第29話「カエルと少女と星の旅」
森の中。
木漏れ日が差し込む静かな道。
「……平和ねぇ」
伸びをするのは
ミラジェーン・ストラウス
「そうだな」
隣を歩くヨゾラが答える。
銀髪が風に揺れる。
「最初はどうなるかと思ったけど」
ミラジェーンがくすっと笑う。
「ちゃんと旅してるわね、私たち」
「……お前が無理やりついてきたんだろ」
「結果オーライよ♪」
軽い。
「で?」
ミラジェーンが横を見る。
「どう?少しは思い出した?」
ヨゾラは少しだけ考える。
「……断片的になら」
「ほんと?」
「星と……声」
「声?」
「ああ」
目を細める。
「“導く”とか、“見失うな”とか」
「……導く、ね」
ミラジェーンが意味ありげに笑う。
「誰かに大事にされてたのかもね」
「……どうだろうな」
ヨゾラは軽く流す。
その時。
――ガサガサッ!!
「……ん?」
二人が足を止める。
茂みが揺れる。
「何かいるわね」
ミラジェーンが構える。
ヨゾラも魔力を軽く巡らせる。
「出てこい」
静かに言う。
次の瞬間――
バァン!!
飛び出してきたのは――
巨大なカエル。
「……カエル?」
「でかいわね」
そして、そのカエルの口から――
「た、たすけてぇぇぇ!!」
少女の声。
「……は?」
よく見ると。
カエルの口に――
少女の上半身が出ている。
下半身は――完全に飲み込まれている。
「え、ちょっと待って」
ミラジェーンが思わず素で言う。
「どういう状況?」
「わ、わかりません〜!!」
少女が泣きそうな声で叫ぶ。
「気づいたら食べられててぇぇぇ!!」
「落ち着け」
ヨゾラが冷静に言う。
「落ち着いてる場合じゃないですぅぅぅ!!」
「それもそうね」
ミラジェーンが頷く。
「ヨゾラ、お願い」
「……ああ」
ヨゾラが一歩前に出る。
「暴れるなよ」
「む、無理ですぅぅぅ!!」
「……」
「仕方ない」
ヨゾラが手をかざす。
「《スター・ショット》」
小さな星弾を発射。
ドンッ!
カエルの顔面に直撃。
「ゲコォ!?」
ひるむ。
「今だ」
ヨゾラが一気に近づく。
「引っ張るぞ」
「は、はいぃぃ!!」
ぐいっ!!
ズボッ!!
少女が引き抜かれる。
その勢いで――
ヨゾラごと後ろに倒れる。
「……」
「……」
静寂。
ヨゾラの上に、少女が乗っている。
「……た、助かりましたぁ」
涙目で言う少女。
「……重い」
ヨゾラがぼそっと言う。
「す、すみません!!」
慌てて降りる。
その様子を見て――
ミラジェーンが吹き出す。
「ふふっ……なにそれ」
「……事故だ」
ヨゾラが起き上がる。
「ありがとうございます!!」
少女が深く頭を下げる。
その姿は――
小柄で、青い髪。
どこか幼い雰囲気。
「あなた、名前は?」
ミラジェーンが優しく聞く。
「は、はい!」
元気よく答える。
「私は――
**ウェンディ・マーベル**です!!」
「……ウェンディ」
ヨゾラが呟く。
「どうしてあんなことに?」
「えっと……」
少し困った顔。
「森で迷ってたら、いきなりパクって……」
「雑ねぇ……」
ミラジェーンが苦笑する。
「一人なの?」
「はい……」
少しだけ不安そうにする。
「……そうか」
ヨゾラが少しだけ考える。
そして――
「しばらく一緒に来るか」
「え?」
ウェンディが目を見開く。
「いいの?」
ミラジェーンも笑う。
「その方が安心でしょ?」
「は、はい!!」
ぱっと顔が明るくなる。
「お願いします!!」
元気に頭を下げる。
「……にぎやかになりそうだな」
ヨゾラがぼそっと言う。
「いいじゃない」
ミラジェーンが笑う。
「旅は楽しい方が」
こうして――
星の滅竜魔導士と、元S級魔導士、そして謎の少女。
少し不思議な三人旅が、始まった。
その頃――
ギルドではヨゾラから手紙を受け取った。
「……カエルに食われてる少女とか何それ」
ルーシィが呆れた顔をしていた。
でも――
「……無事でよかった」
小さく呟く。
遠く離れていても。
想いは、まだ繋がっている。
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