FAIRYTAIL〜星空の竜〜   作:パスカルDX

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幕間「竜の記憶」

 

 

幕間「竜の記憶」

 

 

夜のギルド裏。

 

昼の喧騒が嘘みたいに静かだった。

 

「……こんなとこにいたのか」

 

振り返ると、そこには――

ナツ・ドラグニル

 

肩に手を回しながら、気楽な様子で近づいてくる。

 

「寝ないのか?」

 

「少し、考え事だ」

 

「らしくねぇな」

 

ナツは隣に座り込む。

 

しばらく、無言。

 

夜空には星が広がっている。

 

ヨゾラは、それをじっと見ていた。

 

「……なあ、ヨゾラ」

 

「なんだ」

 

「お前の“竜”って、どんなやつなんだ?」

 

その問いに――

 

ヨゾラの目が、わずかに揺れる。

 

「……わからない」

 

「は?」

 

ナツが顔をしかめる。

 

「育ての親とか、そういうのだろ?」

 

「……そのはずだ」

 

「そのはずってなんだよ」

 

ヨゾラは少しだけ目を伏せる。

 

「記憶がない」

 

風が吹く。

 

静かな時間。

 

「でも」

 

ヨゾラは空を見る。

 

「“いた”っていう感覚はある」

 

「感覚?」

 

「ああ」

 

手を軽く握る。

 

「この力を使うと、何かを思い出しそうになる」

 

「……」

 

「でも、届かない」

 

ナツは黙って聞いていた。

 

「……そっか」

 

短く呟く。

 

「ナツは、覚えているのか?」

 

ヨゾラが聞き返す。

 

ナツは少しだけ驚いて――

 

「……ああ」

 

空を見上げる。

 

「イグニールって竜に育てられた」

 

その名を口にした時、声が少しだけ変わった。

 

「強くて、でっかくて……めちゃくちゃなやつだった」

 

少しだけ笑う。

 

「でも、ある日いなくなった」

 

「……」

 

「それでも、覚えてる」

 

拳を握る。

 

「匂いも、声も、全部な」

 

ヨゾラは、その言葉を静かに聞く。

 

「……いいな」

 

ぽつりと漏れる。

 

ナツが眉をひそめる。

 

「何がだよ」

 

「残っている」

 

ヨゾラの声は静かだった。

 

「形がある記憶が」

 

ナツは少しだけ黙って――

 

「……じゃあ作ればいいだろ」

 

「?」

 

「今からでも」

 

ナツがニッと笑う。

 

「ギルドもあるし、仲間もいる」

 

肩をドンと叩く。

 

「オレもいるしな!」

 

「……そうか」

 

ヨゾラは少しだけ考える。

 

そして――

 

小さく頷いた。

 

「ああ、そうだな」

 

その時。

 

風が吹く。

 

星が一つ、流れた気がした。

 

「……でもな」

 

ナツが少しだけ真剣な顔になる。

 

「滅竜魔導士ってのは、普通じゃねぇ」

 

「……ああ」

 

「力がデカすぎる」

 

ナツは拳を見る。

 

「だから、飲み込まれるやつもいる」

 

ヨゾラの瞳が細くなる。

 

「……飲み込まれる」

 

「お前の魔力、ちょっとヤバいぞ」

 

はっきり言う。

 

「星ってなんだよ。聞いたことねぇ」

 

「俺もだ」

 

「だろうな」

 

ナツは笑う。

 

でもその目は、ちゃんと見ている。

 

「だからさ」

 

立ち上がる。

 

「無茶すんなよ」

 

「……忠告か?」

 

「仲間としてな」

 

ヨゾラもゆっくり立ち上がる。

 

「……ああ」

 

そして――

 

「ナツ」

 

「ん?」

 

「もし、俺が――」

 

言いかけて、止まる。

 

ナツは振り返る。

 

「なんだよ」

 

ヨゾラは少しだけ目を伏せて――

 

「……いや、なんでもない」

 

「気になるだろそれ!」

 

「その時は、頼む」

 

「は?」

 

「止めてくれ」

 

ナツは一瞬、驚いて――

 

すぐに笑った。

 

「当たり前だろ」

 

「……ああ」

 

「ぶっ飛ばしてでも止めてやるよ!」

 

「それは痛そうだな」

 

「安心しろ、手加減はしねぇ」

 

「それは安心できない」

 

二人の間に、少しだけ笑いが生まれる。

 

夜空は変わらず、静かに広がっている。

 

火の竜と、星の竜。

 

それぞれ違う過去を持ちながら――

 

今は、同じ場所に立っている。

 

「……悪くないな」

 

ヨゾラが小さく呟く。

 

「だろ?」

 

ナツが笑う。

 

ギルドの灯りが、遠くで揺れていた。

 

そこが――

 

二人の帰る場所だった。

 

 




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