FAIRYTAIL〜星空の竜〜   作:パスカルDX

2 / 49
第2話「星と自由と、あたし」

第2話「星と自由と、あたし」

 

 

あたしは走っていた。

 

夜の街を、ドレスの裾を押さえながら全力で。

 

「はぁっ、はぁっ……もう、やってらんない!」

 

ハートフィリア家なんて、大嫌い。

 

決められた人生、決められた未来。

全部、全部――息苦しい。

 

「……あたしは、自由になりたいのよ」

 

そう呟いた瞬間だった。

 

「――ルーシィ様」

 

後ろから、静かな声がした。

 

「っ……!」

 

振り返らなくてもわかる。

 

この声は、一人しかいない。

 

「……追ってきたのね、ヨゾラ」

 

足を止める。

 

夜風が、金髪を揺らした。

 

ゆっくりと振り返ると、そこには銀髪の青年。

 

いつもと同じ、落ち着いた表情。

 

「護衛ですので」

 

「命令でしょ?」

 

「はい」

 

即答だった。

 

あたしは思わず顔をしかめる。

 

「……だったら帰りなさいよ。これは“あたしの問題”」

 

「それはできません」

 

「なんでよ!」

 

思わず声が大きくなる。

 

ヨゾラは一瞬だけ目を細めて――それから、静かに言った。

 

「あなたが危険だからです」

 

「危険なのはあの家のほうよ!」

 

胸の奥に溜まっていたものが、溢れ出す。

 

「お父様はあたしを“道具”みたいに扱うし、結婚だって勝手に決めるし!」

 

声が震える。

 

悔しいのか、悲しいのか、自分でもわからない。

 

「……だから、あたしは出ていくの。自分の力で生きるの」

 

夜空を見上げる。

 

星が、遠くに瞬いている。

 

「あたし、魔導士になる」

 

その言葉に、ヨゾラの表情がわずかに揺れた。

 

「……魔導士に」

 

「そうよ。ギルドに入って、仕事して、自由に生きるの!」

 

あたしはまっすぐヨゾラを見る。

 

「だから、ついてこないで」

 

少しだけ、間が空いた。

 

風の音だけが響く。

 

そして――

 

「……それは、命令ですか?」

 

「え?」

 

予想外の言葉に、あたしは目を瞬かせた。

 

「それが“主としての命令”であれば、従います」

 

ヨゾラは淡々と言う。

 

でもその瞳は、どこか迷っていた。

 

「……命令じゃないわ」

 

「では、従えません」

 

「はぁ!?」

 

思わず変な声が出た。

 

「なんでよ!」

 

「俺の意思です」

 

はっきりと、そう言った。

 

「あなたがどこへ行こうと、何を選ぼうと――」

 

一歩、近づいてくる。

 

「守ると決めたのは、俺自身です」

 

その言葉に、胸が少しだけ熱くなる。

 

「……バカじゃないの」

 

「よく言われます」

 

「給料も出ないわよ?」

 

「問題ありません」

 

「面倒くさいことばっかりよ?」

 

「承知しています」

 

即答だった。

 

あたしは、しばらく何も言えなかった。

 

――ずるい。

 

そんな真っ直ぐな顔で言われたら。

 

「……勝手にしなさい」

 

そっぽを向いて言う。

 

「ただし!」

 

ビシッと指を突きつける。

 

「“様”は禁止!ルーシィでいい!」

 

「……努力します」

 

「努力じゃなくてやりなさい!」

 

「……善処します」

 

「もう!」

 

思わず笑ってしまう。

 

さっきまであんなにイライラしてたのに。

 

不思議と、少し軽くなっていた。

 

「行くわよ、ヨゾラ」

 

「はい」

 

「だから“はい”じゃなくて!」

 

「……ああ、ルーシィ」

 

その呼び方に、少しだけドキッとする。

 

夜空の下。

 

あたしは一歩踏み出した。

 

もう、振り返らない。

 

「目指すは――ギルドよ!」

 

「どのギルドに?」

 

「決まってるでしょ!」

 

あたしはニッと笑う。

 

「一番楽しそうなところ!」

 

ヨゾラが小さく頷く。

 

「……では、そこへ」

 

その瞬間。

 

ふわりと、星の光が舞った気がした。

 

まるで、あたし達の旅を祝うみたいに。




感想、お気に入りよろしくお願い致します!

ヒロインアンケート

  • ルーシィ
  • ミラジェーン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。