FALBRIGHT・ONLINE ーフルブライト・オンラインー   作:ひーどらん

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06話 ここからが本番だ

毒と弓であっけなく豚巨人を倒してしまい、

撃破報酬《貪欲者の指輪》を見るまで、ホムラには実感がなかった。

 

「ほんとに、その……アレで倒してしまったんですね」

 

「多分、初心者救済でしょうね。どこにでも落ちてましたし」

 

アッシュは淡々としている。

ホムラはまだ“糞毒矢”の衝撃から抜け出せていなかった。

 

「でもこれで私も次に進めます!ありがとうアッシュさん!」

「いや、ベータテストなら大体ボスを倒して終わり…」

 

チュートリアルボスを倒したことで、奥の霧が晴れる。

そこには、ゲームとは思えないほど暖かい日差しが差し込んでいた。

 

「ゲームの中と分かってても、太陽の光って落ち着きますよね」

 

ホムラは肩の力まで抜けたのか、気の抜けた声を肺の空気と共に吐き出す。

 

……が。

 

その光は、あまりにも眩い炎だった。

太古から人類を温め、文明を育ててきた――あの火そのもの。

 

「こ、こいつは……!?」

 

アッシュが言い終わる前に、

出口の先に“それ”が姿を現した。

 

豚巨人を遥かに超える体躯。

トカゲのような鱗。

コウモリのような翼。

 

ファンタジーの定番――ドラゴン。

 

「不味いッ!逃げろ!!」

 

アッシュが声を上げた次の瞬間、

立ち塞がる竜の炎が二人を呑み込んだ。

 

ただ、呆気なく。

これがアッシュの“初死亡”だった。

 

 

薄暗い部屋。

ペーパーレス化の時代に逆行するように、

大量の資料が床に散乱している。

 

唯一の光源は、パソコンのモニターだけ。

 

「……ククク。人は如何に冷静を装っても、成功体験ひとつで舞い上がるものだねぇ」

 

ボサボサのクセ毛が揺れ、

長髪の隙間から三日月のような笑みが覗く。

 

返事をする者はいない。

だが女――火継ケイは語り続ける。

 

「この《フルブライト・オンライン》は、言わば檻だ。

そして君たちプレイヤーは餌。とある“怪物”を育てるためのね」

 

詩的で、どこか芝居がかった声。

劇場型犯罪者の独白のようだ。

 

「人間が他の霊長類より優れる理由は何か?

知能、言語、獲物のリーチ……まあ、どれも正解だろう。

だが私は、一番優れたモノは“悪意”だと思うのだよ」

 

モニターの先に映るアッシュへ、

聞こえるはずもない言葉を投げかける。

 

「他者を出し抜きたい。優れたい。証明したい。独占したい。

その本能的な願いこそが進化の種だ」

 

そして――火継は指を伸ばす。

 

「この《フルブライト・オンライン》は、もう私の手を離れた。

さあ、開幕といこうじゃないか」

 

そっと、Enterキーが押し込まれる。

 

ーーーー《フルブライト・オンライン、本リリース開始。》

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