頼む、間違いであってくれ!
穹の度が過ぎた悪戯であってくれ。
「…ひどいよ、丹恒。俺に何も了承も得ずに勝手にあんな事をするなんて…。」※(勝手に部屋をチェックアウトした事。)
あっあんな事…。
「俺、凄い焦ったんだぜ。仕方ないから、なのかには別の部屋に行ってもらったんだからな。」
みっ三月を差し置いて強引に行為に及んだのか?俺は!
「すっすまない!穹。昨夜は俺が悪かった!責任は必ずとる。」
「…そうか、反省してくれたんだな。もう今後は勝手な事すんなよ。」
「ああ、気を付ける…。」
「あっでも、気持ちは嬉しかったから。ありがとう!」※(やり方はどうあれ、なのかと一緒にいられる機会を用意した事。)
穹はそう言って太陽よりも眩しい笑顔を俺に向けてきた。
この笑顔を俺が守らなければ、俺の命が続く限り一生共に生きて俺が穹を支えるんだ。
俺は穹の笑顔を見て心に強くそう誓う。
「大変!穹!丹恒!ホテルの前にシルバーメインが沢山来てる!」
穹の前で彼を一生支える誓いを立てた直後、突然三月が部屋の扉を開けて中に入ってきた。
おかしいな…。
昨日確かに寝る前に鍵を掛けた筈なんだが…。
「…てっええ!?穹、なんて格好してるの!」
裸の穹を見て三月は顔を真っ赤にしながら手で顔を隠す。
しかし、良く見ると指の隙間から穹の裸をガン見している。
「あ~いや、ちょっとな…。」
「もう!こんな時に何してんの!早く着替えて来て!今結構ヤバい状況なの!」
そう怒鳴って三月は部屋の扉を強く閉めて出ていった。
残された俺達は速やかに着替えて部屋を後にするのだった。
____________________________________________________
穹side
着替えを済ませて、丹恒の部屋から出てきた俺達はヤバいヤバいと、なのかが騒ぎ立てていたホテルの外まで出てきた。
「天外からの反逆者2名、被害者1名を確認!直ちに捉えろ!」
ホテルの玄関から出てきた俺達をいきなり、武装したシルバーメインが包囲し逃げ道を塞いできた。
「反逆者?一体何の事?」
急展開過ぎて訳分からないこの状況に、なのかが俺達の心の声を代弁してくれた。
「惚けるな!反逆者共め!お前達の犯した罪は自分達が一番分かっているだろう!」
「罪だと?待て一体何の事だ?」
今度は丹恒がシルバーメインの兵士に質問を投げ掛ける。
「今朝、大守護者様より通達があったのだ。天外からの来訪者は穹殿を洗脳し、記憶喪失とでっち上げて操り、星核をこの星から奪って悪事を働こうとしているとな。」
嘘~ん。
何か色々とおかしな事になっているな。
話を要約すると…なのかと丹恒は反逆者で俺はこの二人に洗脳されてる被害者と言うわけか…。
…原作と違う!何で?
「穹殿を除いてお前達の生死は問わないと命じられている。命が惜しくば大人しくお縄に付け!」
「…どうする?二人とも。かなりヤバめな状況しゃね?」
「ああ、そうだな。仕方ない、二人とも逃げる準備をしろ。俺が3つ数えたら、全力で走れ。」
そう言って、丹恒は一呼吸置いて列車組特有の合図を口にする。
「拳一明三……君名無二…。」
「何をごちゃごちゃ言っている!大人しくついてこい!」
「一意専心!」「無量空処!」
丹恒が合図を全て言い終わると共に俺は人差し指と中指を交差して印を結び、無量空処を放つ。
その瞬間、シルバーメイン達の脳に無限の情報が送られて、一時的に脳の活動を停止してしまった。
「よし!丹恒!なのか!今のうちに逃げるぞ!」
「「…。」」
何とも微妙な顔をしながら丹恒となのかは俺について行く形で全力で走る。
「そう言えば、ウチらこれから何処に逃げるの?何処に行ってもシルバーメインが追っかけてくるんじゃ逃げてる意味なくない?だって土地勘はあっちにあるんでしょ?」
確かに…。
急展開過ぎて、何も考えずにその場の乗りで飛び出してしまった。
「丹恒先生!何か良い案無い?」
「…裂界に逃げるのはどうだ?昨日初めてベロブルグを訪れた時に裂界に侵食されていそうな場所を見付けた。裂界なら常に星核と関わりのある俺達の方が理解が深い。」
成る程な、裂界か…。
当然、俺達にも危険は降りかかるが、そのリスクを鑑みてもその案が最適に見える。
「分かった。裂界に逃げよう。案内頼めるか?」
「こっちだ!」
丹恒の先導の元、俺達は進路を変えて裂界に向かう。
裂界とは星核から漏れたエネルギーによって汚染された空間…みたいなものと俺は解釈している。
裂界内は特殊な空間となっていて、通り道や建物の配置は侵食される前のそれとは大きく異なり、今も変質を続けている。
つまり、何度も空間が様変わりする訳であり、有識者でなければ一度入ったら抜け出せなくなる。
俺達にとっては絶好の逃げ場と言うわけだ。
「もうすぐ、裂界だ。少し酔うから気を付けろ!」
丹恒の忠告を右から左に聞き流しながら、俺達は裂界のゲートの様な物を潜って中に逃げ込む。
さっき俺達を包囲してきたシルバーメイン達は無量空処の影響で暫くは動けない。
その上裂界であれば、直ぐには俺達を見付ける事は出来ないだろう。
これで、暫くは時間が稼げる筈だ。
…そう思っていた時期が私にもありました…。
「待っていたわ穹、あなたなら必ずここに来るって分かってた。」
予想外の事に裂界に入った先にはブローニャ率いるシルバーメインの伏兵達が待ち伏せていた。
「あなたは覚えていないでしょうけれど。かつて、ベロブルグ内で流行った強盗事件をあなたが解決に導いた時にあなたはこう言ったのよ『俺が強盗なら、裂界に逃げ込むな』って。やっぱり記憶を失ってもあなたはあなただわ!」
おいー!
過去の俺何してくれてんの!
完全に墓穴掘ってるやん!
「お願い!戻って来て!反逆者の洗脳なんかに負けないで!」
「悪いがそれは断る。お前が言ったように俺は俺だ。洗脳なんかされてない。自分の意思でこの二人と旅してるんだ。それを邪魔すんなら、容赦しないぞ。」
ここまで来たら、戦うしかないだろう。
なるべくブローニャは傷付けたくなかったが、仕方あるまい。
「可愛がってやるよ。親の傀儡ちゃん」
「…っ。」
俺はブローニャを挑発して彼女と睨み合う。
こちらは三人、対してあっちは多く見積もって30人程。
多勢に無勢なこの状況…。
しかし、中々あちらが手を出してこないのは恐らく俺の実力を警戒しての事だろう。
俺は…自分で言うのもなんだが、かなり強い。
こんな奴ら何人束になってかかって来ようと返り討ちに出来る。
だからこそ、過去の俺を知る彼らは中々俺達に攻撃を仕掛けられないのだろう。
俺の隙を狙って最小限の犠牲で事なきを得ようとする雑魚の思考。
だから、
「レディース・エンド・ジェントルメーン!お集まりの皆様!今回は私のショーの為にご足労痛み入ります!」
無言で睨み合う、列車組とシルバーメインの冷戦状態を破ったのは誰よりも胡散臭いこの男…
サンポ・コースキー。
「それではご照覧あれ!私の舞台の第一幕にして終幕…乱れ煙幕です!」
その瞬間、シルバーメインと列車組の面々問わず、煙幕の影響で視界が奪われる。
「ケホッ!何この煙!」
「三月!吸うな!睡眠作用があるようだ。」
この煙幕の成分に瞬時に気付く丹恒だったが、巻き込まれたシルバーメインと三月、ブローニャと共に大量の煙を吸ってしまい敢えなく気を失ってしまった。
「なあ、これって俺も気を失ったフリくらいはした方が良いのか?」
「…いえ、そこまでしていただかなくても…。しかし、終末獣でさえもたちまち深い眠りに落ちる特注品なのに、何故あなたは平気なのです?」
原作知識でサンポが助けに来るって分かっていたからな。
予想外のブローニャによる待ち伏せには度肝抜かれていたが、そこは流石のサンポ、イレギュラーに見事対応して原作通りに助けに来てくれた。
とは言っても、確か原作では元々何処かで主人公達を監視していて、危なくなった所をタイミングを見計らって登場してただけらしいから、ブローニャのイレギュラーがあっても無くても、サンポが助けに来るのは確定だったのだ。
それを分かっていたらもう、こっちのもんよ!
未だに俺の能力が何なのか詳しくは理解してないが、割りと俺の思い通りに融通が効く事は分かってる。
だから、煙幕が効かないように対策するのは朝飯前なのだ。
…そう言えば朝飯まだだったな。
「まあ、細かい事はいいじゃねえか!取りあえず、こいつら安全な所に運ぼうぜ。お前だけだと大変だろ?」
「ええ、助かります。でしたら、三月さんとブローニャさんをお願い出来ますか?」
「了解。」
こうして、俺がなのかとブローニャを、サンポが丹恒を抱えて、サンポの案内の元、安全な場所へ向かうのだった。
「そう言えば、今から何処に向かうんだ?」
「下層部です。ベロブルグの地下にある。貧民街の…。」