主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?!   作:ひまなめこ

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4話 結局変わらない

「驚いたな、あの個体を倒すのは防衛科の精鋭を持ってしてもやっとだと言うのに…まさか単独で倒してしまうとは…。」

 

「あんた見ないうちにそんなに強くなってたんだね。ビックリだよ!」

 

「驚く気持ちは分かるが、その話は後だ。増援が来る前にエレベーターに乗り込むぞ。」

 

丹恒の言葉にさっきまで俺の実力に驚いていたアーランと三月は正気に戻り、皆で中枢エレベーターに急いで駆け込む。

しかし、後少しでエレベーターに乗れると言うところで、大量の新手のヴォイドレンジャー達が現れて俺達は包囲されてしまう。

 

「うー、レギオンがいっぱい…。スウォームみたい…。」

 

まるで蝗害の様に群れをなすレギオン達に三月が悪態をつく。

 

一体一体はあまり強く無さそうだが、数が多いな…。

これは万事休すか…。

 

俺がそう思った直後、ピザカッターのような刃を持つ特殊な形のドローンが突然現れて、無数のレギオンの群れを次々と蹴散らして、エレベーターへの道を切り開いてくれた。

 

「あれは、姫子のドローンだよ!助けに来てくれたんだ!」

 

「喜ぶのはまだ早い!今のうちにエレベーターに乗り込むぞ!」

 

喜ぶ三月を諭す丹恒の言葉と共に俺達は今度こそエレベーターに無事乗り込み、その場からの脱出に成功した。

 

「ふう…間一髪だったね!」

 

エレベーターに乗り込み、主制御部分に着くまでの僅か時間、エレベーター内に三月の安徳の声が響いた。

 

「あの数は反則だよな…。一体一体はそこまで強くないけど、あの数で群れをなされるとかなりめんどくさい…。」

 

「…何はともあれ全員無事で良かった。」

 

「ああ、しかし問題はやはり主制御部分に戻ってからだろう。今回の騒動でかなりの犠牲者が出た。そいつらの弔いや生き残った従業員のメンタルケアなど、問題は山積みだ。」

 

アーランのその言葉で少し空気が重くなる。

 

生き残ったからそれで終わり、ボスを倒したから終わりってそんなに都合よくは行かないよな…。

改めて、この世界が現実であることを実感するよ…。

 

「力に成れるかはわからないが、困った時は俺を頼ってくれ。出来る限りの事はする。」

 

「…っ!ああ、その時は頼む。」

 

僅かな時間会話を交わしている内にエレベーターが目的の階で止まって扉が開いた。

扉の向こうには赤毛の長髪と金色の瞳を持ち、白いドレスに黒いコートと言う奇抜なファッションをした妖艶な女性が立っていた。

 

「っ!?あんたは…!」

 

目の前の赤毛の女性は俺を一瞥した瞬間、目を見開いて俺に近づいてきた。

 

「久しぶりね、穹。まさかあんたがこんな所にいるなんて予想外だったわ。」

 

んー?

えーと、ストーリーの流れ的に考えてこの人は姫子だよな?

 

「久しぶりの旧友との再会なのに挨拶も無しなんて随分連れないじゃない?」

 

そんな事言われてもな…。

はじめましてって言ったら多分また気まずい雰囲気に成るだろう?

だって、俺は身に覚えが無いのに既に接点があるみたいなんだもん。

 

「姫子…。この子、実は記憶喪失みたいなの。だから多分姫子の事覚えてないんだと思う。」

 

「っ!?…それは本当なの?」

 

「ええ、まあはい…。」

 

三月の言葉に再び目を見開き、俺に質問してくる姫子に対して曖昧に返事をする。

 

「はあ、久しぶりに会ったら文句の一つでも言ってやろうと思ってたのに…宛が外れたわ。」

 

怖っ!

え?何?過去の俺何したの?

俺何か嫌われるような事した?

 

「あの~、つかぬことをお聞きしますが、俺は一体あなたに何を…?」

 

「…自分で考えなさい。」

 

「…はい。」

 

まじで何したの?俺!

 

「まあ、元気出してよ、穹。姫子はああ見えて穹の事嫌ってる訳じゃないから。」

 

嘘つけ!

明らかに塩対応じゃん!

俺の事嫌いな態度じゃん!

 

「俺も三月と同意見だ。なんだったか?ヴェルトさんが言っていたツンドラ(?)と言うものだろう。」

 

なんなんすか?ツンドラって!

極寒地域ですか?

姫子からの俺への気持ちが冷め切ってるって言いたいんすか?

 

「違うよ!パンドラだよ!」

 

そスッか…。

パンドラっすか…。

パンドラの箱ですか…。

開いちゃ行けないわけですね?

姫子の過去には触れない方が良いってことっすね?

 

「あんた達バカな事言ってないで着いてきない。アスターから話があるそうよ。」

 

そう言って先に行ってしまう姫子に俺達は慌てて着いていくように歩を進める。

 

エレベーターの扉から真っ直ぐそのまま直進した先で件のアスターだと思われる薄い赤茶色の髪をした少女が各部門の従業員達に的確に指示を出していた。

 

「アスター所長!戻ったよ!」

 

「っ!お帰りなさ…って穹!!!??何でここにいるの?」

 

三月がアスターに話しかけ、それに応じた彼女が振り向き様に俺を一瞥した瞬間、とても女性が出すものとは思えない声が彼女の口から飛び出した。

 

うん、まあそうだよな…。

予想出来た反応だ。

 

「まあ、紆余曲折あったんだ。」

 

「…もうちょっと詳しく話を聞きたいところだけど。今はそんな余裕はお互いに無さそうね…。」

 

アスターは俺の今の状況を何となく察してか深くは詮索しないでくれた。

…ありかだい。

 

「状況はどうだ?」

 

「今の所はコントロール出来ていると思うわ。システム面の被害は思った程大きくないから修復はそこまで困難では無さそう。潜在的な問題はどちらかと言うとスタッフの方に有りそうね。今回の騒動でスタッフ達の精神にかなりの衝撃が走ったでしょうから…。」

 

さっき、エレベーターでアーランも似たような事を言っていたな…。

スタッフ達のメンタルケア…、これが目下の課題か。

 

「スタッフのメンタルケアは私達に任せてちょうだい。この切迫した状況で最も怖いのはレギオンじゃなくて追い詰められてパニックに成った『人』よ。」

 

「それは助かるわ、姫子さん。こんな時ヘルタがいればもう少し状況がマシに成るのだけど…。」

 

「ヘルタに連絡は?」

 

「もう、何通もしたわ。でも、音沙汰ない。知ってるでしょ?宇宙ステーションは彼女の追従者と奇物の倉庫でしかないわ。全く気にも止めてないのよ…。」

 

「なら、私からも連絡してみるわ。ヘルタが興味有りそうな奇物を見付けたの。その上ここには芦毛の餌がある。きっと釣れる筈よ。」

 

そう言って姫子は俺を見つめてニヒルに笑った。

 

餌?

もしかして芦毛の餌って俺の事?

 

「とても助かるわ!ありがとう。」

 

そこで一旦会話を終えて俺達は各々自由時間兼スタッフのメンタルケアの時間に取り掛かった。

 

「もう駄目だ…。皆死ぬ…。誰も助からない…。」

 

よぼよぼに老けた老人が床に座り込んだ状態でぶつぶつと不穏な事を呟いている。

 

まずはこのご老人のメンタルケアから始めるか。

 

「お、おい。あんた大丈夫か?」

 

「もう駄目だもう駄目だもう駄目だもう駄目だ。」

 

明らかに大丈夫じゃない奴に「大丈夫か?」は失敗だったか…。

 

「なっ何か力に成れることはないか?出来ることなら何でもするぞ!」

 

「もう駄目だもう駄目だもう駄目だもう駄目だ。」

 

駄目だ、まとに会話に成らない。

仕方ない、他を当たろ…。

 

「強く生きろよ…。」

 

俺は一旦その場から離れて次のメンタルケアが必要そうなスタッフを探す。

 

「何故だ!ミスヘルタが支配するこの宇宙ステーションは完全な物の筈!いや、完全な物でないと駄目だ!なのにまさかレギオンの侵入を許すとは…。」

 

今度は比較的かなり若いスタッフだ。

どうやらこの人はヘルタを信仰しているらしい。

 

…うん、素面でもヤバそうな人だけど一応話し掛けてみるか。

 

「人である以上、ヘルタも完全ってわけではないと思うぞ…。人には向き不向きが有るわけだし…。」

 

「貴様!ミスヘルタを愚弄する気か!」

 

アカン話が通じない。 

逃げよう。

 

「失礼しました~。」

 

あれから主制御部分を奔走してメンタルケアをダメ元でやってみたが、どれも惨敗に終わった。

 

「はあ、メンタルケア難…。」

 

ベンチに腰を掛けながら、俺は深くため息をつく。

 

「大丈夫よ、おばあさん。」

 

「ん?」

 

この声は姫子か?

俺は声はがした方に視線を飛ばす。

するとそこには聖母のような眼差しで老婆のスタッフと親身に話している姫子の姿があった。

 

「本当かい?」

 

「ええ、原因の究明も迅速に行っているし、手が足りない防衛面は私達星穹列車が全面的に協力するわ。」

 

「そうかい…!それなら安心ねえ…。」

 

すげえな…。

あれが大人オブ大人姫子様の話術。

頭が上がらん。

 

心の中でそう呟き合掌していると、メンタルケアが終わった姫子が俺の方に歩み寄ってきた。

 

「ベンチで油を売りながら覗きかしら?趣味が悪いわね。」

 

「後学の為に見学してたんだよ。メンタルケアしようにも俺じゃあ、全然上手く出来ないからな…。」

 

「何?落ち込んでるの?」

 

「うん、ちょっとな。俺、この宇宙ステーションの為に何も出来てないから。」

 

俺は記憶喪失で転生直後までの記憶しかない。

そんな中気付いたら宇宙ステーションにいて、戦いに巻き込まれて、もうワケわからなくて…。

正直、自分の事だけで手一杯だ。

 

でも、他の皆はそんな状況でも他人を優先してる。

それに少し劣等感みたいなものを抱いていたのかも知れない。

 

「そんな事無いわ。」

 

「え?」

 

「三月ちゃんとアーランから聞いたわ、レギオンとの戦闘ではあんたに沢山助けられたって。あんたはメンタルケアで人を助けるのが向いてないだけ。戦闘ならあんたは大勢の人を助けられる。人は生きていれば得意不得意あって当然なのよ。」

 

「姫子…さんはあるのか?不得意な事。」

 

「当然よ。私は戦闘はそこまで得意じゃない。このドローンがないと何も出来ないのよ。」

 

そう言って姫子はスーツケースの形に纏まったドローンを優しく撫でる。

 

「逆に私が得意なのは戦闘とは正反対な物。勉強ね。」

 

「勉強?」

 

「知識のインプットとアウトプットが得意なの。さっきおばあさんのメンタルケアをしたのもこの前読んだメンタリズムの本で得た知識のアウトプットよ。」

 

姫子が頭が良いのは知っていたが、こうも頭の回転が早く柔軟性が高かったとは…。

 

素直に脱帽だ。

 

「…凄いな。俺には真似出来ないわ。」

 

「それで良いのよ私は頭を使うのが得意で、あんたは体を使うのが得意。私に出来る事があんたに出来なくて、あんたに出来る事が私には出来ないのが普通なのよ。」

 

「そうか…そうだな!ありがとう姫子。」

 

「別に…、あんたに辛気臭い顔されるとちょっと調子狂うから仕方なくしただけよ。」

 

「それでもありがとう。俺、姫子の事、心の底から尊敬出来るよ。何て言うかその…姫子って "美しいな"」

 

「っ!?」

 

「外見はそうなんだけど、内面とか色々引っくるめて、姫子と言う人間その物が美しいよ!」

 

そう言って俺は姫子から離れて、その場を後にする。

俺の得意で皆の助けに成るために出来る事をするために…!

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姫子side

 

彼が何処かへ走り去るのを見送りながら私はさっき彼から掛けられた言葉を心の中で反芻する。

 

『美しいな!』

 

この言葉を彼から貰ったのは初めてではない。

いつだったか…。

かなり前に私が思い悩んでいる時に彼に相談して貰った時に掛けて貰った言葉だ。

-

--

---

『姫子、何か悩み事か?』

 

『え?いや、別に何もないけど…。』

 

『嘘つくな、顔に悩んでますって書いてあるぞ!』

 

昔の彼はいつもそうだった。

人の感情の機微に妙に敏感で、隠し事なんて私から彼への密かな想いを除いて何一つ出来なかった。

その時も別に私から何かを言った訳でも無いのに勝手に私の悩みに気付いて勝手に相談に乗って来た。

 

『それで?姫子は何について悩んでいるんだ?』

 

『その…私って本当に列車のナビゲーターに向いているのかしら…。』

 

『ん?何故そう思う?』

 

『だって私は飛び抜けて強い訳じゃない。力はヴェルトや丹恒に当然及ばないし、最近内に乗車してきた三月ちゃんにだって戦闘のセンスで劣ってしまってる。こんな非力な女がナビゲーターで本当に良いのかしら?皆を不安にさせてないか心配で…。』

 

実際、戦いでヴェルトや丹恒の足を引っ張る事は多々ある。

その度に思うのだ。

私は彼らのナビゲーターにふさわしいのかって…。

 

『うーん、確かに星穹列車の皆は飛び抜けた戦闘センスがある。でも、だからってそれだけでやっていける程宇宙の開拓は上手く行かないだろ。例えばなのかは故障した列車のブレーカーを直せるか?』

 

『…無理ね。三月ちゃんは意外とがさつだもの。精密機器の扱いは苦手の筈よ。』

 

『なら、次は丹恒はちゃんと片付けしたり、毎日決まった時間に寝て決まった時間に起きれるか?』

 

『それも無理ね、丹恒って意外とああ見えて布団を敷きっぱなしにするのよ。それに読みかけの本をそこら辺に置くし…。』

 

『じゃあ、最後にヴェルトはスマホを操作出来るか?』

 

『…この前、グー○ルの開き方を聞いて来たわ。』

 

『でも、今言った事は姫子なら全部出来る。』

 

『何が言いたいの?』

 

本当に彼は一体私に何を伝えたいのだろう…。

彼の真意が分からず、私は少し苛立ちを覚えながらそう質問した。

 

『人はな、得意不得意があんだよ。当然俺にもな。俺は戦闘が得意だけど、姫子見たいに知識をインプットとアウトプットするのは苦手だ。お前に出来ない事が俺に出来るように、俺に出来ない事がお前に出来るんだよ。それでいいじゃねえか。』

 

『…私に出来る事…私の得意なこと…。』

 

『まあ、それでもお前がどうしても戦闘力にコンプレックスを抱くなら取って置きの品がある。』

 

『取って置きの品?』

 

そして、彼は何処からともなく大きなスーツケースを取り出して私に差し出してきた。

 

『これは?』

 

『プレゼントだ。中身はドローン。レーザー出したり、備え付けの刃で敵を切ったり出来る優れもんだ。おまけに拡張性もある。お前の好き改造して、お前が自由に戦えるようにすれば良い。そう言うの"得意"だろ?』

 

私の為にこれを…。

 

彼は私の為に私の得意を活かせるための武器を用意してくれた…。

その事実が私の心に優しい埋み火を灯し、温もりを与えてくれる。

 

『ええ!ありがとう穹!』

 

『どういたしまして!』

 

『でも、何でわざわざ私のためにこんな物を…?』

 

『"美しい"と思ったんだ。』

 

『え?』

 

『見返りを求めずに人を助け、自分より他人を優先するお前の生き方が…お前なりに開拓に沿って生きてるその在り方が何よりも"美しい"と思ったんだ。』

-

--

---

「ほんっとバカみたい…。あんたに言った事全部あんたからの受け売りなのに…。私を心の底から尊敬だなんて…。」

 

やはり、彼は記憶を失っても変わらないみたいだ。

 

 

 

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