スズキサトルの日常   作:ふじら

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第7話 亜人、襲来。

 

「モモン!支度はできたか!?」

 

「もう出来てますよ、自分は特に用意するものとかないのでー」

 

 

部屋で身支度を終えたレメディオスが俺に向き直る。

なんと今日は王都へ向けての出立の日。

いやぁ、短剣?だっけ?儀礼で王女様からそういうの貰うのって本当に騎士になったんだって実感が湧くなぁ。

 

ちなみに俺は緊張し過ぎて寝付けなかった。

団長さんはいつものことらしくすぐ寝てたけどな。

そういえば団長さん、グガーとか寝息立ててそうだけど意外と静かなんだよな。

ここ数日一緒に寝てて初めて気づいたよ。

 

 

 

ウルベルト「女性と同衾生活を続けるのはもう慣れたんですか?モモンガさん」

 

ペロロン「まさか本当に卒業したんじゃ……裏切り者ですね」

 

たっち「意外と最初だけですよ、緊張するのは」

 

「「黙れリア充」」

 

 

 

慣れたっていうか……なんか安心するんですよね。

自分はあまり親と寝ることができなかったのでその分あの人に求めてる節があるんじゃないかって思います。

 

ペロロン「脳筋騎士の母性……良いですね」

 

茶釜「おい愚弟、結構シリアスな場面だったぞ??」

 

るし★ふぁー「えっちしたら実質近親○姦だねえ!!どんな感情なんだろう!!」

 

やまいこ「ド直球で発言したねぇ、ちょっと教育が必要かな??…かな?」ガシッ

 

るし★ふぁー「え、ちょっ…」

 

 

 

 

 

「む、そうか。確かにお前には荷物がないな」

 

彼の用意するもの、荷物がないという旨の発言に対して頭を少し悩ませるレメディオス、彼女はある提案をした。

 

「王都に戻ったら少し買い物でもするか?」

 

彼女の気遣いから来るこの提案、それにモモンは喜んだ。

 

「え!いいんですか?」

 

買い物か!この世界独自の道具(アイテム)巻物(スクロール)が欲しいな……それに食材を買って料理とかも良いな。

衣服は……鎧を脱いだ時用に何か買っておくか。今はそれっぽい服を作成(クリエイト)して使ってるけど、私用で外に出る時にはこの国独自の衣服の方がいいだろうし。

 

モモンはあれやこれや、買いたい物を考えていくがある事に気づく。

 

あ、この世界のお金って……俺ないじゃん。

ユグドラシルの金貨って使えるのかな?

うーん……でもなぁ不必要に今の持ち物を消費したら今後どうなるか分かんないしな。

それに騎士になったんだし給料貰えるはず……それで買おう、変に給料以上に爆買いしてたら税金の取り立てが来そうだしな。

この世界での税務署は……優しいのかな?優しいといいなぁ。

 

 

「そういえば今手持ちがないんですけど…」

 

モモンガは困り気味に彼女に尋ねる。

 

「ああ、そのことか。入団の儀式を終えればカルカ様から入団祝金を頂ける!それで王都を満喫するといい。給料日は月末にあるぞ」

 

レメディオスのいう入団祝金とはその名の通り聖王国騎士団への入団時に聖王の銘で貰える金だ。

 

これは基本的に王家の貯蓄から切り崩している。尚、聖王女が即位する前は入団祝金は存在せず鎧や剣までもが実費負担であった。

 

しかし現聖王女は即位すると同時にこの処遇を改善するよう側近のケラルトに伝え、それから税金から賄われるのも印象が悪いということで王家の貯蓄から放出されることとなっている。

 

元はと言えばこれも血税なのだが、建国当初から数十年前のモノなので今を生きる殆どの国民からすればあまり実感がなく、王家が貯めていたことを問題視する者は基本的にいない。

 

尚、激しく変動する通貨レートからくる財政問題があろうとも軍事を最優先にした結果、聖王国南部や有力貴族から批判を浴びた。

 

だがそんな複雑なことはレメディオスは勿論理解していない。

そしてそんな彼女からその祝金について話されたモモンも勿論深堀はしない。

 

他の並行世界や確率時空では玉座に座っていたであろう御方も今は一般人なのだ。

政策の参考にする為に「ほう?祝金?基本的にいくら貰えるのだね、それは?」などと聞く考えはない。

 

「おお入団祝金ですか手厚いですね!あと王都には何があるんですか?魔法関係の道具(アイテム)とかあります?」

 

モモンは取り敢えず少し待てば金が貰えることに喜び、自身が今の所1番興味のある分野について尋ねる。

 

それを聞いたレメディオスは右頬に人差し指を当てると首をかしげて左上あたりを見つめる。

ケラルトとは何度か魔法について話したこともあるし、小さい頃に彼女がよく行きたがっていた店の場所も覚えている。

 

だがよく分からない。

 

位階魔法がどうだとか巻物(スクロール)がうんぬんなど難しさを少しでも感じる要素は彼女の脳内で勝手に淘汰されていくのだ。

 

その為レメディオスは仕方なしと判断し、取り敢えずの判断をする。

 

「魔法か、それなら後でケラルトに聞いておこう。私も思いつく場所はあるのだが…どれがどうだとか分からないからな」

 

彼女は少し申し訳なさそうに言う、その雰囲気を感じたモモンも少しバツが悪そうにする。

 

「すいません、お手数お掛けします」

 

「構わん構わん」

 

彼女は右手をヒラヒラさせてこんな事に感謝するのは過分だと言わんばかりに返した。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばケラルトさんも王都に行かれるんですか?」

 

馬車のもとへ向かう道中彼はふと質問する。

 

騎士団長が式に並ぶのなら神官団長もするよな?

ぷにっと萌えさんが軍隊だと参列者は部隊長クラスが占めてるっていってたし。

 

「ああ。入団式の会場準備の総指揮はケラルトがやるからな、もう二時間程まえに出たはずだ」

 

二時間前……え!?早!?

いや俺も前の世界では会社を12時過ぎに出て4時出勤とかあったけど!

でもあの人ここ数日間で知ったけどあちこちに顔を出してて到底休憩があると思えないぞ!?

それに!たまにあの人の話が耳に入ってくるけど寝てる時間3時らしいし!このまま行けば過労死するんじゃ!?

 

「ええ!す、すごいブラック労働……前線で作戦立てて、負傷者を回復して、死者が出れば家族の元にいって、拠点では事務仕事して、それで王都の職務の為に朝五時に……」

 

「ブラック?それは分からんが確かにケラルトはよく働いてるな。いつも夜遅くまで作業をしている、私は詳しくないが肌に悪いとか何とか」

 

彼女はケラルトのルーティンを真似してか頬をペチペチしている。

たぶん化粧水とか化粧の下地?とかだろう。

 

ぶくぶく茶釜さんとやまいこさんが結構そういう話をしてたからな。大気にある汚染物質の悪影響をカットするクリームの新作が出たとか、天然水が肌に効くとか。

 

でも餡ころもっちもちさんはしてなかったなぁ、そういうの。なんかあるのかな?こうも女性が肌年齢?だっけ?そういうの気にしてる中で逆に関心がなさそうなのは不思議だし。

 

「肌の悪さより自身の体調を気にした方が……早死しちゃいます」

 

モモンは心配そうにレメディオスに目で訴える。

なんせ自身も過労死二歩手前までいっていたし、ヘロヘロさんは文字通りへろへろになり健康診断が一周まわってグリーンになってしまうぐらいまでいったのだ。

一見健康そうでも実はぽっくり逝ってしまう、そんな可能性は捨てきれない。

モモンはなんとも言えない気持ちになる。

言い方は悪いがヘロヘロを反面教師に、ケラルトには早めにそう言ったブラック労働から解放されて欲しいのだ。

 

「それは私も言ったことがあるのだがな。自分の命より肌の方が大切だと返されたぞ」

 

ええ?

 

多少は理解してるつもりだったが、正直そこまでとは思っていなかった。

 

自分の命<<<<<<肌の命

 

これは男にはあまり理解できない価値観だ。

 

「ケラルトさん…本当に女の子だ……」

 

「なにを、ケラルトが男に見えるか?」

 

「そういうことじゃないです」

 

 

 

 

 

二人は支度を終えて外に出る。

するとそこには豪華ながら軍隊らしさを感じる銀の馬車が用意されていた。

 

「これが馬車かぁ、凄いなぁ!初めてだ」

 

モモンは初めて見る馬車に興奮を覚える。

彼の中で馬車というものは御伽噺や映画、ドラマ、小説でしか見聞きすることがない代物だ。

 

こーういうの餡ころもっちもちさんが好きそうだよなぁ、あの人は恋愛小説めちゃくちゃ読んでたからな。

タブラさんの神話系の本が乱立していた棚がまるまる恋愛ノベルになったこともあったっけ。

 

昨日までタブラさんが使っていた棚が恋愛本一色になって、タブラさんが乙女になったのかと皆で笑ったなぁ。

 

ウルベルトさんはタブラさんが同性愛者だとか噂して、横ではるし★ふぁーさんが意外と熱心に恋愛ノベル読んでて、茶釜さんはこれ懐かしー!とかいって。

それから…

 

 

ああ、馬車の話だった。思わずまた自分の世界に入っちゃったよ。

 

興奮が覚め、自分の世界から開放されると俺はしまったと後ろに目をやる。

 

そこでは(ああ、またか)と言わんばかりに腕組をして俺を待っている団長さんがいた。

 

「す、すいません!」

 

時間をとらせてしまったことに申し訳なくなり謝罪する。

 

「ん?いいぞ、時間には余裕もあるからな。それとモモンは馬車にも乗ったことがないのか?」

 

「お気遣いありがとうございます。……ええと無いですね。馬車は見るのも初めてで」

 

「ほう、初めて見た馬車が聖王国の馬車か。運がいいな、その経験大切にするといい!」

 

レメディオスは馬車を初めて見るというモモンに疑念があったが、それよりも初見の馬車が誇り高きローブル聖王国騎士団の馬車ということに喜びを感じていた。

彼女にとっては聖王国の全てが宝物であり、愛しいものだからだ。

分かりやすく言えば日本アニメを見た海外の反応を見る日本人の感情だろう。

 

そんな彼女にとっての宝物を見て興奮しているモモンはある意味愛玩動物的な立ち位置になり始めている。

 

道を歩くだけで、彼は感動していく。

至って普通の景色、日常。

モモンは誰よりもローブル聖王国を細部まで見ており、その行為は愛国者のレメディオスにとってとても愛おしいものだ。

彼が急に立ち止まり考え事を始めても気にしない。

その分この国を楽しんで、何かを感じてくれていると確信しているからだ。

 

 

「しかし向こうにも余裕を持って着かねばな、ケラルトに何を言われるか分からん。さっさと行くとしよう!」

 

レメディオスは先に馬車の中に入り、下にいるモモンに手を伸ばす。

まるで王子様とお姫様のような光景、モモンは少し沈黙したあと恥ずかしそうにレメディオスの手をとる。

 

「「……」」

 

そして馬車に足をかけようとしたその瞬間、切羽詰まった声で2人を止める人物が現れた。

 

「団長ッ!!!」

 

思わず2人は繋がれた手を離した。

 

グスターボ副団長だ。

 

血相を変えた彼の顔からは内容はわからなくとも只事ではない事態が起こっていることが即座に理解できた。

モモンは彼の様子に何が起きているか疑問が浮かんでいたが、レメディオスは違う。

 

彼がここまで慌てて来るということは……。

 

「亜人がっ!亜人が攻めてきましたッ!」

 

彼女は察していた。

 

 

それ故に端的に状況を聞く。

 

「数は?戦線は?」

 

「数千ッッ!!」

 

「なに?」

 

「既に第二軍が交戦中!イサンドロ副団長と巡回警備班に当てられていたペシュリアン兵士長が前線にでています!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 伝言(メッセージ)を利用した軍事連絡網によって前線の異常がケラルトに伝えられた。

 

「なにごと?」

 

彼女は慌てた神官団員の話を聞く。

すると思いもよらぬ内容が団員の口から放たれた。

 

数千を超える亜人が前線へ押し寄せたという内容だ。

目測では四千程が確認されている。

これが彼女を悩ませる。

 

今までも乱発的に亜人の大侵攻は見られた。

しかしあってもそれは二千超、四千など途方もない数は相手をしたことがない。

 

彼ら亜人は基本的に仲違いをしている、確かに近年は協力関係があったのか連合を組んでくることもあったがそれにしてもである。

 

平時は、王都を守護する第一軍を除いて第二軍から第四軍が上半期下半期に分けて交替で配置されている。

一個軍あたり騎士団が約100名、神官団が約5名。壁上にはバリスタとカタパルト。

 

ローブル聖王国が平時から前線に用意出来る最大の戦力。

 

迫る亜人の数を最大約二千と想定して配置されている内容だ。

 

想定と言っても最低限も最低限。

様々な政治的要因や国家の地盤形成もあり、騎士団が総数約500名であるという問題点の下にこの防衛体制が築かれている。

 

数的不利をカバーするため個の精鋭頼りで、後は防衛兵器で数を削るのが基本戦術。

 

 

しかし今回は想定よりも数が圧倒的に多く、どれだけ善戦しても数で押されるだろう。

人間同士での戦争であれば想定の2倍の数はまだ覆せるかもしれない、相手は亜人だ。

個としての力量差が違いすぎる。

 

ケラルトは判断を下す。

 

「……今から戻っても時間がないわね。なら…」

 

彼女は周囲の神官達に医療品や食糧、宿舎の手筈を整えるよう指示した。

 

「事態に備えて、先に敗走先を用意しておくしかない……」

 

前線が崩壊し、敗走した後に立て直せるだけの土台、地盤を固めておくこと。

 

今回は馬車の護衛に僅かながら騎士団の団員もおり、彼らには簡易的な防衛陣地を構築するよう手配している。

更には一言一句丁寧な文言で伝言( メッセージ)をあらゆる方面、部署へ飛ばしていく。

 

 

最中、彼女は考える。

 

「平時における神官の定員は配置させている、でも今回は平時と違う予想外の大侵攻。一応は予備兵力として近隣の村に混成部隊を設けているけれど……これは」

 

亜人の侵攻に対処するのは何も一個軍だけでない。

ケラルトは有事に備え周辺に予備兵力の部隊を配置している。

 

普段は農耕をさせており屯田兵のような役割を担っているが、中身は優秀な騎士達だ。

一部には定年を迎えて騎士団を退職しても、予備騎士として再入団している老練の者達もいる。

 

一つの村にいるのは騎士約10名、神官約1名。充足が足りていない箇所も考慮すれば……大した数にはならない。

一応は村内に徴兵制で短期間軍務に務めた者達もいる、されど村には武器がない。

 

彼らを軍として起こすのは無理だろう。

 

前線周辺には4つの村が存在し、全てを合わせればある程度はやり合える数になるが今から集めて強襲を仕掛けたところで戦いの結果は目に見えている。

 

ため息が出てしまう。

 

私……こんなにため息ばかりして…幸せもないわね。

 

波のように慌ただしく動く周囲の神官や騎士達。

そんな中彼女は空を見上げる。

 

まだ朝7時。

太陽が上って間もない。

少し耳をすませば小鳥の鳴き声も聞こえる。

 

「…お姉様。そしてモモン」

 

彼女の頭を過ぎるのは、実の姉と訳ありの男。

 

前者は家族への心配、後者は

 

「もしかすると…法国の目につくかもしれないわね」

 

政局的な心配。

 

2人は自身と同じく王都へ向けて出立する予定であったが、今は緊急事態。

恐らく戦場へ向かうだろう。

 

お姉様はその人間性から……敗走するぐらいなら最期まで戦い、死ぬ。

それが私の姉、レメディオスという人。

 

数は四千。亜人の明確な種族は未だ伝わってきていないが、人間より弱い亜人などまあ居ない。

であれば……負け戦となり必ず死ぬだろう。

 

ケラルトは心配でならなかった。

脳筋でいつも周りを困らせている姉が。

逞しく凛々しく、絶対的な脅威に対していの一番に立ち向かう姉が。

 

少し……涙ぐんでしまう。

 

 

 

 

だがそんな涙もすぐ消え入るような問題があってしまう。

 

それは、

 

あの男だ。

 

モモンは遠い国の人間であり、魔法詠唱者(マジックキャスター)

記憶喪失という方便でその力を隠している実力者だ。

初日に見せられた魔法や道具(アイテム)は尋常ではない。

それでいて戦士としても一級品。

 

剣の腕は周辺諸国最強である姉が見込む程だ。

 

 

絶望的な状況だが、もしかすると……モモンが全てを終わらす可能性がある。

 

亜人の大侵攻を、未知の魔法、未知の道具( アイテム)で終わらせる。

 

 

そんな未来が見えている。

 

姉を心配し悲観する一方でモモンという存在が希望的観測、楽観視を生み出す。

 

 

「ダメよ……合理的に…動かなきゃ」

 

彼女は胸に手を当て、太陽を見つめ……

 

「どうか…せめて…穏便に…どうか」

 

数十キロ先にいるモモンにそう願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レメディオスに報告が届く三十分程前

 

「亜人だっ!!!」

 

地平線を埋め尽くす亜人の大軍。

見張りの騎士が報告すると直ぐさま周囲へと伝わる。

 

「数は…四千はいるぞ!!」

 

「敵襲ッ!総員配置につけぇえ!」

 

鳴り響く鐘の音、甲冑の音。

 

前線の砦にいる騎士達は有事に対して速やかに行動を起こしていた。

 

 

 

「軍団長ッ!」

 

城塞の中央、司令部のような役割を担う部屋に現れたのは軍団長。

ローブル聖王国の前線拠点の指揮官である男だ。

 

「敵の種族と数は?」

 

洞下人(ケイブン)が三千!馬人(ホールナー)が一千であります!」

 

「分かった、して配置はよいか?」

 

「はっ!総員配置完了!各員万全であります!」

 

「ヨシ。では行くとしよう」

 

 

 

 

 

軍団長は地平線を埋め尽くす亜人達に魔法道具(マジックアイテム)拡声器(スピーカー)を用いて行動を起こす。

 

 

 

「警告するッ!これより先は我がローブル聖王国の領土である!早急に立ち去れぃ!」

 

「キハハハ」

 

「イイネ、ウマソウ」

 

「ナニカイッテル」

 

「ワカラナイ、ワカラナイ」

 

「タベモノォ」

 

されど亜人達には理解されない。

下等な人間種が何を言おうとそれは遺言、彼らにとっては聞くだけ無駄なのだ。

 

洞下人(ケイブン)の一体が笑い始めると、次々と波及し亜人達の声が戦場となるこの場所一帯を支配する。

 

「「「ギャハハ」」」

 

そしてその光景を壁上から睨んでいるのは2人の男。

 

「……これは対処が難しいな。パベル、予定通りお前の射撃が開戦の狼煙だ」

 

「分かった。ペシュリアン、お前は中央か?」

 

「ああ。殿を務めるのは俺しかいないだろう」

 

「そう…だな。気をつけろよ」

 

「ああ。お前もな」

 

そういうとペシュリアンはパベルのもとを離れる。

 

 

 

 

「オルランドもいてくれればまだ…あったのだがな」

 

現実は苦しいもので、この戦い。

どう足掻いても勝てないだろう。

もし九色の1人であるオルランド、彼がいれば僅かながら希望の光が見えたがそれは願望だ。

 

「だが……易々と負けてはいかん。かならず打ち破る」

 

非常な現実を前にパベルは心の底から諦めてなどいない、誰よりも良い方向へとを繋げようとしている。

 

 

「ネイア…」

 

ここで完全な敗北をしてしまえば何用にも変え難い最愛の娘、ネイアの未来が危ぶまれる。

娘の未来は彼の闘争心を掻き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローブル聖王国側の配置が完了したところで、亜人は動き出した。

洞下人(ケイブン)が敵中央と右翼、馬人(ホールナー)が敵左翼だ。

 

そして作戦通りの位置に前列が入ったその時、

 

「パベルッ!」

 

軍団長の合図がパベルに届く。

 

 

「っ!」

 

明光(めいこう)射撃ッ!」

 

「カタパルトッ!投石はじめぃッ!」

 

「バリスタ射撃開始っ!」

 

放たれた数多の石と矢が亜人達を襲う。

まさに人類の叡智の結晶と呼べる兵器群だ。

そして中には九色が1人、黒のパベルによる武技も交ざっている。

パベルの明光(めいこう)射撃は百本の矢に相当する擬似矢を一本の矢で生み出すことができる。

その威力は絶大であり、一本でも当たれば並の亜人は死に至る。耐えたとしても致命傷が殆どだ。

 

パベルの攻撃で瀕死になった亜人軍に投石とバリスタの雨で留めを刺す。逆もまた然り。

まさにこの国において完成された戦術であった。

 

しかし今回は状況が違う。

亜人の侵攻は合っても二千程。

今回は四千を超えるのだ。

いつもの様にはいかない。

 

カタパルトとバリスタ、弓矢をどれだけ放とうと数は一向に減らない。

投石の合間合間を亜人が抜けて、ついには城壁を爪を用いて登ってくる。

 

「迎撃せよッ!」

 

イサンドロ副団長の号令と共に騎士団が城壁の前に出る。

 

中央はペシュリアンが指揮を取り、左翼側にイサンドロがついている。

左翼側は森林が近く、伏兵の恐れがあるため柔軟な対応の取れるイサンドロが適任との軍団長の判断だ。

 

聖騎士団は敵亜人軍と衝突する。

剣が敵を貫き、味方の喉を牙が潰す。

当然ながら押され気味である聖王国軍。

 

その中でペシュリアンは命令を飛ばす。

洞下人(ケイブン)を抑えろ!!馬人(ホールナー)には2組でかかれ!!」

 

力量差を考えた判断だがあまりにも無謀な命令。

 

「数が多すぎる!持ち堪えられない!」

 

「援軍が来たとしてもこれは無理だ!」

 

こちらに数的有利があるのならまだしも圧倒的な戦力差なのだ。

騎士達は奮戦するも士気は確実に低下していく。

 

「戦列を乱すな!一歩の後退も許すな!」

 

「敵を確実に仕留めろ!!我々の勝利は近いぞ!!」

 

激を飛ばす各部隊長らしき声。

 

士気が完全に低下し、敗走間近の状況。

そんな中、騎士達は僅かながら足音と地響きを感じた。

巨大な体を持つ生物が確実に近づいてくる恐怖。

その存在がいることを全騎士が体で理解した。

 

来るのはどっちからだ?……皆が息を呑む。

 

野伏(レンジャー)のパベルが声を挙げる。

「左翼だ!!森林内!!」

 

グォオオオアア!!

 

巨大な鬼達と、大量の洞下人( ケイブン)の群れだ。

 

何人かはかの鬼を知っていた。

近年はその姿を見せていなかったがかつては聖王国軍に猛威を奮っていたという亜人。

 

「あれはっ…水精霊大鬼(ヴァ・ウン)!!」

 

「化け物だッ…!」

 

歴の浅い新兵達は次々と敗走を始めた。

城壁から下りて予備の馬に乗る者が現れる。

これでは完全な敗走だ。

心のままに任せて敗走しては後ろを突かれて全滅してしまう。

 

そんな中1人の男が足を動かした。

周りと同じくした敗走ではない、前進だ。

 

「イサンドロッ!?」

 

彼は城壁から飛び降りると着地、少し体勢を崩すもそんなこと知ったことかと言わんばかりに走り出す。

 

目指すは敵右翼の森林内から現れた水精霊大鬼(ヴァ・ウン)

数は五体。

 

無謀である。

 

しかし彼は諦めない。

 

例えこの身が散ろうと、我らが聖王国最強の騎士。

レメディオス・カストディオがヤツらを討ち取る。

 

 

普段は職務に関係ない面倒事を押し付けられ、良いように扱われてきた。

 

しかしそれを許す程、彼女には実力技量信頼があった。

 

イサンドロは信じている。彼女に託している。

 

レメディオスの到着が唯一の希望となり、亜人の攻勢を止める。

 

 

 

「副団長ッ!!」

 

「うぉおおおお!!!」

 

剣を振り回し、洞下人(ケイブン)馬人(ホールナー)を次々と切り伏せる。

傍から見れば乱雑な剣、しかし玄人が見れば極められた剣技。

 

いつも見ていた。

 

最強の騎士たるレメディオスの動きを。

 

いつも感じていた。

 

自身がローブル聖王国が九色の1人であるという重圧を。

 

感情、技量、体。彼は己が持つ全てを亜人に向ける。

 

亜人の波を切り開く道の先に見えてくる水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達。

 

イサンドロは跳躍し、その中の中央にいた個体に狙いを定めた。

 

「喰らェッ!武技《聖撃》ぃッ!」

 

かの聖王女から九色の桃色を賜った漢の渾身の一振、光の斬撃が鬼に向かって放たれた。

 

ガキンッ!

 

剣と甲冑がぶつかったかのような音が響く。

 

相手は狙った箇所に甲冑など着ていない。

 

金属音の正体は敵の肉体である。

 

種族レベルと職業レベルがかけ離れた両者。

 

低い者(イサンドロ)の攻撃は効かないのである。

 

それでも彼は剣に力を込める。

聖撃を放ってからも剣からの光が止まることはない。

長く発光を続けている。

 

「負けるかァッ!!」

 

皆がイサンドロ副団長を見ている。

 

恐怖と敗北が支配したこの戦場においては、まさに彼が兵士達の希望である。

 

「副団長ッ!!?」

 

敗走しかけていた者達は足を止めてしまう。中には、

 

「うがあッ!」

 

その隙を突かれて体を貫かれる者もいる。

 

イサンドロは水精霊大鬼(ヴァ・ウン)に体を掴まれる。そして足と頭を摘まれ……引き裂かれそうになる。

 

「ッ!だれか!副団長をッ!!」

 

心底から湧き出る、副団長に加勢したいという想い。

されど一般兵士達にはそんな実力や気概などない。

 

だから誰かに任せる。

 

誰かに願う。

 

彼を救ってやってくれと。

 

恐怖からうってかわりその感情一つが戦場を包んだ。

 

誰か、誰かが行ってくれ。

 

 

その願いに、

 

呼応する者は……

 

いる。

 

「ふん、ならば俺が行く!」

 

「ペシュリアン!援護するッ!!」

 

訓練指導官であり、兵士長。

剣技の才はレメディオスに次ぐ実力者ペシュリアン。

 

九色が黒であり、兵士長。

弓術の才は周辺諸国最強。

 

前者は城塞から飛び降りると一目散に走り出す。

目指すは今まさに引き裂かれんとしているイサンドロのもと。

 

後者は前者を送り出す。

 

「バラハ兵士長ッ!?亜人が!」

 

周囲に亜人が寄ってきていても気にしない。

身の安全より、仲間の命だ。

弓を引き、敵集団に放つ。

 

「武技ッ!《斉射》」

 

矢の雨がペシュリアンの周囲を片付ける。

 

「行けッ!ペシュリアン!」

 

「ぅおおおお!!武技ッ!《空・切・断》!」

 

灰色の騎士はその剣を水精霊大鬼(ヴァ・ウン)に鞭の如く振るい2体に傷をつける。

一体はイサンドロを相手していた者、一体はその横にいた者。

 

二体の水精霊大鬼(ヴァ・ウン)は困惑する。

 

「なんだ?今のは?」

 

「ほう久しいな、貴様の剣は」

 

斬られたにも関わらず平然とする水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達。その体は掠り傷にもなっておらず、血も流れていない。。

 

イサンドロを引き裂こうとしていた水精霊大鬼(ヴァ・ウン)は彼を地面に落とす。

 

 

ローブル聖王国の実力者2人の武技を前に傷一つない水精霊大鬼(ヴァ・ウン)

 

その様子に騎士達は取り乱す。

 

やはり駄目かと。

 

士気はガタ落ちだ。

 

 

そんな中激が飛ぶ。

 

「落ち着けッ!!冷静に対処しろ!お前らは目の前の亜人を倒すことだけ考えろ!!」

 

「ペシュリアン兵士長!?」

 

今まさに水精霊大鬼(ヴァ・ウン)と対峙しているペシュリアンからの激だ。

 

水精霊大鬼(ヴァ・ウン)は俺とイサンドロでやるッ!」

 

ペシュリアンはイサンドロに肩を貸し、彼を立ち上がらせる。

イサンドロは足が覚束無いがしっかりと剣を握り、剣先を水精霊大鬼(ヴァ・ウン)に向けている。

 

「パベルッ!お前は他を援護しろ!!こっちに構うな!!」

 

「分かった!!生きろよ!!」

 

ペシュリアンから告げられた援護無用。

 

これは、水精霊大鬼(ヴァ・ウン)の一体と刺し違えることが目的ではなく、戦に勝つことが目的であることを兵士達に意識づけた。

 

 

軍団長は声を荒らげる。その額には滝のような汗が流れている。

「全軍踏みとどまれッ!援軍到着まで持ち堪えるんだ!」

 

既に開戦から30分。

そろそろ後方のレメディオスに伝言(メッセージ)が届いているはずだ。

それでなくても早馬も向かわせている。

 

あの女であれば必ずここに来る。

そして聖王女率いる第一軍も来る。

 

これは長年この国の騎士としてやってきたよく言えば経験則、悪く言えばただの感。

 

「本当に何処から湧いてきたのだ…この亜人」

 

洞下人(ケイブン)約三千。馬人(ホールナー)約一千。水精霊大鬼(ヴァ・ウン)が五」

 

「団長が来るまで…どうにか……」

 

軍団長のその言葉に周囲の兵士達も敵を目の前にして疲労困憊の中、頭の片隅で援軍の到着を祈った。

 

 

「武技ッ《空切断》!!」

 

「《聖撃》ッ!!」

 

二人は同時に一体の水精霊大鬼(ヴァ・ウン)に武技を放つ。

 

ダメージはない。

 

「相も変わらず奇妙な武器を使う、剣の動きだけは読めんな」

 

まるで剣以外の動きは分かるかのような発言。

はったりではなく事実だろう。

この個体は、数年前にペシュリアンが相手をした個体。

ペシュリアン自身は亜人の顔など見分けられない為気づいていなかったが言動から同じ相手だと認識する。

 

二人が体を動かすとあの巨体はそれを受け流すように避けている。避けなくても良い程度の攻撃は体を霧状にして受けている。

 

二人を相手していた水精霊大鬼(ヴァ・ウン)。その他の者達は見るのに飽きたのか横槍を入れ始め、大剣がイサンドロを切る。

 

「ぐっぅう…がぁぁああ!」

 

「イサンドロッ!?」

 

左腕は切り落とされ、彼は地面に崩れ落ちた。

 

ペシュリアンは止血効果のある薬品(ポーション)を持っているがそれを彼に飲ませる時間などない。

 

「相方が消えたな」

 

さも呆れた声で喋る水精霊大鬼(ヴァ・ウン)

 

「先からよく喋るなァっ!」

 

ペシュリアンは剣を水精霊大鬼(ヴァ・ウン)の首元に当てる。

 

「ぬぅお、今のはやられたなぁ 」

 

ほんの少しだが首からは血が流れている。

 

「だが諦めろ、やるだけ時間を食うだけだ」

 

「何を」

 

水精霊大鬼(ヴァ・ウン)は周囲の仲間に目で合図を送る。

 

「ふんっ!」

 

四体の水精霊大鬼(ヴァ・ウン)がペシュリアンを襲う。

彼は回避に徹し、猛攻を避け続けるも数が多く何度か掠めていく。

亜人の攻撃を掠めるのは人間にとっては大きな傷である、ペシュリアンは痛みに耐えれず倒れる。

 

「ぐッ」

 

「ふはは、どうだ?大人しく死ねば苦しくもないぞ」

 

倒れ込んだペシュリアンに剣先を向ける一体の水精霊大鬼(ヴァ・ウン)

 

彼は身動きが取れず兜の隙間から見える眼は光を失っていた。

 

無礼()めるな。我々は聖王国の騎士だ!敗北はない!」

 

左腕を無くし、出血で血まみれのイサンドロが立ち上がっていた。

 

その光景に水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達は驚く。

 

「お前は…ほう死んでいなかったか」

 

「《痛覚鈍化》《肉体向上》! 武技ッ!《聖撃》!!」

 

「小癪なァっ!」

 

奮戦虚しくも彼は吹き飛ばされ、背中を地面に強打する。

 

「所詮はニンゲンよ、どれだけ技を高めようと俺が少し触れれば砕け散る。脆い脆い」

 

「うぉおおおお!!」

 

体がいくら悲鳴を上げてもイサンドロは立ち向かい続ける。

 

「グっ!…ニンゲンにしてはよくやる。だが効かぬわぁッ!」

 

「くそっ……」

 

「見くびるなよ、俺達はお前より遥かに強い」

 

 

 

 

真っ暗な景色の中、ペシュリアンは嘆いていた。

 

もう、無理(ダメ)だ。勝てない。

 

ヤツの言う通りだ。どれだけ技を極めようと…種族には抗えない。

 

俺は……俺達は負けたんだ。

 

 

 

「イサンドロ副団長がっ!」

 

「誰か助けにっ!」

 

 

 

イサンドロ……。

 

そうだイサンドロ、あいつはまだ。

 

意識をなんとか取り戻し目を僅かに開ける。

 

そこから見えた景色。

 

「ぶぎ!《せいげき》!」

 

血反吐を吐き、腕もない。

それでも尚立ち上がる騎士の姿。

 

あれが……九色か。

 

「俺も…負けてはいられんな」

 

灰色の騎士の兜の隙間に再度光が宿る。

 

 

「ここまで…なのか」

 

剣を地面に突き刺し、体を剣に委ねるイサンドロ。

 

全力を出し切ったとも言える彼の視界の隅に黒い影が映った。

 

「よく耐えた方だイサンドロ」

 

そこには骨という骨が折れ、動けているのが不思議な灰色の騎士がいた。

 

「なにを。かてねばいみがないでしょうペシュリアン」

 

二人は互いに目を合わせる。

 

「そうだな、事実そうだから困る。」

 

先程まで死を悟っていた男はここにいない。

 

立っているのはローブル聖王国の聖騎士だ。

 

 

 

「神殿で会おう」

 

「ああ。現地集合だ」

 

二人は王都の神殿で会うことを約束する。

 

これは単なる観光でも、思い出作りでもない。

 

戦士として死後に会うための漢の約束だ。

 

 

 

二体の水精霊大鬼(ヴァ・ウン)がそれぞれ二人の騎士に大剣を振り下ろす。

 

それと同時に騎士達も剣を亜人に向けた。

 

 

パベル・バラハはその眼で二人の最期を見届ける。

 

周囲の兵士達も見るが息を呑む間もない一瞬の出来事に理解が追いついていない。

 

 

その場にいる誰もが、

 

終わったのだろう。

 

死んだのだろう。

 

我々は敗けたのだろう。

 

自分は死ぬのだろう。

 

そう感じた。

 

 

しかし、

 

息をも呑み込めぬ、刹那

 

 

勇者は現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、私が来た」

 

漆黒の騎士、モモン。

 

彼は水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達と二人の騎士の間に勢いよく着地、何やら左手には人影のようなものがある。

 

「敵は…お前だな?」

 

モモンの右手に握られた大剣が彼らに向けられた。

 

「「「「「……っ」」」」」

 

水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達は向けられた剣に怖気づく。

 

 

その一方、彼の左手で猫のように掴まれ爆睡をこいている周辺諸国最強女騎士は空気になっていた。

 

 

 

 

 

数分前

 

「出撃の準備は整ったが今から行ってどうにかなるのか!?」

「ケラルト様は!?こちらに引き返して来ないのか!?」

 

モモン達の周囲にいる騎士達には混乱が広がっていた。

 

軍士としてあるまじき光景、それを見たレメディオスはいとも簡単に沸点が頂点に達する。

 

「貴様らっ!何をしている!さっさと出撃だ!!」

 

レメディオスの怒声にヒヒンと怯えた声を挙げる馬達。

 

対して部下達は具申の雨を彼女に浴びせた。

 

「しかし!今から向かいましても着いた頃には勝負が」

「劣勢なりとの報告も上がってきております!」

「ケラルト様と合流すべきです!神官がいなくては話になりません」

「王都からの援軍を待ち反撃するのです!」

「周辺の村から農民を臨時徴兵しましょう!」

「数千を超える亜人相手に現戦力では太刀打ちできませぬ!」

 

「何を言う!!その数千の亜人を相手に未だ我が同胞が命を賭して戦っている!それを見捨てるとは貴様は本当に聖王国の騎士かッ!」

 

顔がみるみる赤くなるレメディオス。

そばに居たモモンは逸早くそれを察する。

 

「ちょちょちょ!団長さん落ち着いて!」

 

何人かの騎士達を殴りそうになるレメディオスをモモンが止める。

 

「ぬぅ!!モモン貴様意外と力があるな!ビクともせん!」

 

雁字搦( がんじがら)めにされたレメディオスは皮肉を込めてモモンに言い放つ…のだが。

 

「お褒めに与り光栄です!」

 

レメディオスの意図に反してその言葉は現実世界で満足にご飯も食べれず、筋肉も平均かそれ以下で男として自信のなかった鈴木悟のコンプレックスを解消する。

 

「褒めてなどおらん!!離せ!!度胸のない敗北主義者の男共に喝を入れる!」

 

周囲の具申してきた騎士達に睨みを効かせると、言われた当人達もあまりの眼光に1歩引いてしまう。

 

モモンは焦る。

このままだと俺達の中で亀裂が走る!!

いつの時代だって仲間は大切に!チームを大切にだ!

俺達はワンチーム!不和が蔓延する前に止めなきゃ!

 

どれだけ親しい間柄でも、亀裂が入れば内部崩壊する。

 

アインズ・ウール・ゴウンのギルド長であったモモンガは身に染みて理解している。

 

ウルベルトの友人とたっち・みーのいざこざが激化し、ウルベルトの友人はギルドを抜けた。その後も何かとあるとその事が根底にあるのかウルベルトとたっち・みーの関係は悪いままだった。

 

 

モモンガ、鈴木悟にとって不和というのはアレルギーのようなものなのだ。

 

「まあまあ!落ち着いて!!」

 

俺はレメディオスの首根っこを掴むと、彼女はバタバタと両手両足を動かす。

まるで風呂を嫌がる猫のようだ。

 

「ちょっと!暴れないで下さい!貴方は猫ですか!?」

 

「シャッーー!!!」

 

「本当に猫みたいな声出さないでくださいよ!」

 

「感謝しますモモン殿」

 

グスターボからは心の底から感謝の言葉を向けられる。

 

「おいグスターボ!感謝などしてる暇があったら前進しないか!」

 

レメディオスは足をばたつかせ暴れる。

 

「……モモン殿…相談事が」

 

「グスターボ!!私を無視するな!!」

 

 

 

「なにか……今の状況を進展させることのできる道具(アイテム)はありませんか…」

 

「はい??」

 

グスターボから出たのは思いもよらぬ相談事。

 

「あなたは当初、国宝級とも思える魔法道具(マジックアイテム)を装備されていました。ですので…。いまのことが不躾な詮索であることは理解しています。ですが…」

 

モモンは悩む、いかんせんケラルトから釘を刺されているのだ。

 

「うーん」

 

えーーー!この状況を変えるアイテムだって?なんかあったかなぁ、いや広範囲攻撃魔法が込められた巻物(スクロール)とかはあるし簡単に敵は倒せるよ?

それで巻物(スクロール)を使わなくたって俺が魔法使えばいいだけだし。

でも……ケラルトさんに言われてるんだよなぁ。

不用意な行動はやめておけって。

 

 

……どうしようか。

 

モモンは思考を巡らせる。

魔法を使用しては人の目があり大問題になる。

もっと規模が小さいけどそんな注目を集めないヤツ。

 

一頻り悩んだあとモモンはあっ、と声を漏らす。

なにか思いついたのだろう。

 

「何かございましたか!?」

 

グスターボは期待の眼差しでモモンを見る。

レメディオスは不貞腐れている。

 

 

そうだ!!あれ使えば取り敢えずは実害ないし良いだろう!!

 

モモンは左手でレメディオスの首根っこを掴んだまま、右手で無限革袋( インフィニティ・バッグ)を使用。

 

「あったあった、これだ」

 

「これは?」

 

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)。指定した場所を俯瞰して見れる魔法道具(マジックアイテム)ですよ。敵の魔法で防がれたり反撃される可能性はありますが、背に腹はかえられません」

 

「おおお!!!それは……モモン殿!これは…余りがあったりはしませんか?」

 

「……すいません。これは1つしかありませんので…」

 

「…いえ。こちらも申し訳ありません…」

 

モモンからすればどうってことのない手間のかかる魔法道具(マジックアイテム)だが、これはこの世界の住人であるグスターボからすれば喉から手が出るほど欲しいアイテムである。

指定した場所を空から見れるなど戦場のチート行為である。

これがあれば敵の布陣も一瞬で把握できるし、味方への指示も的確に行えるだろう。

ボードゲームのような簡単な戦争が行える。

 

モモンはこのような代物を在庫があるかのようにパッと出してきたのだ、彼からすれば1個でもいいから欲しくなるのは当たり前だ。

 

 

 

 

で?どう使うんだろう。こっちだと初めて使うんだよなぁ。

 

「こうか?……うーん、こう?あ、移った。でもこれここじゃん」

 

モモンが空を見上げると、鏡に映るモモンガもこちらを見る。

 

「これか?こういうことか?」

 

予想以上に手間取るモモン。

 

「私も少し触っても?」

 

「ええ。どうぞ」

 

グスターボもそれっぽい動きで動かすがほんの少しだけ視点が動くのみ。

 

「「うーん」」

 

二人で頭を悩ませていると、横で抵抗するのを諦めていたレメディオスが動き出した。

 

「ええい!こういうのは!気持ちだ!!」

 

「あっ!ちょっ!!」

 

レメディオスはがちゃがちゃと、パソコンの勝手が分からず適当に触る主婦かのように荒い操作を行う。

 

普通であればシャットダウンのように、なにか悪い方向へ向かう行いだったが今回は運が良かった。

 

「え、本当に映った」

 

「ふふん、どうだ。この辺りの地形なら頭に入っているからな 」

 

「団長、頭に知識が入るスペースがあったのですね」

 

「……おいグスターボ。あとで話すぞ」

 

聞こえないフリをするグスターボ副団長。

 

もしかして、自分が覚えている場所じゃないと見れない?

どういうことだ?

 

モモンが困惑する一方で二人は戦場の様子を見る。

 

「これは……本当に数千にも上る大軍だ。あれはパベル様、イサンドロに、ペシュリアン殿も!直ちに敗走先の用意をさせねば!」

 

「何!?敗走だと!?なにを言っている!!おい!グスターボ!」

 

己の左腕でワーワーと喚くレメディオスに対してこのままでは話が進行せず纏まらないと判断したモモンがしれっと睡眠(スリープ)をレメディオスにかけた。

 

「なに…を……zzz」

 

すいません団長さん、あとで起こしますんで……。

 

「あの、団長は大丈夫なんですか?」

 

見ていたグスターボと周囲の騎士達は驚きと安堵で複雑な心境に陥る。

毎度そうだが、こういった場面で軍会議が進まないのはレメディオスが脳筋すぎる上に主張が激しく地位もあるためだ。

天幕の外から会議は踊っているように見えても実態は彼女の1人踊り。

 

「眠ってるだけなんでだいじょ……うわ!やばい!!」

 

モモンがグスターボに説明しようとしたところ、目に入った戦場の景色。そこには倒れているペシュリアンが映っていた。

 

「ペシュリアン兵士長!?これは……!それにイサンドロまで!腕が!」

 

グスターボは悲鳴のような声をあげる、それに呼応して周囲の騎士達もゾロゾロと集まりその景色を見る。

みなそれを見るなり表情が曇っていく。

 

 

ペシュリアンさん、イサンドロさん……。

 

まだ数日しか過ごしてないけど……けどこれは。

 

 

 

 

 

いやなんだよ、けどって。

 

 

 

 

人ならそんな事関係ないじゃないか!この言い方じゃまるで本来は見捨ててもいいみたいな言い方じゃないか!

 

モモンは自分に謎の感情が湧いてることに違和感を覚えた。

 

 

 

 

おれは……そうだ。騎士だ、騎士になったんだ。

 

 

 

 

ロールプレイでもいいんだ。

 

 

 

 

少しでもあの人に近づくんだ。

 

 

 

困っている人がいたら、助けるのは当たり前。

 

 

 

 

 

彼は一度完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)を解除する。

装備が完全に外れ、俺は私服姿になる。

 

突然のことにグスターボは驚愕した。

装備が一瞬にして消えたのだ、これは魔法か?スキルか?

何れにせよモモンが平然と行ったこの動作は彼の思考の巡りを僅かに遅らせる。

 

「すいません!!今から俺は戦地へ向かいます。先にある程度片付けて置くので後から来てください!これはここに置いておきますから!!」

 

「え?」

 

「では上位転移(グレーター・テレポーテーション)

 

取り残された騎士達は放心状態になっており、唖然としていた。

そして約1分後、モモンが残した魔法道具(マジックアイテム)から映し出される景色を見たのだが彼らはそれを見るなり強行軍を決意し戦場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦場から少し後ろに転移できたな。それじゃ戦士化して装備を戻して」

 

モモンは完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)を発動するとプリセット化していた漆黒装備を瞬時に着る。

 

「うん、いいな。よし行こう!」

 

そうだ、おれは騎士なんだ!!人間なんだ!

人を救う、助ける。

それがしたくて団長さんの誘いに乗ったんだろう!!

ならすべきだ!

例えそれが問題を起こそうと!

人命には変えられない!!

 

 

彼は飛行(フライ)の如く跳躍し、戦場の真ん中へと向かった。

 

「いざ!戦場へ!」

 

自身の高鳴る鼓動を深く感じて、今日モモンは真の騎士となる!

 

 

 

大跳躍中、モモンに脳内にあることが過ぎる。

 

 

 

 

 

 

なんか忘れてる?

 

 

 

 

 

「Zzzz」

 

 

 

 

 

未だ彼女は彼の左手に掴まれたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわー、なんだよ。本当にめちゃくちゃ劣勢じゃないか!

イサンドロさんは血まみれで腕が無いし!!

ペシュリアンさんもボロボロで倒れてるし!!

それに城塞の兵士達も被害が出てるぞ!?

どうなってるんだよこれ!

 

この数…本当に数千はいるじゃないか!

対して聖王国は……何人?100人ちょっとか?

舐めすぎじゃないかこれは、この国の安全保障はどうなっているんだ。

 

いくら低レベルの亜人達が相手とはいえ人間種も同レベル帯だろ?これじゃ話にならないぞ??

 

これケラルトさん知ってるのかなぁ…いや知ってるよな。

何年も戦争を続けてきてるんだし。

 

それとも今回が特別なのか?

 

 

うーん分からない。

取り敢えずは聖王国側が劣勢!敵は超優勢って所だな!

 

よし!こっから巻き返すぞ……といっても俺とこいつらじゃレベル差があり過ぎて半ば作業ゲーになるだろうけどな。

 

とうっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?来ないのか?」

 

モモンはその兜の隙間から赤い眼光を放ち、睨みを効かせた。

 

「おまえは……なにものだ」

 

赤い光を見た水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達は困惑し沈黙する。

 

一目でタダの人間ではないと察知したからだ。

 

「さあ、来い」

 

普通ならば受け入れられない雑な挑発。

 

されど気配が違う。

 

圧倒的強者の力を水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達は生存本能で察する。

 

背中を向けては一瞬で殺される。

 

水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達は恐怖した。

 

五体の中でも僅かに勇気があったのであろう水精霊大鬼(ヴァ・ウン)が剣を振るう。

 

「ウォオオオオ!!」

 

勇敢にも雄叫びをあげて立ち向かった彼は、

 

ボト

 

一瞬にして頭が弾け飛んだ。

 

「なッ!?なぁッ!?」

 

仲間達には一層の恐怖が広がる。

 

「次は…お前か?」

 

「ぬぉおおお!!おぉお…」

 

モモンの殺気にたじろぐ水精霊大鬼(ヴァ・ウン)四体。

 

「弱いな、強そうなのはガワだけか」

 

「何をっ!貴様ぁああ!!」

 

「ふん、抵抗するか。ならば……塵となれダーク……」

 

モモンは武技(仮)の発動の為に左掌を敵に向けようとしたところある事に気づく。

 

先程転移前に眠らせていたレメディオスだ。

 

まるでモモンは敵に寝ているレメディオスを見せつける仕草をしつつ魔法を発動しようとしてしまったのだ。

 

あっぶねぇえええ!!!!団長さんごと左手で消し飛ばすとこだった!!!

ていうか忘れてたんだが!!転移で一緒につれてきちゃったよこの人!!

うわぁ、レベルのせいで筋力があるのも問題だな。

ほんとレジ袋みたいに軽くて気づかなかった……。

 

「それは!?剣が強いだけで頭が弱い女騎士!!」

 

水精霊大鬼(ヴァ・ウン)の一体が睡眠中のレメディオスを見るなりそう発言する。

 

「亜人からもそんな評価受けてるのか…」

 

ええ?なんで敵からもこんな事言われるの?

この人なんかしたの?

 

「丁度いい!!そこの女騎士諸共消してくれるッ!!」

 

水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達はモモンに向かって突進する。

 

 

自分で連れてきて申し訳ないんですけど……ちょっと離しますね。

 

ドサ

 

モモンから離され、草の上で大地の香りを堪能し仰向けで眠るレメディオス。

 

「Zzzzz」

 

 

 

モモンは気まずそうに再び左掌を敵に向ける。

 

「ええと、再度訂正して……喰らえ!塵となれ!暗黒弩級魔砲(ダーク・メガ・キャノン)!!」

 

武技か魔法か、何かが来ると察した水精霊大鬼(ヴァ・ウン)達は体を霧状にして回避しようとする。

 

だが高レベル帯のモモンを前にその行為は無駄である。

 

「「「「グぉおおお!!!!?」」」」

 

大鬼達は文字通り塵となり、死体は綺麗に消失。

 

うん?なんか今の動きしっくりくるな。

……もしかして武技になってる?この動き

 

左手をグーパーと開いたり閉じたり繰り返し、感覚を確認する。

 

 

周囲ではそれを見ていた者達が驚きの声を上げていた。

聖王国の人間達だけではなく、敵の亜人達もだ。

総大将敵な位置にあった大鬼が一瞬で消え去ったのだ。

イサンドロとペシュリアンが倒れた時の聖王国軍のように、今度は亜人軍に混乱と恐怖が広がった。

 

「なんだあれは…!?」

 

1人の騎士が声を挙げると、人間も亜人も皆が手を止めてその方向を見る。

 

一方で水精霊大鬼(ヴァ・ウン)の近くにいた洞下人(ケイブン)達は敗走を始める。

 

「ヴァウンゼンメツ!!イナクナッタ!」

 

えい!えい!

 

逃げる洞下人(ケイブン)達の背中にプチキャノンを放つモモン。

 

おお!!凄いぞ!!MPを消費していない!!

今まではそれっぽい動きに魔法を織り交ぜてやっていたけどこれは!本当に武技だ!!

 

武技を習得して喜んでいるモモンの脳内にある言葉がよぎった。

 

「いつの間にか身についていた」

 

「亜人を相手にしていたら」

 

まさか!?

 

モモンはある仮説を立てる。

 

もしかすると、武技の習得には訓練だけでなく敵の命を奪うことも必要なんじゃないか?

そりゃあ訓練も武技習得のきっかけにはなったり、助長するぐらいはあるだろうけど!

でも今発動したってことはそうだろう!?

ということは試すことは一つだ!!

 

テンションが上がる漆黒の騎士は歩みを進める。

 

そして可哀想なことに一体の洞下人(ケイブン)に狙いを定めた。

 

「ニゲル!ニゲル!」

 

「待て」

 

「ニゲル!ニゲル!」

 

「待てって」

 

「ニゲ…キヒィ」

 

「待てって言ったんだけどなぁ…あ、腕潰れちゃった」

 

「ギャアアア!!」

 

「数は…四千だったっけ?でも高レベルモンスターはいなそうだしなぁ」

 

これじゃあ武技の習得が思うように進まないかもなぁ。

 

うん!それじゃあ…

 

モモンは眼光を光らせ逃げ惑う亜人達を横目に見る。

 

「範囲魔法使うのはナシだな、せっかくだし試し斬りしてみよう!団長さんもやってみろって言ってたしな!」

 

「ヤメ、ヤメテ」

 

「うん…うわぁ喋られるとなんかキツイなぁ……心に来るというか」

 

「タス……タスケ」

 

「……お前は人間がそう言ったら助けたか?」

 

「グゥ……」

 

「グゥじゃなくてさぁ〜、まあいいや。喋ると少し気落ちしちゃうし、まだ戦う気でいるヤツだけ相手にし…」

 

モモンは足元に温もりを感じ、下を見る。すると、

 

黄色の水溜まりができていた。

 

「「……」」

 

漏らしてんじゃねえか!?おい!!しかも俺の足に少し入り込んで来てるし!?

 

「あー……そろそろ止まったか?」

 

「ヒゥ」

 

「ヒゥじゃなくて……はー。まあいい、お前は。取り敢えず逃げろ」

 

「タ、タスカタ。タスカタ」

 

はぁ…なんか気落ちしちゃうなぁ。

せっかく武技習得の相手を見つけたら、変に言葉で感情に訴えてくるし、挙句の果てには漏らして俺の足を……。

 

あーーーー!!!最悪なんだけどー!?

 

 

嘆くモモンに反して周りの目は違った。

 

「あれは…何者だ」

 

「モモンだよ。モモンだ!!」

 

「誰だ?」

 

「レメディオス団長が助けた異国の騎士だ!」

 

「何!?」

 

「すげぇぞ!!ヤツら敗走してる!」

 

1人の騎士の登場であの戦況が自軍の優勢に転じたのだ。

壁上で戦闘していた亜人達も騎士との戦闘をやめて壁から飛び降り敗走を始めている。

 

それを見た軍団長は指示を飛ばす。

 

「好機だ!カタパルト放射角度を上げろ!!亜人共の撤退路を遮断するんだ!騎兵隊は右翼から雪崩込めッ!!!」

 

 

 

「突撃ィッッーー!!!」

 

「進めッェーー!!」

 

騎兵隊が皮肉な事に馬人(ホールナー)達を騎乗戦闘で切り伏せた。

 

「クソッ!ウマ共めッ!ニンゲン風情に手綱を握られよって!!」

 

馬人(ホールナー)のリーダー格らしい者が後方で腕を組み苛立っている。

この者は他の馬人(ホールナー)と違い、腰だけでなく胸にも毛皮を巻いてることからメスだと判断できる。

 

「なんなんだ。あのニンゲンは」

 

彼女の脳裏にあるのは大鬼五体を瞬時に消し去ったニンゲン種、モモン。

 

「これは……厄介なのが現れた。」

 

彼女は空を見上げ、頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい!!味方とはいえ騎士団に敵を奪われる!!

 

これじゃあ経験値的に他の武技が先送りになるじゃないか!

 

「カコメカコメ!」

「コロスコロス」

 

敗走する亜人とそれを追撃する聖王国軍を見て嘆いていた所、彼を十体を超える洞下人(ケイブン)が囲む。

 

 

 

 

 

おお、向こうから来てくれた!!良かったー!

にしても

 

「うーん、包囲されてもその危険性が分からないなぁ、レベル差がありすぎて間合いの重要性が理解しにくいのどうにかならないのか?まあいいか!さっさとたお」

 

「聖剣ッッ!エクスッカルカァアアア!!」

 

「え?」

 

とんでもない大声で剣から光を放ち現れてきたのはレメディオス・カストディオ。

モモンが眠らせていた人物だ。

 

 

ええ!?今凄い火力でてなかった??前よりも明らかに威力あるぞ!?

地面ゴリゴリゴリって削りながら亜人蹴散らしたし!

 

ていうか起きたんですね、意外と早い…。

 

「ズルいぞモモン!!お前が先に目立つとはな!せっかくの新しい武技だ!私にも見せ場を寄越せ!」

 

「そうでしたね」

 

平然を装いながらモモンはレメディオスに近寄る。

 

「それに!!魔法道具(マジックアイテム)か!?瞬時にこちらへ送るとは大層なモノだ!お前が私を眠らせたのはソレを使うのに必要なことだったのだろう!私にはわかるぞ!!」

 

「えー……っと。そうですね、そうなんです。眠らせておかないと負荷がかかるかもしれないヤツでして」

 

「うむ!そうだろう!私にも理解できたぞ!!して敵は!?大物はどこだ!?」

 

「あーー、あー、えーとですね。既に俺が倒しちゃいました。オーガかなんかです」

 

「そうか、見せ場がないのは残念だが雑多な連中しかいないのも良いことだ!ならばあとは雑魚狩りだな!」

 

「ぉぉ……好戦的すぎる。もう敵を経験値としかみてない効率厨プレイヤーだ」

 

「ぷ、ぷれ?ぷれ?…ぷれなんとかとはなんだ?」

 

「いえ、特に意味はありませんのでお気になさらず」

 

「そうか!ならばさっさとやるぞ、騎兵隊に良い所を取られる訳には行かないからな!」

 

二人は亜人に追撃しようと前へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神官です!通して!!」

 

1人の男性神官が護衛を連れて現れる。

彼が向かったのは…モモンの登場で完全に空気になっていたイサンドロとペシュリアンである。

 

「イサンドロ副団長を搬送します!」

 

「ペシュリアン様も大丈夫ですか!今後方へ!!」

 

「俺は大丈夫だ、回復は……先にイサンドロに回せ」

 

 

 

「イサンドロ!ペシュリアン!大丈夫か!?…くそ!亜人め!私が捻り潰してくれる!」

 

2人の容態を肉眼で見たレメディオスは顔を真っ赤にし、その額には血管が浮き出ている。

 

そこからは敵からすれば悲惨なものだった。

怒り狂った女騎士と化け物じみた黒騎士が撤退する亜人達を殲滅したのだ。

 

その数、約三千。

 

「勝ったぞぉおおお!!」

 

「やったぞぉぉおお!!」

 

「うおぉおおお!!」

 

戦場は亜人の死体と、人間の歓声で埋め尽くされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か…イサンドロ、ペシュリアン」

 

戦争が終わり、レメディオスとモモンの二人は重症の二人に駆け寄る。

 

「すいません…団長……あまり体調が優れなく……」

 

「俺はかまわん。骨だけだ、内蔵は大丈夫だろう」

 

イサンドロは顔が真っ青でいつ出血死してもおかしくない、ペシュリアンも骨が砕け、まともに動けない状態。

 

そろって満身創痍だ。

 

「団長、すこし…眠たく感じます」

 

 

 

 

 

 

「何をしている!貴様は九色の1人だろう!誇りあるローブルの騎士だ!目を覚ませ!」

 

まるで昔見たネイビーシールズの映画さながらの鼓舞。

 

 

戦場って本当にこんな感じなんだ……。

 

「…これは……使うしかないか」

 

モモンは無限革袋(インフィニティ・バッグ)から低位のポーションを取り出した。

 

「モモン…?なんだそれは」

 

「回復のポーションですよ」

 

薬品(ポーション)だと?それがか…?赤色のなぞ見たことも聞いたこともないぞ」

 

「本当に…効くかは分かりません……」

 

効くかは分からない、だが今にもイサンドロは死にそうだ。

レメディオスはモモンに頼む。

 

「構わん!やってくれ!!お前の貴重な道具(アイテム)だが頼むッ!!」

 

「勿論です…イサンドロさん、失礼します」

 

モモンは彼に薬品(ポーション)を飲ませる、すると

 

「な……こ、これは…」

 

外から見ても分かるぐらい血相はよくなり、腕の血が止まっていく。

 

「喋るなイサンドロ!安静にしろ!」

 

「団長…」

 

「イサンドロ!まずはやす」

 

「これは凄いですよ…これは……!これは!!」

 

「………?」

 

「神の血ですッ!!!」

 

「痛みも何もかもが吹き飛びました!血も…止まりました!これは……これは!最高位ポーションでは!?」

 

「……元気になったなら良い」

 

先程までの容態が信じられないぐらい元気になり、飛び起きるイサンドロとそれに呆気を取られたレメディオスは少し引いている。

 

 

 

 

良かったー!!!効くんだユグドラシルのポーション!

序盤のポーションだから効くか怪しかったけど効いたならよかった!

 

内心安堵しているとイサンドロの腕が少し発光する。

 

「なに!?この薬品(ポーション)は欠損した箇所も治すのか!?」

 

「え!そこまで効果あるんですコレ!!」

 

いつの間にか集まっていた騎士達や軍団長、神官たちも息を飲んで見ている。

 

回復魔法でも欠損部位が治ることもあるがそれは再生能力の高い種族限定、例をあげれば蜥蜴人(リザードマン)であり、再生能力などない人間は絶対に治ることがない。

 

それがこの薬品(ポーション)は腕を治そうとしているのだ。

道具が魔法に勝るとは信じられない光景だろう。

 

みな驚き、レメディオスやペシュリアン、皆今か今かと見ていた。

 

ニョロニョロ…ぎゅぽっ!

 

まさかのどこぞのナメクジ星人のごとく腕が生え変わるイサンドロ。

 

「「「「…」」」」

 

周囲はそれを見て固まった。

 

 

 

「その……腕の再生が少し気持ちが悪いぞ」

 

「言わないでください、私も思いましたけど」

 

驚愕と嫌悪が入り乱れる空気の中、ある男が声を挙げる。

 

「…取り敢えず俺にも頼めるかその薬品(ポーション)

 

「あ、はい。」

 

それは骨がズタズタなペシュリアンだった。

 

 

 

 

 

 

二人の回復が終わり、体に不調がないことを確認するとレメディオスが口を開く。

 

「思わぬ亜人の侵攻で王城へ向かうことが出来なかった…今からでも間に合うか?…いや!取り敢えず向かうぞ!イサンドロとペシュリアンもこい!今は万全でも不調があれば悪い!ケラルトにも1度診てもらう!」

 

 

 

 

 

なんとか、勝てたのか?

 

壁上で亜人がいた方向を未だ見ているのはパベルだ。

彼の観察眼は聖王国でも屈指である。

そのため敵の第二波の兆候が確認できないか監視しているのだ。

 

下ではイサンドロとペシュリアンが治療されているらしく少し騒がしい。

 

見ると何やら腕を欠損したイサンドロから腕が生えていた。

 

なんだ?どういうことだ、一体なにをした??

 

これには普段は冷静なパベルも驚きを隠せず、思わず壁上から身を乗り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケラルト様ッ!!」

 

伝言(メッセージ)で報告が!」

 

「……」

 

「亜人軍四千を撃滅!イサンドロ副団長とペシュリアン兵士長が負傷するも我が軍の人的被害は二割との事です!」

 

「…何ですって? 」

 

「両名は既に療養に入っておりますが、殆ど万全の状態に回復しております!この件はモモンが保有していた赤色のポーションを使用したことが影響しているとのことです。」

 

 

「イサンドロが?…それに赤色のポーション?」

 

赤色など聞いたことがない。

 

「お姉様のことです、既にこちらに向かっているでしょう。我々はここで待機します。伝言(メッセージ)で二人を連れてくるように伝えて」

 

「分かりましたッ!」

 

 

 

 

 

 

そこからしばらくして、モモン達はグスターボ達と合流。後にケラルトととも合流した。

 

ケラルトは地平線の先から現れる彼らを見るなり騎士達に防衛陣地の撤収を命じた為既に半分は撤収作業が終えている。

 

「お待たせしましたケラルトさん!」

 

「来たぞケラルト!凱旋だ!!」

 

駆け寄るモモンに、やったぞ!と見るからにはしゃいでいる姉。

彼女は二人に会うなり、モモンの腕を引っ張りを馬車に連れ込んだ。

 

「おい!!私はダメなのかぁー!?」

 

この間まさに30秒、ケラルトはレメディオスやグスターボと話すよりも彼を優先したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「四千にも及ぶ間亜人の侵攻を、一人で跳ね除けるとは。流石ね、モモン」

 

「いいえ、これも皆さんの尽力あってこそです」

 

「…そういう事にしておいてあげる。それでどうだったかしら?初の実践は?」

 

「そうですね…あまり分かりません」

 

「分からない?」

 

「今回は低レベルばかりだったので」

 

「れべる?難度のことかしら?」

 

「あっ、レベルって言っても通じないのか」

 

「分からないわね。文脈から察するにモモンにとって低難度のモンスターしかいない。だから分からないと」

 

「はい、だって相手は小鬼(ゴブリン)の亜種とかガワが馬ってだけのモンスターでしたし」

 

「あのね、どんなに強い剣士でも四千を相手にするなんてまず無理なのよ?敵一匹が弱くても束になればそれだけ考える事も増えるし……」

 

「うーん、それは分かるんですけどねえ〜」

 

「はぁ…取り敢えずはありがとう。この国を守ってくれて」

 

「いえいえ、聖騎士として当然です!」

 

「これからも戦果…期待してるわよ」

 

 

 

 

亜人軍四千をほぼ単騎で撃滅。

 

亜人連中には申し訳ないけれど目安がしれて良かったわ。

四千程度では無駄、それが分かったのは大きい。

ただでさえ未知数で非現実的な力を持つ魔法詠唱者(マジックキャスター)。それが彼の力によって戦士(ウォリアー)となっている。

身につけているモノはどれも国宝級かそれ以上。

無限革袋(インフィニティ・バッグ)という道具(アイテム)を保有し、万物を癒す赤いポーションなるものを持っている。

 

 

 

これが周辺国に知れ渡ったら…。

 

 

考えたくもないわね、特に王国。

 

法国ならまだやり方に想像が着く。

存在が示唆されている特殊部隊、それらを用いて情報収集した後接触し、勧誘。この際は耳触りのいいこと言い散らかす。

端的に言えば利用か排除か。

 

それが王国からのコンタクトとなると、相手は政府ではなく貴族になる。

五大貴族から辺境の貴族、最悪の場合八本指と癒着した貴族が接触を図ってくる。

こういったことに対して手が早いのはレエブン侯でしょうけど…それでも危険ね。

 

既に先日から情報統制に関しては手を打っているけれど何かしら漏れ出すのも時間の問題。

 

侵攻を阻止できたのは本当に有難いけれど…。

 

こういう側面があってしまうのが…人類社会の嫌な所ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローブル聖王国の王城の一室。

 

美しい金髪と綺麗な肌、そして優しい瞳。

まさにローブル聖王国の至宝とも呼べる容姿と性格を持ち合わせる女性がそこにはいた。

 

「前線拠点から報告です!」

 

彼女が書類に目を通していると、部屋に騎士が入ってくる。

 

「どうしたの?」

 

書類を置き、椅子から立つと騎士に近寄る。

 

「カリンシャが!亜人四千による侵攻を受けましたッ!!」

 

「っ!……」

 

四千、途方もない数だ。

一瞬誤報かと思っていたがこの報告を仲介しているであろうケラルトのことを考えれば誤報でない。

彼女は混乱し今にも卒倒しそうになっていた。

だが騎士が続けた言葉に我を取り戻すことになる。

 

「ですが……我が軍はそれらを撃滅しました!」

 

「なんですって?」

 

信じられない報告。

亜人四千を撃滅、撃退ではなく撃滅だ。

まさに夢のような事象だ。

 

「そう…でも敵の攻勢は止まないかもしれないわ。直ぐに出陣の用意を……」

 

敵は大軍を用意していた。

なれば向こうも策がないわけでないだろう、どういう奇跡か亜人四千を退けても次の第二波が想像できる。

それが陽動で本隊は別など。

予測されることは数多にある。

 

「ケラルト様からその必要は無いと連絡を受けております」

 

「ケラルトから?……どうしてなのかしら」

 

そこに信頼できる側近ケラルトの名前が出る。

 

「詳しくは不明ですが、敵に第二次侵攻は不可能であると判断したとのことです」

 

「……そう。珍しいわね、いつもならその様な判断をしないのに……。分かったわ報告ありがとう、持ち場に戻って大丈夫よ」

 

彼女がそういうと報告にきた騎士は部屋を出る。

 

 

彼女は考える。

 

いつもなら慎重で、予防線に予防線を張るような彼女が敵の動きを断定したのだ。その為今回の件は違和感しかない。

それなりに理由があるのだろうが。

 

 

 

もしかすると、例の彼かもしれない。

 

彼女の脳に浮かぶは本日入団式を実施する予定だった騎士、モモン。

彼については数日前にケラルトから連絡があり、注意すべき人物として名が上げられていた。

彼女は理由を聞こうとしたのだが、 詳細は王都に来た際に話すと向こうから言われた為レメディオスが勧誘したこと以外彼女は知らないのだ。

 

 

 

 

 

「そういえばモモンという名前……何処かで似たような名前を聞いたことがあるのだけれど。なんだったかしら?」

 




お待たせしました。
ゴールデンウィーク初めから歯が細菌感染してしまったのもあってかなり投稿が遅れました。
いやぁ、我ながらもうすこし語彙力が欲しいですね。
時間がかかったのはそこもあります。
修正、継ぎ足しの繰り返しで疲れました……。

今回は結構な文字数なので誤字も数多くあると思いますが
報告のほどお願いします。いつも助かっております。

ご感想のほう頂ければ筆が進み投稿ペースも早まりますのでどうぞお願いします。

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