第27話「離れても、繋がるもの」
夜。
ギルドの外。
静かな風が流れる。
「……来たか」
ヨゾラが呟く。
その視線の先。
「……呼んだの、あんたでしょ」
ゆっくり歩いてくる
ルーシィ・ハートフィリア
腕を組んだまま。
少し不機嫌そうな顔。
「……悪い」
ヨゾラが言う。
「昼は」
「ほんとよ」
即答。
「最悪だった」
「……ああ」
少しの沈黙。
風が吹く。
「……で?」
ルーシィが言う。
「何の話?」
ヨゾラは、まっすぐ見る。
「行く」
その一言。
「……っ」
ルーシィの表情が固まる。
「やっぱりね」
小さく笑う。
「変わらないんだ」
「ああ」
迷いなく答える。
「変わらない」
「……そっか」
ルーシィは視線を逸らす。
「じゃあ、もう話すことないじゃない」
「ある」
ヨゾラが言う。
「……何」
「ちゃんと伝えとく」
一歩近づく。
「逃げるわけじゃない」
「……」
「お前からも」
「ギルドからも」
静かに言う。
「離れるだけだ」
「それが逃げじゃないって言えるの?」
ルーシィが睨む。
「……言える」
「なんでよ」
「戻るからだ」
その一言。
ルーシィの目が、少しだけ揺れる。
「……戻る?」
「ああ」
ヨゾラは頷く。
「全部終わらせて」
拳を軽く握る。
「ちゃんとした状態で」
ルーシィを見る。
「隣に立つために」
その言葉は、真っ直ぐだった。
「……」
ルーシィは、少しだけ俯く。
「……勝手ね」
ぽつりと呟く。
「自分で行って、自分で戻ってくるって」
「……ああ」
否定しない。
「勝手だ」
「……ほんとに」
小さく笑う。
でも――
その声は、少し震えている。
「じゃあさ」
顔を上げる。
「約束しなさいよ」
ヨゾラが目を細める。
「……何を」
「ちゃんと戻ってくるって」
一歩近づく。
「絶対に」
その目は、真剣だった。
「……ああ」
ヨゾラが答える。
「戻る」
「絶対よ?」
「絶対だ」
短く、強く。
その言葉に――
ルーシィは少しだけ息を吐く。
「……じゃあ」
少しだけ笑う。
「仕方ないわね」
「……いいのか」
「よくないわよ」
即答。
「全然よくない」
「……」
「でも」
少しだけ視線を逸らす。
「止めても行くんでしょ」
「……ああ」
「なら」
小さく肩をすくめる。
「信じるしかないじゃない」
その言葉。
ヨゾラの目が、少しだけ柔らかくなる。
「……ありがとな」
「勘違いしないで」
すぐに言い返す。
「まだ怒ってるんだからね」
「……わかってる」
少しだけ笑う。
その時。
風が強く吹く。
ルーシィの髪が揺れる。
「……ねぇ」
小さく呟く。
「ん?」
「一人で行くの?」
ヨゾラは少しだけ間を置いて――
「……ああ」
答える。
ミラジェーンの提案を思い出す。
でも――
「今回はな」
「……そっか」
ルーシィは頷く。
少しだけ寂しそうに。
「じゃあ」
一歩下がる。
「ちゃんと強くなってきなさいよ」
「……ああ」
「今よりも」
少しだけ笑う。
「もっと頼れる感じで」
「注文多いな」
「当然でしょ」
軽く言う。
でも――
その目は優しい。
「……行く前に」
ヨゾラが言う。
「もう一つ」
「なに?」
少しだけ間。
そして――
「待っててくれ」
その一言。
ルーシィの目が見開かれる。
「……」
少しの沈黙。
そして。
「……気が向いたらね」
そっぽを向く。
でも――
耳が少し赤い。
「……そうか」
ヨゾラが小さく笑う。
その空気は、少しだけ軽くなる。
「じゃあ」
ルーシィが背を向ける。
「ちゃんと帰ってきなさいよ」
「ああ」
ヨゾラが答える。
「必ず」
二人は、別々の方向へ歩き出す。
離れていく。
でも――
完全には切れていない。
見えない糸が、まだ繋がっている。
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