主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
とある宇宙の某所、星核ハンターのアジトにて、蜘蛛の模様が特徴的なコートを羽織った女性カフカは無数の写真を自室のテーブルに並べて、ニヤニヤしていた。
「ふふっ!この写真も可愛いわ…。」
その写真は他でもない、彼女が心の底から愛する彼…穹の子供から大人に成長するまでに撮った写真である。
「何写真見てニヤニヤしてるの?気持ち悪い…。」
そんな彼女の部屋にノックも無しにづかづかと入り込み、容赦なく辛辣な言葉を投げ掛ける者がいた。
「あら、銀狼じゃない。あなたも見る?穹のこれまで撮った秘蔵写真よ。」
ノック無しに勝手に入ってきたのには怒らず、カフカは目の前銀髪を縦ドリル状にカールさせてポニーテールに纏めた少女銀狼に無数の穹の写真の内の一枚をヒラヒラと見せびらかす。
「…どんなのがあるの?別に…興味があるとかじゃないから。でも、あなたがどうしてもって言うなら見てあげる。」
口ではそう言うが、体の反応は正直で銀狼はテーブルに並べられた写真を手に取って覗き込んだ。
何を隠そう、銀狼もまた穹に恋心を抱く乙女の一人なのである。
「うっ!…何…これ…刺激が…。」
幸か不幸か、銀狼が偶々手にした写真は穹がお風呂に入ってる時にカフカが盗撮した写真であった。
「あら!その写真、そこにあったのね。ちょうど探してたのよ。ありがとう、銀狼。」
刺激の強い写真を前に怯んでしまった銀狼を尻目にカフカはその写真を銀狼からサッと奪って懐にしまった。
「何今の!カフカ…もしかしてあんなハレンチな写真しか持ってないわけ?」
銀狼は恥ずかしさを誤魔化すために声をわざとらしく張り上げて、カフカに問い詰めた。
「いいえ、勿論ちゃんと可愛い写真もあるわ。…ほら、これとかね。」
そう言って、カフカが次に取り出したのは5歳の穹が100人に分身している所を撮った写真であった。
「…何これ?」
「何って決まってるでしょう?五歳の穹よ。」
-―-違う!そうじゃない!
銀狼が言いたいのは、何時の写真か…ではなく、その100人に分身している穹は一体何なのか…である。
「何で穹がそんな沢山いるの?印刷ミス?」
「あーそう言うことね。これは穹が五歳の誕生日の時にいきなり分身したのよ。とても可愛かったから写真に収めたの。良く撮れてるでしょう?」
ーーー一体何処にツッコめば良いのやら…。
銀狼は頭を抱えてため息を放つ。
「一体どういう経緯でそうなったの?」
「そうね、確かこの頃は銀狼はまだ星核ハンターでは無かったものね。折角だからこの写真について昔話でもしましょうか…。」
そう言ってカフカは語る。
星核ハンターの中でも知る人間が限られている穹の五歳の時の話を…。
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その日、カフカにとってはいつものと変わらない一日だった。
いつものようにエリオの脚本に従って任務をこなし、愛しの穹の温もりを求めてアジトに帰ってきた。
『穹~♡ママが帰ってきたわよ!今私はあなたの温もりと愛に飢えているわ…早く充電させてくれないかしら?』
アジトに帰ってそうそう、甘い猫なで声で穹の名前を呼ぶカフカ。
何時もなら、カフカの呼び掛けに直ぐに答えて彼女の胸に飛び込んで行くのだが、その日は少し様子が違った。
『穹?私はここよ…早く来てちょうだい。寂しくてママ死にそうよ…。』
今一度呼び掛けるが返事は帰ってこない。
不審に思ったカフカはアジト内を散策し、穹を血眼になって探す。
時間にして十数分。
しかし、カフカにとっては十数琥珀紀にも感じる時間だった。
カフカが穹不足によりエネルギー限界を迎え、意識が朦朧とする中、微かに穹の声が聞こえた。
しかも、
「っ!?穹の声だわ!」
カフカは急いで声が聞こえた方へ向かい、そしてやっと穹の姿を見付ける事が出来た。
穹はなんとアジトの宇宙船の発射台に直接繋がっている車庫…いや、船庫におり、誰かと会話している様子だった。
「一体誰と話しているのかしら…?エリオは今頃新しい脚本を書いているでしょうから可能性は低い。となると、もしや泥棒…!」
カフカは頭に嫌な予感が走り、急いで船庫の中に入る。
すると目の前には信じられない光景が広がっていた。
一人の穹が高台に登り、99人の穹を見下ろして、何やら激励の言葉のようなものを述べていた。
『お前ら!スタレキャラは好きか!』
『『『『大好きだ!!!』』』』
高台の上にいる穹の掛け声に99人の穹が息ぴったりに答える。
『俺達の目的はなんだ!』
『『『『全キャラに会うこと!!!』』』』
『その通りだ!しかーし!俺の体は一つだ!一人では全キャラに会いに行く事は出来ない。原作キャラの中には悲惨な過去を持つ者がいる!そいつらがそんな過去を経験する前に成るべく早い段階で接触して救ってやりたい!そのためにはお前達分身の力が必要だ!協力してくれるか!』
『『『『おおおお!!!』』』』
またもや穹達は一致団結したように雄叫びをあげる。
この奇妙な光景を前にしながらカフカが思った事は…。
『穹が一杯…!可愛いわ!』
ーーー彼女は既におかしかった。
この親にしてこの子ありと言った所だろう。
親子とはやはりどうしても似てしまうもののようだ。
『分身番号1番!お前は今から何処へ向かう!』
『はっ!二相楽園に行って姫子と出会い、星穹列車に乗ります!』
『よろしい!では、2番!お前は何処へ向かう!』
『宇宙船ステーションヘルタであります!』
『次!3番!』
『はい!私はヤリーロⅥに向かいます!』
と言ったように穹達は点呼を取り、それぞれが向かう星、接触する勢力を次々と宣言していく。
『最後!分身番号99番!お前は何処へ向かう!』
『俺は…オンパロスへ向かう。』
『『『『なっ!?』』』』
99番の言葉にその場にいた穹達がどよめき出す。
『あそこは魔境だぞ!入ったら最後33550336回の輪廻が強制される…。とても正気とは思えない!』
分身番号1番が99番の身を案じてその様な事を口にする。
『そもそも、どうやって行くんだ?』
『ガーデンしか場所が分からないんだろ?』
『それ以前にライコスが邪魔するんじゃ…。』
他の分身達も口々に不安の声を漏らす、しかし、その不安を書き消す為に本体が檄を飛ばす。
『馬鹿か!お前ら!俺達の目的はなんだ!危険だから、不可能だから、そう言い訳して簡単に諦めて良い物なのか?』
『『『『っ!!』』』』
『不可能でもやる!お前達が出来なくても、お前達が失敗しても、いつか原作が始まった時、俺がお前達の意思を必ず受け継いでやる!だから、大船に乗ったつもりで当たって砕けてこい!』
『『『『おおおお!!!』』』』
その言葉で再び穹達の心は一つにある。
『それじゃあ、お前達は行ってこい!本体である俺はこのまま原作開始まで星核ハンターに残るが心はいつでもお前達と一緒だぞ!』
『よっしゃ-!』
『行くぜ!』
『待ってろ-皆救ってやる!』
こうして、99人の穹は船庫から直接、宇宙へと飛び出し、スタレの全キャラに会うための旅に出ていったのであった。
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「これが、穹が分身した経緯よ。」
「九割くらい理解出来無かったんだけど…。」
話を全て聞き終わった銀狼は頭を抱えて重たいため息を放つ。
話のスケールの大きさとカオスさでもう、お腹も頭も一杯である。
「て言うか、そんなに分身したなら、誤って分身同士が遭遇する事とか無かったわけ?星穹列車と宇宙ステーションなら交流が盛んだから、穹が二人いるとかで騒ぎに成りそうだけど…。」
「宇宙ステーションと星穹列車が交流し出したのは割りと最近の話よ。その前には既に私達が穹の記憶を消した事で殆どの分身が消滅したみたいよ。一人を除いて…。」
「一人?」
カフカの意味深な発言に小首を傾げる銀狼。
しかし、いくら待ってもその言葉の続きがカフカの口から語られることは無かったのであった。