主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?!   作:ひまなめこ

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21話 過去を語るのは存外恥ずかしいものね…。

ブローニャside。

 

穹が何処かに行ってしまってから、私は彼を追いかけること無く、ゼーレと一緒に孤児院の風景を眺めながら、今しがた甦った記憶に思いを馳せていた。

 

「今ままで何かに塞き止められていの物が一気に流れ出すように、記憶がどんどん甦ってくるわ!本当に…懐かしい…。」

 

「未だにあんたが私達と同郷なんて信じられないわ。でも、私自身もガキの頃の記憶が曖昧なのは確かね。…ねえ、良かったらあんたの話を聞かせなさいよ。」

 

私の子供の頃か…。

 

私は目を瞑って10年以上も昔の記憶をゆっくり遡る。

 

私はこの下層部で産まれて、ナターシャさんの孤児院に引き取られて、私と同じ境遇の子供達と一緒に生活していた。

 

その中にはルカやゼーレもいた気がする。

 

それと…穹も…。

 

彼との馴れ初めはどんなだっただろうか?

確か昔の私にとっては…いや、今でも彼は私のヒーローだった。

 

『俺、ブローニャの好きな所なら何でも無限に言えるぞ!』

 

その瞬間、脳裏にありし日の彼の姿がフラッシュバックした。

それと同時に自分の顔に熱が籠るのを感じる。

 

「何赤くなってるのよ?さっきから目を瞑って自分の世界に入っちゃって…。こっちはお陰様で退屈なんだけど。」

 

「…ごっごめんなさい…。ゼーレに何から話そうか考えてて…。でも、もう決まった。聞いてくれるかしら?」

 

「…ええ、良いわよ。でも、どうせ穹の話でしょうけど…。」

 

「うっ…。」

 

図星をつかれてしまった…凄く恥ずかしい…。

 

でも、話さなくては…。

私と彼の馴れ初めを他でもない彼女に聞いてほしい。

 

私は覚悟を決めて重い口を開き、語り始める。

私の過去を…私の中で最も大切な記憶を…。

_

__

___

 

私はゼーレやルカと同じで、この下層部で産まれて、物心つく前に両親をなくしてナターシャさんの孤児院で幼少期を過ごしていた。

 

両親が他界したのか、それとも私を捨てたのか今となっては知る由もないけれど、当時の私に取っては両親がいないのが普通で当たり前な事で、親がいる生活こそが異常だった。

 

だから、親の記憶を持つ子供や親を目の前で亡くした子供に共感する事が出来なかった。

 

それ故に私は周りから孤立していた。

 

そんな私に手を差しのべてくれたのが、穹だったのだ。

 

今でも覚えている…いや、今思い出したと言った方が適切かしら?

私が孤児院の中でも比較的体の大きな年上の子供に虐められていた時に穹が助けてくれた事を。

 

『おい!ネグラオンナ!オトナぶって本とか読んでんじゃねえよ!俺天才だから知ってるぜ!本って言うのはコーキューな物何だよ。お前みたいな地味な奴が読んでいて良い物じゃねえんだよ!』

 

周りから孤立していた私は皆が広場で遊んでいる中、いつも隅っこで本を読んでいた。

 

だから、よく虐めの標的にさていたわ。

根暗で体も小さくて、地味だから、標的にしやすかったのでしょうね

 

『よこせ!本はな俺みたいな天才にこそ読まれるべきなんだよ!』

 

『やめてよ…返して…。』

 

当時の私はその虐めっ子に本を奪われて、馬鹿にされても泣く事しか出来なかった。

 

でも…。

 

『こんのクソガキが!ブローニャを虐めな!』

 

私が虐められていると、必ず穹が飛んで来て私を助けてくれた。

 

『げっ!またお前かよ。』

 

『それはこっちの台詞だ!いつもいつも性懲りも無くブローニャを虐めやがって!もうお前は謝っても許さねえぞ!ケツの穴に手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたるわ!!!』

 

そう言って穹は本当に虐めっ子のお尻の穴に手を突っ込んで、口から手を出して、奥歯をガタガタ叩いた。

 

『おごぼえぇ~!!!』

 

『もう、やらないと言え!そうしたら許してやる。』

 

『も゛っも゛う゛じばぜん!』

 

その言葉を聞いて、穹はお尻の穴から手を放して虐めっ子を解放する。

 

『たっ助かった…『と思っていたのか!』

 

次の瞬間、穹の鋭い拳が虐めっ子の顔面に突き刺さった。

 

『ぶべっ!そっそんな…話が…違う…もうしないって言えば…許してくれるって…。』

 

『己を知れ。そんな美味しい話があると本気で思っているのか?お前みたいな人間に…!』

 

『っ!なっなんてひでえ野郎!』

 

その瞬間、虐めっ子が穹に殴り掛かった。

しかし、穹からすれば虐めっ子の動きなど、亀の散歩も同然。

全てスローモーションに見えている。

 

故に、虐めっ子は簡単にカウンターを決められてしまった。

 

『ごっは!…まっ待って!話をしよう。取引だ!俺のお小遣い全部やるから許してくれ!』

 

『人間には決して犯してはならない罪がある。それは相手を侮辱する事。お前は幾度もブローニャを侮辱した。そのツケは金では払えねぜ!』

 

『オラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラ。』

 

そこからは延々と穹の何百何千と言う拳が虐めっ子を殴り続けた。

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!…WRYYYYY !!!…無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…無駄!!!』

 

『ヤーダッハッー!!!』

 

『オラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオララオラオラ…オラッ!!!』

 

無数の打撃が遂に止み、虐めっ子は軽く数千…いや、数万キロも先ににふっ飛んで行き、それ以降彼の姿を見たものはいなかった。

 

『災難だったなブローニャ。だが、安心しろ。お前を虐める奴は俺がやっつけたから。』

 

『ありがとう。でも、何でいつも助けてくれるの?こんな協調性のない地味で弱っちい根暗女なんて放っとけは良いのに…。』

 

当時の私は幾度もちょっかいを掛けてくる虐めっ子のせいで自己肯定感が低かった。

だから、どうしても自分に優しくしてくれる他人と言う存在が新鮮で、それと同時に疑わしく思っていたの。

穹が私を助けてくれるのには何か裏があるのでは無いかと…。

 

でも…。

 

『何でも何も無い。特に理由は無いな。強いて言うなら俺がブローニャの事を好きだからな。』

 

『え?』

 

その言葉に私は衝撃を受けた。

こんなにも恥ずかしげもなく、人に好きって言えるものなのか…。

 

私は人に好きなんて言われた事人生で一度も無かったから、戸惑ってしまう。

 

『そんな…絶対嘘だ。私なんかの事を好きなんて…。』

 

『嘘じゃない!俺はブローニャの事()大好きだ!ブローニャの素敵な所を俺は何でも知ってるぞ!』

 

『…本当に?』

 

『ああ!俺、ブローニャの好きな所ならなんでも無限に言えるぞ!』

 

その瞬間から私の頭から穹と言う存在が離れなくなった。

穹の事を考えると鼓動が早くなって、顔が火照ってしまう。

この感覚が恋であることを知るのはかなり後の話だけれど、私の心が彼に傾いた切っ掛けは紛れもなく、この瞬間だと思う。

 

_

__

___

「大守護者に引き取られて上層部に来て、下層部の事を忘れても、ずっと穹の事だけは忘れずにいた。それだけ私にとって彼は大きな存在だったの。」

 

そう言って私は過去の話を締めくくる。

改めて話すと恥ずかしいけれど、こうして穹との思いでを振り替えると何だか懐かしい気持ちになる。

 

「ふーん、穹らしいと言えば穹らしいわね。」

 

「ゼーレは何か無いの?穹との馴れ初めとか。」

 

私の勘が正しければ、ゼーレも私と同じで、きっと穹にただならぬ感情を抱いている筈。

私は過去を語ったのだから、ゼーレも話さなければ不公平と言うものだ。

 

「私は別に特にこれと言った特別な話はないわ。…ただ、いつもずっと一緒に遊んだり、戦ったり、たまに喧嘩したりして、お互いの裏と表をぶつけていく内に気付けば私達の間には心の壁なんて不確かなものは無くなっていた。隔てる壁が無くなって、あいつの顔がよく見えるようになってからは自分でも不思議なくらい無意識にあいつの姿を目で追うようになっていたわ。これが恋だって気付いたのは最近だけど。」

 

…何だか、ゼーレらしいと言えばゼーレらしいかも。

きっと私も特別な出会いや切っ掛けが無くとも穹に恋していた思う。

 

彼は不思議な魅力を持っているもの。

 

「話はこれくらいで良いかしら?そろそろ穹を呼び戻しましょう。」

 

「ええ、そうしましょう。」

 

一旦話を終えて、私達は穹を探しに行く。

と言っても、穹は案外近くにいたので、数分も経たない内に直ぐに見付けることが出来た。

 

「ん?もう話は終わったのか?」

 

「ええ、沢山語り合ったわ。」

 

「そろそろ行きましょう。ナタが不眠不休で待ってる筈よ。」

 

穹と合流して私達はボルダータウンへと歩き出す。

 

かなり寄り道をしてしまって、ナターシャさんには本当に申し訳ないわ。

 

彼女は下層部の人の為に寝る間も惜しんで看病を続けているのに…。

 

…本当に凄い事だと思う。

誰かの為に身を粉にして頑張れる人は本当に強い。

ナターシャさんも穹もゼーレも…。

 

それに比べて私には何が出来る?

私は人々の為に何を成し得るのだろう?

私にしか出来ないこと…それは、大守護者の娘としてお母様を止める事だろうか…。

 

「二人共ちょっと良いかしら?」

 

「何よ、まだ何かあるの?流石これ以上はナタを待たせられないわ。」

 

「いいえ、そんなに時間は取らせないわ。ただ、私のこれからする事をあなた達に聞き届けて欲しかったの。」

 

覚悟は決めた。

きっと危険な掛けになるでしょうけれど、私は私の出来る事をしたい。

 

「私は…「一人でカカリアの所に行くってのは無しだぞ。」えっ?」

 

私が言おうとしていた事をまるで予知していたように、穹は私の言葉に被せるように言った。

 

…何で、私の考えていることが…。

 

「割りと結構分かりやすい顔してたからな。…ブローニャ、一人で背負う必要はない。お前がお前なりの戦い方を探して焦る気持ちもわかる。だが、一人で危険に飛び込むのは流石に無謀だ。勇気と蛮勇は違うぞ。」

 

「でも、私が行かないと、大守護者は」

 

「それなら俺に良い考えがある。ブローニャそしてゼーレ、――――――――――――――。」

 

「「え?!」」

 

私とゼーレは同時に驚愕の声を漏らす。

何故なら穹が話した案は私達の想像を絶する物だったから。

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No side

 

リベットタウンで物資を確保した()()()()()はボルダータウンに無事に戻り、ナターシャの診療所に来ていた。

 

「ナタ、頼まれていた物資よ。」

 

「ありがとう。大変だったでしょう。」

 

「そうでも無いわ。穹が手伝ってくれたし。」

 

そう言ってゼーレは穹の方に視線を飛ばす。

しかし、不思議な事に視線を向けられた本人は何も反応を見せずに無表情のままその場で突っ立っている。

 

「…そうありがとう穹。」

 

「…。」

 

「…えっえっと、あなたのお仲間はもう既に起きた見たいよ。もうじき上層部に出発するらしいわ。早く合流した方が良いんじゃないかしら?」

 

「…。」コク

 

そうして穹(?)はゼーレと共に診療所を出て、なのかと丹恒と合流する。

 

「あっ!やっと来た!もう、何処に行ってたの?ずっと待ってたんだよ!」

 

「…。」

 

「これで全員揃ったな。早く上層部に向かうぞ。この星の命運の為、あまり油を売ってはいられない。」

 

丹恒のその言葉で穹達は早速上層部へ向かおうと歩き出す。

 

しかし、その直後になのかから待ったが入り、全員歩みを止める。

 

「待って!私達今指名手配犯なんだよ。上層部に戻ったとして何処に行くの?」

 

当然の疑問である。

穹とゼーレはともかく、丹恒となのかは絶賛指名手配中。

日の下を歩ける状態ではない。

 

「…からくり工房。」

 

そこで穹が口を開き、上層部で指名手配中の丹恒達を匿ってくれそうな場所の名前を口にする。

 

「からくり工房って、セーバルのお店?確かにあの人なら匿ってはくれそうだけど…。」

 

「行くだけ行って見よう。駄目だった場合はその都度考えれば良い。」

 

そんなにこんなで行き先が決まり、今度こそ、穹達は上層部へ向かうのだった。

 

 

 

 

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