幕間「氷と星」
ギルドの一角。
珍しく静かな時間帯。
あたしはカウンターで依頼書を見ていたけど――
「……なんか、空気ピリついてない?」
視線の先。
そこには、上半身裸の男。
「……寒くねぇのか?」
ヨゾラがぽつりと呟く。
その言葉に、男――グレイが眉をひそめた。
「クセだ」
「そうか」
短い返答。
沈黙。
……気まずい。
「なんであんた脱いでんのよ!!」
あたしがツッコむ。
「だからクセだっつってんだろ!」
「意味わかんないわよ!!」
「ルーシィ、慣れろ」
ナツが笑う。
「慣れたくないわよ!!」
そんな中。
グレイの視線が、ヨゾラに向く。
「お前……」
「?」
「普通じゃねぇな」
空気が変わる。
ヨゾラは少しだけ首を傾げる。
「どこがだ?」
「魔力だよ」
グレイは腕を組む。
「冷たいとか、熱いとかじゃねぇ」
「……」
「“遠い”感じがする」
その表現に、あたしは少し驚いた。
遠い……?
ヨゾラは少しだけ空を見上げる。
「……星だからかもな」
「星?」
「ああ」
ヨゾラの声は静かだった。
「俺の魔法、星を喰うらしい」
「らしいってなんだよ」
「記憶がない」
グレイが目を細める。
「……厄介だな」
「そうか?」
「制御できてるならいいがな」
グレイの声が少しだけ低くなる。
「力がでかい奴ほど、暴走した時にヤバい」
一瞬だけ、ギルドの空気が重くなる。
ヨゾラは、少しだけ考えるように目を伏せた。
「……暴走か」
「心当たりあんのか?」
「ない」
即答。
でも――ほんの一瞬だけ、間があった。
グレイはそれを見逃さない。
「……嘘は下手だな」
「そうかもな」
ヨゾラは否定しない。
その代わり――
「でも」
グレイを見る。
「止めてくれる奴がいる」
その視線の先。
あたしに向く。
「……は?」
思わず変な声が出た。
「お前か?」
グレイがニヤッとする。
「え、いや、別に……!」
ちょっと待って、なんであたし!?
「……ああ」
ヨゾラはあっさり頷く。
「ルーシィなら止められる」
ドクン、と心臓が鳴る。
「なんでそんな断言すんのよ……」
「止めてくれるから」
シンプルすぎる答え。
でも――
変に説得力があった。
グレイは少しだけ笑う。
「……なるほどな」
そして、ヨゾラに向き直る。
「いいじゃねぇか」
「?」
「守るだけじゃなくて、止められる相手がいるってのは」
その言葉は、少しだけ重かった。
「……ああ」
ヨゾラも静かに答える。
「悪くない」
二人の間の空気が、少しだけ柔らぐ。
「で?」
グレイが肩を回す。
「ナツとはやったみてぇだな」
「……ああ」
「オレともやるか?」
即戦闘モード。
「やめなさいよ!!」
あたしが即止める。
「ギルド壊す気!?」
「外でやる」
「そういう問題じゃない!!」
ナツが笑いながら割り込む。
「お、いいじゃん!やれやれ!」
「煽るな!!」
ハッピーが飛びながら言う。
「あい!壊れるね!」
「止めなさいよ!!」
カオス再び。
そんな中。
ヨゾラは小さく息を吐いた。
「……また今度だな」
「チッ、逃げたか」
「今は任務優先だ」
グレイがニヤリと笑う。
「真面目かよ」
「そうでもない」
ヨゾラも少しだけ笑う。
そのやり取りに――
あたしは気づいた。
「あんた、ちょっと馴染んできたわね」
「そうか?」
「うん」
少しだけ嬉しそうに言う。
「フェアリーテイルっぽくなってきた」
ヨゾラは少しだけ考えて――
「……騒がしいのは嫌いじゃない」
そう呟いた。
その言葉に、あたしは笑った。
「でしょ?」
ギルドの騒音がまた響く。
でもその中で――
ヨゾラは確かに、“ここ”にいる顔をしていた。
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