絡繰機械操術師   作:ぽおくそてえ

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第4話です
このペースで進みます

毎朝投稿していく予定です


新たな絡繰

「近づいてきた」

『砂嵐ならまだしも、あんな真っ黒な雲と雷雨を伴う嵐は、此処らじゃ普通はあり得ねぇ』

「雷だけじゃなく、嵐を操るモンスターか」

『砂漠に居るのに寒くねぇか?』

「風が強まってきたからな」

 

雲の塊のある方へと向かうと、冷たい風と雨が降り頻る。そこの中心に居るだろうから、どんどん突っ込んでいく。雨季ではない時期にこんな降るのは本来ならあり得ない現象だ。

 

「何処に居る?」

「グルル」

『上から来やがった?』

「あれが例の、雷獣か」

『フィンリルを出せ。俺1人じゃ無理だろうぜ』

「いや、此処はもう一つの自動絡繰の出番だ」

『ぶっつけ本番かよ』

「今までも、それでどうにかなってきただろ?」

『けっ、そうだったな』

 

戦いの中で得られた経験がある。先ずはヤマトに雷獣を牽制してもらい、その隙に自動絡繰を起動してみる。恐らくはヤマトと同じ方法での起動だろう。

 

「時間を少し稼いでくれ。起動する。召喚」

『任せな』

「さてと、魔力切れを起こして回復した時のヤマトと同じ方法なら……」

『……魔力補充を確認。ワルキューレ、起動します』

「やはりそうか」

『魔力よりマスター候補を確認。貴方が我がマスターですか?』

「急に起動して申し訳ないね。俺はギエモン・カイルスケイド、絡繰操術師だ。あの絡繰はヤマトだ」

『そうですか。私はワルキューレと申します。マスター、命令を』

「今戦闘中だ。力を貸してくれ」

『お任せを』

 

ワルキューレという個体の性能を戦いながら把握していく。その為にも目の前の敵に集中して当たるしかない。ヤマトが時間を稼いでくれたお陰でワルキューレとも魔力の連結が出来た。

 

『おい、ギエモン、行けるか?』

「待たせたな」

『あれは雷獣ですか』

「その様だ」

『同胞よ、協力してもらえますか?』

『あだぼうよ』

「同胞?」

『私も絡繰族です。その中でも彼とは違う種族ですが』

「そうなのか?人間の中の人種みたいな感じか?」

『そう捉えていただいて構いません。私は対モンスター戦闘絡繰生命体(決戦アンドロイド)の一体です』

「初めて聞くな」

『千年前に封印された数台しか存在しないとされる物ですから』

『絡繰族はほぼ壊滅しただろう?』

「あったな、そんな歴史が」

 

かつて隆盛を誇っていた絡繰族も幾度かの内乱で二手に分かれて相争った。気づけばほぼ全滅。生き残った者達はギエモンの故郷、イーベルデルクの技術者達に知恵を授けた後に壊滅。意思ある絡繰もごく少数となったのだ。だから喋る絡繰を見せると初見では驚かれるケースが頻発するのだ。

 

『今はそんな事より此処を切り抜ける事を考えましょう』

「だな。2人とも行けるな?」

『おう』

戦闘モード(エンジン開放状態)に移行します』

『さぁて、相棒として全力を尽くしていくか』

「援護する」

『初発は私から動きます。連射ミサイル、発射』

「確かに絡繰とは違うギミックだな。機械に近い」

『アンドロイドですから』

 

内包している武器はヤマトとは少し違うものがある。ミサイルにレーザーなどが使えるのだ。だが、敵も雷を落としながら対処してきており、油断ならない。

 

「ゴフゥ!」

「避けろ、雷を打ち込んでくるつもりだ」

『ワルキューレ、俺が相殺しに行く』

『はい。念の為にバリア、展開』

「砂の盾、隆起せぇ(それにしてもあいつ、何故此処に?)」

『ギエモン、ボーッとするな。戦闘中ぞ』

「分かってる」

 

三重の守りで防ぎ切れた。一発当たりの威力が高いから魔力も消耗するし、ヤマト達の消耗した一部は結局、ギエモンの魔力に帰結して大幅に消耗してしまうからあまり長期戦には向かないのだ。

 

「何とか防げたぜ」

『助かったぜ、ワルキューレ』

対モンスター戦闘絡繰生命体(決戦アンドロイド)ですから。ただ、マスターの魔力の消費が多いのが弱点です』

「だから使われなくなったのか。確かにいつもより疲れるな」

『しかも同時に2体操作してるしな』

「最悪お前らの動きが止まる。早めにケリつけてぇな」

 

魔力が切れるか減りすぎるとヤマト達の動きが止まるから危険に晒される確率が大幅に上がる。何とか短期決戦に持ち込みたい。しかしながら相手もそう簡単には倒されてくれないだろう。雷属性は速さを売りとする属性なのだ。

 

「ボアッ!」

「(くっ!速い!)」

『せいっ!』

「グルル……」

「助かった。正確無比な矢の発射だ」

『お前に死なれたら俺も死ぬ。ワルキューレもだろう』

『大丈夫ですか、マスター』

「心配かけた。大丈夫だ」

『あいつ、尾が2本あるな。よっと』

「長い年月を生き抜いてきたって事か」

『土属性、いけますか?雷を中和させるには土です』

「土属性は心得ているつもりだ」

『私達で攻め立てます。援護を』

「任せろ」

「グルルァ!」

「雷を纏った?気ぃつけろ、先程より高速で動く可能性が高い!」

『狙いは、マスターですか?』

『どのみち、やらせねぇぜ』

 

接近戦を得意とするヤマトと中距離を是とするギエモン。互いに良しとする距離を良く知っているからこそ、互いに上手く連携を取って攻め立てる事が出来る。それは20年以上の信頼が生み出すものだ。

 

「鉄錐弾!」

「ボアッ」

「くそ、少し弾かれた」

『これなら、どうでい!』

「ギャン!」

「死角となる後頭部から殴り抜けるとはね。流石は相棒だ」

『私も協力します。はいっ』

「足を凍らせた。やるね」

 

2人の連携力に新しい力が付随する。これによって少しでも隙を減らしていきたい。だが、相手も戦い慣れていてヤマトを攻撃の避け辛い空中へと追い込んでいく。ギエモンとヤマトの微妙な距離感の違いを突いてきた戦法だ。それでも、この戦い方はギエモンの想定内だ。

 

「ブルァ!」

『やべっ』

「空中に逃げねぇ方が良いぜ、おらぁっ!」

『うおっと!助かった』

『魔力の糸で引っ張ったのですか、中々器用ですね』

「フィンリルを使うのに必要な技能だからな。魔力が減ってきたら手動に切り替えたヤマトにも使ってる。何はともあれ、油断したのは感心しないね」

『なるほど』

「よし、魔法道具もフル活用だ。勝つ為なら使える手段を総動員するしかない」

『あいあい』

 

まず作り上げたのは鉄製大砲だ。これに土塊を装填、発射する。避けた所にワルキューレが生み出した氷柱(つらら)を落とす。

 

『ワルキューレ、お前、氷が強みか』

『比較的使い易いと感じております』

「余所見してる場合じゃねぇぜ。次はこいつ、小型連射魔法銃だぜ」

「ブルル!」

『速いな、やはり』

「足で魔法を発動する。それで捉えりゃ良い」

「バオオッ!」

『暴れやがって。毒針を放つ』

『マスター、捉えられますか?』

「ドーム作ってもすぐ抜け出しやがったぜ」

『魔力糸と鉄の鎖はどうだ?』

「やってみるか」

「バハァ!」

「まずい、参隆土!」

 

押し寄せるのは雷の波だ。広範囲を一気に攻めて三人を諸共に倒そうと仕掛けてきたのだろう。雷を中和する土壁を全員の前方に仕掛けて何とか攻撃を防いでみせた。だが、魔力の多いギエモンですらいつまでも保つ訳ではないから、少しでも早く倒しておきたい。

 

『大丈夫か?』

「何とかな。あいつ、大きさの割に中々に厄介だぜ」

『小型モンスターでも、いえ、効率的にエネルギーを運用できる小型だからこそ相手を侮るなかれ。私の作製者が昔、そう語っていた記憶があります』

「は、そりゃそうだ。それは正しいな」

『だがよ、アイツもばててるぜ』

「ヤマト、霧を出せ。ワルキューレはそれを凍らせてくれ」

『仰せのままに』

『やったるで〜』

 

作戦通りにまず動くのはヤマト、そこに続くのはワルキューレだ。冷気と氷で動きを奪ってそこに武器や魔法道具を当てていく寸法なのだ。その前に拘束できれば最上だ。

 

『霧冷気!』

『一気に凍らせます』

「よし。このまま撃ち抜く!」

「ブルァ!」

『電熱で氷を溶かすみたいですね』

「それでもまだ拘束できている。そこに俺の鎖と糸だ!」

「グ?ギュウ?」

『しゃあ!一気にカタをつけたる!』

「頼むぞ」

『爆炎砲!』

 

これで相手も完全に動かなくなった。依頼達成、討伐完了だ。周りの生態系もこれで正常へと戻るだろう。無事に討伐して全てが終わった。本来雷獣は山麓に住まうと聞くが、こいつも何かに追われたのだろうかと疑問が浮かぶ。一説程度の考えだが、気候の変化が関係していたり、餌がなくなったりしている可能性は否定できないという。それも充分あり得る。とりあえず依頼は完了だ、天狼とは近場のオアシスで落ち合う事になっている。

 

「そうか、討伐できたか」

「原因までは特定するに至らなかったが」

「恐らく要因は一つとは限らんだろう」

「その様だな」

「何はともあれ、頼み事を聞き入れてくれて感謝する」

「なぁに、新しい絡繰も手に入れたし、俺としては満足だ」

「もう会う事もないだろう。さらば」

「さて、ヘイルノルツ家に向かうぞ」

『依頼は終わったんじゃねぇのか?』

「何かきな臭い物を感じる」

 

街への帰還の道中、やはりというべきか何者かが横っ腹から向かってきているのを確認した。恐らく狙いはギエモンの首だろう。殺しでも命ぜられたのではないかと勘繰る。魔力を消耗として弱っている所を付け狙っていると考えられる。

 

「やはりな」

『アイツら、お前を追って?』

「ヤマト、戦闘準備だ。奴らに裏の顔を吐いてもらう」

『けけけ、戦闘か』

 

だが、例え10名で攻め寄せようとも、この程度でやられては絡繰操術師は名乗れない。全員を強引に捩じ伏せてみせた。

 

「ぐっ、強い……」

「これが絡繰操術師の実力……」

「さて、吐いてもらうぞ。ヘイルノルツ家当主の狙いは何だ?」

「そ、それは」

「吐け。さもなくば撃ち貫く」

「うっ」

「仕方ない。我々に勝ち目は無い」

 

一方その頃殺しを命じたヘイルノルツ氏の館では報告を待つばかりだ。そろそろ戻ってくる頃だろうか、そう思って吉報を待ち侘びるばかりだが、彼からしてみれば予想外の客人がやってきた。ギエモンだ。ヘイルノルツ氏が送り出した彼らなら来ない。何の事かと惚けてみせたが、ギエモンの手にあるのは今までの悪行の証拠だ。国軍に提出済みだから後はどうなるか分かる筈だと。傭兵にやらかした犯罪行為の数々に対する処罰は。ヘイルノルツ氏に国軍は縄についてもらうと伝えた。さて、これで一件落着だ。ギエモンも再び旅に戻る。

 

「さぁて、次はどうしたもんかなぁ」

『これからはどう過ごされますか?マスター』

「そうだなぁ、また野宿かね」

『またか』

「仕方ねぇだろ、宿代の金が勿体無い。魔法電話の魔力もまだある」

『いつもそうなのですか?』

「年の半分は野宿か馬小屋などの間借りだ」

『雨風が凌げれば良いんだとよ』

『なるほど』

「依頼があるまで良くそうして過ごしてる。さ、今日の寝床は何処かねぇ」

 

慣れた放浪の旅。またしても洞窟で寝泊まりしていた一行は翌朝、ギエモンがいつになく朝早く目覚める所から始まった。

 

「んが……ああ、目が覚めちまった」

『どうもおはようさんだね』

「やれやれ、あまり熟睡できんかった」

『マスター、朝食出来上がってます』

「俺の袋の食材使ったのか、気ぃ使わせて悪いね。そういやぁワルキューレの動力源は何なんだ?」

『マスターの魔力が一番ですが、マスターの負担を考慮して基本的にヤマトさんと同じく周辺の魔力吸収です。ですが、時折連結の為に魔力の供給をして頂ければと存じます』

「なるほどね、それは有難い。んじゃ、いただきやす」

 

それからまた数日間仕事が無いから時間を持て余していた。3日も仕事が無いと暇というものだ。普段は終わってから2日か3日で次の仕事が来るものだから。まぁ良い、のんびり行こうという。どうせ目的の無い放浪の旅だから。

 

「今日は何処に行こうかなぁ」

旅の傭兵(流れ)ですか。変わった職ですね』

「収入とかが不安定すぎるからな、これは。ギルドや軍に所属している方が保険やら福利厚生やらが充実してて断然安定しているってなもんだ」

『俺ぁ戦えりゃ何でも良いがな』

『そんな状況でもマスター達は流れを選んだ』

「ま、自己責任だが、自分のケツは自分で拭く。これくらいが丁度いい」

 

そして暫くしてやってきたのは国の中でも比較的大規模の街だ。商業と魔法道具が発達している街の一つだ。

 

「今日はあそこの街で時間を潰すか」

『国の中核都市、ウェイルです』

「よっし、仕事がありそうだな」

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