FAIRYTAIL〜星空の竜〜   作:パスカルDX

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幕間「歪んだ契約」

 

幕間「歪んだ契約」

 

薄暗い広間。

 

高い天井、冷たい石の床。

 

その中心に、あたしは立たされていた。

 

魔力は封じられたまま。

 

逃げ場はない。

 

「……随分と、静かですねぇ」

 

ゆっくりと響く声。

 

奥の闇から現れる男。

 

それは――

ジョゼ・ポーラ

 

「ようこそ、ルーシィ・ハートフィリアさん」

 

丁寧な口調。

 

でも、その笑顔は不気味だった。

 

「……あんたがボスね」

 

あたしは睨む。

 

「こんなことして、ただで済むと思ってるの?」

 

「ただで済む、とは?」

 

ジョゼは小さく首を傾げる。

 

「むしろ、こちらは正当な取引をしているだけですよ」

 

「……は?」

 

意味がわからない。

 

「あなたを連れ戻すこと」

 

一歩、近づいてくる。

 

「それが依頼ですから」

 

「依頼……?」

 

嫌な予感がする。

 

「誰からよ」

 

ジョゼは、楽しそうに笑う。

 

「あなたのお父上からですよ」

 

――その言葉で、時間が止まった。

 

「……嘘」

 

思わず呟く。

 

「そんなわけ……」

 

「本当ですよ」

 

さらりと言う。

 

「ハートフィリア家当主」

 

少しだけ声を落とす。

 

「ジュード・ハートフィリア」

 

その名前が、胸に突き刺さる。

 

「……なんで」

 

声が震える。

 

「どうして、そんなこと……」

 

「簡単な話です」

 

ジョゼは手を広げる。

 

「娘を連れ戻したい父親」

 

「それに応じた我々」

 

「それだけです」

 

「……ふざけないで」

 

あたしは拳を握る。

 

「そんなの……勝手すぎる」

 

「ええ、勝手ですね」

 

あっさり認める。

 

「ですが、それが“貴族”というものです」

 

その言葉に、怒りがこみ上げる。

 

「だからって!!」

 

一歩踏み出す。

 

「ギルドを壊して、仲間を傷つけて!!」

 

「必要な犠牲です」

 

即答。

 

その冷たさに、息が詰まる。

 

「……最低」

 

あたしは睨みつける。

 

「それで、あたしを連れて帰って終わり?」

 

「いえ」

 

ジョゼはゆっくり首を振る。

 

「それだけでは、つまらないでしょう?」

 

ゾクリ、とする。

 

「……何する気」

 

ジョゼの笑みが、深くなる。

 

「この機会に――」

 

少しだけ間を置く。

 

「妖精の尻尾を潰します」

 

空気が凍る。

 

「……は?」

 

理解が追いつかない。

 

「何言ってんのよ」

 

「そのままの意味です」

 

ジョゼは楽しそうに言う。

 

「元々、気に入らなかったのですよ」

 

「……」

 

「自由を掲げ、好き勝手に暴れるギルド」

 

指を軽く振る。

 

「秩序を乱す存在」

 

「だから潰す?」

 

「ええ」

 

迷いのない答え。

 

「あなたは“きっかけ”に過ぎません」

 

その言葉に、胸が締め付けられる。

 

「……最低ね」

 

絞り出すように言う。

 

「家の都合で連れ戻されて」

 

「そのついでに仲間も潰されるなんて」

 

「ええ」

 

ジョゼは頷く。

 

「実に効率的でしょう?」

 

その笑顔に――

 

怒りが爆発する。

 

「ふざけないで!!」

 

あたしは叫ぶ。

 

「仲間は道具じゃない!!」

 

声が響く。

 

「妖精の尻尾は……あたしの大事な場所よ!!」

 

ジョゼはそれを、静かに見ていた。

 

「……素晴らしい」

 

ぽつりと呟く。

 

「実に“らしい”反応です」

 

「……なにが」

 

「だからこそ」

 

一歩、近づく。

 

「壊しがいがある」

 

背筋が冷える。

 

「絶望した顔を、ぜひ見てみたい」

 

その言葉に――

 

「させない」

 

あたしは睨む。

 

「絶対に」

 

ジョゼは、ふっと笑う。

 

「では――見せていただきましょう」

 

ゆっくりと振り返る。

 

「あなたの“仲間”が、どこまで抗えるのか」

 

その時。

 

遠くから――

 

ドォォォン!!!

 

爆音が響く。

 

戦いの音。

 

「……始まりましたね」

 

ジョゼが満足そうに言う。

 

あたしの心臓が跳ねる。

 

「ナツ……」

 

小さく呟く。

 

「ヨゾラ……」

 

拳を握る。

 

「……来る」

 

そう信じてる。

 

絶対に。

 

その目を見て――

 

ジョゼは楽しそうに笑った。

 

「ええ、来るでしょう」

 

そして、ゆっくりと言う。

 

「だからこそ、面白い」

 

戦いは、すでに始まっている。

 

 




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