幕間「星竜の声」
――暗闇。
音も、光もない世界。
ただ、意識だけが浮かんでいる。
「……ここは」
ヨゾラはゆっくりと目を開ける。
だが、何も見えない。
「……死んだか」
ぽつりと呟く。
その時――
「まだだ」
声が響く。
低く、重く、そして――どこか懐かしい。
「……誰だ」
ヨゾラが構える。
すると――
暗闇に、光が灯る。
一つ、また一つ。
無数の星。
その中心に――
巨大な存在。
それは、竜。
星々をその身に纏う、圧倒的な存在。
「……っ」
ヨゾラの目が見開かれる。
「……竜」
それは――
スターレイン
星竜。
「久しいな、ヨゾラ」
その声は、頭の奥に直接響く。
「……知ってるのか、俺を」
「当然だ」
スターレインが言う。
「お前は、我が力を継ぐ者」
その言葉に――
記憶の断片が、揺れる。
「……俺は……」
頭を押さえる。
「……思い出せない」
「無理もない」
スターレインが静かに言う。
「お前は、自ら記憶を封じたのだからな」
「……は?」
ヨゾラが顔を上げる。
「どういう意味だ」
「お前は、選んだ」
星が、揺れる。
「力と引き換えに、過去を捨てた」
その言葉に、息が詰まる。
「……そんな」
「だが――」
スターレインの目が、鋭く光る。
「未完成だ」
「……っ」
「お前の滅竜魔法は、不完全」
静かに告げる。
「だから暴走する」
ヨゾラは拳を握る。
「……知ってる」
「ならば問う」
スターレインが言う。
「なぜ力を求める」
その問いに――
迷いはなかった。
「守るためだ」
即答。
「誰をだ」
「ルーシィ」
名前を出す。
その瞬間。
星が、わずかに輝く。
「……ほう」
スターレインが興味深そうに言う。
「その者のために、お前はここまで来たか」
「ああ」
ヨゾラは頷く。
「何度でも言う」
拳を握る。
「守るって決めた」
その声は、真っ直ぐだった。
「……だが、お前は守れなかった」
静かな指摘。
胸に刺さる。
「……ああ」
ヨゾラは目を伏せる。
「二度も」
「それでもか?」
「それでもだ」
顔を上げる。
その目は、折れていない。
「だからこそ――強くなる」
空気が震える。
「今度こそ守るために」
スターレインは、それを見つめる。
長い沈黙。
そして――
「よかろう」
星が、一気に輝く。
「認める」
ヨゾラの目が見開かれる。
「お前に、真の力を授けよう」
その瞬間――
無数の星が、ヨゾラへ流れ込む。
「っ……!!」
膨大な情報。
力。
記憶。
「これは……!」
「星竜の滅竜魔法――真式」
スターレインの声が響く。
「受け取れ」
ヨゾラの体が、光に包まれる。
「ぐっ……!!」
苦しい。
だが――拒まない。
「……全部」
歯を食いしばる。
「受け入れる」
星が、収束する。
そして――
静かに収まる。
「……これが」
ヨゾラが手を見る。
星の光が、安定している。
今までとは、まるで違う。
「完全な……」
「そうだ」
スターレインが頷く。
「もはや暴走はしない」
「……」
ヨゾラは拳を握る。
「……ありがとう」
静かに言う。
スターレインは、少しだけ目を細める。
「礼は不要だ」
「ただし――」
その声が、重くなる。
「力には責任が伴う」
「ああ」
ヨゾラは頷く。
「わかってる」
「ならば行け」
星が、道を作る。
「守るのだろう?」
その言葉に――
ヨゾラは、力強く頷く。
「ああ」
一歩踏み出す。
「絶対に」
光が、弾ける。
意識が戻る。
■現実へ
崩れた街。
倒れたままのヨゾラ。
その体が――
微かに光る。
「……っ」
ゆっくりと目を開ける。
星が、静かに輝いている。
「……行くぞ」
立ち上がる。
もう、迷いはない。
「ルーシィ」
その名を呼ぶ。
「今度こそ」
星が、完全に目覚めた。
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