第5話「闇の影、鉄の襲来」
第5話「闇の影、鉄の襲来」
それは、静かな夜だった。
フェアリーテイルのギルドは珍しく無人で、灯りも落ちている。
あたしは、部屋で一人本を読んでいた。
「……平和ね」
小さく呟く。
だけど――
その静けさは、突然壊された。
ドゴォォォン!!!
「っ!?」
建物全体が揺れる。
「なに……!?」
慌てて窓の外を見る。
ギルドの方向から、煙が上がっていた。
「まさか……!」
走り出そうとした、その瞬間。
「ルーシィ」
後ろから声。
「ヨゾラ!」
振り返ると、すでに戦闘態勢のヨゾラがいた。
「ギルドが襲撃されている」
「行くわよ!」
「ああ」
二人は夜の街を駆ける。
嫌な予感が、胸を締め付ける。
■崩壊したギルド
到着した時。
そこにあったのは――
「……嘘でしょ」
半壊したギルド。
壁は崩れ、柱は折れ、瓦礫が散乱している。
「あたし達の……ギルドが……」
声が震える。
その中に――
一人の男が立っていた。
鉄のような体。
鋭い目。
「……来たか」
低い声。
それは――
ガジル・レッドフォックス
「幽鬼の支配者(ファントムロード)の……!」
あたしが歯を食いしばる。
「へぇ……いい女じゃねぇか」
ガジルがニヤリと笑う。
「それがルーシィ・ハートフィリアか」
「……何の用よ」
「決まってんだろ」
一歩、前に出る。
「テメェを連れて帰る」
「……は?」
「お前の親父の取引だ」
空気が凍る。
「ふざけないで!!」
あたしは叫ぶ。
その瞬間――
「下がれ、ルーシィ」
ヨゾラが前に出る。
その背中は、静かに怒っていた。
「……誰だお前」
ガジルが眉をひそめる。
「護衛だ」
短く答える。
「へぇ……面白ぇ」
ガジルの口元が歪む。
「オレの前に立つか」
「立つ」
即答。
その声に、一切の迷いはない。
「……そうかよ」
ガジルの身体が、ギシリと音を立てる。
「鉄竜の滅竜魔法」
空気が重くなる。
「星竜の滅竜魔法」
ヨゾラも構える。
「……星ぃ?」
ガジルが笑う。
「聞いたことねぇな」
「俺もだ」
「上等だ」
次の瞬間――
「鉄竜の咆哮!!」
轟音と共に、鉄の嵐が放たれる。
だが――
「……遅い」
ヨゾラの足元に星の光が広がる。
「《スター・フィールド》」
空間が歪む。
攻撃の軌道が逸れる。
「なにっ!?」
「ここでは、俺の領域だ」
ヨゾラが一歩踏み出す。
「《スターダスト・ブレイク》」
光の衝撃がガジルを吹き飛ばす。
ドゴォン!!
瓦礫が舞う。
「すごい……!」
あたしは思わず息を呑む。
でも――
「ククッ……」
煙の中から笑い声。
「いいじゃねぇか」
ガジルが立ち上がる。
ほとんど効いていない。
「だがな」
腕が変形する。
巨大な鉄の刃。
「こっからだ」
一瞬で距離を詰める。
「速っ……!」
ガキィィン!!
ヨゾラが受け止めるが、押し込まれる。
「くっ……!」
「力が軽いなぁ!!」
ガジルが押し切る。
ヨゾラの身体が地面を滑る。
「ヨゾラ!!」
あたしが叫ぶ。
「……問題ない」
立ち上がる。
でも、その魔力が――
さっきより揺れている。
「……なんだ?」
ガジルが眉をひそめる。
「その魔力……安定してねぇな」
ヨゾラは何も答えない。
ただ、空を見る。
星が、わずかに歪んで見えた。
「……来るな、ルーシィ」
「え?」
「少し、荒れる」
その声は――
いつもより低かった。
「おいおい」
ガジルが笑う。
「暴走か?」
「……かもしれない」
ヨゾラの瞳が、強く光る。
「だが」
一歩、踏み出す。
「それでも――守る」
星の光が、一気に膨れ上がる。
空気が震える。
「面白ぇ!!」
ガジルが笑う。
その時――
「待て」
低い声が響いた。
場の空気が一瞬で変わる。
ガジルが舌打ちする。
「チッ……邪魔が入ったか」
「……撤退だ」
「まだやれんだろ」
「命令だ」
ガジルは不満そうに笑う。
「……続きはまたな、星野郎」
そのまま闇に消える。
静寂。
崩れたギルド。
荒れた空気。
そして――
「……ヨゾラ?」
あたしが近づく。
彼は、その場に立ったまま。
「……問題ない」
そう言ったけど。
その瞳の奥に、ほんの少しだけ――
“何か”が揺れていた。
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