幕間「微笑みと、ちょっとした嵐」
ギルドのカウンター。
昼下がり、比較的落ち着いた時間。
「はい、どうぞ♪」
柔らかい声と一緒に、ジュースが差し出される。
「……ありがとう」
ヨゾラが受け取る。
その相手は――
ミラジェーン・ストラウス
ギルドの看板娘であり、元S級魔導士。
柔らかな笑顔と、どこか底知れない雰囲気を持つ女性。
「ヨゾラくんって、本当に不思議な人ね」
「……そうか?」
「ええ」
ミラジェーンは楽しそうに微笑む。
「魔力が、とても綺麗」
「綺麗……?」
「星みたいに、静かで広い感じ」
ヨゾラは少しだけ目を伏せる。
「……よく言われる」
「ふふ、やっぱり?」
その距離、ちょっと近い。
――いや、かなり近い。
(……なにあれ)
あたしは少し離れた席から、その様子を見ていた。
(なんであんな自然に喋ってんのよ)
しかも。
(あたしの時より柔らかくない?)
気のせい?いや絶対違う。
「ねえヨゾラくん」
「ん?」
“くん”呼び!?
「その三つ編み、すごく綺麗ね。触ってもいい?」
「……ああ、別に構わない」
は!?
ちょっと待って。
待ちなさいよ。
ミラジェーンがそっと三つ編みに触れる。
「本当に手入れがいいのね」
「そうか?」
「ええ。女の子でもここまで綺麗にするのは大変よ?」
(なにそれ褒めすぎでしょ!!)
あたしの中で何かが弾けた。
「ちょっと!!」
バンッとテーブルを叩く。
二人の視線がこっちに向く。
「ルーシィ?」
ミラジェーンが首を傾げる。
「……なにしてんのよ」
「お話してただけだけど?」
にこやか。
完璧に余裕。
「距離近いのよ!!」
「そう?」
「そうよ!!」
ヨゾラが少しだけ首を傾げる。
「普通だと思うが」
「普通じゃない!!」
あたしはズンズン歩いていって――
ヨゾラの腕を掴む。
「ちょ、ちょっとルーシィ?」
「こっち来なさい」
そのまま強引に引っ張る。
「……どうした」
「どうしたじゃないわよ!!」
少し離れた場所で止まる。
腕はまだ掴んだまま。
「なんであんな……その……」
言葉が詰まる。
「……なんだ?」
ヨゾラが真顔で聞いてくる。
「……距離近いのよ」
小さく呟く。
「そうか?」
「そうなの!」
「ミラジェーンはそういう距離感だろ」
「それはそうだけど!」
……なんか違う。
なんかモヤモヤする。
「……嫌だったか?」
ヨゾラが少しだけ真剣な顔になる。
その一言で――
「……別に」
反射的に目を逸らす。
「嫌じゃないけど……」
「けど?」
「……あたしの前では、あんまりしないで」
沈黙。
自分で言っておいて、顔が熱くなる。
「……なんでだ?」
「なんでって……!」
あたしは一瞬迷って――
「……気になるからよ」
ポツリと答える。
ヨゾラは少しだけ目を見開いた。
「……そうか」
「なによその反応」
「いや」
少しだけ考えて――
「気をつける」
「……うん」
それだけで、少しだけ胸が落ち着く。
その時。
「あらあら♪」
後ろから声。
振り返ると、ミラジェーンが微笑んでいた。
「仲良しね」
「ち、違うわよ!!」
即否定。
「そう?」
「そうよ!!」
ミラジェーンはくすっと笑う。
「でも安心したわ」
「え?」
「ヨゾラくん、ちゃんと“人の中”にいるのね」
その言葉に、あたしは少しだけ驚く。
ヨゾラを見る。
彼はいつもの静かな顔。
でも――
「……ここは、悪くない」
そう言った。
その言葉に、あたしは少しだけ笑う。
「でしょ?」
ミラジェーンが優しく頷く。
「これからも、ルーシィのことよろしくね」
「……ああ」
ヨゾラは自然に答えた。
そのやり取りを見て――
「……もう」
あたしは小さくため息をつく。
でも。
さっきまでのモヤモヤは、少しだけ消えていた。
「……あたしの護衛なんだから」
小さく呟く。
「他の人と仲良くするのはいいけど……」
チラッとヨゾラを見る。
「優先順位、間違えないでよね」
ヨゾラは一瞬考えて――
「間違えない」
そう言った。
即答だった。
「……ならいいわ」
あたしはそっぽを向く。
でもきっと――
ちょっとだけ、顔は赤かったと思う。
感想、評価、お気に入りよろしくお願い致します!
ヒロインアンケート
-
ルーシィ
-
ミラジェーン