主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
「ねえ、丹恒この子って…。」
「ああ、間違い無い……だが、何故ここにいる?」
「そんな事より気を失ってるみたいだけど大丈夫なの?」
「脈はあるみたいだ。しかし、呼吸が弱い。三月、人工呼吸の準備を…。」
「え?!ウチが?…うーんこう言うのってもっと段階を踏んで良い感じの雰囲気の時にするべきじゃない?まだ、心の準備が出来てないよ…。」
「接吻と人工呼吸は別物だぞ。」
「似たような物でしょ!唇同士をくっ付けるんだから!」
「仕方ない、俺がやろう。彼を見殺しには決してさせない。」
「え?!でも、男同士なんて…禁断だよ…。」
甲高い少女の声と平淡で感情があまり見受けられない青年の声により、俺の意識は暗闇から覚醒する。
「な、なんだ?」
重い瞼を必死に抉じ開けると、俺の視界に黒髪の素朴なイケメンのキス待ち顔がドアップで写し出された。
「っ!?うおおお!!何事だ!これは!」
俺は絶叫を挙げながらキス待ち顔で迫ってくるイケメンの顔面を掴んで抑える。
「ふぐっ、おひたか。ぶひでなによひだ。」
目の前のイケメンは顔面を抑えられた状態で何か喋った後、ゆっくりと俺から離れた。
「はあ~、本当にキスするのかと思って焦ったよ。でも、良かった!
イケメンが俺から離れたのを見て甲高い少女の声の主、薄桃色の少し派手目な美少女がため息を付きながら安堵の声を漏らす。
正直、俺も滅茶苦茶焦った…。
いくらイケメンとは言え男にファーストキスを奪われるなんて嫌だからな…。
俺もまた、手遅れに成る前に目覚められた事に心の底から安堵する。
そんなことより、こいつらは一体誰だ?
何で
「なあ、あんたらは一体誰なんだ?」
俺は目の前の二人に率直な疑問をぶつける。
正直言うと彼らが誰なのか何となく目星は着いている。
恐らくは三月なのかと丹恒だろう。
しかし、それだと俺の名前を既に知っていることが説明出来ない。
何故なら、主人公と彼らは宇宙ステーションヘルタで初めて出会うのだから。
既に面識がある筈が無いのだ。
後、俺が転生した世界はゲーム世界のスタレよりも少し現実に近いデザインをしている。
具体的にどういう事なのかと言うと登場人物の姿が皆アニメ調の3Dモデルなのは変わらないが、少しだけ現実の三次元の人間に近い姿をしている。
皆ゲーム世界の面影はあるが名前を聞くまで誰が誰なのかを正確に自信を持って当てられる程ではない。
もう少し、簡単に言うとアークナイツエンドフィールド見たいに最新型の探索ゲームのようなリアルよりなアニメ調デザインに成っているのだ。
故に、彼らが本当に三月なのかと丹恒なのか確信が持てないのだ。
「なっ!?」
「ウソ、ウチらの事覚えてないの?」
俺の質問に対し、二人は信じられない物を見るような目で俺を見つめてくる。
「覚えてないも何も…俺ら初対面だろ?」
「そんな…止めてよ…。そう言う質の悪い冗談。流石のウチでも怒るよ!」
目の前の彼女は声を震わせながら俺にそう怒鳴ってきた。
「落ち着け三月。穹は冗談など言っていない。第一コイツがそんな質の悪い悪戯をする奴ではないとお前が一番分かってる筈だ。」
「…っ。」
取り乱す彼女をあのイケメンが諭してどうにか落ち着かせる。
やはり、既に俺に会った事がある奴らみたいだ。
恐らく俺はコイツらに関する記憶を含めて何もかもを全て忘れさせられたらしい。
こいつらが一体過去の俺とどういう関係なのか気になるが、今はそんなことを聞ける状況じゃない。
取りあえず、こいつらが俺の予想通り三月なのかと丹恒なのかを確認して、直ぐにこの場から動き出さないと。
原作通りなら、今は絶賛レギオンによる襲撃を受けている最中の筈だ。
「その…悪いなお前らの事、覚えてられなくて…。記憶力は悪くない筈なんだが、ちょっとボケているみたいだ。」
「いや、こちらも取り乱してすまなかった。」
「うん、ウチもごめん。」
二人はやり場の無い激情を抑え込むように目を伏せて俺に謝罪の言葉を述べる。
…あの二人のあの表情…。
この雰囲気…。
俗に言う曇らせと言うやつか!
マジかー曇らせかー新しいタグを一つ追加しないとなー。
まあ、冗談はさて起き…。
こんな状況だが、軽く自己紹介しないとな。
二人は俺の事知ってるみたいだが、俺は二人の事知らないもん。
「もう、知ってるみたいだけど、俺は穹だ。特技と趣味は忘れた。よろしくな!」
「うん、よろしく…。ウチは三月なのか…。趣味は…写真を取ることかな?」
「俺は丹恒だ…よろしく頼む。」
うむ、予想通り二人は三月なのかと丹恒だった。
よし、自己紹介も終わったし、早く動き出そう。
原作では確か、気絶していた主人公と三月達が合流した後に防衛科のアーランを救出するんだったよな?
早くしないとアーランが死んでしまうかもしれない。
「自己紹介もそこそこにそろそろ動き出さないか?今、結構ヤバめな状況なんだろう?」
「…そうだな。穹、お前は三月と行動して中枢エレベーターに向かへ。」
「わかった。えっと、丹恒…さんは?」
「……丹恒で良い。俺は別ルートから他に生存者がいないか探してから向かう。先に行っててくれ。」
「了解。行こう三月さん。」
「う、うん…。」
こうして、俺と三月は一度丹恒と別れて中枢エレベーターへと向かう。
その道中でヴォイドレンジャーだと思われる異形の怪物が現れて俺達に襲いかかってきた。
「レギオン…こんなとこにまで…。穹は下がっててウチが何とかするから。」
そう言って三月は弓を顕現させて、氷で出来た矢を生成してヴォイドレンジャーに射出する。
《ガッ!》
《ヴガッ!?》
三月の射撃精度はかなり正確で、放った矢は全てヴォイドレンジャーに命中し、あっという間に戦いが終わった。
「こんなもんだね、穹もう、大丈夫だよ。」
「ああ、…凄いな三月さんは一人で複数のヴォイドレンジャーを相手に出来るなんて。」
「えへへ…そんな事無いよ。このくらい誰にだって出来るって。」
そう言って三月は謙遜しているが、正直俺は素直に彼女の事を凄いと思った。
ゲームのスタレはゼンゼロや原神のようなアクションではなく、ターン製な為、キャラ一人一人は決まったモーションしか繰り出さない。
それ故に、三月があれ程までに射撃の名人であったことに驚きを隠せないでいた。
三月以外のキャラにもゲームでは見られなかった動きが見られるかもしれないと思うと、かなりワクワクしてくる。
「早く行こ!ウチがあんたを守ってあげる!」
「ああ、心強いな!」
さっきまで俺が記憶喪失である事を知って暗い表情に成っていた三月だったが、俺がべた褒めしたことで機嫌がかなり回復したようだ。
ゲームでいつも見てきた明るい天真爛漫な彼女に少し戻った気がする。
そんな彼女を尻目に俺は浮わついた感情のまま目的の中枢エレベーターまでの道のりを辿る。
正直に言うとかなり油断していた。
俺も、三月もここら辺にヴォイドレンジャーはもういないと思っていた。
それ故に反応が少し遅れてしまった。
《ヴガァアア!》
突然、物陰から思わぬ伏兵が現れる。
その急に現れたヴォイドレンジャーは俺達の目の前に現れると同時にその場で飛び上がり、三月目掛けて両腕に映えている刃を突き立てる。
「っ!ウソ!まだ…もう一体…!」
完全に油断し切っていた所に予想外の伏兵。
いくら三月が戦い慣れしていようともこのような形で隙を付かれては咄嗟に反応は出来ない。
三月は弓に矢を番える事も忘れて、ただ呆然と自信に飛び掛かるヴォイドレンジャーを見つめて立ち尽くしていた。
絶対絶命。
このままでは三月の美しい柔肌がヴォイドレンジャーの穢らわしい刃によって傷つけられてしまう。
そんなの、絶対に嫌だ!
そう思った瞬間、俺の体が勝手に動き出した。
考えるよりも先に、後先考えず、ただ三月を守りたい一心で動いて、彼女を庇う形でヴォイドレンジャーの前に立ちはだかった。
次の瞬間、ヴォイドレンジャーの刃が俺の頭部に突き刺さった。
「嫌やあああ!穹ううう!」
三月の悲痛な叫びがステーション内に響き渡った。
きっとこの場にいる誰もが俺が死んだと思っただろう。
目の前のヴォイドレンジャーも三月も…。
しかし、俺は死ななかった。
そして、何故か死ななかった俺は頭にぶっ刺さった刃をすっぽ抜いて、そのまま目の前のヴォイドレンジャーの腕を掴みながら、奴の腹に思い切り力を込めた拳を放った。
その瞬間、ヴォイドレンジャーの肉体は肉塊へと代わり、終いには光の粒子と成って消えてしまった。
「き、穹?…大丈夫なの?」
「ああ、問題ない。」
俺は三月を安心させる為に笑顔で彼女に振り向く。
「無傷だ。」
「頭から血がで出る!」
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NOside
この世界に新たに生まれた愉悦の使令穹。
そんな彼には愉悦の星神アッハより賜った強力な力が宿っていた。
その力の名は。
【
アッハが穹の記憶を読み取り、最も愉悦に相応しいと判断して再現した無敵の力。
その力の効果は…術者本人が受けると確信したイメージを実現すると言うもの。
しかし、その効果はあくまで本来の使い手である高羽史彦がお笑い芸人であった事に起因している。
穹は芸人ではない。
故に【超人】の効果内容は少し変質してしまっている。
この力の現在の効果内容は…術者本人が望み願った事象の実現。
今回の場合、三月なのかを庇い、自分も生きたいと言う穹の無意識の願いがあの様な結果を招いた。
この能力の事を穹はまだ、自覚していない。