主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
穹side
【地炎】のメンバー達の案内の元、俺達はスヴァローグがいると言う機械集落にまでやってきた。
「ここが機械集落だ。スヴァローグのアジトであり、流浪人達の溜まり場になっている。余程の因縁か自殺願望がない限り、無闇に問題を起こすのはおすすめしないぞ。」
そう冗談めかしに忠告を告げて、オレグは更に機械集落の奥へと進んでいく。
その先には大きな鋼鉄の門が聳え立っており、門の前に一機のロボットが門番の如く立っていた。
「よお、パーキンス…であってるよな?」
目の前のロボット門番に対してオレグは少し自身無さげにそう声を掛けた。
…ロボット兵隊って、皆同じに見えるから見分け付かないよな。
クラーラは見分けられるようだけど。
「ハイ、ワタクシハ、パーキンスデス。オレグ様何カゴ用意デシヨウカ?」
「ああ、スヴァローグに少し話があるんだ。ここを通して貰えないか?」
「…申請中…承諾シマシタ。ヨウコソイラッシャイマシタ【地炎】の皆様、ドオゾオ入リ下サイ。」
パーキンスと言うロボット門番が門を開いた事で、念願のスヴローグのアジトが見えてくる。
原作では、面倒臭い謎解きや戦闘があった場面だが、今回はなんともあっさりとスヴァローグのアジトに入ることが出来てしまった。
開いた門の先にはゲームでも見た事のある、いかにもボス戦が始まりそうな広場とその奥にスヴァローグとクラーラが住んでいるであろう大きな屋敷があり、その屋敷の前にスヴァローグとクラーラ、フックそして何故かルカと思しき影があった。
{客人のようだ。}
「…兄貴…。」
俺達の来訪に気付いたスヴァローグ達は屋敷の方から広場へと歩を進めて俺達と合流する。
「ルカ、あんた何でスヴァローグのところにいんのよ?」
会ってそうそうゼーレの口からルカに対して疑問が投げ掛けられる。
「…特訓して貰ってるんだ。スヴァローグは強いから良い特訓相手に成ってくれる。」
ゼーレの質問に対して、ルカはそう簡潔に返す。
スヴァローグとルカの絡みは原作のメインストーリーでは殆どないが、同行クエストや演舞典礼でのイベントではかなり深く関わっている。
そう考えると意外とこの二人は相性が良くて、一緒にいても余り違和感の無い組み合わせかもしれない。
{【地炎】…シルバーメイン…穹率いる天涯からの来訪者、ワタシに何か用か?}
世間話もそこそこにスヴァローグがここに来た目的について聞いてきた。
「単刀直入に言うと、星核について在処や謎…何でも良いから情報が欲しい。後、上層部に戻るための力添えも。」
長々と説明する必要はない。
今のスヴァローグが原作から大きく解離して聞き分けが良いのは分かってる。
だから、早速簡潔に目的を述べる事にした。
{わかった、許可しよう。}
「っ!本当か!」
余りにもあっさり承諾された事に驚いて俺は身を乗り出して聞き返してしまう。
{その代わり、条件がある。}
…流石に無条件とは行かないか…。
星核の情報と言うのはそれだけ機密性が高いのだろう。
「条件ってなんだ?」
{ワタシとルカと戦って欲しい。}
「え?」
スヴァローグはともかく、何故ルカと?
二人で特訓していたとはさっき聞いたが、そんなタッグを組む程に仲が良かっただろうか?
原作でも、この二人が戦う場面はあれど、協力する場面は無かった筈だ。
{ワタシとルカはここで長い間特訓し、己を研いてきた。目的は勿論あなたを倒すため。この目的に敵意も殺意もない。純粋にあなたと言う友にして好敵手に自分の全てをぶつけたいと言うワタシ達の意地だ。}
「勝手に胸を借りさせて貰うぜ、兄貴…。」
そう言ってスヴァローグとルカは上着を脱いで、完全に戦闘体制を整える。
正直、いきなり戦えと言われた時は焦ったが、どうやら敵意は無く、純粋に勝負がしたいだけのようだ。
それだけで星核の情報を得られるのなら安いもんだろう。
問題は今の俺が不調な事だが、やらなければこの先に進めない。
やるしかないだろう。
「わかった。二人同時に相手してやるよ。」
「…穹、大丈夫なの?だって今のあんた…。」
なのかから心配の声が掛けられる。
なのかの言いたい事は分かる。
さっきからどうも体の調子が悪い。
でも、やるしかないだろう。
ここで不調を理由に逃げたら、格好が付かない。
スヴァローグ達が自分達の意地の為に戦うのなら、こっちだって俺の意地の為に戦ってやる。
「大丈夫だ。いつもみたいに直ぐに終わらせてやる。」
そう言ってなのかを安心させるように笑い掛けて、優しく頭を撫でてやる。
そうすると、なのかは大人しくなり、もう何も言わなくなった。
「よし、お前ら二人共、いつでも掛かってこい。遊んでやるよ。」
俺はそう言って上着を脱いでバッドを権限させて、戦闘体制を取る。
こうして俺達の戦いが始まった。
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No side
スヴァローグとルカと穹の戦いが始まってから早数分、穹は劣勢に追い込まれていた。
案の定、穹の能力の不調はスヴローグとルカを相手取るには余りにも致命的で、穹は未だに二人にまともなダメージを与えられずにいた。
そもそもの話、スヴァローグを一人で相手すること事態がかなり無茶なのだ。
原作では主人公、丹恒、なのか、ゼーレ、ナターシャの五人がかりで挑んでやっと倒せた強敵。
しかも、それにルカまで敵として襲ってくる。
並大抵の人間では到底太刀打ち出来ないだろう。
それでも、未だに倒れずに耐えられているのは失われた過去で穹が培ってきた、肉体に染み付いた経験値のお陰であった。
それでも、今まで能力頼りだった穹の動きはスヴァローグとルカにとっては素人そのもの。
特にルカは、ボルダータウンのファイトクラブで負け無しのファイターであり、格闘技の心得がある。
そんな彼にとって穹の動きはチンピラに少し毛が生えたくらいのものでしかなかった。
「どうした!兄貴!あんたの力はそんなもんじゃねえ筈だろ!」
「…っ!」
どんどん攻めて来るルカの猛攻を穹はバッドを駆使して何とか防ぐが、反撃のタイミングを失ってしまい防戦一方に成ってしまう。
そんな穹の背後から追い討ちを掛けるようにスヴァローグが大量のミサイルを発射し、穹に襲いかかる。
{対象の危険度低下を確認…サポートモードを起動。ルカ、ワタシは後方支援に回ろう。あなたは思う存分穹と戦え。}
どうやら、穹に向けて放たれたミサイルはルカのパフォーマンスを妨げないための支援行動のようだ。
穹が不調故にルカ単体に苦戦している様子を分析した結果の行動…つまり、舐めプである。
「くそ…舐めやがって…。」
穹はルカの攻撃を捌きながら、スヴァローグから放たれたミサイルを紙一重で避ける。
しかし、避けた直後、ミサイルは軌道を不自然に変えて、再び穹の元へと飛んで行く。
「なっ?!」
軌道修正したミサイルはルカを避けて穹のみに狙いを定めて精確に全弾着弾する。
「がはっ!」
穹に大きなダメージが入るが、それに間髪入れずにルカの猛攻が更に穹を襲う。
穹の腹、顔面、足、鳩尾、天倒、人中、顎、タン中に無数の蹴りと拳を叩き込む。
「あがっ!……。」
更に大きなダメージが入り、穹の体は地面を数メートル先まで毬のように転がる。
「「「「「「「穹(お兄さん/お兄ちゃん)!!」」」」」」」
この戦いを見ていた丹恒、なのか、ゼーレ、ナターシャ、ブローニャ、オレグ、フック、クラーラから穹を心配する声が漏れる。
「どうしちまったんだよ!兄貴…。昔はそんなに弱くなかっただろ!」
「もう、止めろ!穹はもう戦える状態じゃない!」
地面に転がる穹に更に追撃を放とうと近付くルカを丹恒が必死に止める。
「どけ!兄貴の力はこんなものじゃない!兄貴の本当の実力を越えてこその本当の勝利だ!まだ、戦いは終われねえ!」
止めにかかる丹恒を払いのけ、ルカは穹へと歩みよる。
「なあ、兄貴本当にどうしちまったんだよ…。記憶を失って、こんなに弱くなって…俺の憧れだった兄貴は何処に行ったんだよ…。」
ゆっくりと歩きながら、ルカは穹に向かって自身の気持ちを吐露する。
失われた過去でルカと穹は兄弟のような仲だった。
泣くときも怒るときも特訓の時もいつも一緒、ずっとルカは穹の背中を見てきた。
だからこそ、ルカは誰よりも今の状況を受け入れられないでいた。
誰よりも穹と言う存在に理想を押し付けていた。
それが穹の地雷となり、怒りのトリガーとなる事も知らずに…。
「うるせえええええ!!!」
その瞬間、穹の怒鳴り声が機械集落全体に木霊した。
「どいつもこいつも口を開けば過去の俺がどうたら、昔の俺ならあーだったやら、自分勝手に理想を俺に押し付けやがって!俺はお前らの理想を叶える勇者でも都合の良い神でもない!過去の俺とか関係ない!俺にとっては今の俺が本当の俺なんだよ!」
今まで溜まりにたまって塞き止められていた怒りがまるでダムが崩壊した後の濁流の如く流れて止まらない。
穹の葛藤から漏れでた言葉が全て重みを帯びて空気を揺らし、この場に静寂をもたらした。
「…。」
誰もが一言も話せなかった。
自分達がなんて事無いように口にしていた過去の穹と今の穹を比較する言葉が穹を追い詰めていたなんて知らなかった。
今まで知らないうちに穹を傷付けてしまっていた。
その事実が後悔となって彼らに、一斉にのし掛かった。
しかし、そんな中スヴァローグだけが静かに口を開く。
{理想を押し付けるのは決して悪ではない。}
「あ?」
スヴァローグから放たれたその言葉は他人から押し付けられる理想を拒絶する穹を否定するものだった。
{人は他人に理想を抱き押し付け、更に押し付けられた側も理想を押し付け返す。人のコミュニケーションとはそう言うものだ。周りの人間があなたに理想を押し付けているのであれば、あなたも理想を周りの人間に押し付ければ良い。あなた自身がどう在りたいのか、どうして欲しいのか、理想をぶつけて、ぶつけ合って、お互いを知る。そうしないと人は分かり合えない。}
「…。」
{これは過去のあなたからワタシが学んだ事だ。あなたがワタシに理想を押し付けたから、そしてワタシの理想を受け止めてくれたから、ワタシは変わることが出来た。}
スヴァローグは優しく諭すようにその言葉を言い放った。
かつてのスヴァローグは下層部に人間を閉じ込める事で、出来るだけ長く人間が生き残れるようにする事を理想としていた。
この星の人間では星核に太刀打ち出来ないから、星核を対処すると言う理想から滅び行く星で出来るだけ長く生きると言う理想に変えてしまったのだ。
そんなスヴァローグに過去の穹は挑んで勝利した。
物理的な戦いでも、理想の押し付け合いでも完全な勝利を納めた。
それが切っ掛けでスヴァローグは人に心を開くようになったのだ。
だからこそ、スヴァローグの口から、あの様な言葉が出たのだ。
かつて自分を変えてくれた穹を思考の迷宮から救い出すために。
{さあ、どうする?穹。このまま理想に押し潰されて小さく蹲るか、それとも自分の理想を解き放って自由に生きるか、選べ。}
「…俺は…他人の理想に振り回されたくない。人間が理想を押し付ける生き物なら、押し付けられてばかりいる側よりも押し付ける側に成りたい!」
スヴァローグの言葉に感化された穹は元気を取り戻して力強く立ち上がる。
{もう、迷いは晴れたか?}
「ああ!雲一つねえ。」
そう言って穹は再び構える。
気付けばさっきまでの戦いで負った傷は全て回復しており、穹の能力が復活したことが伺える。
そして、穹は復活した能力を使って渾身の一撃をスヴァローグに放つ為に極限まで集中力を高める。
{危険度急上昇…防御プロトコル起動。}
何か大技を繰りたそうとしていることに気付いたスヴァローグは直ぐに自身とルカを囲む巨大なバリアを展開する。
やがて、準備が整った穹が満を持して動きだす。
その動きは今までとは比べものに成らない程のスピードとキレを持つ達人を超越した動きだった。
そして、穹は一瞬でルカとスヴァローグに肉薄し、スヴァローグが展開したバリアにその一撃を叩き込む。
ーーーーー黒閃!!!
その瞬間、空間が歪み、黒い火花が散った。
それと同時にバリアは意図も簡単に破られ、スヴローグとルカは無防備の状態になる。
「スヴァローグ!ルカ!第2ラウンド開始だ!」
満を持して、穹のボルテージが上がった。