主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
ヘルタと別れた後、俺は星穹列車が停車しているホームにて姫子と合流していた。
「姫子さん、お待たせ。」
「本当に待ちくたびれたわ…。いつまで油売っていたのよ?」
「いや、ゆっくり話してこいって言ったのそっちじゃん。」
「そんなの社交辞令に決まってるでしょ。こう言う時は女性を待たせては駄目なのよ。」
なんて理不尽なんだ…。
今度からは瞬間移動使って待ち時間ゼロにしてやる。
「ほら、もう皆待っているわよ。早く入りなさい。」
姫子にそう急かされて、俺は慌てて星穹列車の中に入る。
「ここが星穹列車か…。」
ゲーム通り…いや、少しゲームよりもリアルだな。
まあ、当たり前なんだけども。
「…ほら、もう皆ラウンジに集合しているわ。早く行くわよ…。」
リアルで見る星穹列車の内装に感動していると…姫子に半ば強引に引っ張られる形でラウンジに入れさせられる。
「あっ!やっと来た!」
ラウンジの中には三月と丹恒、そして眼鏡を掛けた茶髪の男性と何とも珍妙な小動物が俺達を待っていた。
「もう、待ちくたびれたよ…。ヘルタと何話してたの?」
「まあ、色々大人の話をな。三月さんにはまだ早いよ。」
「ほっホントに何の話をしてたの!?不潔!」
何か勘違いさせてしまったらしい。
まあ、これはこれで反応が面白いからそのままにしておこう。
「あまり三月をからかうな。」
「ごめんごめん、反応が面白いからつい…。」
俺は笑いながら丹恒に適当に返事を返す。
そんな俺に近付いてくる陰が二つ。
茶髪の眼鏡男と珍妙な小動物だ。
「久しぶりだな、穹。」
先ずは茶髪眼鏡男の方から話し掛けてきた。
「えーと、あなたは?」
「おっとすまない。記憶喪失なんだったな。俺はヴェルト・ヨウだ。気軽にヴェルトともヨウとも好きな方で読んでくれ。」
「わかった、よろしく!ヨウおじちゃん。」
「ハハッ!相変わらずだな穹は。記憶を失っても変わらないようで安心した。困った事があったら遠慮なく言ってくれ君の為ならなんだって協力しよう。」
気の良い近所のおっちゃんのように優しく微笑みながらそう言って、ヨウおじちゃんは俺から離れていった。
「次はオレの番だな。」
次はこの珍妙な小動物からも何か用があるようだ。
「ここは敢えてはじめましてと言っておこう。オレはこの列車の車掌を務めておるパムじゃ。」
「そうか、ハムさんか。美味しそうな名前だな。」
「パムじゃ!」
パムも三月と同じで反応が面白いな。
新しい玩具を見つけてしまった。
「お前の事情は三月ちゃんから聞いておる。何か困ったら遠慮なく言うように。くれぐれも自分で抱え込むでないぞ!…それでは、オレはこれから跳躍の準備があるので失礼する。」
言うだけ言って満足したパムは俺から離れて何処かへ行ってしまった。
ゲームをプレイしてた時も思ったが…
「星穹列車…何ともまあ、個性豊かな場所だな。」
おっと、つい心の声が漏れてしまった。
まあ、小さな声で呟いた程度だから問題な…
「「「「「お前にだけは言われたくない。」」」」」
…解せぬ。
そんなこんなで列車組との顔合わせを一通り終わらせた後、俺はラウンジのソファーに座って跳躍までの時間を潰す。
ピロンッ!
そんな時、俺のスマホから着信音が鳴り響いた。
「ん?何ゾ?」
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?「やっほー。元気?」
穹「だれ?」
?「誰でしょう?当ててみてよ。」
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スマホを開いて見ると、知らない奴からメッセージが届いていた。
いや、実際は過去の俺と面識があるわけだから知らない奴ではないのだろうけど…。
こいつは一体誰だ?
この文言からして俺が記憶喪失である事を知っている可能性が高い。
何せ俺が記憶が無いことを知らない限り、「当ててみてよ」なんて言える訳がない。
普通の奴なら、俺が「誰?」って聞いたら「○○だよ!忘れたの?」って言う感じの反応を見せる筈だ。
となると俺の事情を知ってる奴ら…星穹列車の面々と宇宙ステーションの皆、最後に星核ハンターが怪しいな。
先ずこの中で、列車組は除外だろう。
この場には列車組の面々が全員揃っているが、誰もスマホを触ってない。
パムは列車の点検をし、姫子はコーヒーを飲んで、丹恒は本を読み、ヴェルトと三月が親子の様に仲良く会話している。
故に列車組はない。
となると宇宙ステーションか星核ハンターの二択だが…。
宇宙ステーションは先のレギオン騒動でかなりゴタゴタしているから俺にメッセージを送る余裕などない筈だ。
消去法で星核ハンターの誰かと言うことになる。
…口調的に銀狼だろうか?
そう思い、メッセージを書き込もうとして俺は一度思い直す。
俺の予想は銀狼だ、それは変わらない。
しかし、もしここで素直に銀狼と答えたら色々とややこしい事にならないか?
記憶を失ってる筈なのに何故知ってるの?ってなってしまう。
ここは分からないと答えた方が賢明だな。
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穹「ごめん、分からない」
?「ホントに?」
穹「ああ。」
?「ふーん、」
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銀狼には悪いが暫くは誰にも俺の秘密を言う気はない。
ピロンッ!
「ん?」
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?「嘘着くんだ?芦毛ちゃん。」
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「っ?!」
俺は驚きのあまり、思わずスマホを落としてしまう。
銀狼じゃない…。
もしかして花火…。
ピロンッ!
ピロンッ!
ピロンッ!
ピロンッ!
ピロンッ!
ヤバい…、メッセージが止まらない…!
どんどん送られてくる無数のメッセージに怖くなった俺は慌ててスマホの電源を落とす。
「はあ、はあ、はあ…びびったー。」
電源を切った事で着信音が止んだ事に安堵し、俺はゆっくりと息を吸う。
それと同時に漸く跳躍の準備が整ったのか、列車全体にアナウンスが響き渡る。
『あーあー、これより列車は跳躍を開始する。全員安全な場所に座って衝撃に備えよ!』
アナウンスが鳴り止んだ直後、三月以外の全員が近くの椅子に座って跳躍の時を待つ。
三月は…。
相変わらず、原作通り立ったまま跳躍の揺れに耐えれるかチャレンジをしているようだ。
「ウチは大丈夫、ウチは大丈夫、ウチは大丈夫、ウチは大丈夫!」
目を瞑りながら精神統一する三月は…なんと言うか、やはり可愛くて微笑ましいのでそっとしておいて、俺も跳躍に備えてソファーに深々と座る。
そして、遂にお待ちかねの跳躍が開始される。
『3…2…1…発車!』
その瞬間、今まで経験したことのないような、全身の神経を遠心力で圧迫したような感覚と音速で回転するメリーゴーランドに乗った時のような意識の揺れが俺を襲った。
「う…、気持ち悪い。」
俺は初めての跳躍により酷く酔ってしまい、とんでもない吐き気に襲われる。
「すまない…トイレは何処だ?」
「トイレならパーティー車両にある。案内しようか?」
「頼む…うぷっ。」
俺はヨウおじちゃんにトイレへ案内して貰うべく、頑張ってソファーから立ち上がって歩き出す。
しかし、ソファーからほんの一、二歩歩いた所で何か大きくて柔らかいものに躓いて転んでしまった。
「うわっ!」
「へぶっ!」
不思議な事に転んだのに痛みが全く無かったので、嫌な予感がして下を見ると…三月が転んだ俺の下敷きになっていた。
恐らく、跳躍チャレンジで倒れた三月に俺が躓いてしまったのだろう。
「いたたー。」
「ごっごめん!三月さん。」
俺は慌てて三月の上からどこうとするも、まだ跳躍の酔いが残っていたため、うまく立ち上がれず、運が悪いことに彼女の胸に顔を
「キャー穹!何してるの!」
三月は絶叫と共に俺の身体を思い切り吹き飛ばし、俺の身体は壁にめり込む。
「穹のエッチ!もう、知らない!」
そんな言葉を吐き捨てて、三月は自室に逃げるように駆け込んだ。
彼女が出ていったラウンジにはただ気まずい空気だけが流れるのだった。