「これが私の武器」
「両端に刃の付いた武器か」
「そして戦闘用の衣服にチェンジ」
「早着替えですか」
『何はともあれ、あちらから来るぞ』
「分かってる」
これが最終決戦。此処で勝てば全てが終わるだろう。先に動いたのはユミナ姫だ。突っ込んでから飛んで錐揉み回転をしながら刃を振り回していく。時折飛びながら武器を振り回して攻撃していくのが彼女なりの戦い方だ。
「はぁっ!」
「乱回転でのスタートか、やりづれぇ!」
『あの武器、切れ目が入ってる。分解できるみてぇだぜ』
「それを今知れたのは良かったぜ」
「知れたところで対応できるかしら。はい!」
「おっと、危ねぇな。双剣使いでもあるのか」
一方的に攻撃されるのは好かないから、こっちからも仕掛ける。目には目を、歯には歯を。刃には刃を、だ。ヤマトの両腕に仕込まれている鋸の刃で仕掛けていく。
『ヒャッハー!』
「鋸の回転切り!?」
「そこへ無属性斬撃だぜ」
「くっ、連携が上手いわねこいつら」
『凍らせるぜぇ』
「よっ」
「狙い通りだ」
「ぐっ、危ないわね!」
「棘付きネット、発射」
「はいやっ!」
「へっ、そう上手くは行かんか」
絡繰仕込みの武器や道具を躱しながら攻撃の機会をユミナ姫は窺っているが、互いにそう簡単に攻められないだろう。状況を打開するには次の段階へと進まねばならないだろう。
「仕方ないわね、属性解放するわ」
「ほう、風か」
『切れ味が上がるな、こりゃ』
「糸も容易く切られるな、めんどくせっ……」
「行くわよ」
「ダリィ……九頭竜の顎!」
「はいはいはい!」
『舞い踊る様に切ってやがる。俺も対抗するか。水飛弾!』
「せいはい、よいしょ!」
「速いな」
ギエモンはまず9つの竜の首と顎を土で錬成して飛ばすが、切れ味の上がった風を纏った刃で切り裂いていく。そこにヤマトも水の弾丸を飛ばすが、こちらもいとも容易く切り裂いていく。
「風双刃!」
「うっ、魔力の糸が……」
「これでその絡繰は使えない!」
「ま、その為のこの腕だがな」
「な!?なぜ動かせる!?」
「義腕の方の糸を切っても、魔力は掌に集めてた。そういう訳です。俺くらいの実力なら即座の再接続は簡単なんですよ」
「おお、あれが絡繰操術師の腕前か」
「さぁて、どう攻めるかね」
『俺が前、お前は後方だ。フィンリルを仕舞ってワルキューレも出せば良い』
「三方攻めか、良いね。ワルキューレ、召喚!」
『私の出番ですね』
「厄介ね。一つずつ壊すしか無いわ」
「風魔法は切断系の武器と相性が良い。慎重に行くぞ、2人とも」
『はい、マスター』
『任せい』
自動絡繰に切り替えた事で腕が4本とも空いたから攻め込みやすくなった。まずは一気に土魔法を様々な方向から打ち込む。魔法でユミナ姫を後方へ下がらせていくのに合わせてヤマトとワルキューレが同時に魔法を仕掛けていく。
『霜を降ろす』
『凍らせます』
「武器の、先端が……くそ、片方離すしか」
「隙あり」
「舐めた真似しないで欲しいわね。はっ!」
ユミナ姫は凍りついた片方の刃の剣先を強引に引き抜き、向かってきたギエモンに斬りつけていく。三方から攻めてくる絡繰達と操術師に苦戦を強いられていく。
「よっしゃ、土の剣だぜ!」
「厄介ね。はいやっ!」
『ちっ、牽制されて近づけねぇか』
『上から攻めます』
「させないわよ」
「かかったな。グーパンだぜぇ!」
「きゃ!」
一度にバラバラに動く3人を同時に攻撃するのは難しい。しかも正面に上、横から攻め寄せる者たちを一度に処理するのは尚更難しいのだ。少しずつ攻撃を当てていき、ダメージを稼いでいく戦法だ。ならばと、集めた情報が正しいと判断したユミナ姫はメインの操り手たるギエモンを狙って小型ナイフを突きつけてくる。
「はぁぁっ!」
「ぐっ!」
「ん?くそ、放しなさいよ」
「誰が、手と魔力糸を離すかよぉ」
『おらぁ!』
「うっ!」
「ふぅ。これで終幕だな」
『皆投降せよ。さもなくば命は無いと思えよ』
「……仕方ない。皆、彼らの言う通りに」
「はっ」
手でナイフを動かせない様にして、更に魔力の糸で拘束した状態のユミナ姫に一発喰らわせて気絶させた。これで頭を取られた敵軍は降参する他無かった。気絶した姫を抱えて3箇所全ての門を開門させて真に降伏した事を伝える。開門した正門からユミナ姫以下全ての配下を連れて降伏を宣言させた。後の処理はマディエ王子に任せるべきだろう。傷だらけになりながら王宮へと舞い戻ると、心配そうにしていたセツナ姫が待っていた。
「帰ってきたのね」
「この通り五体満足で何とか無事に」
「心配したわ」
「有難き御言葉」
「少しゆっくりしなさい」
「はっ」
まずは薬師に治療してもらい、傷を粗方治してもらう。さてと、これで王位はマディエ王子に決まった様なものだ。ギエモンらは己の役目を果たしたも同義だ。国からは充分すぎる報酬は貰ったし、厄介事に巻き込まれる前に立ち去ろうと考える。
「何処に行くの?」
「契約は果たした、これで依頼も終わりでしょう。ユミナ様も今回の騒動、
「そうね……貴方は、これからどうするの?」
「再び旅の傭兵に戻ります。帰るべき人の元に行きますから。暫くお会いする事はありますまい、世話になりました」
「貴方の決意は固いのね。世話になったのは私の方」
「もし何かまたお困り事がありましたら、遠慮無くご用命を」
「安くしてよ?」
「ははは、そこはエージェントと交渉を」
これでセツナ姫殿下とはお別れとなろう。次会うのがいつになるか分かったものじゃない。だが、契約や依頼が来ればいつでも駆けつける。王侯貴族を苦手としているギエモンが居心地の良い相手と感じていたからだ。
「ヤマト、ワルキューレ」
『良く生きて帰れたな』
『長い依頼になりましたね、マスター』
「久しぶりの野宿で風邪ひかないと良いんだが」
『そうだな』
「さぁて、次の依頼は何だろうなぁ」
それからというもの、フリーの傭兵に舞い戻った。様々なモンスターや盗賊を倒して平穏な暮らしを助ける仕事を続けていた。時折嫌な依頼主も居たが、なんとか無事に過ごせていた。早いもので一年ほどが経過していた。
「ふぅ、あれから一年か」
『姫が隣国の皇子と結ばれるとさ』
「らしいな」
『しっかし、今回のB級モンスターは張り合いが無かったな』
「言えてらぁな」
『ん?電話だ』
「あいつか。リーナ、どうした?」
『依頼よ。マディエ国王陛下から』
「あ!?何でだよ、俺は何もしでかしてねぇぞ!」
『安心して、罪の帳消しとかそういう事じゃないから。なんでも姫殿下の結婚式に参列してくれと』
「……なるほど、そういう事か。すぐ向かう」
依頼主が新しく王座に就いたマディエ新国王だから、断る道理もないので向かう事となった。そこには満面の笑みを浮かべているマディエ国王がおり、とりあえずご祝儀を渡しておく。
「陛下、お久しゅうございます」
「おお、ギエモン君か。妹共々王家皆して世話になったなぁ」
「一年ぶりですね。ユミナ様の事、ご決断なさったとか」
「ああ。長期間の禁固刑だ。だが、せめてもの情だ、部屋での監禁となるだろう」
「ま、あれだけの事です。至極当然ですね」
「まぁな。それより、妹の事だ」
「……かねてからの同盟ですか」
「そういう事だね」
「仕方ありますまい」
政略結婚は良くある話だ、王侯貴族の間では珍しくもない。これは隣国の皇子と妹姫が婚約した事で血の同盟を改めて結ぶ事となったのだ。
「ギエモン」
「お久し振りにございます、セツナ様」
「元気そうね。安心した」
「お、良い笑顔ですよ」
「そう?」
「良き方と結ばれると聞きました」
「これも国の為。でも、私は私の幸せを掴んでみせるわ」
「いつでもエージェントを通じて呼んでください、すぐにすっ飛んでいきますよ」
「ありがとう」
そこにやってきたのは噂の婚約者であり、隣国の皇子の登場だ。中々の好青年であり、優しそうな雰囲気を纏っている。
「セツナ」
「アレックス」
「君が絡繰操術師だね?噂は予々」
「隣国の方に覚えていただけていたとは、有難い話で。所で、2人はお知り合いなのですか?」
「ワーツ連合王国を含めた同盟三カ国の会合や外交のパーティなどでね。幼馴染なんだ」
「そうでしたか」
彼は隣国ラルス皇国の第一皇子なのだ。つまりは次期皇帝筆頭候補である。とはいえ、自分自身もまだ浅学非才の身だと謙虚に答える。だから学べる事は学び、少しでも国民の為に尽くす所存だ。ギエモンの様な百戦錬磨の強者からは得られる事が多くあると語る。そんな彼の様な方なら大丈夫だろう。いつでも頼って欲しいのだ、傭兵として力になる。無論、依頼料などは頂くが。
「では、式も終わりましたので、俺はこれで」
「食事とか良いの?」
「本来ならコネクションを作りたいですが、ご存じのとおり貴族が苦手でしてね」
「そうだったわね。そこら辺は相変わらず?」
「ええ」
「引き留めはしない。貴方は貴方だもの」
「またいつか、何処かでお会いしましょう(良かったですな、姫殿下。良き御仁と出会われていたとは)」
式の帰り道、久し振りに会った姫、今の皇子妃が元気にしていた事を喜びつつ、エージェントの元へと戻ってきた。
「リーナ」
「お疲れ様」
「流石に報酬はいらんかった」
「それ以上の物を得られたって感じね」
「結婚式に出席した程度で報酬は貰えんよ」
「あは、そうね」
「……」
「ど、どうしたのよ、急に黙り込んで」
「い、いや、俺もそろそろ身を固めねばと思ってな」
「良い人でも見つかった?」
「ああ」
「私は貴方を応援してるから」
「出来るなら俺の側でそうして欲しい。俺と付き合ってくれ」
「っ!」
今まであまり語ってこなかったから、彼女を驚かせたかもしれない。だが、彼女もその言葉を待っていたのだ。ギエモンの隣なら、喜んでお供するという。これで晴れて付き合い始めた。
『……あいつら仲良いな』
『仲悪いより断然マシですよ』
『まぁな』
「ま、当分はエージェントと傭兵っつー関係は大きく変わらんだろう」
「当然ね」
「仕事、来てるか?」
「モンスター討伐が来てる」
「さてと、それならお前の力を借りるぞワルキューレ」
『はい』
「ヤマト、いつも通りにな」
『あいよ』
「さ、仕事だ」