咲夜が美鈴の部屋を訪れたとき、すでに彼女はベッドから身を起こしていた。
「もういいの?」
ベッドの前で軽くストレッチを始めていた美鈴に声をかける咲夜。
「えぇ、大丈夫ですよ」
包帯の巻かれた右腕を咲夜の方へと突き出して、美鈴は笑顔を浮かべた。
「まだ、五割といったところですが、門番に支障はありません」
そう言って美鈴は突き出していた手をゆっくりと下げた。
「手当ありがとうございます」
「門番に戻るの?」
「はい。 一度湯浴みをしようとは思っていますが」
「本当に大丈夫?」
「心配しすぎですよ。 確かに全力を出しましたが、公式ではありませんでしたからね。 余力は残っていますよ」
ウインクを返して美鈴は自身の服に手をかける。
「…わかったわ。 新しい包帯は用意しておくから」
「ありがとうございます」
「お嬢様からの伝言があるわ。 今日は誰も部屋に近づけないでという事よ。 それと館に誰も通すなと言っておられたわ」
「そうですか…」
「どうかしたの?」
「いえ。 あの二人はお嬢様の部屋に?」
「お客様ならパチュリー様に用事があるということで、今は図書館にいるわね」
「パチュリー様のところへ?」
「えぇ、何かあるの?」
「てっきり、お嬢様とお会いになっていらっしゃると思ったので」
「お嬢様はあなたの試合の後、酷く落胆なされた様子で、そのまま部屋にお戻りになられたわ。 さっきも言ったように誰も部屋に通すなと言われて」
「そういうことですか。 参ったな」
服を脱ぎ終わった美鈴が頭を掻きながら苦笑する。
どうやら思い描いた通りにはいっていないようだ。
私と彼の戦いを最後まで見届けなかったお嬢様だ、それも仕方ないことだろう。
しかし彼が本当に運命の人なら、遠からずお嬢様と会う事になるはずだ。
ならば私は邪魔が入らないようにするだけ。
「お嬢様の言伝、しかと承りました」
「無理をしないでね」
そう言って咲夜はそっと手を伸ばし、美鈴の胸に触れた。
外傷は少ないが、美鈴を手当した咲夜には、大丈夫と言って誤魔化す今の彼女の状態が良く分かっていた。
それでも、彼女が門番を優先させるのであれば、その思いを尊重しようと咲夜は思った。
「大丈夫ですよ」
咲夜の思いを汲み取って、美鈴は笑顔で彼女の頭に手を乗せる。
「子供扱いしないで」
咲夜は頬を赤く染めながらも置かれた手を振り払おうとはしなかった。
「体を流します。 咲夜さんも安心して仕事に戻ってください」
美鈴が手を放すと、彼女の言葉に頷いた咲夜が部屋を出て行く。
部屋のテーブルにはいつのまにか未使用の包帯が置かれていた。
紅魔館に住む住人に小悪魔への印象を聞くと、皆口を揃えて答えることがある。
陽気で悪戯好き。
でも、一度友好関係になれば、彼女はとても優しい。
紅魔館の地下に存在する大図書館の中からあまり外に出ることのない彼女は、訪れたものを無邪気な笑顔で出迎える。
人当たりの良い笑顔と礼儀正しい態度に騙された来訪者は、時折、彼女の小さな悪戯に引っかかって大変な思いをすることになる。
魔理沙などは初めて大図書館を訪れた際、彼女に提供された紅茶の中に遅効性の媚薬を入れられ、その夜大変な思いで過ごすことになったし、咲夜などはまだ幼い時に幾度となく後ろから突然抱きつかれたりして、悲鳴を上げた事が幾度もあった。
しかし過ぎて人を傷つけるということもなく、また彼女らがそれに慣れたり、警戒したりしていると段々と悪戯を行うことはなくなっていった。
小悪魔と一度友好関係を築けば、笑顔で訪れた彼女たちをもてなし、また本の探し物等があればそれを手伝ってくれたりと、とても親しげに接してくれる。
陽気で悪戯好き。
それは優しい彼女が、小悪魔という性質上とかく迷惑ではあるが、悪戯という手段を通して、自分たちと仲良くなるためのきっかけを作っているだけなのではないか。
そう考えるものがほとんどで、彼女らが小悪魔に対して悪い印象を持つことは皆無であった。
そう、彼女の本性を知るパチュリーを除いては。
パチュリーが大図書館に初めて足を踏み入れた時、すでに小悪魔はこの大図書館に存在していた。
多分に漏れず、最初は小悪魔のスキンシップという悪戯に晒されることがあったが、それも彼女がこの図書館に居座り続けていると、そのような事は次第に無くなっていった。
むしろ甲斐甲斐しく、パチュリーの世話を焼き、必要な要件を代わりに行なってくれることで、彼女もまた小悪魔に対して信頼を寄せ始めていたのだった。
とある日。
パチュリーは小悪魔に要件を頼もうと、彼女を呼んでみたが、姿を現さない事があった。
いつもなら呼びかけに応じて、すぐに姿を現す彼女であったが、この時は何度呼びかけても声ひとつ返ってくることはなかった。
そんな日が、長くなった図書館での生活で時折見受けられることがあった。
その日。
いつもならそのまま彼女が姿を現したときにでも、要件を伝えていたのだが、どうしても研究で緊急に迫られていたパチュリーが呼びかけに応じない小悪魔を探して、彼女の魔力の痕跡を辿り図書館の中を探していると、目の前で人間の男を押し倒す彼女の姿を発見したのだった。
「何をしているの?」
パチュリーが小悪魔の背中に声を掛けると、振り向いた彼女はにこやかに笑って声を返した。
「食事ですよ」
小悪魔のうっとりとした表情も、その艶やかな声もパチュリーが今まで見たことも聞いたこともないものだった。
押し倒された男に視線をやれば、目は虚ろで微動だにしていなかったが、生きているということだけは見て取れた。
「食事?」
「はい。 うふふ、ばれちゃいましたね」
驚くパチュリーに、まるで悪戯がばれてしまったというように肩を竦めて立ち上がる小悪魔。
すでに彼女の表情からは先程までの妖艶さは消え、普段通りの無邪気な笑顔を浮かべていた。
「死んではいないようだけど?」
悪魔は魂を食らう。
その常識に乗っ取るのであれば、呆けてはいたが、胸を上下させる男の姿は奇妙に映った。
食事というのであれば死んでいなくてはならないはずだ。
パチュリーがその疑問を口にすると、彼女は何がおかしいのか体を九の次に折り曲げ口元を手で隠しながら笑いを堪える。
パチュリーは小悪魔のその様子に眉間に皺を寄せる。
「何がおかしいの?」
「あはは、いえ、そうですよね。 普通そう思いますよね」
未だに可笑しそうにしていたが、小悪魔はやっと笑いが収まったのか、倒れている男に視線を落として口を開いた。
「私、偏食なんですよ」
腰を落とし倒れている男に愛おしそうに触れて、小悪魔はパチュリーへと向き直る。
「私がなんでこの図書館に住んでいるのか知っていますか?」
「いいえ」
「知性を喰らうためです」
「悪戯をされた覚えはあるけど、襲われた覚えはないわね」
「そうですね。 もし貴方が人間の、しかも男であったなら、どんな手を使っても貴方を欲していたでしょう」
「人間の男限定って事?」
「はい。 どうも私の性癖は女性には向かないようですね」
「なぜ人間なの?」
「それは私が悪魔だからですよ」
悪魔は人なしでは生きていけない。
人という存在があるからこそ、神も魔も存在するのだから。
「彼らが望むなら知を与え、金属を黄金に、水をワインに、ワインを水に……」
立ち上がって手を広げる小悪魔。
朗々と語る彼女の瞳はどこか遠い昔を懐かしむようであった。
「その為の大図書館ですから」
「まさか…」
「さすが、貴方は聡い」
微笑む小悪魔に、目を見開いて図書館を見回すパチュリー。
「あなた自身は端末って事?」
「いいえ、私はとうに独立してしまいましたから。 奪うということだけを切り離されて」
小悪魔の微笑みの中に悲しみの感情が見え隠れする。
「私は只の小悪魔です。 それ以上でもそれ以下でもあってはいけない」
遠い昔に別れた自分の主に向けて、彼女の慟哭は図書館の中へと消えていく。
「この図書館も、じつは私と同じなんですけどね。 それでもこの規模ですが」
パチュリーの間違いを指摘するように小悪魔が右手の人差し指を掲げる。
「はぁ、全く。 普通じゃないとは思っていたけど、この図書館は思った以上にとんでもない所だったのね」
「意外と冷静なんですね」
「別に。 むしろ魔法使いとしてはこれ程素晴らしい場所もないでしょ」
「気が変わって襲っちゃうかもしれませんよ?」
小悪魔は両手の爪を立て、笑いながら声を上げる。
「あなたがその気ならとっくに襲われているわよ。 あなたが襲うのは人間の男だけなんでしょう?」
「えぇ。 女性の方には興味が湧きませんから」
「なら、別に気にしないわ。 あぁ、でも…」
「?」
「せっかくだし、あなた、私の使い魔になりなさい」
「え?」
「魔力の供給源は必要でしょ? いちいち隠れて人間の男を襲うなら、その方が効率がいいわ」
「おぉ、てっきり封印でもされるのかと思いましたよ」
「あなたの封印は骨が折れそうね」
「あはは。 でも本当に惜しいですね」
「私が人間の男じゃない事が?」
「うふふ、あはは、そんな貴方が大好きですよパチュリー様」
笑う小悪魔に先程までの翳りはなかった。
「様付けになったわ」
「私のご主人様になる方ですから」
「手綱を握るのに苦労しそうね」
「大丈夫ですよ。 何度も言いますが、私の性癖はアクマでも人間の男、その知性にあるんですから」
「突っ込まないわよ」
「酷い!?」
「はぁ、ところで」
「どうかしましたか?」
「この人間の男は何処から持ってきたの?」
「……秘密です」
「色々と取り決めが必要なようね」
溜め息を吐いてパチュリーは目の前で倒れている男に視線を移す。
さて、まずはこの人間を処理しよう。
丁度いい、小悪魔への緊急の要件は、人間の手配だったのだから。
その後、男がどうなったのか。
それはパチュリーと小悪魔、二人だけの秘密である。
この後、紆余曲折あって、なんだかんだと幻想郷で日々を送る事になったパチュリーと小悪魔。
紅魔館の地下にある大図書館に訪れる来訪者の殆どが奇しくも女性ばかりである。
小悪魔に悪戯をされるものは多々いれど、知識を奪われる者は出ていない。
陽気で悪戯好き。
でも、一度友好関係になれば、彼女はとても優しい。
それが、彼女たちの小悪魔への評価。
しかし、パチュリーが抱く彼女の評価はこうだ。
陽気で悪戯好き。
でも、一度友好関係になれば、彼女はとても優しい。
しかしそれが、人間の男なら同じようにはいかないだろう。
注意しなければいけない。
もし来訪者が人間の男であるならば、知性を食われて廃人と化す。
彼女は使い魔。
この大図書館の知性を喰らう偏食の小悪魔なのだから。
「久しぶりです! 久しぶりですよ! 人間の男性!」
その興奮を隠すことなく手を広げ、目の前のアルベルトに熱い視線を送り続ける。
パチュリー以外の彼女を知る者が今の小悪魔の姿を見たらなんというだろう。
恐ろしい。
怖い。
狂っていると言うかもしれない。
それほど、普段の彼女のイメージとはかけ離れて、その禍々しいオーラを放っていた。
「しかも極上。 一級品の知性を持つ人間の男なんていつ以来でしょう?」
図書館に訪れる人間は女性ばかりであった。
魔理沙のように知識に貪欲なもの。
咲夜のように知性に長けたもの。
もしも彼女たちが男であったならばと、小悪魔が唇を噛むことは何度となくあった。
彼女の悪戯の裏には、それを確かめる為の邪な思惑も隠れていたのだ。
そしてそれを誤魔化すためのあどけない笑顔や礼儀正しい振る舞い。
隠す必要はないかもしれないが、進んで嫌われては何かしら機会を逃すことになるかもしれない。
彼女たちが、人間の男性を連れてくる事があるかもしれないのだから。
「あなたが欲しい。 もうあなたしか見えません!」
涎を堪えるように、小悪魔はアルベルトに近づいていく。
それを見て取った彼は油断なく、目の前の小悪魔を見つめる。
「存外、質の悪い女に見初められたようだ」
「あなたが魅力的過ぎるのが悪いんですよ」
「否定はせんな」
「うふふ、あはははは、なんて素敵。 いいですよ。 その傲慢な姿勢もそそります。 あぁ、あなたはどんな味がするのでしょうか? 考えただけでも気絶してしまいそう」
久しぶりの食事に興奮が抑えられないのか、小悪魔が広げた手を地面へとかざしながら、声を上げておぞましく笑った。
「まずは動きを……」
小悪魔がかざした手から光を放つと、地面から赤い光が浮かび上がり、それは連鎖するように導かれ、アルベルトの立っている場所に赤く大きな魔法陣を出現させた。
彼女が時間をかけたのはこの為で、その魔法陣の光は彼の動きを拘束する。
先ほど姿を消した正邪に行ったのも同様であった。
「動けませんよね?」
確認するようにアルベルトの前に近づいて、その熱い眼差しで彼の瞳を覗き込む。
はやく貴方の知性を喰らいたい。
アルベルトの影に視線を落として小悪魔は、そっと撫でるように彼の胸に触れる。
「ごめんなさい」
にこやかに微笑んで、再び顔を上げると、動けないアルベルトの口元に自身の唇を近づける。
どんな味がするんだろう。
きっと今までにないくらい素晴らしい知性が味わえるだろう。
久しぶりの食事にありつけたのは、最高級の逸品。
あと少し。
あと少しであなたは私のものになる。
唇が重なるその瞬間。
しかし、それは小悪魔が予期せぬ声で止められた。
「待ちなさい!」
声の主はパチュリー。
この大図書館の小悪魔の主だった。
アルベルトたちの頭上に浮かんでいた彼女がゆっくりと、目の前に降りてくる。
「無粋ですよ。 パチュリー様」
興が削がれたように、近づけていた唇を離し、小悪魔はパチュリーへと視線を向けた。
「遅いと思ったら案の定。 小悪魔、彼は私の客よ。 今すぐ離れなさい」
「嫌です!」
まるで恋人との別れを惜しむかのように、アルベルトの背中に手を回して抱擁をする小悪魔。
その姿にパチュリーは嘆息する。
「あなたの主人は誰かしら?」
「…パチュリー様です」
「私は、彼から離れなさいといったわね」
「うぅ、でも…」
「最初に決めた約束事を覚えているかしら? 私の命令には絶対服従」
小悪魔に向けて手をかざすパチュリー。
それを見た彼女が目の端に涙をためて懇願する。
「いいじゃないですか! こんな素敵な人間の男性。 そうはいませんよ!?」
「三度目はないわ小悪魔。 彼から離れなさい」
「そ、そんなぁ……」
暫しの葛藤の末、小悪魔は崩れ落ちるようにその場に腰を落とす。
それと同時に、アルベルトを拘束していた魔法陣が光を失って消えていく。
その様子を見届けたパチュリーが溜め息を吐いて、彼に話しかける。
「ごめんなさい。 私の使い魔が失礼をしたわ。 どうか彼女を許してあげて」
その言葉にアルベルトは、一度服の襟を整えると、パチュリーに向き直って口を開いた。
「お前が件の魔法使いか?」
「えぇ。 私の名前はパチュリー・ノーレッジ。 この大図書館に住む魔法使いよ」
「別に気にはしていない」
「ありがとう。 案内するわ。 小悪魔、お茶の用意を。 くれぐれも変な事をしないように」
「うぅ、畏まりました」
へたりこんでいる小悪魔に向けてパチュリーが命令を下すと、未だ涙目の彼女はゆっくりと立ち上がって、心ここにあらずといった様子でフラフラと歩みを始めた。
「もう、しょうがないわね」
その背を見ながらパチュリーが再び溜め息を吐くと、アルベルトに向き直り小さな声で彼に語りかけた。
「ありがとう」
「謝罪は一度でいい」
「えぇ、でも私が止めなかったら。あの子を殺していたでしょう?」
何気ない言葉に隠された彼女の糾弾。
もしあの時、パチュリーが小悪魔を止めなかったら。
アルベルトは拘束を解いて、彼女を殺していただろう。
小悪魔は気づいていなかっただろうが、彼らの頭上で事の様子を捉えたパチュリーには、彼の殺意が見て取れた。
決してパチュリーは小悪魔をただの無邪気で無害な存在だとは思っていない。
それでも、長く時を一緒に過ごしてきた小悪魔が彼女にとって、いまでは掛け替えのない存在となっていたのだ。
「想像した以上の人物ね」
素直な感想を呟くパチュリーを無視して、アルベルトは遠ざかっていく小悪魔の背に声をかけた。
「おい」
「なんですか!?」
アルベルトに声を掛けられ嬉しそうに振り向いて反応するあたり、意外とまだ懲りていないのかもしれない小悪魔にパチュリーが呆れる。
「あいつは何処にやった?」
その質問に小悪魔は一瞬疑問符を浮かべたが、すぐに何を聞かれているかを閃いて、一度口を開こうとしたが、開いた口から声を発することなく固まると、段々と冷や汗を浮かべ始めた。
「あ、あはは。 えっと、正邪さんの事ですよね?」
「ほかに何がある?」
「え、え~っと。 そのですね。 邪魔にならないようにご退場願ったんですが……」
瞳を右往左往させながら、たどたどしげに言葉を紡ぐ小悪魔に対して、パチュリーが口を開く。
「はっきりと言いなさい。 彼女をどうしたの?」
「……です」
「聞こえないわ」
「うぅ、妹様のところです」
「なんですって!?」
小悪魔の答えに驚いて声をあげるパチュリー。
その声に身を縮こめて小悪魔が口を開く。
「しょうがなかったんです。 私も久々の食事で興奮してしまって。 ちょ、調子に乗ってたっていうか」
「それでも! …くっ、まずいわね」
「何がだ?」
頭を抱えるパチュリーにアルベルトが疑問をぶつける。
「あなたのツレの命が危険だってことよ」
眉間に浮かべた皺を隠そうともしないパチュリー。
申し訳なさそうに身を縮める小悪魔を見て、何かを感じ取ったアルベルトが大きなため息を吐いたのだった。
オレンジ色の暖かい光に満たされた部屋で、少女は突如目の間に現れた物体に驚いて目を見開いた。
ベッドの上に出現したそれは、シーツの上を短い間ジタバタとした後、動きを止め、周りを見回し、少女の姿を瞳に捉えると、そのまま動きが止まってしまった。
「誰?」
少女の声が部屋に響く。
けっして大きくない声ではあったが、その透き通るような声ははっきりと目の前の物体に届いたことだろう。
それはアルベルトが小悪魔と対峙してすぐの出来事。
飛ばされた正邪が行き着いた先は、悪魔の妹、フランドール・スカーレットの部屋の中であった。