主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
「元気を出すんだ穹、今回は君は何も悪くない。」
「ヴェルトさんの言う通りだ。あれだけ跳躍中は座ってろと注意されていたのに無視してチャレンジに失敗した三月が悪い。」
俺は今ラウンジの窓に映る氷に覆われた星、ヤリーロⅥを真顔で見つめながら、丹恒とヨウおじちゃんによって慰められていた。
「はあ~、どうしよう。三月さんに嫌われちゃった。」
「そんなことでなのかは君を嫌ったりはしない。何せなのかは君の事を…」「ヴェルトさん、それ以上は駄目だ。」
「おっとすまない。余計な事を口走るところだったな…。」
「え?何?三月さんがどうかしたの?気になるんだけど…。」
「…コホンッ!」
そこでヨウおじちゃんは大きな咳払いをして露骨に話題を反らす。
「そんなことよりも今回の開拓だが、穹と丹恒となのかの三人で行って貰おうと思ってるのだが、どうだ?」
「さっき、あんな事があった直後なんすけど…。」
「だからこそだ。ずるずると気まずい関係を引っ張っていると、そのうち修復するタイミングを逃す。安心しろ、丹恒が手厚いサポートをしてくれるからな。」
「全て俺に任せろ。」
…何で丹恒はこんなにノリノリなんだよ…?
て言うか、これって勝手に決めて良いのか?
普通誰が開拓に向かうかはナビゲーターである姫子が決める事じゃないのか?
「姫子さんは良いのか?ナビゲーターを差し置いて勝手に決めちゃって。」
「私は元々あんたと丹恒、三月ちゃんの三人に行って貰うつもりだったから別に異論はないわ。ただ、開拓に行く前に色々と言っておかなくちゃいけない事があるけれど。」
言っておかなくちゃいけない事?
なんだ?
ヤリーロでアイスはあまり食いすぎるな、とかかな?
冬のアイスって夏よりも食いたくなる魔力あるもんな…。
「安心しろ、腹は壊さない程度に押さえておく。」
「…何の話よ?」
あれ?違ったか…。
なら、話ってなんだ?
「…あんたは今回が初めての開拓でしょ?だから開拓する上で気を付けるべき点やこの星の情報を言っておこうと思ったのよ。」
あー、そう言う事か。
まあ、考えてみたら今ここでアイスの話しするわけないよな…。
あはは…。
「分かっているでしょうけれど、開拓の旅には必ず危険が付きまとうわ。現地民が必ず味方になってくれるとは限らない。その星を救おうとしているのに犯罪者として追われたり、殺されかける事だってあるわ。それでも、私達は開拓を続けなければならない。私利私欲の為に力を振りかざして、罪のない人を傷つけるのも御法度よ。あんたの場合、とんでもない力を持っているからこれは特に重要ね。」
「…。」
「それでも、あんたは開拓を迷わず続けられるかしら?」
「ああ、覚悟は出来てる。」
俺は真剣におふざけ無しで姫子の問いに答えた。
宇宙ステーションでアーランや皆と戦ったり、スタッフのメンタルケアを通して良く思い知らされた。
この世界はゲームとは違うのだと。
俺はアッハから貰った力のお陰でかなり頑丈だけど、他の皆は精神も肉体もかなり脆い。
そんな状態で、終末獣のような怪物達と戦わないといけないのだ。
この世界がどれ程残酷かはもう、既に知っているつもりだ。
「ふふっ少し辛気臭い話になっていたしまったけれど、開拓は楽しいこともあるのよ。とは言え、このヤリーロⅥで楽しい開拓を経験出来るかは怪しい所だけど。何せ700年以上も前から氷河に包まれたままの星だもの生命が残っている可能性はかなり低いわ。」
「700年以上前は氷河に包まれていなかったんだよな?」
「ええ、昔は生命溢れる豊かな星だったらしいわ。けれど、突然この星は今のヤリーロの様になってしまった。」
「…星核か。」
「ええ、今回のあんた達の目的は星核の回収。それとまだ生存者がいるのならそれの保護ね。」
「了解!初開拓、気張って行くぜ!」
こうして、俺はやる気全開で丹恒とあと……三月を連れてヤリーロⅥに向かうのだった。
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ヤリーロⅥ郊外雪原。
俺達は人気のない場所に列車を停車させ、空も大地も雪が覆う極寒の地に足を踏み入れていた。
「結構寒いけど、思った程じゃないな。そこまで厚着していないけど平気だ。」
「俺達は開拓の力によって守られているからな。多少の環境変動にも耐えられる。」
ゲームでもその話は聞いていたが、いざ体験してみると不思議なものだな。
何か見えない幕のような斥力によって優しく包まれているような感覚だ。
…とても安心する。
「…。」
三月は相変わらずご機嫌斜めな様子だ。
俺と丹恒の会話に混ざろうともしない。
あんな事があった直後だと、そりゃ当たり前なんだが、せめて顔くらいは会わせて欲しいな…。
「あの、三月さん。」
「………プイ。」
シカトこかれた上にそっぽも向かれてしまった。
彼女の心を溶かすのはこのヤリーロの氷を溶かすのと同じくらい難しそうだ。
「三月、いい加減意地を張るのは止めろ。開拓中はどんな危険があるか分からない。常に不足の事態に対応できるようにコミュニケーションは円滑にするべきだ。」
「…不足の事態になったらちゃんとやるからそれだけで良いでしょ?それよりもウチ、いつまでもこんな寒い所にいたくないんだけど。早く星核見付けて早く帰ろう…。」
そう言って三月は俺達を置いて足早に雪原の上を歩いて行ってしまった。
「これは…かなり難易度が高いな。」
「ああ、こんな頑なな三月は初めてだ。」
その様な会話を交わしながら俺達は急いで三月の後を追うように足早に歩きだす。
それから、暫く何もない雪原を歩いていると、モソモソと動く不自然な雪の小山を見付けた。
「…なあ、この雪の塊…今少し動いた…よな?」
「ああ、何かから身を隠しているようだが…野生動物が隠れるにしては大きすぎる。俺や穹とかなり似た背格好の男性が入れるくらいの小山だ。」
さっきまでまるで芋虫のようにモソモソと動いていたが、俺達が近づくとあからさまに動きを止めやがった。
しかし、ほんの僅かだけ、呼吸に呼応して雪が上下に揺れているので、中に人が居るのは確かだろう。
「おい!居るのは分かっているんだぞ!出てこいよ!」
「…。」
フル無視ですか…。
三月からも雪に隠れている謎の不審者からも無視とはこの世の世知辛さを再び痛感するよ。
無視って一番質の悪い虐めだって誰かが言っていたけど、正にそうだと思います…まる!あれ?作文?
「退いてろ穹。狸寝入りしている奴に一番効くやり方を教えてやる。」
そう言って丹恒は槍を取り出し、目の前の雪の小山に突き刺した。
「いったー!」
次の瞬間、藍色の髪をした胡散臭い顔の男性が絶叫を上げて雪の中から飛び出してきた。
どうやら効果抜群だったようだな。
素晴らしい"槍方"だ。
「ちょっと、お兄さん!いきなり槍でつつくなんて酷…ってあなたは!御得意様の穹さんではありませんか!」
雪から出てそうそう目の前の胡散臭い男性は俺を見て、何とも馴れ馴れしく話し掛けてきた。
…こいつとも面識あんのか…。
一体どんな人脈してんだ?過去の俺。
「お前のような胡散臭い知人はいない。人違いだろう。」
「そんな、連れないこと言わないでくださいよ!穹さん!…しかし、穹さんがヤリーロⅥに戻られるなんて、これは一大事です!直ぐにベロブルグに戻ってお祭りを開きませんと!」
いちいち、大袈裟でうざい動きをしながらその様な事を宣う目の前の男。
こいつの口振りからして、もしかして俺はヤリーロキャラとも既に面識があると言うことなのだろうか?
「ベロブルグ?この極寒の星にまだ、人が住んでいる集落があるのか?」
「ええ、勿論です。見たところ穹さん以外の方達はヤリーロⅥは初めてのご様子…でしたら!このサンポ・コースキーがベロブルグまでの案内役を仰せつかりましょう。」
丹恒の質問に対して、サンポは自己紹介を交えながら、ベロブルグへの案内を申し出た。
「○ンポ・スキーだと?なんて卑猥な名前なんだ!この歩くわいせつ物目!」
「うわ…最悪…。」
俺が放った渾身のボケに対して三月が汚物を見るような目でツッコんできた。
但しその視線はサンポに向けられている。
「変な伏せ字を着けないでください!誤解されますでしょう!」
「そんなことより、早く案内してよ!ウチ寒いの苦手なんだからね!霜焼けして肌が被れたらあんたのせいだから。」
うおっ!当たり強っ!
初対面の相手にあんな強気な態度取るとか俺絶対無理だわ…。
「…ええ、分かりました。早速皆様を特別価格でベロブルグへご案内させて頂きます。」
「え?金とんの?そこはただにしろよ兄ちゃん。ただ道案内するだけだろ?お前は道に迷ってるおばあちゃんに道を教えた後も金せびんのか?」
「…丹恒、あの子良く初対面の相手にあんな横柄な態度とれるよね。」
「…お前が言うな。」
「んもう!分かりましたよ!今回は特別にただでご案内致します!」
こうして、俺達は○ンポと言う卑猥で胡散臭い案内役を手に入れ、ベロブルグに向かう事になった。
しかし…。
「あれ?この先、別れ道じゃん。おい、サンポ。この道はどっち行けば…。」
振り向いて道を尋ねるが、もうそこにはサンポの姿が無かった。
「あいつ!逃げやがった!ちくちょう!金返せ!」
「別に払ってないだろ…。」
確かにそれもそうだな。
しかし、あんな奴に騙されたと言う事実はやはり腹が立つ。
いつか八つ裂きにしてやる。
「そこに居る三人組!何者だ!シルバーメイン以外の者が雪原に出るなど、固く禁じられている筈だ!」
突然、斧と重厚な青色の鎧を装備した兵士らしき男性が俺達の前に現れて、矢継ぎ早に尋問してきた。
「すまん、一旦落ち着いて話を聞いて欲しい。俺達は宇宙から来たんだ。だから、あんたらのルールを知らなかったんだ。ここは穏便に済ませて欲しい。」
「天外からの来訪者…。あの!まさか…穹さんですか?」
「俺の事を知っているのか?」
「やはり、そうでしたか…。これは多大な無礼を!お許しください!私は新兵な者ですからあなたとはお会いしたことか無く…しかし、お噂は予々耳にしておりました。」
サンポと会った時に何となく分かっていたが、やはり過去の俺はヤリーロⅥに訪れた事があったようだ。
「それなら話は早い。俺達は今からベロブルグに行きたいんだ。案内を頼めるか?」
「…すみません、私は持ち場を離れる負けには行かず…ジェパード戍衛官ならこれから大守護者様にご報告に向かわれるそうなので、ついでに案内して頂けるかも知れません。」
「なら、その戍衛官殿に取り継いて貰えるか?」
「はっ!畏まりました!」
そう言って目の前の兵士は俺達に背を向けて何処かへ走り去って行った。
恐らくは近くにシルバーメインの野営地があるのだろう。
そして、数分も待たない内に一つの影が俺達に近づいてきた。
「穹!本当に戻って来ていたのか…。」
「えーと、あはは…。あんたがジェパードさんであってるか?」
「ん?何を当たり前な事を?」
だよな~そう言う反応になるよな。
毎回毎回、かつての知人に会う度にこんな気まずくなるなんて耐えられねえよ…。
「穹の口からは言い辛いだろうから俺から言わせて貰う。穹は今、記憶喪失なんだ。自分の名前以外思い出せない。」
「…君は?」
「丹恒だ。星穹列車の護衛役で穹の仲間だ。俺達はこのヤリーロⅥが氷で覆われている原因…つまり、星核を対処しに来た。」
「…成る程。にわかには信じがたいが、あの穹の仲間なのだと言うのであれば、信じよう。」
「理解してくれて助かる。」
「君達はベロブルグに用があるのだろう?案内しよう。僕もちょうどベロブルグに戻るところだったからね。」
そうして、ジェパードの案内の元、俺達は今度こそベロブルグに向かうのてあった。