スズキサトルの日常   作:ふじら

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第5話 必殺苦労人ケラルトちゃん

 

 

08:30、前線拠点に響く鐘の音。

それはローブル聖王国における仕事開始の合図であるが、同時にこの鐘は「今日、生きていることに感謝せよ」「平穏を産む聖王を敬愛せよ」という意味が込められている。

これは隣国の宗教国家スレイン法国と通ずる慣習であり、ローブル聖王国が宗教国家であるということもこの鐘から再認識できるだろう。

 

この鐘について聖王国北部の住民はこれら全ての意味合いを理解しているが南部は違う。

 

カルカ・べサーレスが女性でありながら聖王の座についた影響を基軸に不穏な動きを見せる保守派。

 

それに付け込み王国から流れてくる反体制派とその支援者。

 

南部では既得権益が確立し、今やカルカ王権を打倒する動きも見られ表面化はしていないが何が火をつけるか分からないという不安定な情勢となっている。

 

 

 

だがこれに対して真の意味で真っ向から対策を講じているのはケラルト1人。

 

 

 

レメディオスはその頭のお陰で、聖王国南部を叩くべし!!カルカ様に恭順しないとは意味が不明!

と唱え、もはや南部の保守派のことを非国民呼びする一歩手前まで来ている。

 

当人のカルカはその「弱き民に幸せを、誰も泣かない国を」という理想の下で動いている。

これは勿論、政治的判断をもって掲げた理想ではなくカルカ自身の性格に由来するものだ。

その理想が対亜人の防衛戦略に向けられた言葉であれば聖王国を1つにできた可能性がある、だがカルカは亜人だけではなく聖王国全体の問題として定義させていた。

悪徳貴族や密売人、違法娼館に奴隷商。

これだけ範囲が広ければその分ヘイトも受ける。

何せ隣国にはリ・エスティーゼ王国を根城にする超巨大犯罪者組織八本指が暗躍し王国内部に入り込んでいる。

ローブル聖王国も例外ではない。

ケラルトが主導する諜報機関によって南部や北部の一部の貴族、商会は既に八本指の傘下になっていることは調査済みだ。

 

本来であれば諜報機関と連携して暗殺紛いの事を行える鎮圧組織が欲しいところだ。

だがその行為はカルカの理想に反する。

カルカは平和主義者であり暴力には人一倍敏感なのだ。

彼女は確かに聖王女として、時には辛い判断を下すこともある。

だがこういった件だけはカルカには荷が重く、精神的負担が彼女を苦しめるのだ。

 

 

考えることができないレメディオス。

優柔不断で目を逸らすカルカ。

二人はある側面から見れば、その立場があるにも拘らず無責任な人間と捉えれるだろう。

 

 

その為ケラルトは今まで二人分の業を背負い、国内において悪評を浴びながらも国家存続が為に様々な問題に対処してきたのだ。

 

 

 

 

ケラルトはなんだかんだローブル聖王国内で1番苦労しているのである。

 

 

 

 

 

 

そんな中である。

 

 

 

 

 

朝の件。

 

 

 

 

 

脳筋騎士レメディオスが得体の知れない化物魔法詠唱者(マジックキャスター)と肌を重ねたのだ。

 

 

今まで身を削り、必死になって国内外の問題に取り組んできたケラルトは半狂乱状態。

 

 

報告してきたグスターボも思わずケラルトを取り押さえる事態になった。

 

「裏切り者ぉぉおおおお!!お姉様のぉ!裏切り者ぉおおお!!!」

 

 

 

そこから鐘が鳴るまでの1時間と少し。

 

ケラルトは一頻り怒り狂った後、十数年ぶりに泣きべそをかき、床の上で転げ回っていたという。

 

 

 

 

そこからケラルトが立ち直るまでは長かった。

もう幼児化したとしか思えないぐらい泣いているのだ。

今までストレスを溜め込んでいた分爆発しているのだろう。

 

グスターボはやってしまったと思った一方で、目の前でギャン泣きしているケラルトを見て冷静になっていた。

 

確かに自分は報告した。

レメディオスがモモンと寝たと。

 

しかし思い返せば不自然な点があった。

相手の女の声が団長の声とは違ったのだ。

確かに女性は男の上で別の声を作るというが…そんなのがあの団長に出来るとは思えない。

 

グスターボはさっきの焦りとは違う、冷や汗が出始める。

 

もしかしたら……自分の判断が間違っているのでは。

 

簡易ベッドは使われていない、同じ布団に入ったのは確実。

 

だが男女の卑しい声は聞こえたが女は団長と判断しかねる。

 

「どうしてぇっ、どうしてぇえええ!!」

 

グスターボは頭を悩ませる……。

 

「おねえぇさまぁああああ!!おねえさまぁああ!」

 

一向に結論が出ない。

 

結論云々よりも目の前の元淑女が結構煩いのだ。

 

グスターボは自らが招いた火種を消火できずにいた。

 

 

 

 

そんな時、いつもの様に勢いよく扉が開かれる。

 

バタンッ!!

 

「どうしたっ!!ケラルト!大丈夫か!?」

 

部屋に入ってくるなり妹を抱き締めるのは、問題のレメディオス。

 

「お姉さまがぁああ!!!お姉様がぁあ!」

 

ケラルトは目の前に当人の姉がいるにも拘らず訴えつづける。

 

「どうしたッ!!私がどうしたっ!?」

 

「モモンとえっちしたのぉおおおおおお!!」

 

凡そ成人女性とは思えないケラルトの嘆き。

 

流石のこれにはレメディオスも顔をしかめ……

 

「???……えっちとは何だ?」

 

頭に?を浮かべる。

 

「「……あ??」」

 

思いもよらぬレメディオスの発言に呆気を取られた2人は柄の悪い声を出してしまった。

 

「なんだ、よく分からないぞ。えっちとはなんだ。エッジ?刃か?……?それでは私とモモンと刃をしたのか?うーむ何を一体」

 

 

先程まで実の姉に嫉妬や憤怒、悲哀の感情が向けられていたがそれは全て失せた。

 

「……お、おねえさま?」

 

「なんだ?えっちがどうした、えっちなんぞ私は知らんぞ」

 

無知が故にワードを連呼して品のないレメディオス。

 

「なあモモン。お前は私とえっち?なんぞしていないよな?」

 

そう言って扉の方へ語りかけるレメディオス。

 

ケラルトとグスターボの二人はその方向に顔を向ける。

 

そこには漆黒の騎士見習いが立っている。

 

「……え、えーと…その…しっ、していませんが?」

 

レメディオスに爆弾を投げつけられた彼は、恥ずかしそうな声色でたどたどしく兜の上から頬をかいていた。

 

「「その態度はしてるでしょぉおおおおお!!」」

 

真実を知らない2人にとってモモンの返しは、事後で恥ずかしがる青年に見えたという。

 

 

 

まあ恥ずかしがっていたのは、モモンに経験がなく下ネタに慣れていないだけであったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちが本部だ、昨日会ったケラルトも向こうで働いているはずだ!どうだ?こうして我々は亜人共からこの地を守っているのだ!」

 

鐘が鳴り、モモンはレメディオスに拠点内を案内されていた。

 

「ええ、とても立派な場所ですね」

 

へえ……凄いなぁ。

本部って総務課みたいな所なのか?俺はてっきり作戦会議みたいなのをしてるだけだと思ってたんだけど。

意外と部署とかあるんだなぁ。

 

文字は読めないが、何となく雰囲気とレメディオスの説明で理解していくモモン。

 

一つ一つはそこまで興味をそそられないが、大部屋で行われている単純作業。それに彼は思わず目を細めた。

 

うわ、なんだあれ……羊皮紙?巻物(スクロール)

資料作成を思い出すなぁ…大変だろうに。

 

そこでは指令書や命令書、部隊行動などが書かれた羊皮紙や戦闘や治療、野営や救助等で使うであろう巻物(スクロール)を人力の魔法で複製(コピー)または作成していた。

 

途方もないよなぁアレ。

うわぁー、急に現実(リアル)に戻されたよ。

 

せっかく異世界でやっていくと決めたモモンに降り注ぐ実務。

世界は違えど人間社会である以上、やることは変わらないのだとモモンは実感した。

 

 

「あの、団長さんはこういう書類仕事とかやるんですか?」

 

「あれはやらん。面白くないからな、それに私よりもグスターボとイサンドロがやった方が効率的に進むだろう」

 

「なるほど……」

 

答えが分かっていた質問だがそれでもモモンは困惑する。

団長という立場であればするべきなのでは?と。

だが昨日だけで彼女の性格を理解した彼はレメディオスの言葉に対しては基本相槌と同意だけで対処した方が良いだろうと考えており、モモンは疑念があっても聞くことはやめた。

 

だが彼女も勘は鋭いし、空気を読むことも出来る。

 

納得してなさげなモモンの返答に彼女は少し落ち込み気味ながらも言葉を続ける。

 

「私もな、最初の頃は請け負っていたぞ??しかしなぁ私は全く理解できんし結果としてやることは押印?だったか?それだけになった。それなら(はな)からやる意味は無いだろう、仕事が作業になってしまっては本来の目的を見失う」

 

「そういうものなんでしょうか?」

 

「分からん!!今思ったことを言っただけだからな!!しかしケラルトは言っていたぞ?何事も適材適所だと、だからお姉様は剣を振ることにだけ集中して下さいと何度言われたか。その点私は言いつけを守っている!ちゃんと鍛錬だけをしているからな!」

 

うわ、ケラルトさんは上手く団長さんの手綱握ってるなぁ。

やっぱ姉妹なだけあって理解してるんだろう、いや団長さんが単純過ぎるのか?

 

「……団長なのに窓際に送られてないですか?」

 

「????窓際?私が鍛錬するのは室内ではなく外だぞ」

 

脳筋な団長に思いやられるモモン。

だが彼の中で彼女に対する印象は悪くなることはない。

 

こういう人なのだ。

頭が少し残念なだけで良い人、与えられたことは全力でやる。そして自分の信念を貫き通す。

自分にはなかった生き方である。

 

モモンはそんな彼女に呆れながらも尊敬していた。

 

 

 

 

 

 

一通り案内が終わり、後は訓練が始まる昼まで待つだけだとなっていた2人。

 

レメディオスは、

「外で少し日でも浴びるか?急に外で訓練して倒れてはいけないからな」

とモモンのことを思い、彼を連れて外に出ようとしていた。

 

そんな時、

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてぇええ!!

 

何処からか響き渡る知った声。

ケラルト・カストディオの、悲鳴ともとれる声である。

 

「モモン!!!こいっ!!」

 

妹の声を聞いたレメディオスは即座に走り出し、モモンも彼女の後をついていく。

 

神官団長執務室と書かれているだろう部屋の前に止まるとレメディオスは勢いよく扉を開けた。

普段からバタンッ!と力強く部屋に入る彼女。

それが今回は妹の事が心配なのかいつもより音が大きく感じる。

 

 

 

 

 

 

扉を開けた先では、昨日話した美しいお嬢様が号泣し、床に座り込んでいる。

 

 

え?これどういう状況???

なんで泣いてるの?……なにか声かけた方がいいよな?

あれだけ気品のある女性が泣いているなんて何かあったに違いない……。

 

モモンは困惑しつつも、扉の前に立つ。

 

レメディオスは泣いている妹に駆け寄ると、何があったのか確認し始める。

 

あまり聞いちゃいけないよな。

 

モモンは自然と気遣いからそちらに意識が行かないように壁を見ていた。

 

だがそんな彼も反応せざるを得ない言葉が部屋に響く。

 

 

「お姉さまがっ!」

 

「モモンとえっちしたのぉお!!」

 

 

 

 

 

 

はい??

 

 

え゛え゛え゛!?したの!?オレ!?いつの間に!?!?

 

記憶にないぞ!!!

 

どうしてこうなった!?

 

前触れのないレメモモまたはモモレメ事件にモモンは驚愕。

彼の中では動揺が急速に広がっていた。

 

「なあモモン。お前は私とえっち?なんぞしていないよな?」

 

そこに出されるとんでもねえパス。

 

モモンはなんと返したらいいのか悩みつつも、レメディオスと行為をする自分という妄想が過ぎり少し頬が赤くなってしまった。

そして一瞬でもそれを想像してましった自分がいっそう恥ずかしくなり彼は、

 

「……え、えーと…その…しっ、していませんが?」

 

たどたどしい声色で返してしまう。

これは本当に失敗だった。

 

それを聞いた目の前の神官と副団長から物凄い形相で、

 

「「その態度はしてるでしょぉおおおおお!!」」

 

めちゃくちゃ怒鳴られたのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動乱の朝はようやく終わりを迎える。

 

 

「それで……モモンは…していないのね?」

 

落ち着きを取り戻し、なんとかいつもの淑女を演じるケラルト。

 

レメディオスについては、ケラルトがモモンと確認したい事があると言い退出させた。

その際彼女は妹のことを心配していたがなんとかその気持ちを抑えてもらい退出させた。

 

 

 

ケラルトの問いにモモンは何度も顔を縦に振る。

 

してない!してないよなぁ!?俺!!?

どうしてこうなった!?

 

「グスターボ、説明を」

 

そう指示した彼女の目元はまだ真っ赤だ。

化粧は崩れて涙の跡が残っている。

 

「はい。実は……」

 

グスターボは今朝あったことを淡々と説明する。

それを聞いたモモンはどこか腑に落ちたのか一瞬納得するも、その後はオドオドとどう説明すればいいか悩み、申し訳なさそうにケラルトヘ目で助けを乞う。

 

 

ケラルトはそれを見て判断を下す。

「グスターボ、貴方もお願い」

彼女は扉に目をやり、グスターボは察する。

「……分かりました」

彼はやらかしてしまったという責任感からか申し訳なさそうに退室した。

 

 

 

 

「これで良いでしょう……話してくれるかしら?」

 

 

モモンは心当たりのある事象。

ぶくぶく茶釜の腕時計についてケラルトに打ち明ける、

 

どうやらこの世界に時計はあっても腕時計はないようでまずそこがケラルトには引っかかっていた。

その後は音声の話、茶釜(匿名)の職業とこの世界の住人である彼女には理解し難い内容が続く。

 

彼女は終始頭を抱えていたが、モモンが説明を終えると直ぐさまある確認をとってきた。

 

 

「……その時計、見せてもらっても?」

 

 

「この腕時計?は高い技術が必要ね、周辺国で作れる技術者が何人いるかしら?……それに声を吹き込む?貴方には昨日に続き本当に驚かされるわ」

 

彼女は呆れたように脱力する。

そこに昨日まであった上品なケラルト像はない。

 

「貴方も勘づいていると思うけれど。我が国とその周辺は、貴方が居たであろう地域よりも技術的に劣っているわ」

 

「…そうなんですね」

 

「あら?何か引っかかった?」

 

「いえ特には……」

 

モモンは今めちゃくちゃ緊張しテンパっていた。

 

なんとか弁明する為に話したけどこれってヤバくないか!?

それに何!?腕時計ないの!?ここ!?

当たり前のモノ過ぎて本当に計算外だったぞ!

 

アンデッドを強制的に引退?させられた今のモモンには感情抑制がない。

 

お陰で不測の事態等が起こると彼の性格がしっかりと出るのだ。

 

もし仮にアンデッドであり感情が安定していればそれ相応に適切な判断で結果を良い方向に進めたであろう。

 

ユグドラシル時代にぷにっ萌えから念押しされ叩き込まれていた、相手に虚偽の情報を掴ませておく。

それすらも忘れていたのだ。

 

ここにいるのはアインズ・ウール・ゴウンのモモンガをやめはじめている鈴木悟。

 

感情抑制が無い為、彼を唯一落ち着かせているのは脳内のギルメン達だが逆に言えばもうそこでしかギルメンの出番はなくなっている。

 

あの人であればこうするだろう。

だから自分もこうする。

 

そういった思考が消えつつあるのだ。

 

それが幸か不幸かはまだ分からない。

 

 

 

無言になり、まるで警察に取り調べを受けて黙秘している容疑者となったモモン。

 

 

「そう硬くならないで、貴方が訳アリなのは察しているわ」

 

ここで言う彼女にとっての訳アリとは何か?モモンは考える。

 

普通であれば自分は記憶喪失だと話が通っているのだからその件だ。

 

しかし相手はケラルト・カストディオ。

こんな簡単な内容ではないはずだ。

レメディオスからは話の中で何回も妹が優秀であることは聞かされている為、警戒はしていた。

 

「これからは記憶喪失だなんて適当に言うのやめなさいな、お姉様が相手だったから良かったけれど…普通は怪しさ満点よ?」

 

「……」

 

全て見抜かれている、そう錯覚するほどケラルトの言葉は重く感じ、思わず体が震えた。

彼女のいうことは至極真っ当なのだが、だからこそ彼に突き刺さった。

 

もう少し上手くやれれば。

ちゃんと言い訳を考えるのならナザリックという国がありそこからやってきたという話を作り出し、そこを起点に話を合わせていけばよかった。

 

鈴木悟は急な事態に弱いのだ、事前に準備を万全にしていれば彼は非常に強い。

だからこそケラルトが言う内容に心が揺れ動く。

鈴木悟は彼女から学ぶ、どんな状況でももう少し余裕を持つべきだろうと。

先程まで泣き崩れていた彼女は今目の前で冷静に物事を見据えている。

これが自身と彼女の違いであり学ぶべき点なのだろう。

 

 

「別に全てを話せとは強要しません、私も貴方の立場だったら黙秘か気付いた相手を殺します」

 

この女性!凄く腹黒くて怖い!!

 

モモンガは彼女の言葉に先程とは違う意味で震える。

 

殺すっていったか!?ええ!?物騒じゃないかそんなの!?

確かに俺らもある程度そういうことはしてきたよ!?

でもそれはゲームの中だからで…それをこんな現実で殺すだなんて!

 

「今回の件は許します、ですが今後はそういった問題事は極力起きないようお願いします」

 

ケラルトは普段の綺麗な声と売って代わり低音ボイスでモモンに釘を刺す。

 

「わ、分かりました。」

 

ガチトーンだ……美人のガチトーンだ。

怖すぎる……。

そういや茶釜さんもそういう感じだったなぁ……いや待てよ。

そうだよ!俺未だに時計の止め方分からないんだが!?

さっきはいつの間にか勝手に止まってたけどさ!

茶釜さん!!どうすればいいんですか!?

なんて機能つけてるんですか!?

俺!あとがないんですよ!!

あとるし★ふぁーさんは引退後まで事件を作り出すのやめてください!!

転移してまでこんな目に遭うなんて想像してませんでしたよ!

 

 

 

私に釘を刺されたモモンは目の前で必死に腕時計を弄り回している。

 

大丈夫なの?それって人に見られて良いものなの?

 

彼女は困惑していたが、もはやモモンだから良いだろうと思い始めていた。

 

これは奇しくもモモンガが問題児るし★ふぁーに呆れて声も出ない時と同じ感情であった。

 

 

 

疲れきったケラルトは腕時計を弄るモモンを見てふと思う。

 

あの腕時計(アイテム)よく考えたら不自然ね。

 

モモンはただのプレゼントと思っている。

 

でも、普通女の子が自分のそんな声を吹き込んだ腕時計(アイテム)を渡すわけないわよね

 

たとえそういった事を職業にしていたとしても、大衆に人気なら尚のこと1人に特別だなんてしないし。

 

渡した本人は痴女?それともアピールが下手なだけ?

 

モモンの人間性から見るに後者かしら?

 

貴方はその女性からその腕時計(アイテム)を渡されるほど好かれていた。

 

「なんで、恋をしたい私が他人の色恋の事を考えてるのよ」

 

ケラルトは憂鬱になった。

 

私だって…………お婿さん……欲しいわよ。

 

 

モモンは一頻り腕時計を弄くり回すも解決しなかったのか一度諦める。

彼は上官となったレメディオスも待たせているので切り上げたのだろう。

 

なんとかその設定?を解除してもらわないとこちらも規律的に困るのだけど。

 

ケラルトは絶対解除しろという念をモモンに飛ばす。

 

 

しばらくして、化粧直しの為に自室に戻る。

 

化粧道具を取り出して鏡面台に顔を向けた。

 

自分の顔を鏡で見る。

 

その行為が自分を見つめ直すという心理的影響を彼女に与える。

 

ケラルトにとって自分を見つめ直すとは。

 

 

 

 

「あーーー、彼氏って何処で生まれるの?カッツェ平野?」

 

未だに顔に涙の跡が残っているケラルトは一人で嘆く。

 

怨念と墓地から生まれるアンデッドみたく、私の感情から生まれて来ないかしら……。

 

 

 

はあ……もうアンデッドでもいいのかも。

 

 

 

 

ここ1日と数時間でもう……ストレス過多で死にそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケラルトは一体どうしたんだ?」

 

「……いえ、私の失態です。申し訳ありません」

 

 

「モモン、お前が意図してやったことではないのだろう。それに今回はグスターボの勘違い?もある。気に病むものでは無いぞ」

 

「ありがとうございます」

 

先程のケラルトとの会話で一気に気分が優れなくなっていたモモンだが、レメディオスの態度に少しだけ元気が湧きでた。

 

しかしそれは一瞬のことでまたもモモンは感情のジェットコースターに乗せられる。

 

「で、えっちとは何だ?私もそれぐらいは知りたいのだが」

 

「……団長さん」

 

「グスターボからは男女が肌を重ねる事と説明を受けたがイマイチ分からん。握手とは違うのか?肌を重ねているぞ??」

 

「…………はぁ」

 

まあ可愛げもあるか。

 

そう思い、モモンは考えるのをやめた。

 

 

「ペシュリアンと仲良くやるんだぞ!」

 

「はい。団長さんは何かあるんですか?」

 

「私は巡回警備があるぞ、あのお前と出会った時の任務がそれだったな」

 

「成程」

 

「もしかするとお前見たいなやつがまた居るかもしれないからな!巡回を怠ってはならん」

 

俺みたいなやつ……

 

いやないよな。

 

サービス終了時にいたのは俺だけだ。

 

他に誰か来てることなんて……。

 

 

 

いやそうだ、俺はこの世界でやっていくんだ。

もう過去に囚われるのはやめよう。

 

 

 

俺は何度決心するんだろ。

 

 

 

これは決心と呼ぶのだろうか……。

 

 

 

 

はぁ……

 

 

 

 

 

俺は……捨てきれないなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

姉はモモンの訓練までの時間、拠点内を案内している。

 

私は再度執務室に戻り今後の対策を練る。

 

ケラルトは昨日に続き今日も朝から感情のオンパレードで精神は疲れきっているし、真実を知っても未だに姉とモモンの件を引きずっている。

 

だがしかし彼女はやらねばならない。

 

このローブル聖王国において、モモンの管理を問題なく遂行できる可能性があるのは彼女しかいないのだ。

 

故にどれだけ辛い一日を過ごそうが、切り替えねばならないのだ。

 

 

 

モモンは第七位階を行使できる魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。

身につけているローブに指輪、時計は国宝以上。

そして彼は今、漆黒の騎士として活動する為に、魔法詠唱者(マジックキャスター)としての力を戦士(ウォリアー)に変換している。

 

だが魔法を一切使えないという雰囲気ではなかった。

これはケラルトの予想でしかないが、モモンは魔法詠唱者(マジックキャスター)の状態?程の魔法を扱えずともある程度……彼の基準で言えば第三位階から第五位階。

それぐらいは行使出来るのでは?そう踏んでいる。

 

となれば……。

 

 

 

今、我々が管理下に入れているのは……王国最強と名高いガゼフ、帝国の逸脱者フールーダ。この2人を併せ持った能力を持つ最強の戦士なのではないか?

 

こうなってしまっては、馬鹿な王国や野心ある帝国。

人類守護に煩い法国、滅亡寸前の竜王国が黙っていないだろう。

モモンが何かを起こせば……彼の情報を集める為に諜報機関や裏社会が動く。

王国は貴族派閥も王派閥も勧誘しに来る、帝国は皇帝が直々に動く。

法国は特殊部隊を動員、竜王国は力こそないもののモモンが彼の国に訪れようものなら持てるもの全てを持って封じ込めにかかるだろう。

竜王国はまだいい、行かなければいい。

 

しかしそれ以外の国は……矛先が聖王国政府に向くのだ。

モモンという圧倒的強者、利用しがいのある英雄に周辺諸国は群がる。

聖王国に難癖を付ける大使が送られるのは目に見えている。

法国からは密使が訪れ、特殊部隊をもって聖王国の隅から隅まで調べあげる。

八本指やズーラーノーン、当然彼らも動くだろう。

 

 

 

騎士団に入ってもらって悪いが……モモンは功績をあげては駄目なのだ。

 

 

彼がいれば亜人からの侵攻は止められるだろう。

 

普通であれば聖王国に10数年は平和が訪れるかもしれない。

 

 

 

しかし、そんなことをされては……ローブル聖王国は周辺諸国から骨抜きにされてしまう。

 

 

ケラルトは今まで政策や軍略を立案する度に、メリットとデメリット、リスクを天秤にかけてきた。

 

 

だが今回は……リスクしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

ケラルトは化粧直しの後、

その美しい容姿をもって天を仰ぎ、

輝く太陽に祈りを捧げる。

 

 

「…四大神様ッ……どうか、どうか、

 

モモンが運動音痴で剣の才能がありませんように……」

 

 

 

彼女は人として終わっているまさかの願いを神様(プレイヤー)に頼んだ。

 

 

 

 

四大神(プレイヤー達)「AOGのギルド長は無理!!勘弁してくれ!」

 

輝いてたハズの太陽は雲に隠れた。




読んでくださりありがとうございます。
今回は結構自分の素人文章が露呈してしまったと自覚しています……。
かなり何度も構成を練り直したのですが、自分の思うよな面白いギャグと今後の展開への繋ぎができず不完全燃焼気味です。その為後で再度再構築して編集することがあるかもしれません。
それでも面白いと感じて頂けたら本当に幸いです。

ご感想や評価など頂けると一層励みになりますので宜しくお願いします。

なお、今回の作品を投稿していくにあたってX(旧Twitter)アカウントのほうを作らせて頂きました。
今後はそちらの方で進捗の方を報告させていただきます。
DMも後ほど解放しますので、宜しければご感想や、追加して欲しいエピソードなどあればそちらにお願い致します。
@fujirauHameln
https://x.com/fujirauHameln
誤字脱字については修正のほど毎度の事ながらありがとうございます。
これについては感謝してもしきれません。
本当にありがとうございます。
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