主人公に成って絶賛記憶喪失だけど、何故か全キャラの好感度が既にMAX なんだが?! 作:ひまなめこ
すみません。
この作品は主人公が記憶を失う前、つまり原作開始前に色んな星を訪れて色んなキャラと既に面識があると言う設定です。
ですので、穹は面識があっても丹恒達は無いパターンが多々ありますのでご了承下さい。
ジェパードの案内の元、俺達は果てしない雪原を抜けて漸くベロブルグに到着した。
「ここがベロブルグか…。」
「…その反応、本当に記憶が無いんだな。」
俺が初めて訪れるベロブルグの中を見渡しながら、素直な反応を示すとジェパードは分かりやすく表情を曇らせる。
…俺にその気は無くとも俺の何気ない行動一つであんなに人を曇らせてしまうなんて…なんか申し訳無くなってくるな。
これから原作通りに物語りが進んで行くのなら、きっと仙舟やピノコニー、オンパロスそして二相楽園にも開拓しに行く事になるだろう。
もし万が一これから訪れる星のキャラ全員が過去の俺と面識があるのなら、少なくとも70回以上はこの気まずい空気に晒される事になると言うことだ。
神経がすり減りそうだな…。
「ジェパード…。大丈夫か?」
「…すまない、心配させるつもりは無かったんだ。ただ少し気が動転していて…。…それよりも僕はこれから大守護者様に謁見に行くのだが、良かったら君達もどうだ?」
「え?いいのか?」
「ああ、君達はさっき星核と言うものを対処しに来たと言っていただろう?僕には星核がどういう物なのか分からないが、大守護者様なら或いは力になって頂けるかも知れない。」
思わぬ申し出だ。
こちらとしては願ってもない。
本物のカカリアと一度会って見たかったのだ。
原作だと、彼女は死んでしまうし、プレイアブルキャラでも無いしな。
「重ね重ねすまない、ジェパード。大守護者との取り継ぎ、お願い出来るか?」
「ああ、任せてくれ。」
そうして、俺達はジェパードに着いていく形で大守護者の元へ向かうのだった。
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No side
クリフォト城謁見の間。
そこには年の離れた二人の女性が向かい合い、不穏な諍いを繰り広げていた。
「大守護者様!何故ベロブルグ駐在の兵士まで、裂界の最前線に送るご決断をなされたのですか!」
謁見の間の下段から金髪の妙齢の美しい女性を見上げる銀髪の可憐な女性ブローニャは今のベロブルグの状況を憂いて、自らの上司である目の前の女性に自身の不満と疑問をぶつける。
「簡単な話だ、ブローニャ。昨今の裂界は活発化し、今のままの戦力では押さえきれないと判断した。」
鬼気迫る表情のブローニャから投げ掛けられた質問に対して金髪妙齢の女性カカリアは淡々と表情を崩さずにそう答えた。
「しかし!それではベロブルグの警備はどうなさるのです!大幅な人員移動により民の不安の声も大きくなっています。このままでは人類最後の砦であるベロブルグが陥落するのも時間の問題です!これ以上の犠牲に何の意味があるのですか!」
全く聞く耳を持ってくれないカカリアに対して、ブローニャの不満は爆発し、声が荒々しくなってしまう。
そんな白熱した言い争いの場に4名の来訪者が現れる。
「大守護者様!雪原調査中に遭遇した天涯からの来訪者をお連れ致しました。」
そうカカリアに報告を上げたのは、若くして戍衛官の地位にまで登り詰めた金髪の好青年ジェパードだった。
「天涯からの来訪者?」
ジェパードの言葉に眉を潜めるカカリア。
同じくブローニャも彼の発言に密かに疑問符を浮かべていた。
「ええ、彼らです。」
ジェパードのその言葉を皮切りに今まで彼の後ろに控えていた天涯からの来訪者三人組がぞろぞろと前に躍り出る。
その来訪者達の中には彼女達にとってとても馴染み深い顔があった。
「「穹!?」」
その顔は他でもない。
カカリアにとってもブローニャにとっても決して忘れることの出来ないかけがえの無い存在である穹だった。
「…お前、大守護者とも知り合いだったのか?」
「あはは…、そうみたいだな…。」
穹を見て驚く彼女達を見て、丹恒は穹の底知れない人脈の広さに素直に感嘆し、穹はまた気まずい雰囲気になるのでは無いかと戦々恐々とする。
「久しぶりだな、穹。余所者の貴様が今さらこの星に何のようだ?」
「いや、えっと。用って言うか…ただ、この星を氷まみれにした原因を対処しに来たって言うか…。」
「ほう?まるでこの寒波の原因を知っていると言う様な口振りだな?」
「ああ、知ってる。この寒波の原因は星核だ。俺達の目的はその星核の回収だ。寒波の原因である星核をどうにか鎮められれば、直ぐに寒波が無くなることは無くとも裂界やこの星の環境がこれ以上悪化することは無くなる。だから、あんたに星核を探すのを手伝って欲しい。」
穹は真っ直ぐ嘘偽りなく、カカリアに自分たちの事情を話した。
しかし、真っ正直で話を受け止めたカカリアの表情は先程よりも更に険しいものに変わってしまう。
「…あの時、私の気持ちに気付いていながら、私の手を振りほどいて、見捨てた癖に…何を今さら!」
「見捨てた?一体何の事だ?」
「惚けるな!この期に及んで、しらばっくれるなど何処までも浅ましい男だな!貴様は!」
穹は身に覚えの無い言いがかりに困惑するも、思うように反論出来なかった。
それは自分が記憶喪失であるから、今の自分には身に覚えがなくても、自分が忘れた過去の中にカカリアを傷つけてしまった事実があったかもしれないと思っての事だった。
そんな彼に助け船が入る。
「お言葉ですが大守護者様、穹は現在記憶喪失であり、彼が犯した過去の行いは今の彼が預かり知る所では無いかと。」
「…記憶喪失だと?それは真か?」
「…ああ、何も覚えて無いんだ…。…その…ごめん。」
記憶喪失と言う事実が明かされ、謁見の間には重い空気がのし掛かる。
「そんな…穹が…。嘘でしょ。」
謁見の間の端で穹達の話に聞き耳を立てていたブローニャもその事実を知ってショックのあまり、膝から崩れ落ちる。
「……分かった。貴様に最後のチャンスをやろう。その星核とやらを見付けて、かつての貴様が諦めた事を…この星の救済を為し遂げて見せよ。」
「…分かった。善処する。」
こうして穹は何とかカカリアの説得に成功し、星核を捜索する上での協力を承諾して貰えた。
「話はもう終わりだ。貴様と話す事など、もう何も無い。星核が見付かるまでの間、滞在する宿の手配くらいはしておいてやる。さっさと出ていけ。」
「…ああ、分かった。失礼したな…。」
そう言って、穹を始め、ジェパード、丹恒、三月はカカリアに従い、謁見の間から出ていく。
「ブローニャ、貴様もだ。出ていけ。」
「大守護者様!私の話はまだ…「出ていけ。」
「…はい、お母様。」
穹達に続き、ブローニャも謁見の間を出ていき、その場にはカカリア一人となった。
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「…分かっている。焦る事はない、方法ならあるから。」
何か得たいの知れないものと会話しているようにも、ただ独り言を言っているようにも見えるその姿はカカリア以外誰もいなくなったこの空間において、かなり異質で不気味な光景なのであった。