主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?!   作:ひまなめこ

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14話 今日はちょっとシリアスで…。

No side

 

ベロブルグ下層部採掘所。

 

そこには、沢山の鉱夫達と流浪人達が巨大な地髄鉱脈の前で一触即発の雰囲気を醸し出しながら睨み合っていた。

 

そんな両勢力の間に入り、仲裁を図っているのが下層部にいる殆どのロボットを管理する巨大な鉄人 スヴァローグであった。

 

彼はつい最近まで、人類の可能を見限り、冷酷に人類に何も期待せず、ただこの星の生命を存護する事だけを存在理由に活動してきた。

その為、人の感情と言う物に疎く、ましてや人との交渉など、彼が最も向いてない分野であろう。

 

しかし、そんな彼が鉱夫と流浪人の仲裁を自分から買って出たのには理由があった。

それは、過去に自分の価値観に変革をもたらしてくれた、あの男の為に、急にこのベロブルグから消えてしまったあの男の分までベロブルグの平和を守りたいと……彼自ら計算ではなく、自分の意思に従って、そう決断したからである。

 

しかし、今までクラーラ以外の人間とのコミュニケーションを避けてきたスヴァローグのデータベースに記録されている人とのコミュニケーション法では、対象がクラーラに限定し過ぎているので、流石にこのままでは仲裁どころではないと、スヴァローグの補助として現場に派遣された者が二名いる。

 

それは左腕を機械の鉄腕に移植した初老の男性、【地炎】の表向きのボスを勤めるオレグとその弟子にして右腕が鉄腕のルカである。

 

「なあ、師匠。この人選は…ちょっと…いや、かなりミスってないか?」

 

ルカはこの状況を見渡して、きっと誰もが思っていることを冷静に口にした。

 

オレグもルカも【地炎】の中ではかなりの腕っぷしを持つ武闘派であるが、交渉の事は空っきしであり、そっち回りの事はいつも【地炎】の真のボスであるナターシャが勤めていた。

 

しかし、今のナターシャは診療所にいて直ぐには鉱脈に駆け付けられない。

その為、比較的近場にいたオレグとルカがスヴァローグの補助に回ったのだが…。

 

「お前達鉱夫はなんでいつもいつも地髄を独占しようとするんだ!少しくらい分けてくれても良いだろ!俺達に飢え死にしろって言うのか!この人でなし!」

 

「独占だと?そんな事してる覚えはない!俺達も生きるのに必死なんだ!家族の為に日銭を稼がないといけない。それなのにお前達が俺達の手柄を横取りしようとしてきたんだろ!人でなしはどっちだ!」

 

 

このように両勢力の話は平行線であり、全く仲裁出来ていない。

このままでは鉱夫と流浪人達が武器を手に暴れるのも時間の問題である。

 

「このままじゃ、まずいんじゃないか?俺もスヴァローグも交渉は得意な方じゃないし、それに鉱夫も流浪人も興奮していて話を聞いてくれる状態じゃない。」

 

「大丈夫だ。ここに来る前にクラーラとフックにナターシャを呼ぶように頼んできた。もうじきナターシャも合流するだろう。」

 

オレグとて馬鹿ではない。

自分達に交渉が向いてない事など百も承知である。

故に、スヴァローグが仲裁を買って出たと聞いた時には既に、クラーラとフックとコンタクトを取って、ナターシャを呼び出すように指示を出していた。

 

オレグとルカはあくまでもナターシャが来るまでの間スヴァローグを補助する為の時間稼ぎ要員なのである。

 

{全員、ワタシの話を良く聞いて欲しい。}

 

鉱夫と流浪人達が言い争う中、スヴァローグは良く通る声でそう言って、その場の全員の注目を集める。

 

{あなた達が言い争う原因をワタシなりに分析した結果。この地髄鉱脈が争いの火種であると言う結論に至った。}

 

ーーー 何を今さら?

 

その場にいた全員の心の声が一致した。

ここにいる鉱夫も流浪人もこの地髄鉱脈が欲しくて争っているのだ。

 

{よって、この地髄鉱脈はワタシが機械兵を用いて閉鎖する。期限は無期限。その間誰もこの地髄鉱脈の近くに足を踏み入れることを禁ずる。}

 

「「なっ!?」」

 

オレグとルカを始めとして、その場の誰もが絶句した。

 

確かに地髄鉱脈を閉鎖して、所有権を誰にも譲渡しなければ、争いが起きることは無いだろう。

 

しかし、それでは根本的な解決にはならない。

今、争いが強引に終結しても、鉱夫と流浪人の間に溝があるままではいずれまた争いが起きてしまう。

 

スヴァローグが取った行動は最適とは呼べないものであった。

 

「お前…それ本気言っているのか?」

 

一人の流浪人がスヴァローグにそう問い掛けた。

 

その声は聞いたら誰でも分かる程にドスが効いていて、彼が心のそこから怒りを覚えていることが伺えた。

 

{此度の不毛な争いを止めるならこれが最善だと…}「ふざけた事言ってんじゃねえぞ!」

 

スヴァローグの言葉に被せるように今度は一人の鉱夫が自身の…いや、この場にいる全ての鉱夫と流浪人の怒りを代弁するように怒鳴った。

 

「俺達はな!崖っぷちなんだよ!お前らロボットみたいに飲まず食わずで生きていけるほど便利な体じゃねえし、子供や妻を養うために、ほんの僅かでも、稼がなくちゃいけねえ…。その為には地髄が必要なんだよ!沢山掘って、沢山売って、誰も飢えないように必死に頑張るしかないんだよ!」

 

{…それは理解している。しかし…「何も理解してねえだろ!理解してる奴があんな事言うわけ無いだろ!お前みたいな鉄の塊に俺達人間の心なんて分かるわけないだろ!」

 

その瞬間、この場に重い沈黙が流れた。

 

スヴァローグとて人の心が分からない訳ではない。

本当に人の心が分からなければ、クラーラをここまで育てることも、自ら争いの仲裁に入ろうと人に歩み寄ることも出来やしない。

 

しかし、あまりに長すぎたのだ、人とのコミュニケーションを避けてきた年月が…。

今まで彼が拒絶してきた事の跳ね返りが来て、スヴァローグは過去の自分の過ちを今一度、心から悔いる。

 

それと同時に人に自分を理解して貰えない事実に悲しみを覚える。

 

人は鏡だと、誰かが言っていた。

人は自分にされた態度を相手に同じ態度で返すのだと。

かつて、人を見限り、理解を拒んだ過去のスヴァローグの過ちが目の前鉱夫と流浪人によって反射されたのだ。

 

今のスヴァローグには悲しむことも怒ることも許されない。

ただ理解されないと言う事実をメモリーに刻む事しか出来ない。

 

「流石に言い過ぎでしょ。心がないなら、こいつは今ここにいねえよ。」

 

その時、突然、聞き覚えのある声がその場に響き渡った。

 

その声はかつてのスヴァローグに過ちに気付かせ、彼の価値観に変革をもたらしたあの男にそっくり…いや、あの男の声だった。

 

{…穹。}

 

「よっ!あんたがスヴァローグか?予想通りでかいな!」

 

久しぶりに見る彼は何故かスヴァローグを初対面の人のように扱う。

 

その異様な光景に回りの人間は戸惑いを隠せないでいた。

 

「穹の兄貴…だよな?何でここに?…て言うか今まで何処行ってたんだよ!」

 

全員が戸惑う中この場の全員の言葉を代弁するようにルカが口を開いた。

 

「えーと、あんたは…誰だ?」

 

その言葉にまたもやその場の全員が混乱する。

今の穹は知らない事だが、かつてのルカと穹は兄弟分であり、本物の兄弟のように仲がよかった。

 

穹、ゼーレ、ルカのベロブルグ下層部3馬鹿トリオと呼ばれていたのは、赤子を除いて知らないものはいない。

 

そんな穹がルカを覚えていないのだ。

混乱するのも無理はない。

 

「おいおい…悪い冗談は止めろよな兄貴。俺達はいつも一緒だったろ…。泣くときも笑うときも特訓だってずっと一緒だった!俺達は血は繋がってなくても兄弟だっただろ…?」

 

大粒の涙を流しながら、ルカは消え入りそうな声で必死に自分の存在を穹に訴えかけた。

 

しかし、そんな彼を絶望に突き落とす言葉が穹より放たれる。

 

「…ごめん、俺…記憶喪失なんだ…。だから、何も覚えてない。」

 

「なっ!?」

 

その場の誰もが驚愕した。

あの穹が、下層部では彼に救われなかった者はいない程の皆のヒーローで、皆の人気者の穹が自分達を覚えてない。

その事実があまりにも衝撃的過ぎて、この場にいる全員がさっきまでの言い争いがどうでも良くなった。

 

「は?…何言ってんだよ!…そんな訳ねえ…。兄貴が俺を忘れるなんて…また何かの悪戯か?兄貴好きだもんな…俺の事を弄るの。俺がそのせいでどれだけ泣かされたか…。」

 

「えーと、あはは…。ごめん、何の事?」

 

「っ!」

 

穹の今の言葉でルカの心がついに限界を迎えた。

ルカはこの場にいる事に…今の穹と一緒にいる事に耐えられず、この場から走り去っていった。

 

そして、そんなルカとすれ違うようにフックとクラーラが遅れてやってくる。

 

「はあはあ、穹お兄さん早すぎです…。状況はどうなりました?」

 

肩で息をしながらそう問い掛けてくるクラーラはこの場を一瞬見渡して、何か異変に気付く。

 

「…何があったんですか?」

 

「ごめん、何か…仲裁するどころの問題じゃ無くなっちゃった…。」

 

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