東方逆天撃   作:阿鯛 斎京

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困るんだよねぇ


第十六話 「思惑」

 

 

 

「通していただきたい」

 

紅魔館の門の前。

復帰した門番の美鈴に向かって言い放ったのは椛であった。

その横で様子を見守る早苗。

彼女たちに視線を送って、美鈴が口を開いた。

 

「申し訳ありませんが、今日は誰も通すなというお嬢様の命令が出ております。 どうぞお引取りください」

「中に鬼人正邪ともう一人、男がいるのではないですか?」

「お引取り願います」

 

早苗の言葉に美鈴は首を振って応える。

 

「否定をしませんね。 用があるのは彼女達になのですが」

「申し訳ありません」

 

再び首を振って、美鈴がその要求を拒絶する。

 

「どうしてですか? 彼女はお尋ね者です。 匿う必要などないでしょう? 私たちは決して紅魔館と事を荒立てるつもりはないのです」

 

早苗の言葉に、しかし美鈴は口をつぐんだままであった。

 

「どうしても今、彼らと会わなければいけない理由がこちらにあります」

「察するに、その理由を語る気はないのでしょう?」

「申し訳ありません」

 

頭を下げる早苗を見て、美鈴は苦笑する。

 

「申し訳ないのはこちらです。 命令がある以上。 あなた方を通すわけにはいかないのですから」

「そうですか」

 

頭を上げた早苗が椛に視線を送る。

どうするか。

自分たちは今、彼らに会って見極めなければならない。

今も続いている会合。

その最中、それぞれが密命を受けた。

会合の決議が出るまでに彼らの本質を見極め、それを伝えなければ意味がない。

刻一刻と近づくタイムリミット。

決議がいつ出るのかは分からなかった。

しかしそれゆえに、彼女達は一刻も早く彼らに会う必要があった。

 

「弾幕勝負を受けてもらおう」

 

言葉を発したのは椛であった。

彼女たちにとってそれは決して得策ではない。

ここで事を構えては後々、紅魔館を敵に回すことにもなりかねないのだから。

しかしそれは後になって、独断で行ったと言い張れば良いだけの事。

門番には理由を話していない。

ここにいるのは自分たちだけなのだから。

 

「どうしても今でなければいけませんか?」

 

明日では駄目なのかと美鈴が聞くが、時間のない彼女たちにその選択肢はなかった。

 

「一枚」

 

椛がスペルカードを掲げる。

どうしても早く終わらせる必要のあった彼女が宣言したのは、短時間での勝負であった。

それに仕方がないと応じて、美鈴もスペルカードを取り出そうとした時、突如頭上から別の人物の声が聞こえた。

 

「その勝負待った!」

 

言葉とともに対峙する二人の間に降り立った人物。

それは射命丸文であった。

突然の乱入者に目を丸くする一同であったが、すぐさま椛が口を開く。

 

「どうして貴方がここに?」

 

訝しむ椛の言葉を受けて、文が口を開いた。

 

「それはこちらの台詞です。 山の警備を任せられているはずのあなたがどうしてこんな所にいるのですか? 今は大事な時ですから尚更の事。 すぐに戻りなさい」

「お断りする」

「命令ですよ」

 

凄みを効かせる文であったが、椛は一歩も引かず剣を構えた。

 

「貴方の命令に従う義理はない」

「ほぅ、哨戒天狗如きが烏天狗である私の命令に逆らうと?」

 

天狗の羽団扇で口元を隠し、目を細める文。

張り詰めた空気が辺りに満ちる。

 

「待ってください!」

 

そんな緊張を破るように口を開いたのは早苗であった。

 

「文さん。 私たちは今、大事な要件でここに来ているんです」

「大事な要件?」

「詳しくは話せませんが、ここに鬼人正邪と男の方がおられます」

 

美鈴の存在を考慮して、この場でその理由を口にすることは憚られた。

その為、文には鬼人正邪と男の事だけを伝えたのだった。

それを聞いた文は眉をひそめて言葉を返した。

 

「ならば尚の事、 あなた達の存在を見過ごすわけにはいきませんね」

「どうしてですか?」

「おや、分かりませんか? これは困った」

 

美鈴に視線を向けて文が肩を竦める。

やはり彼女も門番には聞かせたくないのであろう。

理由を口にせず、文は再び話を続けた。

 

「今は大事な時です。 後々あなた達の行動が知れた時、問題になるかもしれませんよ」

「でも、私たちは山の…」

「それ以上口にする事は許しません!」

 

堪らず理由を話そうとした早苗の言葉を文は一喝で遮った。

 

「もう一度言います。 ここは引き返しなさい」

「でも!」

「あなたは…」

 

早苗の困惑を横に、椛が口を開いた。

 

「私たちがここに来ることを知っていたな?」

 

剣を構えたままで、椛は文を睨みつける。

しかしそれを飄々と受け流して、羽団扇で口元を隠し続けながら、彼女は言葉を返した。

 

「いいえ。 私はたまたまここの近くにいただけです」

「嘘を吐くな」

「嘘ではありません。 必要なら閻魔様でも、さとりの前にも出て証明しましょう」

 

自信たっぷりに返事をして剣を構える椛に言い放つと、文は羽団扇を椛に向けて掲げ言葉を続けた。

 

「どうしてあなた達が彼らを追っているのかは聞きません。 さぁ、引きなさい!」

「文屋が珍しい事を言いますね」

 

口を挟んだのは美鈴だった。

 

「すみません美鈴さん。 ですが私にも優先事項というものがあります。 今回のこと、どうかご容赦願えませんか」

「このまま帰っていただけるのならば、私は助かりますけど」

「だそうですよ、お二人とも」

 

文の言葉に、しかし早苗と椛も素直に頷く事はできず対峙したままとなるが、それも新たに現れた人物から伝えられた言葉によってその均衡は崩れ去る。

 

「決議が出たよー!」

 

新たに空から姿を現したのは姫海棠はたてであった。

文の隣に降り立つと、眉間に皺をよせて彼女に詰め寄り、口を開いた。

 

「て言うか、なんで私があんたの使いっぱしりをしなきゃなんないわけ! いきなり鴉を送ってきたと思ったら、早く来て結果を知らせろですって? 凄く不快なんだけど」

「これはどうも」

 

笑顔ではたての不満を聞き流し、文は早苗と椛に視線を送る。

 

「あら、お二人共どうかなされましたか?」

 

文は苦い顔をしている二人に、浮かべていた笑顔を消して、心配そうに言葉をかける。

 

「射命丸文…」

 

口を開いたのは椛であった。

やはり自分たちのことを知っていたな。

その目的も。

そうでなければ、ここまでの準備は出来まい。

姿を現す前に鴉を送り、決議が出たという知らせを持たせて、はたてを呼び寄せた。

文を睨みつける椛であったが、当の本人に気にした様子はない。

 

「椛さん」

 

隣の早苗が椛に話しかけ、首を振る。

どうやら間違いないようだ。

遅かった。

悔やまれるのは香霖堂に立ち寄ったことか。

あそこで時間を食わなければ。

 

「帰りましょう」

「えぇ」

 

剣を収め、文を睨みつけたまま、早苗の言葉に頷く椛。

 

「引いていただけるのですね?」

「どの口が言っている」

「おぉ怖い怖い」

 

さして恐れた様子もなく、文は椛に近づくと、その耳元で彼女にだけ聞こえるように囁いた。

 

「私があなた達の事を知らなかったのは本当です」

「何が言いたい?」

「私はあくまでも、警備をしているはずの貴方をたまたま見かけて、それを注意するために現れたに過ぎない。 私のしたことに何か間違いがありますか?」

「…」

「心配いりません。 この事は内密にしておきますから」

 

持ち場を離れて、こんな所にいる貴方の事を。

そう言って文は笑顔を浮かべると、一歩後ろに下がり、椛と早苗に視線を向けた。

悔しそうに奥歯を噛む椛であったが、踵を返すと彼女に捨て台詞を吐いて早苗と一緒に宙へと舞い上がり、空へと消えていった。

 

「己が未熟であった」

 

文は椛の言葉を聞き届け、見えなくなった彼女に向けて心の中で呟いた。

これだから貴方は危険だ。

哨戒天狗でありながら、私の命令に従わず、牙を剥こうとした。

自身に足止めされ、事を成すことが出来なかった彼女。

彼女達がなんの目的でこの場所に現れたのかは知らないが、それでも予想は出来た。

その目的を邪魔するため忠告をし、警告もした。

そして彼女は最後に何と言っただろうか。

己が未熟であった。

恐ろしいことだ。

決して怒りに任せて私を罵るのではなく、自身に対して反省の弁を口にした。

これはなかなか出来ることではない。

後から思い返し、反省する事はできるだろう。

しかし彼女は即座に自身の未熟を悟って、怒りを押さえ込んだのだ。

 

「おぉ怖い怖い」

 

もし椛と対峙するようなことになれば、決して只では済むまい。

彼女にはその実力以上に、心の強さがあるのだから。

 

「まぁ、そんな機会はないでしょうけどね」

 

そう呟く文の背中に声をかけたのは、はたてであった。

 

「ちょっと文、何があったのかは知らないけど、なんで椛がここにいるわけ?」

「さぁ、どうしてでしょうね?」

「ちょっと誤魔化さないでよ」

「まぁまぁ、ちゃんとお礼はしますから」

「うわっ! すっごく露骨なんだけど!?」

 

無理矢理に話を逸らす文を不快そうに見つめて、はたてが抗議の声を上げ続ける。

そんな彼女を無視して、視線を美鈴に送ると、文は申し訳なさそうに言葉を伝える。

 

「ご迷惑おかけしました。 このお詫びは後ほど」

「要りませんよ」

「いえいえ、受け取ってもらわなければ困りますから」

「あなた達の事情に興味はありません。 私は紅魔館を守れればいいんです。 もちろん、あなた達が牙を剥くというのなら、その時は容赦しません」

「では今回のことは?」

「お嬢様に報告させて頂きます」

「これは困った」

 

頭を掻く文に美鈴は苦笑して口を開く。

 

「文屋が聞いて呆れますね」

「いえいえ、メディアというものはその実、隠し事が多いものです」

「つまり今回は隠しておきたい事があると?」

「これは一本とられました」

 

自身のうかつな言動に文は手をあげて降参の姿勢を作る。

さてどうするか。

詳しくは知られていないが、それでも我々に不穏な動きがあると印象づけてしまった。

金銭で解決することができないのは良くわかった。

腕を組んでどうしたものかと思考を巡らす文であったが、それは次の瞬間に起こった出来事で解決の糸口を見つけることになる。

辺りを揺るがすほどの爆音。

それが紅魔館の地下から伝わって、彼女たちの耳に届いたのだ。

 

「何!? 何事!?」

 

突然の出来事に、隣のはたてが驚いて声をあげる。

 

「やはり」

 

美鈴は紅魔館を振り向いてなにやら納得したように言葉を口にする。

 

「これはこれは」

 

文はというと、美鈴の様子を見て一人口の端をつり上げた。

何かが起こっている。

それはきっとネタになる出来事。

そしてもしかしたら交換条件になるかもしれない。

そう、口止めの交換条件に。

 

「後で教えていただかなくてはなりませんね」

 

そう口にして、文もまた紅魔館へと視線を送った。

その中にいる協力者の姿を思い浮かべながら。

 

 

 

 

 

 

「困るんだよねぇ」

 

立ち込める粉塵の中、誰かがそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

アルベルトは違和感を覚えていた。

彼がフランドールの部屋に足を踏み入れ、今まさに彼女が正邪を殺そうと手を掲げている場面に出くわした瞬間。

それを阻止する為、彼は迷わず衝撃波を彼女に向けて放った。

その直撃を受けたフランドールは壁に叩きつけられ、壁からは粉塵が巻き上がった。

おかしい。

自分は彼女を突き飛ばす程度で加減をしたつもりであったが、それを受けた少女は壁に打ち付けられ、その壁は見事に粉塵を巻き上げて砕け散った。

その衝撃はこの紅魔館を揺るがし、その様子を見ていた正邪や続いて部屋に足を踏み入れたパチュリーを驚かせた。

 

「やりすぎよっ!」

 

躊躇なくフランドールに攻撃を加えたアルベルトに対して、口を開いたのはパチュリーであった。

彼女はすぐさま魔法で粉塵を消し去ると、気を失って倒れているフランドールへと近づいていった。

それを視線の端で捉えて、アルベルトは正邪に近づく。

驚いて尻餅を付いていた彼女に右手を差し出すが、彼女はそれに応じず、自らの力で立つと彼を見て口を開いた。

 

「早とちりだったな」

「何がだ?」

「多分、あいつに私を殺す気なんてなかった」

 

倒れているフランドールに視線を移して、正邪は説明を続けた。

曰く、彼女の手にはネックレスが握り締められていた。

先程の彼女はその目を見て壊すため、自身の瞳の前にネックレスを掲げていたのだ。

正邪はそれを目の前で見ていたため知っていたが、部屋に入ってきたアルベルト達には、今まさに正邪を殺そうと手を掲げているように見えてしまったのだ。

結果として彼はフランドールを壁に叩きつけてしまう。

もちろんこれは不可抗力だ。

何故なら、この部屋に向かう途中、アルベルトはパチュリーにフランドールの事を聞かされていたため、正邪がその能力で殺されるかもしれないという事を知っていた。

部屋に足を踏み入れたとき、彼女に手をかざしているように見えたのだ。

彼の咄嗟の行動は仕方が無かったと言えるだろう。

それでも、それを許さない者もいる。

 

「フランドール様!」

 

フランドールの隣に突如現れた咲夜が、その場に跪いて彼女を抱き上げていた。

爆音を聞いてこの場に時を止めて駆けつけてみれば、倒れているフランドールの姿が真っ先に目に飛び込んできた。

能力を解除して彼女の容態を確認すれば、どうやら気を失っているだけのようだ。

それでも服は所々が破れてしまって、間から見えるかすり傷が痛々しかった。

吸血鬼であるため命の心配はないが、気を失っている為、傷の治りは遅いのかもしれない。

それでも一応の安堵をして、隣のパチュリーにフランドールの手当を頼むと、彼女は立ち上がってアルベルトへ視線を向けた。

その瞳には大切な彼女を傷つけられたゆえの憎悪が宿っていた。

 

「貴様がやったのか?」

 

アルベルトと咲夜の視線が交錯し、彼女の低く凄みを帯びた声に部屋の空気が張り詰める。

彼はゆっくりとした歩みで咲夜に近づくと彼女を見下ろし口を開いた。

 

「だとしたら、お前はどうする?」

「ならば私はがっ―――!!」

 

咲夜が言葉を最後まで言い終わる事はなかった。

アルベルトから横薙ぎに繰り出された蹴りは彼女の横腹を直撃し、その衝撃のまま吹っ飛んで壁へと打ち付けられた。

そしてそのまま糸の切れた人形のように、どさりと地面に崩れ落ちる。

 

「お、おい!」

 

その様子を見ていた正邪が、蹴り出した足をゆっくりと元の位置に戻したアルベルトに声をかけた。

 

「お前、何やってんだよ」

 

アルベルトに近づき、咲夜に視線を向けながら口を開く。

しかし返事が聞こえなかったので、正邪はもう一度彼に視線を移した。

そこには入り口を見つめるアルベルトの姿があった。

つられて視線を入口に向ければ、そこにはレミリアの姿があった。

その彼女の視線はフランドールへと向けられていた。

薄ら寒い嫌な予感がして、正邪はアルベルトを伺うが、彼はじっとレミリアを見つめたままだった。

 

「レミリア」

 

自身の元に近づいてきたレミリアにパチュリーが声をかける。

 

「パチュリー。 フランドールの様子は?」

「えぇ、気を失っているだけよ」

「そう」

 

パチュリーの答えを聞いて、レミリアは安心したように息を吐く。

 

「咲夜」

 

その後すぐに、気を失って倒れている咲夜へと近づくと、しゃがみこんで彼女に語りかけた。

 

「いつものあなたなら避けられたでしょうに。 でも、それだけフランドールを心配してくれていたのね」

 

倒れて気を失っているフランドールの姿を見て頭に血が上った咲夜は、アルベルトの不意打ちに対応できないほど静かに憤っていた。

普段の彼女なら、そのような失態を晒さないことはレミリア自身がよく知っている。

それだけ、彼女は妹の事を愛してくれていたのだろう。

 

「これからも妹の事を愛してあげてね」

 

レミリアはまるで別れを惜しむように気を失った咲夜の頭に手を置いて立ち上がると、再びフランドールの元に歩み寄り、彼女の隣に膝をついた。

 

「レミリア。 あなたまさか…」

 

対面のレミリアに話しかけて、パチュリーが彼女の返事を待った。

その問いかけに頷いて、彼女がフランドールに対して口を開く。

 

「ごめんなさい。 でも、もう大丈夫だから」

 

視線の先にフランドールが握りこんだネックレスが映りこんだ。

一瞬、目を見開いたレミリアであったが、すぐにそのネックレスを妹の手から受け取ると、彼女は苦笑しながら言葉を紡いだ。

 

「そう。 まさか最後にこんな事があるなんて」

 

手にとったネックレスをフランドールの首に掛けて、彼女はその頬に触れた。

 

「約束。 遅くなってしまったわね。 ごめんなさい」

 

愛おしそうに、レミリアは触れた妹の頬を撫でる。

 

「いつまでも愛しているわ……フラン」

 

レミリアはフランドールの額に口づけをして、ゆっくり立ち上がった。

 

「彼がそうなのね?」

「えぇ」

 

自分を見上げるパチュリーにレミリアはゆっくりと頷く。

 

「ねぇ、レミリア。 本当にいいの? 他に方法はいくらでも…」

「ないわ」

 

悲しそうにレミリアはパチュリーの言葉を遮った。

 

「ずっと見てきた。 試してきた。 それはあなたも知っているはずよ。 でも無理だった。 何回見ても、操ろうとしても。 行き着く答えは変わらなかった」

「だけど!」

「パチュリー・ノーレッジ。 私の親友。 どうか貴方だけはそんな事言わないで」

 

唯一あなたにだけ話した真実。

美鈴には最後まで言えなかった運命の結末。

 

「……わかった」

「ありがとう。 大好きよパチュリー」

「嬉しくないわ」

「後のことは任せたわ」

 

俯いてしまった自分の親友に笑顔を送って、レミリアは再びフランドールに向き直り、彼女に最後の言葉を投げかけた。

 

「さようなら」

 

私の大切な妹。

この愚かな姉を許して欲しい。

あの時、あなたの優しさに気づけなかった。

あなたの思いに答えてあげられなかった。

それから運命を見たあの日、私は立ち止まってしまった。

あなたと会うのが怖くなった。

あなたを遠ざけて、きっと辛い思いをさせてしまったね。

知っていたわ。

何もかも。

あなたのこと。

でも、それも今日で終わり。

ごめんなさい。

また、あなたを泣かせてしまうわね。

でも、あなたには咲夜や、みんながいるからきっと大丈夫。

さようならフランドール。

あなたの事、ずっとずっと愛していたわ。

 

 

 

 

 

 

一度、見誤ってしまった。

しかしそれは間違いだったようだ。

やはりこの男がそうなのだ。

私の運命の人。

それが今、目の前にいる。

私は立ち上がって、彼に向き直り口を開いた。

 

「待たせたわね」

 

運命の終着点は目の前に迫っていた。

 

 

 

 

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