絡繰機械操術師   作:ぽおくそてえ

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戦闘準備

「あ、ギエモンさんにヤマトさん。朝早いんですね」

「アイラか」

『おはようさん』

「洗濯物ですか?」

「自分の服くらいは自分で洗いたいんでね」

「そうですか。隣、失礼します」

『凄い量だな』

「姫殿下は勿論の事、他の王家の方、メイドや執事の分も分け合って協力していますから」

 

マディエへの謁見の3日後、溜まった洗濯物を洗おうと洗濯場へとやってきていた。そこにかなりの量の洗濯物を抱えてやってきたのはアイラだ。このまま見過ごすのは申し分ないと自分の分は終わったから協力すると伝えたのだ。

 

「良いんですか?」

「ったりめぇよ、一宿一飯の恩義さ」

「ふふふ、では頼らせてもらいます」

「おう」

『ま、いつもの光景か』

「そういえば聞きましたか?」

「何をだ?」

「ユミナ様に新しい部下が付いたとか」

『へぇ、そうなのか相棒?』

「俺は知らんよ」

 

アイラにはセツナ姫から何も聞いていないのだろうかと不思議に思われた。隠し事はしたくないが、極力巻き込みたくない。王族の情報には疎いんだと嘘をついておく。こうする事で不用意に抗争に巻き込まずに済む。

 

「変ですねぇ。貴方になら姫殿下から伝えられてると思ってました」

「そうか?(危ねぇ、流石に後ろ暗い任務の途上だとは言える筈もねぇな)」

「あ、それより朝食は取られましたか?」

「まだだったな」

「そうだと思いました。一緒に如何ですか?」

「良いな」

 

今となっては通い慣れた食堂は嗅ぎ慣れた美味しそうな匂い、そしていつも通り迎えてくれる食堂の親父さんが居る。彼の作る食事が毎日の活力となっているのだ。これも一つの魔法とも言える。戦いばかりに使うのが魔法とは限らない。

 

「おじさん」

「おう、アイラ。ギエモンの兄ちゃんも一緒に来たかい」

「早朝からご苦労さんだね」

「今日も沢山食べてってくれ」

「おお、今朝の食事も貴族のそれと遜色ないな」

「同じ食材を使っているからな」

「だからか。では、今日も食事にありつける事に感謝しつつ、いただきます」

「本当にその日暮らしなんですね、その台詞からして」

「いつ何をどれくらい食えるか知れない様な生活だったからな」

「ギルドならまだしも、流れならそうなるな。不規則に近い仕事だからよ」

「詳しそうだな」

「俺も此処に来るまではギルドで働いてたから多少懐事情とかも知ってんだ」

「なるほどねぇ。通りで」

 

ギルドで働く者は安定した収入を得られる。だが、エージェントを通じた依頼と同じ様に手数料を取られるのだ。しかしながら福利厚生が充実しているから結果として安定した暮らしを送れるのだ。ギルド飯も充実しているのだ。そんな場所で働いていた彼のこの日の朝飯も美味しいし、染みる。

 

「味噌汁が五臓六腑に優しく染み渡る。美味いなぁ」

「かかか、そうだろう?」

「自分の腕に自信が無けりゃ出せねぇ味よな」

「美味い飯で腹が満たされれば心が安寧に導かれる。それが理想だし、常日頃からそれを目指して研鑽を積んでいる」

「そうなんです。だから王侯貴族の皆様にご満足頂けているのです」

「ま、じゃなきゃクビにされてるもんな」

「そりゃまぁ、なぁ」

「この魚、何だ?」

(サワラ)のソテーだ」

「そうか。美味いな、これ」

「だろ?」

「この米も良い物を仕入れてるんか?」

「そうだな」

「お、さっきの味噌汁。改めて飲んでみりゃ出汁が効いてて体に沁みるな」

「味の分かる男だな」

「まだ鈍ってなくて良かったぜ」

「各地の一流食材が入ってくるんだ。これを更に美味く調理する、俺らの腕の見せ所だぜ。っと、お客さんか」

「あれは?」

「この前赴任してきたユミナ様の配下と聞く」

「ほう(あの顔、確かにそうだな。っつー事は、狙いはアイツだな)」

 

この前潜入していた時にユミナ姫に紹介されていたと記憶している。とりあえず声をかけておこう。彼に関して少しでも情報を得ておきたいからだ。こちらから接触して少しでも牽制しておきたい。

 

「よう」

「おん?何だあんたは?」

「俺は王家に雇われた人間だ。あんたもか?」

「ウィル・ヘイズ。よろしくな」

「俺は傭兵のカイルスケイド。よしなに頼む」

「おう」

「どんな魔法使うんだ?俺は土魔法だ」

「魔法剣と魔導銃だ」

「そうかい。邪魔したな。また何処かで」

「そうだな」

 

とりあえず朝飯食って少しでも得た情報を渡しにいく。ご馳走様でしたと告げてまずは部屋に戻る。昼飯も楽しみにしているから、また来るのだ。部屋に入って今後の行動の指針を考えておく。

 

「さあてと、これが罠でなければ仕掛けやすくなったな」

『どう動く?』

「敢えて狙わせる。そこを逆に狙い撃つ」

『ほう?』

 

こちらから先に仕掛ければ王家の配下を狙ったとイチャモンをつけられかねないのだ。相手に正当防衛が成立するかもしれない。それを防ぐ為にも、相手方から情報を引き出す為にも仕掛けた所を拿捕するのが狙いだ。

 

『後から仕掛けて優位を取るか』

「そうだ。恐らく配下のウィルの下に戦闘部隊が居ると考えられる」

『あり得るな』

「城内で戦闘となれば面倒だが、絡繰部隊を増設する事の許可を得よう。準備しておくぞ」

『あいあい』

「つっても俺が自動絡繰を製作するだけだがな」

『協力するぜ』

 

ウィルに関して状況説明をしつつ、絡繰部隊の増設の許可をとりにきた。セツナ姫の自衛と国軍の増強を兼ね備えた作戦だ。これが通れば、ある程度の敵に対処できるというものだ。絡繰部隊を増設するにあたり、国の機関に存在する絡繰の作り手に協力してもらい、幾つかの戦闘用自動絡繰を姫殿下の配下に置く予定である。魔石と空気中の魔力、そして操作者の魔力で動かす算段だ。全ては自分の去った後でも大丈夫になる、国益に繋がると説得を試みる。

 

「如何しますか?」

「貴方の責任で速やかに遂行を」

「はっ」

「魔石や部品なら倉庫番に聞いて」

「ありがとうございます」

「そこまで案内しよう」

「その部隊、私の配下と考えて良いの?」

「無論です」

「でも、貴方が教えてくれなければ動かせないのでは?」

「ま、そこをどうするかって感じですね」

「……」

「そんなジトっとした目で見られても……そうですねぇ、魔力を少し拝借出来ればセツナ様でも動かせますよ」

 

彼女の属性と魔力を特殊な道具で液体に変えて貰っていく。倉庫番に頼んで魔石も多めに貰って絡繰制作に取り掛かる準備は済んだ。後は迅速に制作していくだけだ。

 

「よし、多めに魔石とかが手に入った」

『これで幾らか作れそうだな』

「魔力を少々組み込めば自動で動く様に仕掛け(ギミック)を作り上げるか」

『これは、同時に5体造るつもりですか?』

「ワルキューレか。おう、とりあえずそのつもりだ」

『一部は糸で操る式、フィンリルと同じ仕組みか?』

「姫殿下は水魔法の使い手だから、糸の創造は難しくなかろう」

 

まず作るのはフィンリルと同じ仕組みの魔力糸を使った絡繰だ。これで負担が少なく済む部隊は出来上がった。続いて作るのは意思は無いが魔力の糸を使わずとも自律して動く自動絡繰部隊だ。

 

「うし、完成。魔力糸で動く物は完成。姫殿下専用の自動絡繰を造るか」

『お、魔力を液体にしたんだな』

「ああ。これで彼女でも発動可能だ」

『依頼主の為にそこまでなさるとは、恐れ入ります』

「依頼の失敗は傭兵の尊厳に関わる。だが、いつでも駆けつけられる訳じゃない。だから少しでも自衛の手段を増やしてもらいたいんだ」

『そうでしたか』

『お前がそこまでするとは珍しいな』

「今回の依頼の成否は以後の生活に直結するからな」

『そういう事か』

 

王家の依頼を達成したとなればより良い仕事を斡旋して貰いやすくなるし、王家御用達みたいな箔がつく。この国では王家はそれだけ強い威光を持ち合わせている。さすれば高収入の案件を紹介してくれるケースが増えるかもしれないのだ。だが、逆に失敗すれば一気に仕事が減る可能性が高いハイリスク・ハイリターンな案件なのだ。さて、かれこれ1日半作業していたら流石に腹が減ってきた。

 

「ふう、此処らで休憩するか」

「ギエモンさん、お疲れ様です」

「アイラ」

「セツナ様からお茶をお入れしろと」

「お、宮廷菓子か?」

「いえ、私の手作りです」

「そうか。悪いね、態々(わざわざ)

「ふふふ、味わってくださいね」

 

提供されたのは厨房で作られた菓子の数々と美味しそうな香りのする紅茶だ。ギエモンの為に作られた一品ばかりだ。まず手に取ったのは可愛らしいクッキーである。

 

「お、ジンジャーとか入ってんのか?」

「はい。こちらの紅茶には柑橘類が少量入ってますよ」

「へぇ。美味いな、食堂のおっちゃんに負けてねぇんじゃねぇか?」

「これでもセツナ様付きのメイドですから。おじさんに色々と教わってます」

「そうだったか。ありがとな」

「構いませんよ」

「アイラも食べな。ほれ、座ってくれ」

「では、お言葉に甘えて、お邪魔させてもらいます」

 

こうして色々と仕入れてくれたり心配してくれたりとしてくれている。中々お返しが出来ないのが申し訳なく思えてくる。しかし、同じ主人の為に働く彼を心配して見にきただけだという。

 

「偶にはゆっくりするものですね」

「そうだな。でも良かったのか?こっちに来てて」

「今日と明日はお休みですから。セツナ様にも許可は頂いてます」

「なら良いが」

「はい、まだお菓子とお茶はありますから」

「結構作ったな」

「お疲れかと思いまして、腕を振るいました」

「俺の為に悪いね」

「良いんですよ。同じ主人に仕える仲間ではありませんか。ところで何を造られてたんですか?」

「姫殿下の為の護衛絡繰部隊だ」

「セツナ様の?」

「そうそう。いざって時の為の自衛策だ」

「流石は傭兵ですね。万が一の事を見据えている」

「依頼の失敗は許されない立場なんでね」

「それが貴方の生きた道、だからですか?」

「そうだな」

 

傭兵は信頼あってこそ成り立つ仕事だ。成功は当たり前、失敗は避けるべき。使える手段は基本使うべきで、手段の選り好みをしている場合じゃない事も多々ある。それでも何でもやれば良いというわけでも無いから難しいが。

 

「美味なる菓子と紅茶、ありがとな」

「いえ、これも頑張っている貴方の為です」

「ほうかほうか」

「私に出来る事であれば、貴方の力になりたいのです」

「その内頼らせてもらうかもな」

「では、失礼します」

「……彼女は優しい人だ。セツナ様が心を開くのも分かる」

『そうだな』

「うし、続きにうつるか」

『頑張れよ〜。俺も協力するからさ』

 

あれから3日がかりでようやっと全ての絡繰が完成し、上納する事が可能となった。思ったより時間かかった上に疲労困憊だ。碌に睡眠も取れてない気がする。絡繰を複雑にしすぎると魔力消費量が多くなるから調整に苦労した。久々に結構頭使った気がする。これで謁見が終わったら飯の時間になる。部屋を出てセツナ姫の部屋に向かう道中でアイラにバッタリと会う。

 

「ギエモンさん、お疲れ様です。目の下にクマが出来てます。無理をなさったのでは?」

「アイラか。心配かけたな」

「それでもスッキリした顔をされてるあたり、完成したんですか?」

「おうよ。これから上納しに行く」

「あれ?でもどうやって使うんです?」

「契約の巻物に全部入ってるんだ。これに魔力を込めると出てくる仕組みなんだ」

「そんな仕組みなんですね」

「さて、姫殿下にお会いしなければ」

 

朝一番に姫殿下の坐す部屋へと向かい、完成の報告と発動の為の血の契約を行う。こうすれば自分が去った後でも何かしらの方法で身を守る事が可能になる。

 

「出来たみたいね」

「お待たせしました。今から発動方法を説明させてもらいます」

「お願い」

「まず、この巻物に血の印を押します。今回は親指から少しばかり血を垂らして押す方式です」

「……こう?」

「ええ」

 

契約の血印を押し、少しだけ魔力を流し込んで連結させてみる。後はこの巻物を持ちながら魔力を流し込めばいつでも召喚が可能になるのだ。青の巻物が糸を使うタイプ、赤の方が自動絡繰となる。魔力の消費が多いタイプが自動絡繰に多いので、そこは注意が必要なのだ。とりあえず注意点と説明は以上となる。

 

「っと、ざっとこんな感じです」

「これで私の魔力を使えば発動できるの?」

「そうなります」

「ありがとう」

「いえ、これも一配下の務めというもの」

「そう、謙遜を」

「いつ狙われるか分からぬ御身ですから、お気をつけて。これを肌身離さずお持ちくだされ」

「ええ」

「では、これにて」

 

一仕事終えた後には飯が必要だ。ここの飯は美味いから毎度の楽しみになっている。しかも此処数日は保存食で切り抜けてた部分があったから、臓腑が空腹の悲鳴をあげている。相変わらず食堂からは美味そうな飯の香りが漂っていて、楽しみにさせてくれる。

 

「かーっ、飯だ!」

「お疲れ様でした」

「お、今日はポトフとピラフか」

「ポトフは肉と野菜が同時に取れるからな。疲れた体に良いぞ」

「その優しさが有難い。いただきます!」

 

いつも通り何杯も頂き、体が求めていた栄養を摂取していく。相変わらずの良い食いっぷりに思わず感嘆するほどだ。だが、此処まで食うのにも理由がある。

 

「美味い飯を好きなだけ食べられる。そりゃ食うに決まってらぁな。いつ何時(なんどき)に飯が食えるかって世界に居たからな」

「まぁ、そうだったな」

「ご馳走様でした。はぁ、美味かった」

「お粗末様でした。あ、そうだ。セツナ姫殿下が心配なさってたぞ」

「そうなのか?」

「部屋にほぼ篭りっきりでしたから」

「で、あったな」

「根を詰めすぎるなよ?」

「気をつける」

「とりあえず体を動かしてこい」

「ういっす」

 

飯を食った後に少し休憩を挟んで修練場へと足を運ぶ。此処まではいつもの日々の流れとなっている。今までは絡繰の操作術を鍛えてきたが、そろそろ土魔法も鍛えておかねばならないだろう。

 

「鍛錬場がちゃんとあるってのが有難いね」

『今日はどうするんだ?』

「土魔法を鍛える。普段使わんから尚更必要な時に使えるようにする」

『潜入用魔法と防御用だからな、基本』

「そうなんだよ。さ、始めますか」

 

これから訓練をして少しでも鍛え上げる。そうこうしている内に彼に客人がやってくる。セツナ姫とまだ顔を合わせた事のない女性だ。服装からして配下の者ではないとは察しがついたが、誰なのかまだ見当がつかないのだ。

 

「ギエモン、此処にいたのね」

「姫殿下」

「紹介したい人がいる」

「?」

「姉様」

「ほうほう、この人がセツナの話してた絡繰操術師じゃな?」

「貴女は?」

「挨拶が遅れたのう。妾はエイル、この国の第二王女じゃ」

「これはこれは、とんだご無礼を。申し遅れました、絡繰操術師のギエモン・カイルスケイドです」

「うむ。妹が世話になっておる」

 

現れたのはエイル第二王女だった。彼女は中立の立場を取り続けていると聞いていたが、何故此処に居るのか。彼女は本当はセツナの役に立ちたいのだが、そう簡単な話ではなくて仕方なく中立を取っている。だが、表立って行動はしないものの裏で戦力の融通などで援護する。それだけは約束しようと言う。彼女には感謝しかない。しかし、顔を合わせる理由は他にあるのではないか、そう尋ねる。その答えは案外単純なものだった。

 

「して、エイル様は俺に何の御用で?」

「うむ。最近姉上が怪しい動きで王位を譲らせようと脅迫まがいの方法を使おうとしておると聞く」

「左様でしたな」

「そこでじゃ。少し裏方の任務を任せたい」

「ほう?」

「まずは姉上の雇った人間の捕縛を頼みたい。上手く誘導してのぅ」

「その件でしたら妹君から頼まれておりまして」

「そうなのかの?」

「そう。彼をこの件、ユミナ姉様の動きを探る為に呼んだ所がある」

「ほっほっほっ、信頼されておるのぅ」

「有難きお言葉」

「では、妹のセツナを頼んだぞい?」

「ええ、お任せあれ」

「ほっほっ、良きかな良きかな」

「姉様、また後でね」

「うむ」

「……優しい姉君ですな」

「でしょ?自慢の姉様なの」

「では、俺は仕事に移ります」

「その前に、集めた情報を共有するわ」

 

ウィル・ヘイズ。それが相手の名前だったと改めて確認する。相手の申告が嘘でなければそうだと。しかも彼はギエモン同様に傭兵として長らく活動してきたらしい。しかも背負っている業物からして魔法剣を得意としているという報告を聞いている。そうなると、近・中距離使いと見るべきであるというのがギエモンのこれまでの経験から得られる知見だ。ちなみにギエモンはどの距離が得意なのかと問われた答えとして絡繰は中距離であると。近距離なら土魔法を使う感じでもある。しかし、土魔法はセツナ姫の前では発動していなかったから知らなかったのだろう。

 

「へぇ、無属性の糸魔法に土魔法ね」

「使用方法は主に絡繰操作の援護の為です」

「土系統はまだしも、無属性の糸はあまり聞かない魔法の類」

「でしょうな。魔法は基本的に何かしらの属性が付与される場合が殆どですので」

「確かにそう。無属性のみの使い手は割合としてはそう多くない」

「属性を乗せないという手段は基本的に不便だし、他属性の弱点をつけないので回復魔法の類以外ではあまり使われませんね」

「らしいわね」

 

90%程の魔法は属性がつくと言われている。召喚魔法も空間魔法の一種と捉えられているからギエモンは風魔法の素質自体はあるのだ。属性は多種多様であり、火や水、風に土などの基礎属性に回復魔法の様な珍しい魔法も存在する。

 

「そういえば、姫殿下の属性は?」

「水よ」

「なるほど、そうでしたね」

「何故今それを?」

「いえ、自分の使った魔力探知機が正確だったか知りたく」

「?」

「説明しますか。絡繰をより正確に操るには得意属性に合わせるのが定石でしてね」

「理解したわ、その機械では水属性と出たと」

「ええ。多めに魔力を頂いた理由の一つです」

 

ウィルの率いる部隊、つまり相手は複数人で攻め寄せると考えられるのだ。諜報部隊をあちこちに置いてるけど、それだけでは不安だと溢している。その為のギエモンやこの前の自衛策である。セツナ姫を守る為の策、信じて貰いたいのだ。無論そのつもりだという。

 

「いざとなったらバリー殿も頼られますよう」

「そうね」

「では、情報収集に出て参ります」

「諜報部隊と協力してね」

「はっ」

「でも顔を知らないでしょ?今から呼ぶわ。アマツ、アマツは居るかしら?」

「お呼びですか、姫殿下(セツナ様)

「彼と共に調査にあたって」

「はっ、セツナ様の(めい)とあらば」

「頼んだわ」

 

虚空より現れたのはセツナ姫の配下たる諜報部隊第三部隊長のアマツである。彼はそれぞれの王子や王女の下にある五つある部隊の一つを束ねており、普段はセツナ姫かショーン国王陛下の命令を受けて動く。彼はギエモンの話は聞いているみたいだ。

 

「貴殿が噂に聞こえし魔導傭兵だね?」

「うむ。そういう貴方は姫殿下の信頼厚き諜報部隊長とお見受けする」

「アマツだ。よろしく」

「こちらこそ。ギエモンだ」

「貴殿は岩や土のある場所なら潜入出来ると聞くが」

「あまり得意ではないがね」

「それでも頼らせてもらうよ。同じ主人の(もと)での共同任務だ」

「正直潜入なら貴方達の十八番(オハコ)だろうが、出来る事はやろう」

「まずは例のウィルとやらの調査だ」

 

ウィルの居た場所は1時間前までギエモンの居た所の隣の修練場だ。剣の他にホルスターを下げており、恐らく魔導銃もサブウェポンとして使っているのではないかと推測できる。

 

「あれだな」

「剣の属性を知れば攻略に近づく」

「ちょいと鍛錬と称して近づこうか?」

「頼めるか?私は様子を見ながら報告の内容を纏めておく」

「ああ、第三者の目が必要だ」

 

まず接近してみて自然と決闘や鍛錬を申し込んで魔法剣や魔導銃の属性を少し探ってみる作戦に出た。こちらの属性を知られても攻略法はそう簡単じゃないと自負しているからこそ出来る作戦だ。

 

「よお、ウィル」

「カイルスケイドか」

「手合わせ願えないかね?」

「……辞めておく」

「そうかい」

「我が魔剣は光を得意とする。それくらいは伝えても構わんと思っている」

「俺は土属性だ」

「そうか」

「いつか手合わせしてくれると有難い。無理にとは言わんがね」

「分かってる。気が乗ったらな」

 

少しくらいなら情報を小出しにしても平気だと、お互いに一部の属性を開示してそれぞれの場所や鍛錬に戻っていく。少しでも情報を持ち帰りたいが、これ以上は今は難しかろう。後は諜報部隊に少しずつ調べさせる他ないと判断した。

 

「……だとさ」

「ふむ」

「当然の対応だが、情報を隠してそうだ。少しずつ情報収集するしかないね」

「では、訓練の様子を盗み見させてもらおうか」

「それが最短ルートか」

「ここは私が行こう」

「じゃ、情報を各自集めて3日後に姫殿下に報告といこう」

「うむ」

「俺ぁ普段の生活から見てみる」

「では私は修行の様子を見るとするよ」

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