絡繰機械操術師   作:ぽおくそてえ

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合戦

「うし、門は突破できたな」

「魔導の武器がわんさか搭載されてても驚かんが」

「ユミナ様はどうなさったのでしょうか?」

「分からん」

『待っていたわ、セツナの戦士達よ』

「この声、ユミナ様か」

『白旗を上げた相手の砦にノコノコ入ってくるとは呑気な奴らね』

「やはり、偽降の計か」

「けっ。俺ら空賊をタダで使い切るお方だ。容赦はいらねぇんじゃねぇか?」

「出来ればそうしたいな」

『最奥部で貴方達を待つわ。ま、来れればの話だけど』

「……」

『全員が五体満足で出られる事を切に願うわ、ふふふ』

「……切れたか」

 

さて、此処からどうするか。結論は一つだ、行くしかないのだ。やはりというべきか、その手しか無い。この中ではブレイブが特に彼女に私怨を持っている。なんせ彼とその部下をただの駒として扱い、彼の部下を何とも思わないあの御仁が心底嫌いなのだ。

 

「そうカッカするな、落ち着かねぇと勝てねぇで」

「ギエモンの言う通りだ」

「だよなぁ」

「さて、まずは魔力探知だな。フィンリルを使う」

「俺は魔法爆弾じゃねぇのを探知するよ」

「任せたぜ」

 

敵の本拠地を慎重に一歩一歩足の踏み場を探りながら歩みを進めていく。普段なら数分で進める場所を何倍もの時間を掛けて歩いていくが、痺れを切らしたのか、彼方から爆弾の位置でも把握しているかの様な素早い進軍でやってきた。

 

「待ってたぞ、我らが主人に抗う者ども」

「お、思ってたより元気そうだな。心苦しかったぜぇ、兵糧攻めもよぉ」

「これでも半数は体調を崩しているがね」

「そっちから来るなら話は早い。ギエモン、バリー、ブレイブ、先に行け」

「うむ」

「アイラ、行けるな?」

「お任せください」

 

まずは1人でも多くユミナ姫の居る最奥部へと向かわせる為にも、此処は味方の分散を最上の策とする。まずはアマツとアイラ、そしてその配下の兵を敵の足止め役に立てる。

 

「あいつらだけで大丈夫か?」

「問題ないだろう。私が保証する」

「ここまで幾つか兵器や爆弾の仕掛けられた箇所があったな」

「全く、自分らも大変になるってのによ、罠なんて仕掛けんなっての」

「何か目印でもあるのか?」

「視認できる兵器はまだしも、爆弾に関してはそんな物無かったと思うが……」

「待て、少し止まろう」

 

良く良く前方に目を凝らして見れば、何かが赤く点滅している事に気付く。あれが罠の爆弾がある場所を示しているのだろうかと考えられる。なるほど、敵はあれを見て進軍していたのだろう。それを見てたから迅速に動けていたのだ。此方もそれを見分けながら動けば先程より早く動けそうだ。

 

「止まれ、貴様らは此処までだ」

「お、敵さんか」

「ギエモン。お前が数人連れていけ。お前らだけでも先に行け」

「だがよぉ」

「これは俺らなりの賭けだ。だろ?諜報部隊の隊長さんよぉ」

「うむ」

「……死ぬなよ」

「通すな!」

「させぬ。ほあっ!」

「爆弾でも喰らえや!」

「後で追いつけよ!」

 

ごく僅かな兵を引き連れて、罠や壁の武器を掻い潜りながら進む事10分。ようやっと目的の人物の居る最奥部へと辿り着いた。そう、ユミナ姫の居る場所だ。その隣には初めて対面するマイルズも居た。

 

「ユミナ姫!」

「へぇ、数人だけで辿り着くなんてね」

「貴女を捕縛させていただきます」

「ユミナ様、此処はこのマイルズが」

「ええ。殺しても構わないわよ」

「ははっ」

「へぇ、骨の魔法か」

「これが我が魔法」

「ヤマト」

『応よ』

「フィンリル、戦闘モード展開完了」

 

まず仕掛けてきたのはマイルズの方だ。少しでも相手の間合いや魔法の威力を知りたいギエモン側が敢えて先手を取らせたのだ。絡繰の内部には盾となる物も仕込まれているから、まずはそれで様子見をしようと考えての行動だ。2方向から同時に仕掛ける為に、相手の視線をまずギエモンに向かわせるという戦略でもある。

 

「はっ」

「魔法盾、展開」

「ほう、器用だな」

「絡繰に色々仕込んでるんでね」

『毒霧』

「ぬっ……」

『骨でガスマスクか。テメェも器用なもんよ』

「そこにこれはどうだ。風弾!」

「ぐっ、流石に手強い」

 

実質2対1なのだ。相手のマイルズからしてみればやり難いタイプの敵だろうが、これでも第一王女の1番の側近だ。これくらいでやられる程ヤワな男ではない。今までも様々な苦難を乗り越えてきた筈だ。

 

「でやぁ!」

「剣山か!くっ!」

『ギエモン!』

「こっちは平気だ、前を向け」

『お、おう』

「冷静だね」

「絡繰術師に必要な技能だ(だが、俺とヤマトの間に骨の剣山が……戦力が分散されちまったか?早めの合流が必要だな)」

 

ヤマトとギエモンの2人の間に、分断するかの様に骨で出来た剣山と柱がいくつか立っている。回ってくるにしても少し時間がかかるからその間に1人ずつ仕留めようという戦法に出た。

 

「はぁっ!」

「棍か。接近戦は得意じゃねぇんだがなぁ」

「ほほう、そうであるか。ならば、ほれほれ!」

「畜生が」

「隙あり」

『させねぇぜ。おらよ』

「おっと、低くなってる部分を飛び越えてくるとは」

「助かった」

『無茶すんな、ギエモン。近接型のあいつとは相性が良くねぇのは知ってるがよ』

「そうだな」

 

2人が合流した事で再び2対1の構図となった。此処はヤマトが主戦力になる。相棒たるギエモンに続く様に指示を出す。ギエモンは本来得意とする後方からの援護を主体とした攻撃に移る。これに対してマイルズは2対1の不利な対面を楽しもうとしている。今まで通りの攻めなら苦労するだろうから、ギエモンは奥の手の魔導の義腕を装着する。これで無属性や土魔法の安定した攻撃とフィンリルの操作を同時に出来る。

 

『珍しいな、それ使うなんてさ』

「仕方ねぇだろ」

『魔力を消耗しすぎるなよ?』

「ああ」

「来い。ユミナ様の元へは行かせん」

『あいつらが来るまでに勝つぞ』

「無論だ」

 

相手は両手に棒状の武器を振り回して攻撃を仕掛けてきた。攻防一体型な便利な能力を有している。だが、ギエモン達も勇敢に立ち向かっていく。

 

「双条棍!」

『2つの棍か』

「来るぞ」

「はぁっ!」

「土隆壁」

「ぬっ?」

『雷刀!』

「ぐっ!」

「機銃照射だ」

「ちっ……ほれ!」

 

ヤマトの接近攻撃で片方の手を塞ぎ、マイルズの視線を其方へ誘導する。その隙に機銃照射などの中距離攻撃で攻め込んでいく。これが絡繰操術師の戦い方で、これで今まで生き残ってきたのだ。だが、マイルズも戦う理由があるのだ、勝ちは譲れない。

 

『暗器発射』

「多いな、内蔵武器が」

「余所見するとは余裕だな。砂刃!」

「ほっ、せいっ」

「弾くか」

『氷雪の枝!』

「うおうっ」

 

互いに一進一退。だが、少しずつギエモン達が押し始めている。この戦いにおいて優勢に進めている事をユミナ姫は複雑な心境で見つめている。伊達に自分の部下達を、仕官を断った男が倒してないなと感じているからだ。

 

「へぇ、やはりやるわね、彼」

「申し訳ありません、ユミナ様。すぐ片付けますから」

「分かってるわ。貴方なら雇ってきた他の連中とは違うでしょ?」

「はっ」

「此処でテメェは倒すぜぃ」

 

ギエモン自体の物と義腕を含む四つの腕から放つ無属性や土属性に絡繰の武器。それに対応するかの様に骨の武器で暴れ回るマイルズ。そこへ横から攻め寄せる様々な属性力のヤマト。皆それぞれに攻め方は違うが、勝つ為ならどんな戦い方でもしてみせる。

 

「骨大剣!」

「(突っ込むか。ならば……)」

「魔力糸か。ふん!」

「ほう。360度を切るまでに迷いなく。判断が早いな」

『動きが止まってるぜ、灼熱炎舞!』

「でぇい!」

「そこだ。ほい」

「がっ!」

『やるじゃねぇか、相棒よぉ』

 

互いに迷いなく攻めてみせる。ギエモンの魔力の糸の囲いを一刀両断にしてみせるマイルズ。そこに火の弾丸で以って攻めてみせるヤマト。やはり2人で戦っているだけあってギエモン達の方が優っている部分がある。それを見極めたのか、マイルズを止めたのはユミナ姫だ。

 

「もう良い、マイルズ」

「しかし」

「このままでは勝てないのは火を見るより明らかだから」

「……ははっ」

「何だ?退かせた?」

『どういう魂胆だ?』

「貴方、やはりそれなりの戦力ね。此処からは私が直々に相手してあげる」

「この魔力、並大抵ではないな」

『その様だな』

「さ、楽しませてよね?」

 

大本命、ユミナ姫のご登場だ。彼女を止める事が今回の任務の肝だ。だから、ここで何としても勝たねばならない。例え手足を失おうとも此処で彼女を倒さねばならない。今の魔力の残量で足りるか少し不安だが、やるしかないだろう。

 

「ギエモン!ヤマト!」

「皆の衆、来られたか」

「あれは、ユミナ様が直接手を下されるおつもりで?」

「そのつもりらしい。マイルズを下がらせたからな」

「なんと」

「俺1人とヤマトだけじゃ、ちょいときつい。だが、手を極力出すな。殺しだけは避けねばならん」

「分かっている。だが、情勢を見極めて入る時は入るぞ」

「それで良い」

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