絡繰機械操術師   作:ぽおくそてえ

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すみません、間違えて投稿しました

修正しました


決戦の始まり

「さてと、こんなもんだね」

「おお、これだけ技術が分かれば応用は幾らか可能だよ」

「これでも半月で2割ほどしか教えてないんだがね」

「充分だ。知り過ぎる事は時に危険だから、これでも良く知識を得た方だよ」

「そうか。にしても、ユミナ様方に動きが見られんな」

「戦力を整えようとなさっておるのだろう。何、我らは陛下直々の家臣だ。陛下の御言葉無くして国の為にならん内紛に手を出すつもりは毛頭無い」

「それを聞いて安心した」

 

これで伝えるべき技術の基礎は伝えた。後は彼等自身で発展させていく。だが、あまり深みに嵌らない様に注意した。研究者上がりの人物も多く、そこら辺は重々承知、良く分かっている。それでは一旦帰るから質問があれば分かる範囲で答えるから、その時は聞きにくる様に伝える。

 

「これで少しずつ開発環境が整うだろうぜ」

『土台はあったみたいだ』

「みたいだな」

「ギエモンさん、ヤマトさん。こちらにいらっしゃいましたか」

「アイラか」

「セツナ様がお呼びです」

「了解」

 

此処に来てから何度目となろうか、いつも通りセツナ姫の元へと向かう。今度は何の用件だろうか。だが、呼び出されるという事は何か問題が起こっていると考えられる。

 

「姫殿下、お呼びですか?」

「姉様が近々動くわ」

「なんと」

「遂に最側近のマイルズ・ハーンを伴って本格的に内紛を起こすつもりみたい」

「まさか此処暫くの間に動かなかったのは戦力調達の為ですか?」

「そうみたい」

「狙いは?」

「私達『王子と王女全員』よ」

「っ!」

 

こうなったら増援を呼ぶ事は難しいし、戦闘範囲は前回までの戦いの比ではないだろう。援軍を国王陛下に依頼するなんて出来れば苦労しないだろうし、きょうだい全員に仕掛けてくるつもりだろうから出来てもカバーしきれないのだ。

 

「それは、全面戦争ですぜ?」

「父上の命が長くないのにつけ込んできたの。もう後戻り出来ないと判断したみたい」

「クソッタレが……っと、御前で荒っぽい言葉、失礼」

「私達は何としても姉様を止めねばならないわ。国の存亡がかかっている。かつての興亡戦争の時みたいにね」

「俺の絡繰の出番です。陛下の許可は?」

「既に得ている。マディエ兄様と共に正面から戦闘をする。アマツ、ブレイブ、アイラとバリーと行動を共にする様に」

「総力戦ですね」

 

今後の動きは既に伝えられていたのか、セツナ姫の部屋を出たら4人とも揃っていた。恐らく総力戦になるだろう、準備は万端にしておくべきだ。仲間の彼等も同様に取れる手段は取っておく。

 

「っつー事だ。姫殿下から皆も下知されてるそうだね?」

「ええ。もう既に兵は集めてあります」

「ユミナ様は東方の砦に陣取っているそうだ」

「やれやれ、戦争なんぞナンセンスの一言に尽きるぞ」

「まぁな。久々に本気出せそうだ。ヤマト、ワルキューレ、準備は良いな?」

『いつでもどうぞ、マスター』

『フィンリルの用意を忘れるなよ?』

「ああ」

 

まずはマディエ王子の軍と合流して目的地の東方砦へと向かう。これから暫くは刀槍剣戟の中に身を置く事になろう。攻略に何日要するか分からない。兵力を割いて、その隙に隣国に攻められるなんて事は避けたいので、あまり長期戦には持ち込みたくない。

 

「あれは国家への反逆と捉えるべきだね」

「しかし、歴史は勝者側の理屈で成り立っている部分もあります。ゆめゆめ油断なされぬ様に」

「そのつもりだ」

「ユミナ様、遂に焦りが出ましたかね?」

「恐らくはな。後継者争いで勝つ為には自分が上に立つに相応しいと証明したいのだろう。そして隣国との関係を憂慮してかな」

「我らは何としても勝たねばなりません。手段を選ぶ余裕はありますまい」

「勝った暁には彼女の処遇を考えねば」

 

皆が集結したところで作戦会議を開く。質問のある者は挙手する様に指示される。皆が思考を纏めている間に、まずはギエモンから。あそこは攻めるには楽か否か、そう訊ねる。恐らく考え方が合っていれば、そう簡単ではないだろう。攻めに易し、守るに難し等というそんな砦は囮以外では初めから使わない筈だ。

 

「比較的堅固な守りと考える」

「やはりそうですか。魔導大筒(大砲)を使いますか?」

「そこまでやるのはどうなんだ、ギエモン?」

「そうでもしなければ勝てないぞ、アマツ」

「そうだな、その手も考慮せんとな」

「半島に突き出したこの地、後方を海に守られているから攻撃は海軍を使わねば前方のみから攻める事になろうかと思います」

「戦艦を4隻用意している。そこに魔導大筒(大砲)を幾つか乗せてある」

「用意周到ですな」

 

この砦の攻略法を聞いていく。正面突破は難しい。戦艦の大砲で崩すのも容易くなかろう。砦自体を攻めるのが難しいなら取れる選択肢は限られる。マディエ王子から包囲戦で行こう、そう結論づけられた。そこに乗っかる様にギエモンから一つ提案がなされる。

 

「包囲線を為されるのならば兵糧攻めでどうですか?」

「ふむ、そうだな」

「時間はかかりますよ?」

「だからこそ効果がある」

「精神を挫きに行く作戦だね?」

「ええ。砲撃は相手が弱ってからでも大丈夫かと」

「あまりやりたくないが、長期戦になるな」

「無益な殺傷は好みません。今回ばかりは兵糧攻めも已む無しです。相手の士気は少し低いと聞きました。これが最短の方法の可能性があります」

「そうだな。まずは航路と陸路の封鎖からだ」

 

まずは戦艦を背後の海へ用意を完了させた。敵勢力も使用してくる事を考慮して護衛艦も付けているという。此処までの一本道の陸路は此方の勢力に組み込むのを完了させた。念の為に付近の民達の協力を仰いだ。民意は重要だ。彼等が味方につかねば勝利後の統治に心底疲れるからだ。後は時間を掛けて、少しずつ砲撃しながらやっていくとしよう。そこでまずは威嚇を兼ねて砲撃を行う。

 

「やはり守りが堅いな」

「恐らく土属性を上乗せさせて耐久力を上げているのでしょう。錬成に近い要領かと」

「そうとなると、どうすべきか」

「連続攻撃してたら魔力が切れましょうぞ、マディエ様」

「その手でいくしかないか」

「そればかりでは砲弾代が嵩んで、出費は馬鹿になりません。俺の魔法で少しばかり崩してみますか」

「土属性の使い手だったか。同属性の者は援護を」

「はっ」

「錬成の逆作用、即ち崩壊だ」

「うむ」

 

岩や土を崩すも造るもこの属性の特権だ。数十人の錬成とそれを上回る崩落のせめぎ合いで少しでも砲撃の効果をあげたい。ギエモンを始め、宮廷魔導士の腕は生半可な物ではないのだ。少しずつ効果が薄まっていく。

 

「これなら……マディエ様」

「砲弾が効きやすくなったみたいです」

「数発打ち込め」

「はっ」

「……お、先程より効いている。少し崩れたな」

「彼方も持久戦に持ち込もうとしていますな。少し均衡を戻されかけています」

「今は此処までだ。少しずつ時間を掛けてやっていこう」

「相手に無駄な魔力を消耗させる訳ですか」

「そういう事だぜ、アイラ」

「一旦昼飯にしよう。敵前で余裕を見せる事も心を折る策と心得よ」

「はい。食事の用意をしますね」

 

食を制するものは戦いを制する。古来よりそう語られる事が多いくらい食というのは重要視されている。特に兵糧攻めでは目の前で優雅に食事をされては士気に関わる精神的ダメージを与えられるのだ。さて、目の前の砦は御影石のみで造られている。単純な属性故潜り込む事も可能だ。

 

「土属性の魔導士は石に潜れます。地面は様々な土が混ざっていて寿命を縮める危険があると聞きます。恐らくそれを承知でしょう、今は無理をしないかと」

「今はまだその禁じ手を使ってませんね。あそこの砦の地下は水脈が通ってますから、尚更難しいでしょう」

「ふむ、あれは何をするつもりだ?」

「偵察がてら、砦壁から大砲を撃つつもりかもしれませんね」

「岩石と氷の壁を出せるか?」

「お任せを」

 

此方が砲撃するならば敵方も同様に攻めてくる。ならば魔法の壁を作り出して少しでもダメージを防ぐ算段だ。だが、敵も兵糧攻めに気付いているのか、少しでも攻められるうちに攻めておきたいのだろう。

 

「危ない危ない、もう少しで壊される所だった」

「5重の分厚い壁に穴が……」

「ふぅ、危ねぇ……第3の層まで届くとは。流石は国お抱えの魔導士、これを防ぎ切るとは只者じゃ無いですね。お陰で防げましたよ」

「砲弾の嵐は止んだか?」

「ええ」

「これで暫く様子見するだろう」

「こちらもですね」

 

それからというもの、砦に散発的に砲弾や魔法を撃ち込んでるが、気付けば夜になってしまった。相手を殺さず、だが確実に傷や飢えを引き起こす。籠城に対する兵糧攻めはそういう方法である。時間が必要なのだ、気長に待つ他ないのだ。今の内に逃げ道や補給路としての地下壕などが無いか調べさせてはどうかとバリーから提案され、諜報部隊に一応調べさせる事となった。それからというもの、少しずつダメージを与えつつ調査を進めていく。

 

「1週間掛けて調査しましたぞ」

「どうだった?」

「通路はありました。しかし、どちらかというと武器庫に繋がる道に近い感じでしたな」

「だろうね。あそこは基本海側から物を運搬してくるのが鉄則だ」

「もしかしたら何かしらの隠し通路も有り得ますが……」

「それは無いと断言できる」

「と、言いますと?」

「この防衛施設を設計したのは俺だからな」

 

マディエ王子自らが設計した砦だ。ボルピット公国との海上戦を想定しておくべきだろうと考えたからだ。だからこそ、ほぼ手付かずの状態だと確信に至る。路が改変されてないと聞いてそのまま利用されているという確信に変わったという。それに砦の様な大型建築は一朝一夕で作り替えるのは無理がある。だが、何処かに抜け道が無いか念入りに調べさせているという。

 

「3日経ちましたね」

「そうだな。そろそろかな?」

「報告します」

「ほい来た」

 

諜報部隊の斥候に更に調べさせたが、やはりマディエ王子の推測通り隠れた出口は無かった。これで隠れて食料と武器の搬入はあり得ないと結論付けられた。

 

「ふむ、無かったか」

「広範囲を調べさせましたが、その様です」

「戦闘開始から2週間程、動きが緩慢ですね」

「士気が低いのだろうな」

「囲まれているのが分かっているからなのでしょう」

「ま、それで意地になられても困るがね」

「確かに」

「戦艦から魔導大筒を放て。終幕に持って行くぞ」

「はっ」

 

それから数日後、降参を意味する白旗が砦の各地から挙げられる。白旗が挙がった砦内の主。ユミナ姫は如何なさったのだろうか。これは最側近のマイルズの作戦かもしれないと推測が立つ。これも充分に有り得る。狭い砦内で戦うつもりかもしれない。敢えて砦内に誘い込んで戦う最後の足掻きと見られるし、爆弾やら兵器やらを準備してお出迎えって寸法とも取れる。危険な砦内部での戦闘だ。行ける者はと聞かれても二の足を踏む者が多い。

 

「誰ぞ、おらぬか?」

「では、此処は俺が」

「なんと、ギエモンが?」

「決して死にたがりじゃあ無いとだけ思ってくだされ。フィンリルに魔導探知機を備えてあります。誰か爆弾探知をしてもらいたく」

「では、私が」

「私も同行する」

「仕方ありません。私も行きます」

「待った。この俺、ブレイブもだぜ」

「アマツ達か。任せたぜ」

「お前1人に活躍されては王家付きの魔導士の立つ瀬がなくなる」

「へっ、そうかい」

「俺は優秀な同業に亡くなられては後味が悪いんでね」

「少数精鋭の方が被害は少なかろう。頼めるか?」

「お任せを。乗り込むぞ」

「うむ。正面突破だな」

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