転生したら巨大樹島の魔王だった   作:電野

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初めての外出

『どうだ美味かったか息子よ! フフ、同胞と食を共にするというのは随分と久しぶりだったな。かつて、お前の兄姉にもこうして潰した果実の汁を与えたものだ。カプラが言っておったのだ、我らドラゴンは強靭かつ剛健とはいえ、生後すぐは摂りやすい食事を与えてやるべきだとな。しかしドラゴンの多くは親を知らずに独りで育つ、血の滴る肉でも問題のない種族ではあるがな。我は産まれてまず野兎を喰い殺したのを思い出す』

 

 おう、ありがとよ親父。めっちゃ上機嫌に喋るじゃん。

 俺は生後初の食事が人面鳥じゃなかったことに安堵してるよ。……カプラって誰だ?

 

『我のかつての同胞の一体だ。いずれ語って聞かせてやろう、五百年前の、我が敬愛するノア様との話をな』

 

 おおう。俺のパパはアラサーどころかアラファイブハンドレッドらしい。いつか酒飲んで昔話に付き合ったりすんのかな。この世界に酒があるかは知らんが。

 

『それにしても随分と食い意地が張っておるな息子よ。殻を脱ぐよりも食事が先だとは。腕白で食い気が強いのは結構なことだ』

 

 あれ? この卵の殻って脱げるの?

 

『む?』

 

 ん?

 

『ふむ……まだ殻を被っておきたいのならばそれもよかろう。ならば、そのまま腹ごなしに狩りとゆこうではないか! お前のレベルを上げなくてはな!』

 

 ……マジか。レベルとかの概念がある世界みたいだし、何となくそんな感じはしてたけどさ。遺跡の中をえっちらおっちら逃げてる最中に、色々と神の声ちゃんから聞いた通りみてえだ。

 親父は俺のレベル上げにワクワクしてるみたいだし、駄々こねても無理っぽいな。

 

『ついて来い息子よ! 適当な獲物を見繕ってやろう!』

 

 あっ待って親父! ひとりにしないで! 俺の身体めちゃくちゃ貧弱だから!

 

『我らドラゴンの武器はまず爪と牙であり、息吹である。レベル上げには我が付き添おう、まずはそこいらの手頃な魔物を狩るのがよいだろう』

 

 ほーん、やっぱ生態は俺の知ってるドラゴンと同じなんだな。炎のブレスなんて吐いたら口を大火傷しねえのかな。

 ……ドラゴンエッグはどうやって火を吐けばいいんだ?

 

『おお! 丁度良い獲物がおるではないか! 早速始めようではないか! 準備は良いか息子よ! 良いな!』

 

 ウキウキ元気な親父が指差したのは巨大な樹木だ。あれと比較すると親父がカナヘビサイズ、俺はミジンコサイズに見えるくらい巨大な樹木の、下の方の枝に丸っこい茶色の塊が張り付いていた。あれ蜂の巣じゃね……うわっハチが出てきた!

 赤と白のツートンカラーをした、目算で三メートル以上はありそうな巨大スズメバチだ。

 

【〖デスニードル:C+ランクモンスター〗】

 

 え、マジ? 全部のステータスが俺の五十倍以上はあんだけど。これに勝てって言ってる?

 アレか? 獅子は我が子を千尋の谷に突き落として育てるって言うけど、ドラゴンの場合は千匹のハチに滅多刺しにさせるのか?

 

『そんな訳が無かろう。よく見ておけ息子よ、これがお前の父竜であり……竜王の力の一端よ!』

 

 そう念話で言い放つと、親父の姿が掻き消えた。直後、全身に凄まじい風圧を感じた。親父がミサイルのように飛び出したのだ。

 

「グルォオオオオオオオオッ!!」

 

 親父の猛る咆哮と共に、蜂の巣に巨腕が叩きつけられた。いや、腕を振る瞬間を目で捉えることは不可能だった。腕を振り切った後の親父が見えただけだ。

 

「ゴォアアアアアアアッ!!」

 

 直後に視界がオレンジ色に染まった。親父がブレスを吐きながら首を振り回し、周囲のデスニードルの群れを残らず消し炭にした。俺も、俺より遥か格上の巨大ハチも、反応さえできなかった。

 

 ……俺、あんな化け物から産まれてきたのか……。

 

 蜂の巣だったモノの破片と幼虫の群れがボロボロ落ちてくる。幼虫の多くは地面に激突して動かなくなったが、俺の近くに落下した一匹が起き上がり、身体をもたげる。

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

種族:ワスプラーヴァ

状態:混乱(小)

Lv :2/10

HP :7/16

MP :3/3

攻撃力:2

防御力:4

魔法力:1

素早さ:4

ランク:F

 

特性スキル:

〖芋虫:Lv--〗

 

耐性スキル:

〖過食耐性:Lv1〗

 

通常スキル:

〖吸い付く:Lv2〗

 

称号スキル:

〖珍味:Lv2〗

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 

 お、おう。はちのこか。相手が虫とはいえ罪悪感があるぞ。

 

『少々張り切ってしまったわ! どれ、こんなもので良かろう! さあ行くのだ息子よ、お前の初陣である!』

 

 すんません、あんな虐殺を見せられて何てコメントしたら良いか分かんねえっす。

 赤い模様のある蜂の子、ワスプラーヴァと俺は睨み合う。睨み合うってより、アイツは急に巣の外へ投げ捨てられてフリーズしてて、俺はどうすればいいか分からず突っ立ってるだけなんだがな!

 

『どうした息子よ? 闘いに臆するなど竜王の血筋に相応しくもないぞ。それにお前なら虫けら程度に遅れを取るはずもあるまい』

 

 だから俺ベビーじゃなくて、ドラゴンエッグでして……腕とか感覚ねえし、ブレスもやり方分かんねえから。

 

『息吹のやり方か! 本能に従えばよい、おのずと使えるであろう! 息を吸いながら腹の底に魔力を溜め、思い切り吐き散らすのだ!』

 

 いや、スキルにもないし出来ねえって……

 

『え?』

 

 え?

 

『…………』

 

 …………。

 

『………………その、なんだ。お前は、その……孵化しておらぬ、のか……』

 

 なんかスマン、親父……

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