主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
「何で、ゼーレがここにいるんだ?」
薄暗い夜道を…まあ、下層部だから、昼夜問わず暗いんだけど…ブローニャと二人っきりで大人の散歩をしていたのに、突然ゼーレが、現れて俺達の蜜月の時は敢えなく終わりを迎えてしまった…。
「何でってナタから頼まれて、これから物資の調達をしに行くところよ。」
「物資調達って、何処に?」
「…私が昔住んでた所。今は裂界に飲み込まれているけど…。」
あー、あれか。
あの物資調達ついでにブローニャが昔の記憶を思い出すって言う結構重要なイベントだ。
本来なら、スヴァローグ攻略前に起きるイベントの筈だけど、過去の俺が既にヤリーロを訪れた事によって生じた原作からの解離が今のような流れを作ってしまったみたいだな。
「裂界って…!一人で行く気なの?危険よ!」
「うるさいわね…。あんたには関係ないでしょ!下層部で生きてる以上、こう言うのは慣れっこなの。だから、私の事なんか放っといて、あんた達はデートでもしてなさいよ!」
ブローニャの話は素直に聞いた方が良いと思うぞ、ゼーレちゅわん。
そうじゃないと、ゼレブロが成立しないからな。
…こうなったら、俺が一肌脱皮して、二人の距離を縮めてやろう。
やってみたかったんだよな、恋のキューピー。*1
そうと決まれば、ゼーレについて行こう。
「と言う訳で、俺達も物資調達に参加する。強制参加だ。俺達に拒否権は無い。」
「…本当にどう言う事?」
おっと、俺としたことが説明が足りなかったようだ。*2
失敬失敬、読者と違って俺のモノローグを読めるわけ無いもんな…。
配慮が足りなかったよ。
「ゼーレ一人じゃ危ないから、俺とブローニャも着いていく。前もって言うが、"着いていって良いか?"と聞いているのではなく"着いていく"と断言しているのだ。お前がなんと言おうと絶対に俺達は着いていく。」
「はあ…、もう好きにしなさい。」
もう好き♡って言われたので俺達はルンルン気分でゼーレの後を着いていく、俺の目的はブローニャの記憶を甦らせるイベントを起こす事とゼレブロを成立させる事であるが、夜道をこんな美少女二人と一緒に歩いていると、俺の心に潜む中学生心が刺激されて、何ともいやらしい思考が俺の頭に余儀ってしまう。
荒ぶれ!…ああ、違った…静まれ!俺の煩悩!
俺は百合の間に挟まるような屑じゃない!
寧ろ、百合を外側から襲う屑だ!
まあ、冗談はこのくらいにしておいて、気付けば俺達はかつて子供の頃のゼーレとブローニャが住んでいた懐かしの故郷、リベットタウンに到着していた。
「やって来たぜ!函館!」
「何処よ?そこ。ここはリベットタウン、私の故郷みたいな場所よ。」
「この景色…何処かで見覚えが…。」
早くもブローニャに兆候が見え始めた!
頑張れ!ブローニャ!踏ん張れ!こう言う時は深呼吸だ!
リピートアフターミー。
ヒッヒッ…Fooooo!!!
踏ん張れFoooo !!!
「見覚えってあんた、上層部のお嬢様でしょ。何でここに見覚えなんかあんのよ?」
「分からないけど、ここに来るのは初めてじゃない気がするの。」
ゼーレの疑問にブローニャは頭を押さえて苦しそうにしながら答える。
どうやら、忘れ去られた記憶が甦ろうとしている事で頭痛が痛くなっているみたいだな。*3
「この街探索していればその内に何か思い出すだろ。それよりも早く物質を確保しようぜ。街一個分を三人で探し回るのは一晩合っても足りるかわからん。」
「ええ、そうね。早く行きましょう。」
そうして、俺達はリベットタウン中を練り歩き、物資を探す。
「…このカフェ…懐かしいわ。孤児院で良い子にしてると、月に一回ナタがここに連れて行ってくれるのよ。」
「ゼーレもここに来たことがあるの?」
「私がそんなお利口さんに見える?」
素晴らしい!私が求めていた世界が目の前にある。
まだゼレブロと呼称するにはぎこちない関係性だが、いずれはスタレ界屈指の百合カップルになるのだ!
そんな彼女達の絡みを間近で見れるなんて…限界オタクの拙者は感無量空処でありますぞ!
ゴソッ!
だが、そんな時ゴソゴソと子供が立てたような小さな物音が聞こえてきた。
「何か物音がしたわね…。」
物音に気付いたゼーレに釣られる形で俺達も音がした方に振り向く。
そこにいたのは10歳くらいの小さな男の子だった。
「エリック!何であんたがここにいるのよ?ここはあんたみたいなガキが来て良い場所じゃないのよ。」
「べっ別になんだって良いだろ!」
ゼーレに対して反抗的な態度を取るこの少年、どうやらこの二人は知り合いのようだ。
一方的にだが、俺も原作知識でこのエリックと言う少年を知っている。
確か、このリベットタウンに残されていた物質を盗んで売ろうとしていたんだったか…。
理由は病気の父を直す薬を買うために金が必要だったから。
つまり、俺達の目当ての物は全てこの子が持っていると言う事になる。
その証拠に、エリックのズボンや懐が不自然に膨らんでいる。
欲張って相当な量を盗んだんだろう。
「俺達はこの街に物資を取りに来たんだが、君は何か知らないか?」
「ギクッ!しっ知らない!」
露骨に分かりやすい反応するな…。
あくまで知らないフリして尋ねた俺が馬鹿みたいじゃん。
「その反応は知っているって事だな。」
「うぐっ…只では渡さないぞ。200シールドだ!」
「あんたね!この状況で交渉する訳?私達はあんたと違って暇じゃないのよ。さっさと物資を置いて消えなさい!」
ゼーレ程そんなに憤ってないけど…、流石に金をせびられるのは気分の良いもんじゃないな…。
それに今の俺は文無しだし…。
「ねえ、君。お金は無理だけど、物と交換はどうかしら?」
そう言って、ブローニャは懐から高級そうなブローチを取り出して、エリックに渡す。
「これには最高純度の地随結晶が嵌めこまれているの。売ればそれなりのお金になるはずよ。」
「え?良いの?」
「ええ、君にも何か事情があるのでしょう?でも、約束して。もう、今後は誰からも何処からも物を盗まないって。」
「うん!ありがとう!お姉ちゃん!」
そう言って、エリックは大量に隠していた物資を置いて、その場から走り去っていった。
「沢山あるな。これで必要な分はもう、手に入ったんじゃないか?」
「ええ、そうね。早くナタの所に戻りましょう。きっとまだ、一睡もせずに隈だらけで待ってるわ。」
そう言って、俺達もリベットタウンを後にしようとした刹那、ブローニャから待ったが掛かる。
「待って!もう少しここにいちゃ駄目かな?もうちょっとだけ、街を探索したら、何か思い出せる気がするの。」
そう言えばブローニャの記憶の件がまだったな。
仕方ない、寝不足のナターシャには今度肩を揉んであげるとしよう。
「ここまで来たら思い出すまで付き合うしかないよな!」
「穹…。」
「はあ、仕方無いわね。ちょっとだけよ。」
ゼーレも賛同してくれて、無事夜のピクニック再開である。
とは言え、ノロノロそこら辺を歩いていても埒が明かない。
ここは一気に勝負を決めるべきだろう。
「何か思い出せる様な特別なスポット的な所とかないか?」
「そんな便利な所あるわけないでしょ。観光名所じゃないんだから。」
まあ、確かにな。
これから滅びる寸前の星に観光名所なんてあるわけないし、愚問だったか。
「特別な場所…孤児院とかはどうかしら?」
「孤児院?」
「ええ、ゼーレとルカは昔ナターシャさんの孤児院にいたんでしょう?なら、そこに連れてって欲しいの。」
なる程な…。
俺も二人が育った孤児院を一度は見てみたいし、決まりだな。
「それじゃあ早速、孤児院へゴー!」
「こんな夜中に良くそんなにテンション上げられるわね…。」
そんなこんなで俺達はゼーレの案内の下孤児院へと向かった。
「どうだ?ブローニャ。」
孤児院に到着し、早速ブローニャに調子を尋ねる。
「うん、やっぱり。私はここに来たことがある。いや、ここに住んでいたわ。穹やゼーレ、ルカとナターシャさんと一緒に。」
どうやら、記憶が完全に戻ったようだな。
まあ、それよりも俺は、俺も孤児院にいたことに驚きなんだが…。
「あんたが孤児院に!?それは…ちょっとおかしいでしょ!だってあんたは大守護者の娘で…。」
「大守護者と私に血の繋がりは無いわ。10年以上も前に下層部の孤児として生活していた私をお母様は孤児院から引き取って養子にしたのよ。」
なっ何だってーーーーー!?
…我ながら100点のリアクションだな!
開拓者の穹に加点!
「…本当にあんたは、下層部にいたのね?」
「ええ、本当に…懐かしいわ。」
心そこから安心したような喜色に満ち声をこぼすブローニャ。
本当に嬉しそうだな…。
記憶を思い出すってのは、そこまで自分も他人も安心させられる物なんだな…。
「…俺、ちょっと席を外すよ。お前達だけで、積もる話があるだろうからな。」
そう言って俺はその場を後にするのだった。