主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?!   作:ひまなめこ

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16話 スランプ中ですそっとしておいて下さい…。

ブローニャを流浪人達から救出した後、俺達は漸く診療所に戻る事が出来た。

 

しかし、まあ…先程ゼーレとナターシャと色々あったので、戻って来た時はかなり気まずい空気になったのだが、何とか診療所には入れて貰えた。

 

…目は一切合わせてくれないけどな。

 

「わざわざ、ボスまで来るなんて一体何事?」

 

診療所に入るなり、ゼーレから質問が投げ掛けられた。

 

ここにおわすは【地炎】の表向きのボス オレグと裏のボス ナターシャ。

そして、どうやら下層部では有名人らしい俺とシルバーメインのブローニャ、こうして見ると錚々たるメンバーだ。

 

そんな俺達が一ヶ所に集まったとなれば何か重要な話が有るのではと勘繰るのは当たり前だ。

 

「ああ、少し下層部の…いや、ベロブルグ全体の今後について話をしたくてな。…その前に穹の仲間は何処だ?ここにいるのだろう?」

 

そう言われて、診療所内を見渡すが、丹恒となのかの姿が見当たらない。

 

何処に行ったんだ?

 

「あの子達なら、サンポが連れていってしまったわ。確か、行き先はファイトクラブだった筈よ。」

 

オレグの質問にナターシャがそう答えてくれた。

 

サンポが丹恒をファイトクラブに連れていくのは原作で知っていたのだが、なのかまで連れてかれていたのか…。

 

あの二人なら大丈夫だと思うが心配だな。

 

「俺、あの二人を連れ戻して来るよ。」

 

「ああ、なら丁度良い。診療所には他に患者がいるからな。余り落ち着いて話は出来ない。だから先に診療所裏の空き地で待ってる。仲間を見付けてたらそこに来い。」

 

「わかった。」

 

そう言って、俺は診療所を出てファイトクラブに向かう。

 

ゲームでは何度も行っていたが、現実で訪れるは今回が初だ。

しかし、このファイトクラブはかなり目立つ建物だから迷わずたどり着けるだろう。

 

そうして、暫く歩いていると、ボクシンググローブの形をしたネオン管で派手に彩られた看板を掲げた大きな建物を見付けた。

 

多分、これがファイトクラブだな。

 

俺は早速ファイトクラブの建物の中に入る。

 

「兄弟&姉妹達!次の試合は本日の最大イベントだ!これまでにない刺激!驚きの対決!」

 

中に入るなり、建物内に実況の声が響き渡る。

 

「渋い顔に抜群の実力【冷徹の蒼龍】&可憐な容姿に的確な射撃【プリプリプリチーなピンクドラゴン】どちらも青髪のイケメンからの推薦だ!」

 

そんな実況の声と共にファイトクラブの中心にあるリングに見覚えのある二人の男女が登場する。

 

「そして、対するは感情のないロボット小隊!」

 

そんな彼らの前に、複数の機械兵達が立ちはだかる。

 

「なのか…丹恒…。」

 

ロボット達を相手に真剣に構えるなのかと丹恒を見て、無事に見付けられた安堵半分、呆れ半分でつい声を漏らしてしまう。

 

これは…一応助太刀した方が良いか?

 

オレグ達を待たせている訳だし、早めに片付けた方が良いだろう。

 

そう言って俺は群がる群衆を掻い潜ってリングに踊り出る。

 

「おーと!ここで予想外の事態発生!なんとつい最近この町に戻って来た下層部のヒーロー穹がこの試合に飛び入り参加だ!」

 

…この実況うるせえな。

俺がいつヒーローになったって?

まだ、何も救えてねえんだよ…。

頼むから過去の栄光は忘れてくれ。

 

「穹、何故ここに?」

 

「ちょっと、この下層部のボスから俺達と話たいって言われてな、お前らを探してたんだよ。」

 

丹恒からの質問に対して俺は簡潔に答えた後、目の前のロボットに向き直る。

 

「もう、皆待ってんだ。余り時間は掛けられない。一掃するぞ。」

 

そう言って、俺は目の前の機械兵に向かって、真っ直ぐ突っ込む。

 

そんな俺に対して機械兵達は銃型モジュールを展開して俺に向かって発砲してくる。

 

このくらいの弾丸なら余裕で避けれる。

 

そう思っていつものように動くのだが、そこで俺の体に異変が生じる。

いつもなら弾丸程度余裕で避けれる筈なのに、体が思うように動かず、十何発もの弾丸を食らってしまう。

 

「くっ!」

 

「「穹!」」

 

予想外の被弾に丹恒となのかから悲痛な叫び声が聞こえてきた。

 

おかしい、さっきまではこんなに調子は悪くなかった筈だ。

ブローニャを弾丸から守る時だって問題なく弾丸を掴めた。

一体何で急に…こんな…。

 

「これはまさかの展開だ!あの穹が…無敵無敗の男が弾丸を食らってノックアウト寸前まで追い詰められてしまった!」

 

くそ!

さっきからうるせえな!あのクソ実況…。

俺は今それどころじゃねえのに…。

 

「大丈夫か?穹。」

 

「穹、大丈夫なの?」

 

俺の事を心配した二人はロボットの攻撃をいなしながら、俺の近くに寄って庇うような体制をとる。

 

「おっおい…。何か穹が庇われているぞ」

 

「嘘だろ?あの穹が!がっかりだわ~」

 

なのかと丹恒によって庇われる俺を見て、この試合を見ている観客から俺に対する失望の声が聞こえてくる。

 

…止めろ。

俺はお前達が思うような大したこと人間じゃない。

 

「記憶を失う前は俺、あいつのファンだったんだけどな…。」

 

「俺も。でも正直冷めたわ。あの程度でやられるとかダッサ~。」

 

…止めろ。

勝手に期待しといて勝手に失望するじゃねえ!

 

「俺達のヒーローは何処に行ったんだろうな…。戻って来てくれねえかな…。」

 

止めろ!

俺にお前達の理想を押し付けるな!

 

「止めろおおおおおお!」

 

その瞬間、この場に俺の絶叫が響き渡った。

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No side

 

穹の不調により、少し苦戦を強いられた先の試合は丹恒となのかによって無事に終結した。

 

現在、三人はオレグと約束した診療所裏の空き地に向かっている。

 

「ねえ、穹。大丈夫?怪我、全然治って無いみたいだけど…。いつもなら、もうとっくに治ってる筈でしょ?」

 

そもそもいつもなら、弾丸程度避けれない筈がない上に弾丸程度でダメージを受けることもない。

 

しかし、今の穹は弾丸すらも脅威になり得るほどに弱体化していた。

 

その原因となるのは…。

 

「穹、お前何か思い悩んているんじゃないか?下層部に来る前と比べて顔色が明らかに悪いぞ。」

 

メンタルの不調。

 

飢えて死ぬ寸前の流浪人、家族の為に無理をして日銭を稼ぐ鉱夫達。

この下層部には人生の絶望や苦労を味わっている人間ばかり、そんな彼らが過去の穹に向けていた期待と理想、それが重圧となって今の穹にのし掛かり、能力を満足に使えない状態へと追い込んでいた。

 

穹が持つ術式【超人】は穹が叶えたい願い、実現したいイメージを実現すると言うもの。

 

下層部の人間によって押し付けられた理想により、穹自身が実現したいヴィジョンが揺らいでしまった。

 

それが事の顛末である。

 

「いや、まあ少しな…。別に大した事ねえよ…。」

 

穹は上手い言い訳が思い付かず、取り敢えず心配させないために笑顔を浮かべる。

 

しかし、その笑顔が偽物である事をなのかと丹恒は気付いている。

 

彼らも伊達に穹と付き合ってない。

穹自身は覚えていなくとも、彼らが穹と過ごしてきた時間は紛れもなく本物であり、彼らにとっては欠けが得のない物。

故に、穹の笑顔の裏に隠された不安に気付かない訳が無かった。

 

「何で嘘つくの?ウチらの事まだ信用出来ないの?」

 

「え?」

 

穹がついた嘘が分かるからこそ、なのかは穹を放って置けなかった。

 

「穹の気持ちは分かるよ。記憶喪失だからまだウチらと壁があるのかもしれない。でも、何か困った時はちゃんと言ってよ…。」

 

「ごめん、なのか。そんなつもりは…。」

 

そう、穹にそんなつもりはない。

 

なのか達は知る由も無いが、穹はこの世界がゲームとしてプレイされていた世界から来た。

 

そしてそのゲームのキャラであるなのか達を尊敬している。

勿論信用も。

しかし、信用しているのと、心配を掛けたくないのとでは似ても似つかない。

 

なのかは穹の嘘は見抜けても、穹の本当の気持ちにはまだ気付けていないのだ。

 

「そんなつもり無くても、ウチらはそう受け取っちゃうんだよ。あんたが心配だから、頼って欲しい。…昔のあんたならもうちょっと頼ってくれたのに…。」

 

そこでなのかは不幸にも穹の地雷を踏んでしまう。

 

「昔のあんたなら」つまり過去の穹なら…下層部の人間が散々嫌になる程穹に浴びせてきた謳い文句。

 

穹が冷静さを失うには十分なものだった。

 

「お前…ふざけ「止めろ!三月。過去の自分と重ねられるのがどれだけ不快な事か分からないのか!」

 

怒り爆発寸前の穹の言葉に被せるように丹恒がなのかを叱咤する。

 

「お前も記憶喪失なら、何故穹の気持ちに共感してやれない!心配な気持ちは痛い程分かるが、その場の感情に流されるな!」

 

「ごめん…丹恒。穹もごめん…熱くなりすぎちゃった。」

 

いつも冷静沈着な丹恒からは想像も出来ないの叱責になのかは意気消沈し、素直に謝罪の言葉を口にする。

 

「いや…俺も…悪かった。心配掛けて…。」

 

穹もなのかに謝って、無事大喧嘩に発展する前に事態は収束する。

 

それから暫く歩いて漸く、オレグ達との約束の場所に到着した。

 

「すまない、遅くなった。こいつらが仲間の丹恒となのかだ。」

 

「よろしく頼む。」

 

「ウチの事もよろしく。」

 

到着してそうそう、穹が丹恒となのかをオレグ達に紹介し、それに続くように二人は各々挨拶を口にする。

 

「ああ、挨拶は結構だが…穹お前どうしたんだ?その怪我。」

 

オレグが穹の今の有り様を見て驚愕しながら疑問を口にする。

オレグだけでなく、ゼーレ、ブローニャ、ナターシャも傷だらけの穹を見て少し取り乱している。

 

「まあ、少しヘマをな…。それより本題に入ろう。この星の今後について。」

 

怪我について余り詮索されたくないため、穹は無理やり話題を反らして話を進める。

 

「…そうだな。お前達が下層部に来た経緯はこのシルバーメインの嬢ちゃんから大体聞いた。カカリアに随分してやられたみたいだな。」

 

その言葉に丹恒、穹、なのかは苦い顔を浮かべる。

 

あの逃走劇はこの三人にとっては思い出して気分の良いものでは無いのだろう。

 

「そこで本題なんだが、お前達が探している星核とやらは残念ながら俺達の中にそれを知っている者はいない。しかし、知っているかも知れない奴には心当たりがある。」

 

「誰だ?」

 

「スヴァローグだ。奴は700年以上も前からこの星にいる。恐らく奴なら知っているだろう。」

 

丹恒の質問に対してオレグはそう簡潔に結論を述べた。

 

星核の謎についてはスヴァローグが知っている。

つまり、この下層部ではスヴァローグが今回の開拓の鍵なのだ。

 

「そのスヴァローグって人に会いに行けば星核の在処が分かるの?」

 

「確信はないが、奴に聞いてみる価値はあるだろう。」

 

オレグがなのかの疑問に答える事で今後の方針が大まかに決まる。

それはスヴァローグとの接触。

 

しかし、原作を知っている穹の頭には一抹の不安が浮かび上がる。

それは、スヴァローグが素直に星核の謎を教えてくれるのかについてだ。

今のスヴローグは過去の穹によって変わっている。

それは穹も実際に目にしていた。

しかし、星核はスヴァローグのデータベース内では重要機密事項に指定されており、おいそれと見せてはくれないのではないかという不安が穹の中にはあった。

 

「スヴァローグは素直を教えてくれるかな?」

 

「昔のあいつならともかく、今のスヴローグなら問題ないだろう。」

 

穹の疑問になんて事の無いようにそう答えて、オレグは更に言葉を続ける。

 

「昔のスヴァローグは確かに頑固者だった。俺達【地炎】の話なんて一切聞く耳を持たなかったし、俺達人間の可能性を見限って下層部と上層部を繋ぐ通路を閉鎖までしやがった。」

 

「えっ!そんな事までする人なの?結構おっかない人なのかな…。」

 

その話を聞いて、なのかは新鮮なリアクションで驚く。

なのかはまだスヴァローグと会ってないため、未だにスヴァローグを人だと思っているようだ。

 

「だがな、そんな奴にたった一人で挑んで圧勝した奴がいたんだよ。それが穹だ。」

 

その言葉に丹恒となのかの視線が穹に集まる。

 

等の本人である穹はまた俺の知らない記憶かとかなりうんざり気だ。

 

「穹に敗れたスヴァローグは上層部と下層部の通路を開通させた。とは言っても元々下層部を閉鎖したのは大守護者カカリアだ。勝手に下層部の閉鎖が解かれたと知られれば大事になる。その為、スヴァローグから特別に許可を得た者だけ通れるようになったんだ。」

 

「つまり、スヴァローグと接触出来れば、星核の謎を知れて、上層部にも戻れるという事か…。」

 

オレグの話を全て聞いて丹恒は話の内容を簡潔にまとめる。

 

とどのつまり、スヴァローグとの接触は必須なのだ。

 

「まあ、取り敢えず。今のスヴァローグなら俺達を拒絶する事は無いだろって事だ。」

 

「成る程な…なら、早くスヴァローグの元に行こう。オレグすまないが案内頼めるか?」

 

「ああ、任された!」

 

こうして、穹達はオレグ達【地炎】のメンバーによる案内の元スヴァローグがいる機械集落へと向かうのだった。

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