やりなおし   作:もぐたろ

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短め


一話

 風が吹いた。

 

 看板が軋む。

 

 誰もいない通りに、音だけが残った。

 

「ここは、静かだな。昔と大違いだ」

 

 椅子にもたれかかりながら、天井を見つめ、ゆっくりと。

  

「仕方ないですよ。もうここには、何にもないんですから」

 

 店主は外へ目をやった。

 

「この先の、ファンタジアが目的で?」

 

「あぁ」

 

 店の商品に目をやった。狭い店だが、品揃えは悪く無い。必要なものを購入し、外へ足を向けようとした時に声が耳を掠める。

 

「どうか、お気をつけて」

 

 ――気をつける、か。

 

 心の中で、小さく繰り返す。

 

 そんなことは、分かっている。

 

 

 あの頃は、気をつける以前の問題だった。近づくだけで、身体が軋んだ。魔力が乱れ、まともに立っていることすら難しかった。入口に辿り着くことすら、何度も諦めた場所。

 

 

 それが今は――

 

 

 足は止まらない。

 

 

 「……戻ってきた、か」

 

 誰に向けたわけでもなく、そう呟く。

 

 

 あの時は、近づくことすらできなかった。だが時間が経ち、あの一帯の歪みは薄れている。

 

 今なら、奥へ進める。

 

 ――ようやく、ここまで来られるようになった。

 

目を細め、通りの先を見る。その奥にある、迷宮街。

 

 そして、その先。

 

 かつて、すべてを置いてきた場所。

  

 来なければならなかった。

 

 あのままにしておけるものではない。終わらせるために。

 

 ……弔うために。

 

 

 一歩、踏み出す。

 

 

 

 

▪️▪️

 

 20層

  

 ボスがいる、扉の前で大きく息を吸い体内と体外の空気を入れ替え、意識を集中させる。

 

 仲間を弔い、そして、多くの人への償いを込め戦う

 

 一歩中へ踏み入れると、端が見えないほどに広がった草原の上、満点の星が広がっている。

 

 

 一角の獣。

 

 ユニコーンが、部屋の中空を見上げ、佇んでいた。

 

 

 ドン

 

 

「ぁえ」

 

 

 一拍

 

 認識する間もなく、放たれた一撃。で左腕の肘から先が引きちぎれ、鮮血が吹き出、灼熱の痛みが走る。

 

 それを無視して、顔を上げる。

 

 もう一度くる。

 

 ドン  

 

 右に跳び、元いた場所に剣を振る。剣は弾かれ、体勢が崩れる。

 

 回避も防御もできない、一瞬が生まれる。

 

 ユニコーンは、頭を振るい、紙を破くような、軽い音が響く。

 

 左足の膝から下が切り落とされ、跪く。

 

 急所は外せた。

 

 後ろに飛び退いた様子から、また突進がくるはず。剣のグリップと手を魔法で固定し、一太刀入れることだけを考える。

 

 

 ドン

 

 

 地面を蹴った音が後から響く

 

 

 外しはしない

 

 下から上に頭部を目掛け振り上げた

 

 

 

▪️▪️

 

 レンガ積みの建物が最初に目に入ってきた。

 

 

 なんだか、周りが騒がしい。死後の世界は、現実とあまり変わらないのか?

 

 五感の確認を済ませ疑問が生じた。

 

 匂い、音、感触、感覚、全てが今までと同じだ。なぜか、体は子供になっているが、それ以外に以前と変化はない。どうにも違和感がある。ここは本当に死後の世界なのか?なんだか、全てに既視感があるような気さえする。

 

 一つ思いついてしまった。あまりに非現実的で妄想のようなことを。

 

 駆け出していた、思いついた時には既に。あり得ないと思いながらも、期待を膨らませ、音の方へ走る。

 

 風が吹いた

 

 多くのものが揺れる

 

 だが、人が溢れ、その音は聞こえない

 

 どうやら俺は、過去に来てしまったらしい

 

 

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